社会と情報 60: 戦った報道 17


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今回は、あまり意識されていない莫大な戦費調達による財政の問題を見ます。

明治維新から30年しか経っていない日本は莫大な戦費をどのように工面したのか?

これが後々まで尾を引くことになります。

 

 

はじめに

皆さんは、戦争が起きるのはどちらだと思いますか?

国が困窮したから、それとも豊富な軍資金があったから。

 

ヨーロッパは近代以降、戦費は王家の財産売却や商人からの借金、植民地から略奪した金銀で賄ったが、やがて将来の税収を担保に国債を発行するようになった。

こうして戦争は国債購入者(投資家)がいる限り、いつでも始められるようになった。

 

そうは言っても、やはり借金(国債発行)の苦労がつきまといました。

 

 

2財政指数

< 2.日本の財政指数推移 >

凡例: 濃い実線=毎年の政府債務/GDP。

 

おおまかな期間の色分け

黄色枠A: 軍事大国化。日清・日露戦争から第一次世界大戦まで。

緑色枠C: 好景気。第一次世界大戦中(1914~1917)。

灰色枠D: 悪化し続ける経済。第一次世界大戦以降、満州事変(1931年)まで。

赤色枠E: 軍部独裁。満州事変から太平洋戦争まで。

 

解説: 1929年の世界恐慌以降、政府は財政破綻へと突き進んだ。

この間、恐慌に加え軍事費が徐々に増加し、日中戦争(1937年~)で財政負担は突出した。

最後の年は、単年度でGDPの80%もの赤字を上乗せして戦争を行った。

 

 

戦費の調達はどうしたのか

日露戦争の2年間の戦費総額は18億円で、前年の政府歳入は2.6億円だった。

当時、重要な軍艦や兵器ほど海外から外貨で購入しなければならなかった。

もし軍が独走して戦端を開いたとして、武器や兵糧を送ることが出来なければ兵士は無駄死にします。

当然、日本にそのような資金はありませんでした。

 

この時、登場したのが高橋是清で、後に怒涛の日本経済を幾度も救うことになります。

国債(内債)は発行していたのですが、彼は初めての外債発行に挑みます。

苦労の末、なんと総額13億円もの外債発行に成功します。

これで大国相手との戦争が継続可能になりました。

 

 

しかし、ここから問題が始まります

信用のない日本は、金利5~9%ほどで莫大な借金をしなければならなかった。

当時、イギリスの国債金利は3%前後でした。

これでは毎年、金利支払いだけで1億円弱あり、歳入の数割が消えてしまい元金返却は困難です。

結局、莫大な税収が外債の返済に半永久的に充てられることになる。

 

もし日本軍が作戦で負けると海外の投資家は借り換えや新規購入を拒否するか、利上げを要求します、つまり連戦連勝が至上命令なのです(実際に起こった)。

 

さらに困難な問題は、外債に依存する限り、政府は海外の債権者に不利なインフレや円安を起こしてはならないのです。

だからと言って、インフレを抑える高金利政策は外債の金利高を招くので出来ません。

一方、景気刺激の為の通貨増発もインフレや円安を招くので不可能です。

しがって、世界は物価と為替の安定のために金本位制を採用したのです。(末尾で金本位制を説明)

しかしこれは袋小路に入ったようなものです。

 

 

ここで最大の問題は、納めた税金の大半が戦争と植民地、そして金利(海外投資家へ)に消えたことです。

いくらかは軍需産業(重化学工業)の育成と植民地からの収益に寄与することになった。

 

つまり、借金で戦争が可能になった反面、国民は重税に苦しみ、生活向上が困難だったと言えそうです。

 

 

3政府債務の内訳

< 3. 外債と内債の比率 >

 

解説: 第一次世界大戦中から外債を減らし内債に転換していった。

 

 

さらに深みへ

後に、この窮状から2回解放されることになります。

 

最初が第一次世界大戦(1914~1917)で、この時の貿易黒字を生かして政府は外債を内債に切り替え、さらに債務も急減させます。

これは育ちつつあったと重化学工業(軍需産業)が降って湧いた欧州からの特需を日本と米国だけが享受出来たからでした。

この神風のような偶然が、企業と政府の無節操な財務体質をはびこらせ、次の反動をより深刻なものにしました。

 

1927~31年、天才高橋蔵相は二つの大恐慌をインフレーション策と金本位制離脱で切り抜けます。

しかし残念なことに、これによって健全財政のタガが外れ、味を占めた軍部は際限のない通貨増発で暴走していくことになりました。

 

4累積債務

< 4. 国の累積債務/GDP >

解説: 1920年代の度重なる大震災と恐慌、さらに1930年代の軍事費増大で借金は幾何級数的に増大していった。

 

挙句の果てに

1945年の敗戦で、都市と工場地帯は焦土と化し、さらに国の借金の帳消しにより、国民の金融資産は平均年収の約5倍(推測)が紙屑となった。

それまでの通貨膨張で敗戦時のインフレ率は500倍を越えていた。

 

もし負けていなくても、この膨大な債務返済と通貨膨張によるインフレは国民を続けて襲ったはずです。

この累積債務と通貨膨張は現代に通じる問題でもあります。

 

 

莫大な戦費調達に始まる無節操な財政運営が軍の暴挙を容易にし、如何に国民に災いしたかがわかります。

この説明は全体像を掴むことを目指していますので、正確な経済論議ではありません。

 

次回に続きます。

 

 

金本位制の説明

当時、欧米と日本は通貨安定の為に金本位制を重視したが、幾度も採用と停止を繰り返していました。

金本位制のメリットは各国が通貨増発を自由裁量で出来ないことと、貿易相手国も採用していることで物価や為替が安定することです。

 

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< 5. 物価と為替レートの推移 >

解説:日本は1897~1917年に金本位制を採用していたが、その後1930年まで停止した。

1930年にまた復帰したが、これが世界恐慌と重なったこともあり昭和恐慌を招き、1年後には停止せざるを得なかった。

つまり、グラフに見られるように金本位制は物価と為替の安定にはメリットはあるが、景気悪化には無力でした。

 

 

 

 

 

 

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