私達の戦争36: 摩訶不思議な解釈8 「冷戦のおかげで・・」


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「冷戦が世界の紛争を防いだ」、この手の真相を確認します。

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< 2.2012年度、世界の武力紛争、茶=戦争、赤=小規模武力紛争、by UCDP >

私が最初に抱いた疑問
「冷戦後、世界で武力紛争が多発するようになった」
「冷戦の米ソ均衡が武力紛争を回避していた」
この手の言説を見聞きし、私は長らく答えを出せずにいました。
日頃、世界の紛争報道から察するに、この指摘は正しいようにも思えました。
しかし一方で、冷戦当時、米ソによる軍事援助と代理戦争が頻発していたのも事実でした。
アフガン、ベトナム、ソマリア、イラン、イラクなどの戦争・紛争がその例です。

私の推測では、冷戦は地域紛争を多発させたはずであり。
冷戦後は大量の武器が出回り、大国のたがが外れたことにより紛争が増えたのだろうと私は理解していました。
しかし、確信はなかった。

そこでデーターを探しました
今回紹介するグラフは、スウェーデンのウプサラ大学の平和紛争研究部(Uppsala Conflict Data Program)が収集・作成したものです。
このUCDPの資料は紛争解決学の分野で信頼出来るものだそうです。

3紛争件数2

< 3. 武力紛争の頻度、by UCDP >
用語: Extrastate =国家外、Interstate=国家間、Internationalised=国際化した内戦、Intrastate=内戦。

このグラフを見ると、第二次世界大戦後の冷戦期(1945~1989年)において内戦は増加し続け、1991年をピークに減少傾向にあることが明白です。
「冷戦が武力紛争を多発させていた」のは事実のようです。

一方で、大戦後、国家外(灰)と国家間(黄)の武力紛争は長期減少傾向にある。
1975年に国家外(灰)は無くなり、国家間紛争(黄)と国際化した内戦(黒)も一度大きく低下した。
この年はベトナム戦争が終結した年であり、この終結は72年にニクソン大統領による米中関係正常化が図られた結果です。

複数国同士による大規模な武力紛争(灰)の減少は、冷戦期、米ソ2強が均衡したからだと主張する軍事専門家がいる。
しかし、冷戦後、均衡が破れ米一強と中露の時代になっても国家外や国家間の武力紛争は増えなかった。
それに対して、彼らは核抑止力が現在も効いているからだと補足する。
しかし現在、核兵器の均衡は米露だけで、核保有は9ヵ国まで拡散し、不安定状態は深まっている。
既に銃社会で見たように、あてにならない抑止力よりも暴発の危険が増している。
むしろ米中、米ソの相互理解(関係正常化)が大規模な紛争を無くしたと言うのが事実ではないだろうか。

残念ながら、内戦(赤)は起こり続け、国際化した内戦(黒)は若干増加傾向にある。

 

4非国家的紛争

< 4.地域毎の非国家的紛争の頻度、by UCDP >

このグラフから、非国家的紛争がアフリカで大きく増加し、ここ数年は中近東でも急増していることがわかる。
冷戦後、新しい形態の紛争が増加している(以前の資料がないので不正確)。
この非国家的紛争とはテロや武装集団による紛争を指しているらしい。

冷戦をどう見たらよいのか
冷戦(二大覇権国の均衡)は、第三次世界大戦を防いだかもしれないが、数多くの地域紛争を招いた。
大戦が起きれば1億の人命を失うだろうが、ベトナム戦争だけで800万人が死んだ。
また冷戦期と冷戦後も含めて、難民の数は膨大である。
現在の非国家的紛争(テロなど)の火種は冷戦期に大きくなったように思える。
それは、2大強国が傘下の小国で、傀儡政権や転覆派に継続的で大規模な軍事援助を行い、対立を煽ったからで、アルカイダ、イラク、ソマリア、ベトナムなどはその例です。
さらにその火種は、両大戦に遡る植民地政策や領土・国境確定にあった。

つまり、単純に言えば、過去の戦争や侵略の後遺症、軍事力均衡頼みだけの対立が、災いを生み続けたと言える。
それを和らげたのは相互理解(関係正常化)であった。
第三次世界大戦の防止や核抑止力については、大国に近い軍事専門家の希望的観察であって、確実なことではない。

残念なこと
「冷戦が世界の紛争を防いだ」と声高に主張する人の著作を読んで思うことがある。
著作の中で、すべてをなで切りにし、「平和呆け」をなじるが、行き着くところは軍事力信奉と日本優位に尽きる。
この手の人は、雑多な知識を売り物にしているが、論理は稚拙で、データー提示も少なく、説得力に欠ける。
それこそ古代中国の孫子に始まり、18世紀のプロイセン軍人のクラウゼヴィッツが顔を覗かせる。
非常時に備え軍事力と戦略の必要性は理解出来るが、結論はことごとく過去の延長線上にある。
そこには紛争を解決するために人類が生みだした外交術や法概念の発展、近年の紛争解決学への関心が微塵も無い。
当然、視野の狭い戦争論に終始することになる。

このような論調に安易に乗らないこと願ってやまない。

 

 

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