社会と情報 38: 新聞は誰の味方か 2


   1本

  • * 1

 

前回に続いて、主要新聞の事件報道を追います。

 

 

事件報道から見えるもの

今回も、前回に続き著書「官報複合体」から記事を引用します。

大手新聞二社については仮称AとBで扱い、後に種明しします。

 

2道伝

< 2. 下記事件の無罪記事の扱い >

 

*「山口組絡みの資金洗浄事件」の報道

2004年、クレディ・スイス元行員道傳(どうでん)篤が逮捕され、2007年無罪。

 

「一連の手法は、金融のプロで元クレディ・スイス行員道傳容疑者が考案し、自ら実行していた。海外を舞台にしたブラックマネー洗浄の手口の全容が明らかになったのは始めて」

「年間数十億のノルマがあり、・・スイスに送金すれば、自分の実績も上がると考えた」

A社は起訴の翌日、こう報じた。

翌年もA社は、この事件を特集し被告を犯人扱いし責めた。

 

それでは無罪判決後、A社は犯人扱いした記事を訂正し謝罪しただろうか。

A社も含め主要紙は、無罪確定を知らせるベタ記事(図2)以外には報じていない。

 

道傳によれば、新聞は彼や親族、彼を支持する人々に一切取材せず、警察・検察ばかり取材していた。

「約十ヶ月に及ぶ拘留を含め、逮捕から三年三ヶ月が経過し、その間に失ったものはあまりに大きく、無罪判決を受けたからといって率直に喜べる状況ではありません。・・捜査機関が私の話に耳を傾けてくれていれば・・」

道傳は無罪判決後、これを記者クラブに配布し、毎日と日経だけが紹介記事を載せた。

 

ポイント: A社は検察の意向を汲んだ報道に終始し、被告を犯人扱いした。

無罪確定後、A社は犯人扱いした誤報を批難されないようにその報道を小さく扱った。

これは他社も同様ですが。

 

新聞は容疑者を犯人に仕立て扇情的に書くことに熱心でも、正義が正しく行われているかには関心が低い。

検察の誤認が発覚(無罪確定)すると新聞社は検察を責めても、被告に誤報を謝罪し名誉回復に務めるよりは知らぬ存ぜぬを決め込む。

 

記者クラブ所属の新聞は、検察を疑い調査することで検察に嫌われたくない。

これでは正義の最高権力(検察)が冤罪起こしたり腐敗したりしても暴かれず、改善されることはない。

これでは「記者クラブ」を持つ官庁や団体の退廃を食い止めることを新聞に期待出来ない。

一度、被告になった弱者は、味方が失われ孤独の内に冤罪を受け入れるか、例え無罪になっても名誉回復がおぼつかない。

 

 

次に検察に葬られた例を見ます。

 

 3三井

  • * 3

 

  • 三井環事件」の報道

2002年、大阪高検元部長三井が詐欺容疑で逮捕され懲戒免職、上告するも2008年最高裁で実刑確定。

 

毎日「明治以来の不祥事」。

A社「今回の事件ほど、国民の検察に対する信頼を損なったものはない」

B社「日本の検察官の信頼を著しく失墜」

日経「歴代の検察首脳の責任は極めて重い」

いずれも逮捕から2ヶ月以内の記事で、「悪徳検事三井」と名指しした。

 

実はこの事件には裏があった。

三井はかねてより、水面下でマスコミに接触し、「検察内部で調査活動費が裏金として職員の私的な飲食代やゴルフ代に消えている」と訴えていた。

しかしマスコミは内部告発者には冷淡で、やっと彼は実名を条件にテレビB社「ザ・スクープ」の取材を取り付けた。

しかし、その当日、彼は些細な別件で逮捕され、6年間も検察とマスコミを敵に回し、ついに闘い敗れた。

 

後日、彼は振り返り語った。

「逮捕された時に、いかにひどく報道されていたかを知って驚愕。マスコミにも怒りが湧いてきた」

 

ポイント: この事件には二つの問題があります。

一つは、日本のマスコミが内部告発者を信用せず避ける傾向にあることです。

既にこの連載「社会と情報 2~9と27」で取り上げたように、米国での内部告発は企業や国家の大規模な不正を暴き社会を救い、評価されています。

 

しかし日本では、いまだに内部告発が組織の裏切りや犯罪と見なされる。

さらに告発には実名が要求され、それが知れると告発者は以後冷遇され続ける。

多くの記事が匿名扱いなのに、なんと不条理なことか。

 

これは日本の国民性に「強い村意識」があり、良く言われる「社会人でなく会社人」になってしまうことを指します。

これは心理学で言う「帰属意識が高い」ことによる悪い面が出たからです。

当然、良い面もあります。

 

しかしもう一つ重要なことは、新聞が大組織(「記者クラブ」を有する官公庁や団体、企業

)に損害をもたらす内部告発に関わらないことで、今後の情報提供を円満に続けようとの意図が働くからです。

 

さらに問題なのは、大組織の横暴を暴露しないだけでなく、同調あるいは傍観し続けていることです。

この場合、内部告発を企てた途端、被告人は些細な罪で起訴され、検察とマスコミから徹底的に名誉を傷つけられ、その告発の信憑性を奪われたことです。

これは大組織が内部告発者を潰す常套手段です。

よく使われる例に、告発者の異常な性癖や不倫、使い込みなどの悪評流布、さらに家族や協力者への脅迫があります。

この手段を大組織は影響力と資金力を駆使して行うことが可能で、これは万国共通で連載いくつか紹介しました。

マスコミ(新聞も)が、悪意の有無は別にして、これに加担する結果になっているのです。

 

 

次回、弱者を追い詰める大組織とそれに同調し傍観する新聞の姿勢を追います。

 

種明し、A社は読売、B社は朝日です。

 

 

Categories: culture+society, <japanese language, Series: The society and the information | Tags: , , | Leave a comment

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