お奨めの本:「格差はつくられた」ポール・クルーグマン著



この本を読めば、米国の巨大な暗部が霧の奥から浮かび上がってくるはずです。

この本には経済専門用語や数字の羅列はありませんが、著名なノーベル経済学者によって書かれたものです。米国百年間の経済・政治史、欧州との比較により説得力があります。当然、主題の医療保険制度については経済効率の視点から明快に正論を打ち出しています。もっとも不思議であり魅せられるのは、変質した政治勢力とその背景にある経済格差、それらを容認する民衆の心理を断じていることです。その論法は経済学者として逸脱しているように見えます。しかし国家の行く末を真に想うなら、それが最重要であれば現実社会や政治を問題にするのは当然です。

著者が指摘する重要な論点を箇条書きにします。
1. 保守派(共和党右派)の台頭により、規制撤廃、富者の税制優遇、福祉削減などが進んだ。
2. それにより経済格差(年収の格差、それを遙かに上回る金融資産格差)が拡大化している。
3. これは二つの悪循環を生む。一部の富裕層による情報・政治の掌握と経済格差の世襲化です。
4. この格差は1920年代に匹敵し、ニューディール政策の後、40年かけて格差は縮小した。しかし80年代のサッチャーやレーガンの登場を機に反転上昇し現在に至った。
5. この格差を容認させている心理の一つに人種差別がある。これが遅れた医療保険制度を固持させている。
6. しかし移民の多い国であるから選挙民の構成が変わり、やがて民主党の黒人大統領が誕生する時代が来ると予測している。(2007年発刊で、オバマ大統領誕生は2009年。)

共和党右派が台頭する背景指摘と、将来をリベラル派(民主党など)の良心に期待している点で、物足りなさを感じる。しかし、ここ百年の米国中心とした経済と政治の大きな流れを俯瞰させ、歯に衣着せぬ言いようは素晴らしい。いつの世も、一つの文明や国が興亡していく裏には、格差の拡大とその世襲化があった。このことは今の米国に限られた問題ではない。その警鐘を鳴らす姿勢には、古き良き時代を想わずにはいられない米国市民の姿が垣間見える。

これに関連した記事を「アクアコンパス」内の「ナチスの亡霊」と「安全保障がめざすもの」に一部書いています。

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Categories: book+ film+drama, <japanese language, politics | Tags: | Leave a comment

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