book+ film+drama

連載中 何か変ですよ 208: 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」を読んで 5


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*1

 

 

賃金低下と格差拡大が野放しにされている最大の理由を語ります。

放置すれば最悪の事態になる。

これで結びとします。

 

 

これまで著作の問題点を考察してきました。

  1. 対策に実効性がない。
  2. 真の原因を隠している。
  3. バブル崩壊を無視している。

 

これらは序の口に過ぎない、核心に迫ります。

 

 

  1. D) 自然のままが最良と信じ、手を加えることに抵抗がある。

 

例え話で対策に「池の自然サイクルに干渉しない」ことを挙げた

著書にも同様のドグマ「健全な労働市場に規制を加えない」が貫かれている。

特に最低賃金は市場を歪め、効果が無いとまで言い切る。

これは自由放任主義経済への心酔が言わせたものです。

暗黙の前提「自由競争こそが最善」があり、これによりコスト低下などの効用の最大化が起こるとしている。

 

この前提が間違っていることを身近な実例で見ます。

 

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  1. 最低賃金について

日本の最低賃金は先進国中ほぼ最低で、この規制が外されると間違いなく賃金相場は下がる(多くの外国人技能実習生の賃金はこれよりさらに低い)。

論者は最低賃金が失業率を上げると反論するだろうが、要は下位90%の国民の収入が下降し続ける現状から上昇させることの方が重要です(所得再分配で日本の酷い貧困率を改善出来る)。

逆に言えば低賃金だから求人が多いのであって、悪循環を繰り返すだけ(安い移民も)。

 

例えば、スウェーデンでは統一した最低賃金を設けていないが、職業毎の賃金相場がある。

ここでは移民労働者に対しても同一賃金を適用すると言う卓越した取り組みがなされている。

なぜなら産業側が移民を安く使おうとして賃金相場が下がり、また国内労働者の締め出しが起こるからです(多くの国でこうなっている)。

 

こうしてみると最低賃金(規制)は市場を歪めると言うより、明らかに社会の効用を高めている。

(規制緩和は必要です。多くは業界を守る規制が災いをもたらす。)

 

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  1. ゴーン会長の行為からわかること(法律違反とは別)

 

この事件は自由放任主義の欠点「優位者は自由市場を歪める」を示している。

 

自由放任主義者は「自由であれば人は創意に溢れて経済を活性化させ、その見返りに高給を得る。これが経済の好循環を生む」を信じる(富裕者に都合が良い)。

ところが経営トップが給与を自由勝手に決定出来てしまうと、この循環は断たれる。

彼は苦労して企業業績向上に努めるより、金額を書き換えれば済むのだから。

 

信奉者は「企業間競争や株主の圧力により、給与は妥当な水準になる」と反論する。

そうはならない、ほとんどの大企業の株は他のグループ会社によって持ち合いされており、結局同じ立場の経営者(数少ない超資産家)らによって運営されているから。

さらに労働組合が非力なので、彼らの身勝手な行動を牽制出来ない(組合組織率の高い北欧は可能)。

先導する米国はバブル崩壊時、救済された経営者すら平然と高給を掠め取った。

自由放任された市場は必ず機能不全に陥る。

 

これは日米欧で超富裕者の収入が急増する一方、90%の国民の賃金が延びないことと符合する。

悲しいことに日本だけは低下している。

 

 

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  1. 自由競争の限界を知る

 

信奉者は、「広大な原野に狐と兎が共に生息していても均衡が保たれ、兎が絶滅することはない」をイメージし、この世は弱肉強食でうまく均衡していると納得する。

しかし間違いは簡単にわかる。

 

もし、この両者を球場の大きさで囲むとどうなるだろうか?

数か月の内に先ず兎が、最後に全滅するだろう。

 

残念ながら現在の経済学は現実社会のメカニズムを充分把握出来ていない(おそらく優位者に都合の良いように解釈する輩が多数なのだろう)。

ましてノーベル賞と縁のない日本の経済学では、まったくお手上げです。

 

ありもしない完全な自由競争にすがって成果のない経済政策を擁護する愚は止めるべきです。

 

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  • 最後に

 

もっとも重要なことは、自由放任主義と金融重視の経済政策から早く脱却しないと、大多数の国民はさらに苦境に追い込まれると知るべきです。

1980年代以降の欧米、それを猛追する日本は正にこの呪縛に絡めとられ、抜き差しならない状況にあります。

 

一方、北欧は半世紀ほど前から新た道を模索し成功した。

しかし、グローバル化の波に呑まれつつある中で、北欧にも欧米の毒がまわり始めている。

 

北欧が健全な内に、新たな道に進むことが出来ることを願って終わります。

ご清聴ありがとうございました。

 

 

追記

今の世界経済の状況を示すグラフを載せます。

すべて借用です。

 

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上のグラフ: 1980年以降、世界の中央銀行が金融緩和の為に通貨発行(茶線)を加速せる度に、バブル崩壊を招いている。

特にここ10年は通貨発行量がGDP(青線)すら越えてしまった。

これは歴史的な未体験ゾーンに突入したことを示す(危険領域)。

 

下のグラフ: 世界は金融政策、主に通貨発行(青線)で景気の好転を目指して来た。

しかし、かつての経済成長や低失業率は起こらず、インフレ(赤と緑線)すら起こらない。

 

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「マーシャルのk」はマネーサプライ(M2)/GDPです。

日本のマネーサプライ(赤線)が目立つのは、二つの理由があります。

一つはアベノミクス以前、日銀は貨幣供給を抑えていたのだが、なにせGDP成長率が年を追うごとにゼロになっていたからです。

アベノミクス以後は、日銀黒田のバズーカ砲によるものです。

いつしか、インフレターゲット論の信奉者が望む、世界屈指の貨幣供給量を誇るようになった。

 

しかし、結果がまったく現れない(インフレ、経済成長)。

不思議なことに、あれほど成果を豪語していた学者先生らは悪びれることもない。

日本の経済学と経済学者はこの程度なのです。

 

 

 

 

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連載中 何か変ですよ 207: 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」を読んで 4


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前回に続き、論者が指摘する賃金が上がらない理由(弁明)を確認します。

その裏に真実が隠されています。    

 

 

  • 国際化で企業はコスト競争に晒され業績は悪化し、賃金アップの余裕がない。

厳しいコスト競争は円高に晒されていた輸出企業にとっては事実でした(逆に輸出業者や庶民には恩恵だった、でも過去のことになった)。

ところが、この低経済成長の20年間でも大手企業の業績は益々好調です。

それは内部留保や配当金の著しい増加や海外投資の増加で明白であり、逆に労働分配率の低下が弁明の矛盾を突いている。

これまた一切言及がない。

 

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< 2. 配当金総額の推移、法人企業統計年報より >

 

 

(キ) 企業の賃金評価表(成果主義)が賃金を抑制している。

論者は企業の賃金評価表が賃金全体を抑える仕組みになっていると指摘する。

これは事実だろう。

だが成果主義であろうが、かつての職務給であろうが、運用目的が賃金上昇を目指すのならどちらでも良い。

道具(評価表)の分析で終わるのではなく、その背景に切り込まないと何ら解決しない。

 

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< 3. 労働分配率の推移 >

 

 

著作は、これ以外にも賃金が上昇しない、または上昇していないように見える根拠(弁明)を数多く挙げている。

これらは一応もっともらしく聞こえるのだが、既に見てきたように上面を撫ぜているにすぎない。

 

全体に言えることは、論者達はより根深い原因に「見ざる聞かざる言わざる」に徹している。

それは論者たちが賃金低下や格差拡大に何ら関心を持っていないからなのか、むしろ私は論者たちが賃金低下を納得させる為に偽装していると疑いたくなる。

 

皆さんはどう感じますか?

 

三番目の問題を検証します。

 

 

  1. C) 繰り返されて来た池の汚染は二度と起こらないとしている。

 

例え話では、原因の一つに「過去に川上から汚水が流れ込んだことでフナが弱っている」を挙げ、これが再来することを触れませんでした。

実は、著作でも同じように再来するはずの不都合な真実から目をそらしている。

 

論者たちは就職氷河期に就職した人々が、その後も長きにわたり低賃金になっていることを明らかにしている。

しかし奇妙なことに論者の誰一人として、就職氷河期の再来や今後の景気後退についてまったく言及していない。

この経済学者らは就職氷河期を招いたのが二度のバブル崩壊(1990年、2008年)だと知らないのだろうか?

これは、著作内で度々出て来る「最近の傾向として正社員は穏やかながらも賃金上昇の恩恵を受け、また非正規割合の増加傾向が沈静化している」を伏線とし、楽観論を印象付ける為かもしれない。

 

 

 

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< 4. バブルで繰り返される日本の失業率の悪化 >

 

グラフの説明: オレンジ線はバブル崩壊開始を示し、その左側で失業率は急低下し、その後は急速に悪化し、その悪化は繰り返しながら深刻さを増している(世界で同時進行)。

 

 

私は論者らが賃金低下を引き起こす状況を知っていながら、知らない振りを決め込むことに幻滅する。

 

今、日米英中を筆頭に大国は史上最大の貨幣供給(金融緩和)を続けており、これまでのバブル史に照らせば、必ず数年以内に最大の金融危機が起こるはずです。

起きれば好転に見える経済指標は一転して、ここ百年間で最大最長の落ち込みになるだろう。

さらに、これらの国々はバブル崩壊の度に景気浮揚策を行い、莫大な累積赤字を積み上げて来た。

これが足かせとなり、やがて身動きが取れなくなるだろう(景気浮揚策の原資がない)。

こうなれば、失業率低下や賃金上昇、非正規割合の低下は夢の跡に過ぎなくなるだろう。

 

実は、この手のエコノミストは残念ながら大勢を占め、バブル崩壊まで迎合するか煽り続けることになる。

 

 

 

次回に続きます。

 

 

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連載中 何か変ですよ 206: 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」を読んで 3


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前回に続き、ダメ出しです。

より本質的で嘆かわしい実態に迫ります。

 

 

前回、例え話で、池のフナの減少に役立たない発言を取り上げました。

今回は、その二つ目の問題を検証します。

 

B)  池以外の真の原因を無視している。

 

例え話では、原因の一つに「フナを食うブラックバスが増加傾向にある」を挙げ、これ以上の追及をしなかったが、著作もまったく同様なのです。

著作では、この類の原因(弁明)を数多く指摘しているが、追求することなくこれらを既定事実としている。

 

普通に考えれば、なぜブラックバスが増えたのか、この増加防止策や駆除策が最重要課題であるはずです。

当然追及すべきは、効果が期待できる外部要因の排除、例えばブラックバスの放流規制などにあるはずです。

 

不思議なことに、論者たちは直近の労働市場の現象以外には一様に口を閉ざしている。

 

著作で取り上げられた目立つ論点(弁明)を見ます。

 

  • 正規・非正規で大きな賃金格差がある。

論者は全体の格差しか見ず、同一労働における賃金格差に関心がないようです。

 

  • 非正規雇用割合の増加。

非正規雇用の増加には様々な背景があるが、政府主導の「労働者派遣事業の規制緩和」が大きく追い風となっている。

しかし論者たちはまったく意に介していない。

さらに論者はここ一二年の伸び率の低下に注目し、ここ二三十年の著しい増加に終止符が打たれるようだと匂わす。

しかし、やがて訪れるバブル崩壊で何が起きるかは明白です(後に詳しく見ます)。

 

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< 2. 非正規比率の推移、社会実情データ図録より >

 

 

  • 先進国で最下位の男女の賃金格差。

論者はこれを自覚しているが、これ以上の分析や提言がまったくない。

あたかも政府や経済界、経済学界に忖度し、批判に口をつぐんでいるように思える。

 

  • 定年退職者の大量の再雇用(団塊世代)。

論者たちは、全体の雇用者数の増加と賃金低下は団塊世代の定年後の再就職と大幅な賃金低下が大きいと理解している。

しかし、彼らが注目するのは定年退職者が「安い給料で働くから」と「それまでの分不相応な高給」であって、「同一労働なのに大幅な減給で働かざるを得ない」ことを問題にする者はいない。

 

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< 3. 労働生産性の推移、日本生産性本部より >

 

  • 賃金アップには生産性上昇が不可欠。

奇妙なことに日本の生産性が上昇しているデータを誰も提示しない(グラフ3)。

よしんば生産性が低下したとしても、より生産性に影響を与える企業の設備投資額の長期減少について触れる者はこれまた皆無です。

単純に考えて、生産性の上昇が頭打ちなのは企業が国内投資を控え、余剰資産が海外投資(設備投資と金融投機)に向いているからです(グラフ4)。

(この状況は1世紀前の英国と同じで、日本の再生にはこの根本治療が必要であって、金融緩和ジャブジャブではバブルが巨大化し繰り返すだけです。)

 

論者は賃上げを阻害している企業や政府側の真因にはまったく触れていない。

彼らの追求は、ある所(弱者)にしか向かず、その一方で鬼門(強者)には向かないようです。

 

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< 4. 設備投資額と海外投資額の推移 >

 

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

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連載中 何か変ですよ 205: 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」を読んで 2


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この本の何がダメなのか。

これと言った賃金アップ策はなく、せいぜい「待てば海路の日和あり」を匂わすぐらい。

深刻なのは分析手法よりも学者たちの姿勢です。

 

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< 2.賃金の推移、2016年度IMFデーター、http://editor.fem.jp/blog/?p=1862 >

 

 

  • 何が深刻なのか?

例え話で説明します。

 

ある池でフナが年々減る傾向にあり、村人が困っていました。

そこで偉い学者に調査してもらうことなった。

 

その学者は

「フナを食うブラックバスが増加傾向にある」

「過去に川上から汚水が流れ込んだことでフナが弱っている」

「フナが高齢化し稚魚の誕生が少ない」

「岸辺の藻が・・・・、葦が・・・」

と指摘を続けました。

 

村人はそんなことは皆知っている、対策を教えてくれと懇願した。

 

学者は自信たっぷりに話し始め

「フナだけに餌を与えるようにしなさい」

「フナの稚魚を放流しても、ブラックバスを増やすだけで効果はない」

 

さらに付け加え

「フナは成長しており、池の水質は悪くないので、このまま待てば増えるはず」

と話を締めくくりました。

 

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< 3. 男女賃金格差、2012年度内閣府資料、https://frihet.exblog.jp/18011136/ >

 

 

  • この学者の説明のどこに問題があるのか?

 

四つに絞って考えます。

  1. 対策の実効性が疑わしい。
  2. 真の原因は池以外にあるのに、これを無視している。
  3. 繰り返されている汚染を想定外にしている。
  4. 自然のままが最良と信じ、手を加えることに抵抗がある。

 

これは著作全体に流れているポリシーでもある。

著作の代表的な論点を検証します。

 

 

  1. 対策の実効性が疑わしい。

例え話では「フナだけに餌を与えなさい」としたが、著作にも同様の怪しげな対策が吹聴されている。

それは「企業内の従業員教育を復活させろ」です。

 

「 最近の企業内教育の衰退は、従業員の士気と技能の低下を招いており、個人と企業の生産性を低下させている。

この為、企業は賃金アップが出来ない。

したがって企業はかってのように従業員教育を復活させるべきである。 」

 

一応もっともらしく聞こえるのだが矛盾がある。

 

著作では、企業内教育の衰退はコスト競争と非正規雇用の増加が主な原因とし、これ以上追求していない。

これに加え、米国流経営スタイルの普及とソ連(共産主義)崩壊によって、短期経営戦略、株主優先、金融優先、労働者権利軽視の風潮が蔓延している。

 

しかし論者はこれら原因への対策を語らず、またこの風潮を打破できるインセンティブを与えることなしに、ただ企業に再考を促すだけで満足している。

それなのに企業が一転して企業内教育を復活させると誰が信じるだろうか。

 

かつての日本はそうであったが、今後も職業教育を企業に頼ることが正しい方法かどうかは疑わしい。

例えば、北欧の職業教育は真逆であるが成功している。

 

それは三つの柱からなる(正確でないかもしれない)。

  • 労働者は転職時、無償の職業教育の機会を与えられ、休業期間の生活を保障される。
  • 国は教育を重視している。
    • 学費は無償で、高校以降、国内外の就労体験による休学が可能で、学生は社会を知り目標を持ってから勉学に励むことになる。
    • 外国語が必修で、デンマークの小学校では母国語以外に英語と、ドイツ語かフランス語を履修する。これは国際化に非常に有利。
  • 全国的な職業別組合毎に賃金が定まっており、これが労働者にキャリアアップの為に転職を繰り返すことを可能にしている。
    • 日本での転職は、同一労働同一賃金が無視されているために賃金が大幅に低下してしまう(他の理由もあるが)。

 

企業内教育一つとっても、論者たちの姿勢に疑いを持ってしまう。

私のような素人から見ても、この著作はまともな分析や提言をせずに、狭い学問領域内の発表会で満足している。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

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連載中 何か変ですよ 204: 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」を読んで 1


 

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< 1.経済図書ベストワン >

 

 

この本を読んで期待は裏切られ、益々日本の将来に不安を抱いた。

これだけの学者が集い論考しているが、まったく不毛です。

日本はガラパゴス化し、大勢や大国に迎合するだけに成り下がったかのようです。

 

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< 2. この本が解明しようとした課題 >

 

*著書「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」について

2017年刊、玄田有史編、慶応義塾大学出版会。

22名の労働経済学者やエコノミストが多方面から表題の課題を現状分析している。

この本は、日本経済新聞にて「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」の第1位に選ばれている。

 

それだけに私は期待して読んだ。

しかし1/3ほど読むと、期待は失望に変わった。

我慢して読み進めば進むほど賃金問題どころではなく、日本の経済学の覇気のなさを知らされた。

これではお茶を濁す経済政策しか出ず、日本経済の将来に期待できないだろう。

 

この本は私のような経済の素人にも読める体裁をとっている。

しかし、使用されている労働経済用語から言って初心者に懇切丁寧な説明を目指したものではなく、啓蒙書の類ではない。

これはエコノミスト向けに書かれたもので安易な推測や断定を排除し、分析に重きを置いた本だろう。

それはそれで良いのだが、今の賃金問題に疑問を持つ国民からすると、すこぶる難がある。

 

それは、「労働需給」「行動」「制度」「規制」「正規雇用」「能力開発」「年齢」などの様々な論点から論者が個々に分析していることにある。

これが矛盾した分析結果を含め羅列するだけになり、全体としてまとまりのない方向性の乏しいものにしている。

よしんば理解が進んだ読者でさえ、多岐にわたる要因が今の賃金問題を招いていると納得するだけで、多くは現状を追認するだけに終わるだろう。

あわよくば賃金が今後上昇するだろうと期待する向きもあるかもしれない。

 

一方で、多方面からの問題提起は素人が見逃しがちな労働経済に関わる様々な要因を気づかせてくれる良さもある。

以下のものが目につきました。

 

  • 高齢者の定年退職後の再雇用は、彼らの大幅な賃金低下によって賃金全体を低下せ、労働需給を緩和させてしまう(数人の論者はむしろ高齢者の高賃金を問題にしている節がある)。

 

  • 繰り返されるバブル崩壊は、その都度に生じる就職氷河期に就労した者が生涯にわたり低賃金で苦しむことになり、また経営サイドもこの期に賃金カットを出来なかった反動として好景気になっても賃金アップに慎重で有り続けることになる。

 

  • 介護職の賃金が国の規制によって低く抑えられている為に、対人サービス全体の賃金を抑制することになる(一方、バス会社の規制緩和が賃金上昇を生じなかった事例もある)。

 

他にも様々な知識が挙げられているが、上記の3点だけの指摘にすら、論者が見落としている不都合な真実が隠れている(敢えて指摘しないのかもしれないが)。

 

この本には大きな弱点が潜んでおり、私にはそれが日本経済の将来を救いがたいものにするように思える。

どれだけの人がこの点に気づいているのだろうか?

多くの人が気づいてくれれば日本の将来は救われると思えるのだが。

 

 

次回に続きます。

 

 

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連載中 何か変ですよ 203: 暴露本「炎と怒り」の紹介 4: トランプタワー 2


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今回で、この暴露本の紹介を終わります。

初期の大統領首席補佐官を巡るドタバタを紹介します。

 

 

 

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< 2.トランプ政権を去った人々 >

 

多くの人々-マチュア政治家、経済界の成功者、人気のポピュリストがホワイトハウスを賑わしては、早々と去って行った。

去った多くは政権への爆弾発言(トランプを無能呼ばわり)や暴露、非難を繰り返している。

この混乱は今も続いている。

 

 

* 初期の大統領首席補佐官を巡るドタバタ

 

大統領首席補佐官とは何か?

彼はホワイトハウスとその行政部門、軍人130万人を含む約400万人のトップに立ち、この組織の運営を大統領から任されることになる。

特にトランプ政権では。

 

しかしトランプの直情径行、専門家嫌い、家族重視、政治への無知が災いして、大統領首席補佐官選びは脱線を繰り返しながら、最後には政権内で差し障りのない人物が選ばれた。

 

そして初代の大統領首席補佐官プリーバスは半年で更迭された。

 

 

 

 

 

 

 

 

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< 3. 相関図 >

 

 

* 「炎と怒り」の読後に思うこと

 

他国のことではあるが、怒りよりも深い絶望感にとらわれた。

それは今、日本も含めて欧米先進国が米国と同様の凋落の道を進んでいると思うからです。

 

少なくとも米国は1970年代初期までは、ホワイトハウスの暴走-ベトナム戦争やウォーターゲート事件に対して、マスコミは良識を持って立ち向かい、そして国民も遅ればせながら正しい道へと方向転換させることが出来た。

 

しかし、欧米先進国は80年代以降の経済金融政策の大転換による格差拡大、さらに戦後から始まっていた後進国での紛争拡大による大量の難民発生と移民の受け入れが相俟って、欧米社会は不満のるつぼと化した。

 

このことが特に米国では、度重なる規制緩和によって報道の自由度を失わさせ、その上、今のインターネット社会ではヘイト情報が世論を左右するようになった。

 

こうして容易にポピュリズム、今は右翼の煽情によって、不満を抱く人々は否定と排除の論理で強く結びつき、より強固になりつつある。

 

このことは全ての金融資本主義国家、欧米先進国を蝕みつつある。

北欧すら逃げることは出来ないだろう、災厄の到来は遅れるだろうが。

それは今の日本にも当てはまる。

 

欧米から離れた島国日本は、その影響が軽微であったが、アベノミクスによって格差拡大の現況である金融資本主義へと大きく舵を切ったことになる。

西欧の優良国であったドイツも経済格差では同様に蝕まれ始めている。

 

各国で進んでいる国民の政治不信、右翼ポピュリズム政党の台頭、格差拡大はすべて軌を一にする。

 

それはここ半世紀にわたる戦争と経済がほぼ規制されず放置され、悪弊が拡大し蔓延してきたからです。

 

このことが、今の惨めで馬鹿げたトランプ政権を生んでしまったのです。

 

私には、この先行き世界は着くところまで行ってしまうような気がする。

 

歴史にその例はいくらでもあった。

ドイツ国民が最初からヒトラーにドイツと世界の壊滅を託したのではない。

始め一部の熱烈な国民がヒトラーの人柄、煽情、政策に共感し、期待していた。

そのうち騙されてか、無謀な計画なゆえに行きがかり上、破滅の道を進むことになった。

 

いつものことだが、日本のファシズム、大陸進出と同様で、マスコミが沈黙し権力の集中が進み、後戻りが不可能になった。

 

まさに米国、日本、ドイツなでかつての優良な国で政治の劣化が起こっている。

その一つの現れがトランプ現象です。

 

 

これで終わります。

 

 

 

 

 

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連載中 何か変ですよ 201: 暴露本「炎と怒り」の紹介 2: 大統領選


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今回は、「炎と怒り」の「大統領選当日」p28-p43を紹介します。

この章ではトランプと陣営の不可解な行動、大統領選出馬の理由が暴露されています。

種明かしを聞いてしまえば、彼らの破れかぶれの言動が理解できます。

 

 

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< 2. 醜聞の末路、フェイクニュースの虚実 >

 

上の写真: トランプ米大統領の元個人弁護士、マイケル・コーエン氏。

8月21日、トランプ氏の愛人だったとされる女性への口止め料を支払ったことに関連し、選挙資金法違反などの罪を認めた。

 

下の写真: 右端が米大統領選でトランプの選挙対策本部長を2カ月間務めたマナフォート被告。

彼も8月21日、脱税や銀行詐欺容疑で有罪判決を受けた。

 

 

 

* 大統領選当日のトランプ陣営の憂鬱

 

トランプは大方の予想を次々に覆し、選挙選を勝ち抜き、遂には勝利した。

 

なぜトランプは勝てたのだろうか?

右翼や保守のニュースサイトが全面的にトランプを支援したからか。

格差拡大で不満を募らせた中間層(白人労働者)が、右翼が煽る「分断された社会」(ヘイトスピーチ)に乗せられ、単純明快な排除論に解決を求めたからか。

はたまた保守を自認する人々が共和党の隆盛を願ってか。

 

かくも激しい熱情に支えられた選挙選だったが、当のトランプ陣営は激しく敵を罵るわりには冷めていた感があった。

 

トランプには数多くのセックススキャンダル―ロシアでの放尿プレイ、「スターなら女性に何でもできる」のビデオ公表、数多くの女性からのセクハラ訴え、がありながら結局は乗り越えて来た。

 

またトランプとクシュナーは親子代々の不動産業で数々の醜聞と悪行を重ねており、叩けば埃が出る素性で、とても大統領選を清廉潔白で逃げ切ることが出来なかったはずだが、これも切り抜けた。

 

しかも彼は選挙戦への自己資金注入を抑え、納付税の公表も逃げ切った。

 

正に、これは捨て身の戦法!

絶対に勝利するための立候補と言うよりも、僅差で負けたと言う名誉を得ることこそ選挙戦の価値があったのだろう。

 

したがって、どうせ負けるなら後々の被害(出費、情報開示)を抑えるべきだと。

 

 

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< 3. 相関図 >

 

次回に続きます。

 

 

 

 

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連載中 何か変ですよ 200: 暴露本「炎と怒り」の紹介 1: はじめに


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これからトランプ政権の内幕、ドタバタを暴いたベストセラー(米国で140万部)を紹介します。

この本を読んでいると、まるでホワイトハウス内を自由に覗いているような錯覚に陥ります。

実に面白いのですが、一方で今世界が民主主義崩壊の危機に晒されている恐怖を味わうことになるでしょう。

 

 

 

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* はじめに

 

私はこれまで米国政治の内幕本としては、元財務長官ポール・オニール、ベトナム戦争に関わった元国防長官マクナマラや元国防総省局員エルズバーグ、元CIA局員スノーデンのものを読みました。

これらは米政府の腐敗、暴挙、衰退、意思決定のお粗末さを見事に描いていました。

 

しかし、「炎と怒り」はこれらと大きく異なるものです。

 

一つには、もの凄く臨場感があります。

 

ホワイトハウスの中枢とそれに関わるエスタブリッシュメントの群像劇を舞台の上で見ているような気持ちになります。

繰り返し名前が出てくる人物は50名を超えるでしょうか。

残念ながら、これが読みづらくしているのですが。

 

 

さらに臨場感を盛り上げているのは、200名を超えるインタビューを基に著者が主要人物の気持ちを代弁して直接間接に状況を語らせていることです。

これは、この本の信憑性を貶めているとも言えるのですが、一方でホワイトハウス内のパワーバランスや混乱を理解するのを助けてくれます。

 

二つには、絶望の書だと言うことです。

 

既述の本も、読めば怒りと失望感に苛まれるのですが、「炎と怒り」は別格です。

前者は一応、賢者たるホワイトハウスの中枢達(大統領と周辺)の集団による暴走か判断ミス、またはそれまでの惰性から抜け出せなかった悲劇とも解釈出来ました。

それは一時の混乱や徐々に進む悪化なのだから、次の機会には脱却が可能だと希望を持つことも微かに可能でした。

 

しかし、ドナルド・トランプを巡るドタバタ劇は深刻さが格段に違います。

 

一言で云えば、無知な一人の悪戯小僧が国家の中枢で好き勝手に振る舞い、さらに彼を利用し、操り続けたい人々が、彼の愚かさをひた隠しにし、祀り上げ続けていることです。

操ろうとする人々とは、過激思想家(極右)や政治素人の親族、エスタブリッシュメント(大富豪、メディア、共和党など)です。

 

不思議なことに、選挙ではエスタブリッシュメントの排除を望む声が強かったはずです。

極右の過激な言説(分断と敵視)が国民の不満を煽り、共感を呼ぶことにより予想外の大成果を得て誕生した政権は結局、政治の破綻を招くことになりそうです。

これと似た状況(ファシズム)はかつて世界、日本でもありました。

 

加えて恐ろしいことは、この惨事は米国に留まらないことです。

西欧のポピュリズム政党の台頭に始まり、ロシアや中国の独裁化、日本やトルコの右傾化は、今や世界の流れです。

トランプ大統領誕生の最大の功労者バノンはこれを時機到来と見なし、世界に極右の結束を促している。

 

これが私の感想です。

 

 

 

* この連載で紹介したいこと

 

この本は素晴らしいのですが、大きな欠点があります。

それは登場人物が多すぎることです。

 

それで私は、皆様がこの本を読むのに役立つよう、登場人物の人物相関図を作るつもりです。

章ごとに作ることを予定しています。

 

 

* 今回の紹介

 

「プロローグ— エイルズとバノン」p15~p27の要約です。

 

二人の会話を通じて、トランプの大統領就任間際の内情が見えて来ます。

この会話からトランプに近い右翼の言論を牽引する二人がトランプや政策をどう見ているかがわかります。

 

 

 

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< 3. 相関図 >

 

 

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< 4. 図に使用している矢印 >

 

 

次回に続きます。

 

 

 

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北欧3ヵ国を訪ねて 13: 戦争と平和


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< 1. デンマーク軍のコペンハーゲン凱旋 >

 

 

今日は、北欧三ヵ国の戦争と平和を取り上げます。

北欧は長い戦いの末に先駆的な外交政策を行い、自国だけでなく世界の平和に貢献している。

 

 

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< 2. 北欧の戦争 >

 

この地図は北欧三ヵ国(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク)が如何に周辺諸国と戦争をして来たかを示す。

この地図はヴァイキング時代後の国家間の戦争を示している。

 

一方向の矢印は、一方的な戦争または侵攻を示し、黒は植民地化を示している。

周辺国以外の北欧の植民地は除いています。

両方向の矢印は通常の国家間の戦争です。

 

北欧の中ではスウェーデンとデンマークが、かって周辺諸国を併合し帝国と呼ばれた時代があった。

デンマークはユラン半島で大陸と陸続きなので、特に国境を接しているドイツと領土争いを長らく繰り返した。

写真1はその戦いの一つシュレースヴィヒ=ホルシュタイン戦争(19世紀)の一幕です。

 

 

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< 3. ストックホルムにて >

 

上の写真: ユールゴーデン島のヴァーサ博物館のヴァーサ号。

これは17世紀のスウェーデンの戦艦で、初航海で沈没したのを引き上げ復元したものです。

64門の大砲を有する堂々とした全長69mの戦艦が蘇っています。

 

この戦艦はスウェーデンによるバルト帝国の最盛期を象徴している。

スウェーデンは16世紀初頭よりバルト海周辺諸国を併合し、1618年に始まった30年戦争(最大の宗教戦争)にプロテスタント国として参戦した。

この戦艦はバルト海に面したドイツの港の攻城戦に投入される為に、1628年に重装備を重ねて出港したが沈没した。

30年戦争が終わった時、スウェーデンは北ドイツにも領土を得ていた。

 

下の写真: ガムラスタン(旧市街)の大広場。

バルト帝国を築いたヴァーサ王朝はこの大広場で起きた事件を契機に誕生したと言える。

 

1520年、この広場で「ストックホルムの血浴」と呼ばれる虐殺が起きた。

当時、北欧三ヵ国はデンマーク王家が支配するカルマル同盟を結んでいたが、スウェーデン国内では独立を目指す内戦が続いていた。

反乱軍を制圧したデンマーク王は晩餐会を開くと偽り、スウェーデンの有力者を招き、この広場で多数処刑した。

 

この裏切りに怒ったスウェーデンの人々は、この事件で父を虐殺されたヴァーサを指導者にして独立戦争を戦い抜き、3年後に独立を得た。

こうしてヴァーサ王朝が誕生した。

 

 

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< 4. オスロにて >

 

上の写真: ノルウェー抵抗運動博物館の外観。

小さな建物だが、地下にも展示場が広がっている。

 

建物に掲げられている肖像画はホーコン7世で、彼は第二次世界大戦でドイツの支配に抵抗したノルウェー王です。

これを描いた映画「ヒトラーに屈しなかった国王」が最近日本で上映された。

この博物館は当時の国民の抵抗運動を展示している。

 

 

下の写真: 博物館の展示。

 

 

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< 5. オスロ湾にて >

 

上の写真: 写真の左側の島がオスロ湾で最も狭いドレーバク水道にあるオスカシボルグ要塞Oscarsborg Fortressです。

フェリーからオスロ側(北側)を見ている。

 

実はこの要塞からの砲撃が「ヒトラーに屈しなかった国王」のストーリーを作ったと言える。

この要塞を守る指揮官がオスロ湾に侵入するドイツ艦隊に独断で砲撃し、その旗艦を撃沈した。

私は映画を見て、これが及び腰の政府や象徴的な存在であった国王親子に抵抗する機会を与えたように思った。

ノルウェー各地から攻め込んだドイツ軍は圧倒的に優勢だったが、王家と政府の逃避行、ホーコン7世の降伏拒否、そして英国への亡命によって、国民はナチスの支配を拒否した。

こうしてノルウェーのレジスタンスは終戦まで続いた。

 

下の写真: 映画「ヒトラーに屈しなかった国王」。

タイトルはノルウェー語で、「王のノー」です。

 

この映画はスぺタクルではなく、主に国王の葛藤を描き、銀幕から王家の役割と大国に抗う小国の悲哀がひしひしと伝わって来ました。

 

 

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< 6. クロンボ―城の地下 >

 

上の写真: デンマークのシェラン島北東部、幅7kmのエーレスンド海峡に睨みを利かすように建っているクロンボ―城。

 

下の写真: このクロンボ―城の地下に眠るホルガー・ダンスク像。

彼はフランク王国のカール大帝(8世紀)に歯向かった中世ヨーロッパの伝説上の英雄です。

やがてデンマークで、洞穴の眠れる英雄が国の有事に復活するというホルガー・ダンスク伝説が出現した。

 

第二次世界大戦中、デンマークもナチス・ドイツに占領されたが、この時のデンマークのレジスタンスは「ホルガー・ダンスク」と名乗った。

 

 

 

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< 7. ロスキレ湾とヴァイキング >

 

上の写真: この地はヴァイキング時代の拠点の一つでした。

ここにヴァイキング船博物館があります。

 

下の写真: これらは沈没していた5隻のヴァイキング船の内の2隻で、修復され復元されたものです。

 

オスロ湾は奥深く入り込んでいて水深が浅いのですが、幾筋かの細くて深くなっている水道があります。

11世紀、5隻の船は敵の襲撃を防ぐために、この水道の一つを塞ぐように沈められていた。

このロスキレは11世紀から15世紀半ばまでデンマーク王国の首都でした。

 

ヴァイキング時代は11世紀半ばで終焉するのですが、この頃には侵略する側から攻められる側にもなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

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< 8. コペンハーゲン港の要塞 >

 

上の写真: カステレット要塞。

この写真は運河クルーズ船から撮影したもので、右側に人形の像が見える。

 

この要塞は上空から見ると典型的な星型要塞で、17世紀半ばに造られた。

しかしその雄姿を忍ばせる面影はない。

コペンハーゲン港は幾度も大艦隊による大規模な破壊に遭い、古い姿を留めることができなかった。

 

 

下の写真: Trekroner Fort。

左側に見えるのがコペンハーゲン港の入り口にある島の要塞で、18世紀初頭に造られた。

 

ナポレオンが覇権を拡大する中で、中立を望んでいたデンマークではあったが、その圧力に負けてフランス側に付くと、フランスに敵対した英国は大艦隊をもってコペンハーゲンに来襲した。

1801年、デンマークとノルウエーの艦隊、そしてTrekroner Fortなどが英国艦隊を迎え撃ったが、あえなく敗北を喫した。

 

 

 

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< 9. フレデリクスボー城と絵 >

 

上の写真: フレデリクスボー城の中庭。

この城は16世紀中頃より19世紀中頃までデンマーク王の居城だった。

またこの期間はスウェーデンがカルマル同盟から独立していたが、ノルウェーはデンマークに統治され続けた時代にちょうど重なる。

この地はコペンハーゲンよりはオスロに近い場所と言える。

 

下の写真: フレデリクスボー城に掲げられていた絵。

額に「・・コペンハーゲン・・1659年2月10-11日」と銘記されていた。

この前年からスウェーデン軍は凍結した海峡を渡りコペンハーゲン港を攻略しており(氷上侵攻)、デンマークはこの敗北によってスウェーデン南部などの領土を失った。

 

スウェーデンが勢力を拡大し続ける中で、17世紀中頃からデンマークは小国へと没落していくことになった。

しかし、スウェーデン(バルト帝国と同盟軍)もヨーロッパを二分した大北方戦争(1700-1721年)でロシア帝国と同盟軍に破れ、没落することになった。

 

 

 

 

 

 

 

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< 10. ノルウエーの平和貢献 >

 

上の写真: オスロ湾に面して建つノーベル平和センター。

ノーベル平和賞と平和について展示。

 

ノーベル賞の創設者ノーベルはスウェーデンとノルウェー両国の和解と平和を祈念して「平和賞」の授与だけはノルウェーで行うことにした。

これはなぜなのか?

 

北欧三ヵ国の中でもっとも人口の少ないノルウェーは1450年からの長きに渡りデンマーク、次いでスウェーデンに支配され続けて来た。

やっと1905年、ノルウェーはデンマーク王家から王子を迎え、立憲君主制を樹立し、平和裏に独立を行った。

この王子が「ヒトラーに屈しなかった国王」のホーコン7世になった。

 

映画によると、彼がヒトラーに降伏しないと返答したのは、自分が国民に選ばれた象徴(王)に過ぎず、勝手に重大な決断をすべきでないと考えたからのようでした。

この王の自覚と身命を賭した行動は、国民との間に絶大な相互信頼があったからでしょう。

この王家の姿は、北欧各国に通じるものです。

 

 

下の写真:  陸軍博物館の横にあるノルウエー退役軍人協会の建物。

その前に止めてあるカーゴの絵は、ノルウエー軍のアフガンでの活動を示しているようです。

 

 

* あとがき

 

現在、北欧各国は中立政策を維持し、一方で紛争国の仲介外交と国連の平和維持軍派遣などで世界平和に貢献している。

 

北欧の中立政策は小国ゆえとヨーロッパの北辺にあることだけで成し得たのではない。

多くの大国に囲まれ、時には圧力に屈し、軍備を保有しながらも周辺国からの信頼を重視する外交は特筆に値する。

 

また北欧、特にノルウエーとスウェーデンは世界平和に貢献してきた。

 

両国は多くの内戦激しい地域、コソボやソマリア、アフガンなどに平和維持軍を派遣して来た。

スウェーデンの元外交官ハマーショルドは2代目国連事務総長を務め、コンゴ動乱の調停に活躍したが、その途上、原因不明の墜落事故で死去した。

またスウェーデンのストックホルム国際平和研究所はこの分野では有名です。

 

ノルウエーは中東和平で大きな足跡を残している。

敵対するイスラエルとPLOの仲立ちを行い1993年、オスロ合意を取り付けた。

しかし調印したイスラエル首相が同国の和平反対派によって暗殺され、画期的であったが結局、進展することはなかった。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

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何か変ですよ! 109: 未来の壁 7


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前回、海外への無関心と無知が偏狭を生むことを見ました。

今回は歴史、特に海外の歴史を理解しない弊害を見ます。

 

 

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はじめに

 

つくづく歴史を見ない人が多いことに溜息します。

 

私の周囲にはたくさん本を読む人がいる。

彼らの読書の嗜好は千差万別ですが、概ね日本の歴史に関心を持っておられます。

それでも多くは歴史ミステリーの謎解き(邪馬台国、聖徳太子など)が中心です。

 

そして彼らは自論を篤く語るか、多くは本の一節を読み上げることが多い。

彼らは自論が如何に見栄えするかに関心があるようです。

 

歴史を語る彼らに共通することは、自論に反する本は読まない、愛読する本に疑問を持たない、また本の引用が多く、自分なりの言葉で語ることが少ないなどです。

自論に関して知識は深いが、他の日本史に関心が薄く、まして中国を除く世界史にほとんど関心が無い。

 

これは以下のように解釈できる。

 

さして真偽の確認をせず一度自論が固まると、その後はまったく疑いを持たなくなる。

多くは好みの論調(左派右派)の受け売りで、ここでも村意識(帰属集団で安心を求める)が影響している。

 

また歴史のメカニズム(因果関係)に興味がなく、その知見を社会の理解に生かそうとしない。

例えば世界の古代都市の誕生パターン(メカニズム)を理解することは邪馬台国誕生の検証に役立ちます。

 

読書量の多い人でさえこれですから、本を読まない人に歴史を理解することなど期待できない。

学校では歴史の年号を記憶させても、そのメカニズムを識るように教育していない(かつて植民地では国民の覚醒を妨げる為、歴史や政治教育を行わなかった)。

 

狭い範囲での私の見立てですが、これが現状です。

 

このような状況で、前回取り上げた日本会議(保守派)の日本を美化する説は、多くの人を魅了することになる。

 

この歴史、特に世界の歴史を理解しないことが、未来への大きな第5の壁になる。

 

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* 私と歴史

 

もともと私は歴史が嫌いでした。

なぜ嫌いかと言えば、暗記が弱かったからです。

私は自然科学が好きで技術者として働いて来ました。

 

しかし、自然科学だけでは、疑問や問題の解決に役立たないことを痛感するようなった。

なぜ人は戦争を始め残虐になるのか、平和をどうして構築すべきか、なぜ国は衰退するのか、などの答えを私は探し続けている。

結局、日本史、中国史、世界史、人類史、進化論に広がり、美術史、法制史、医術史、宗教史、戦争史などにも手を広げました。

 

海外旅行に行くようになると、これまでの疑問―社会問題、美術、戦争と平和、宗教など、を解くために各国史を調べるようになりました。

これを繰り返して行く内に、少しづつ視界が晴れて行くことを実感するようになった。

 

 

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* なぜ歴史への理解が必要なのでしょうか?

 

一番は社会で起きている現象を正しく理解する為です。

 

技術者はトラブルを解決する為に、ある仮説を立て、これを実験で確認することが出来ます。

実は、これはこれでかなり困難なのですが、それでも対策を実施する前に正否を確認できます。

 

しかし、現実の社会問題ではそうは行かない。

一つは、自分で直接、現地調査もありうるでしょうが、ほとんど無理です。

結局は、新聞や論説、書籍などで調査することになる。

 

ここで問題は、相反する論説や報道の取捨選択です。

 

例えば南京虐殺事件に関して、日本の左派右派の肯定否定論が完全に対立しています(私は両論を計15冊ほど読んだ)。

こうなると自信を持ってどちらが正しいかを言い切ることは難しい。

 

 

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< 5.南京城、赤線に注視! >

 

 

そこで中国側の資料(翻訳)に目を通してみる。

眉唾が多いかもしれないが、注意して読むと膨大な死体がなぜ消えたが分かってくる(ヒント、南京城の直ぐ横の長江の流量は1秒間に2万トン)。

 

また世界の虐殺史を調べると、人は置かれた境遇によって、平常時には想像出来ないような惨いことを犯すことがわかる(「殺人百科」など)。

 

アウシュヴィッツ収容所所長アイヒマンの裁判を傍聴したハンナ・アーレントは彼を極悪人ではなく普通の小心者と評した。

後に、このことをスタンフォード監獄実験(1971年)が実証した。

これは、一般の正常な人を被験者にした心理学実験で、誰でも凶暴になることが確認された(危険な為、途中で中止された)。

 

つまり日本人は善良な民族だから、捏造と決めつけるのは短慮に過ぎる。

 

むしろ世界の戦史から見れば、他国に深く侵攻し欠乏する兵站に喘ぐ日本軍、さらには村意識(旅の恥はかき捨て)が強い日本兵の心境を考えると、何が起きるかは容易に予想がつく。

その例はアフリカ植民地での英仏兵、大戦時のドイツ兵やソ連兵、ベトナム戦争での米兵などに見られる。

 

さらに日本の文化(村意識)が、この事件の真相解明を困難にしている。

日本軍は証拠を残さない、また帰還兵は仲間を裏切る真実の吐露を行わない。

(佐川長官の在職時の日程記録はすべて破棄していた、注釈1)

当時、報道は完全に軍がコントロールし、まして一般人が直接現地を知ることは不可能でした。

 

 

結局、私達が平和を構築する為に、隣国との相互理解を妨げている事件や問題を理解するには、日本だけの狭く偏向した報道や論説だけで判断出来ないのです。

 

間接的ではあるが、世界史から人間の行動や社会のメカニズムを理解し、出来るだけ客観的に真実に近づかなればならいのです。

 

これが歴史、世界史を理解することの重要性です。

 

 

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* 歴史を理解するために

 

以前、私のブログ記事を批難した方が、その根拠に歴史は繰り返さないので歴史的説明は無意味だと指摘されたことがありました。

この論調は、ウヨの方に多いように見受けられるが、ある意味、ポイントを突いています。

 

この指摘を簡単に反証しておきます。

 

前述の南京事件の解説で読者は気づかれたかもしれないが、日本人が中国で起こした事に対して、私はポーランドやアメリカ、それこそ世界各地でドイツ人、米兵などあらゆる民族が関わった事件を援用して説明して来ました。

それこそ起きた時代も違います。

 

ベストセラーになった「銃・病原菌・鉄」「文明の衝突」「21世紀の資本」に始まり、各種スポーツの解説書に至るまで、世界各地、あらゆる民族と時代を扱っています。

私達読者は、そこに普遍性を当然のように見出して理解しています。

つまりウヨの方が言われることは、普遍性を非常に厳密に定義しているか、単に都合の悪い歴史を無視したいだけかもしれません。

 

 

* 大事なこと

 

繰り返しになりますが、日本人はどうしても狭量になり易い。

これを自覚し、自ら世界に向かって視野を広げることで、皆さんは日本の衰退に気付き、かつ対策を諸外国から学ぶことが出来ます。

さらに平和を構築する方法や近隣諸国との理解も得られるでしょう。

 

最後に、朗報を一つ。

文化心理学で東アジア人(中国、韓国、日本人)は西欧人に比べ、木より森を見る傾向があることがわかっています。

これは被験者に魚が泳ぐ水槽を見せた後で何を見たかを聞く実験です。

この時、西欧人は一番大きな魚の特徴を主に語り、東アジア人は背景の水草や小さな魚等を含めた全体を語るそうです。

つまり東アジア人は空間的には全体的な捉え方をするのです。

 

 

次回は、今を理解するヒントを歴史から紹介します。

 

 

 

注釈1

もし在職時の全日程記録があれば佐川の行動や面会の記録から、森友問題の解決に役立っと考えたNPO法人が情報公開請求を行った。

しかし国税庁からの回答は1日分の簡単な日程1枚で他は廃却したでした。

現代ビジネスの4月5日の記事。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55100

 

 

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デマ、偏見、盲点 21: 抑止力と規制緩和に共通する危さ


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今、二つの危機、核戦争と経済破綻が迫っています。

しかし、この対処方法に真逆の説があり折り合いがつかない。

このままだと遂には破滅に至る可能性がある。

人々は漫然とかつて歩んだ道を進むのだろうか?

 

 

*抑止力と規制緩和に共通するもの

 

この2月2日には米国は核軍縮から小型核使用に方向を転じた。

また2月3日にはNYダウが1日で2.5%下落した。

これがリーマンショックを上回るバブル崩壊の始まりかどうかはまだ定かではないが、可能性は高い。

 

ある人々は、この二つは世界を破滅に導くと警鐘を鳴らす。

この破滅とは、核戦争と大恐慌(著しい経済格差と国家債務不履行も含む)です。

 

しかし一方で、これこそが破滅を防ぐ最善の策だと唱える人々がいる。

戦争を防止するには小型核、恐慌を回避するには景気拡大の為の規制緩和こそが絶対必要だと言うのです。

 

この二つの危機とその対処方法は一見次元が異なるように見える。

しかし、この二つの対処方法には不思議な共通点があります。

小型核は抑止力、規制緩和は自由競争を前提にしているのですが、実は共に相手(敵国や競合者)の善意を信じない一方で理性に期待しているのです。

 

抑止力は、敵意剥き出しの国がこちらの軍備力を的確に把握したうえで抑制出来る理性を有する場合のみ成立するのです(太平洋戦争時の日本軍が反証の好例)。

規制緩和は、個々の市場参加者が利己的に行動しても、市場全体としては最適な方向に落ち着くと信じているのです。

何か不思議な信念に基づいた論理なのです。

 

実際の社会は、悪意も善意も、感情的にも論理的にも動いているのですが。

 

さらにもう一つ、共通していることがあります。

 

例えば「抑止力は無効だ!」「自由競争は不完全で弊害が多い!」と否定したらどうでしょうか?

実は困って激怒する人々がいるのです。

前者では軍需産業、後者では金融業界や富裕層で、大きな実害を被るからです。

逆に否定して利を得る人々は特に見当たりません。

 

具体的に抑止力と規制緩和の危さについてみていきます。

 

 

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*抑止力の罠

 

兵器による抑止力は有効かと問われれば、「YES」ですが条件付です。

 

先ず、抑止力が有効な場面は身近な事から類推できるでしょう。

しかし抑止力が効かなくなる場合を理解することは少し難いでしょう。

 

単純に二つのケースがあります。

競合国(敵対国)が共に軍拡競争に突入した場合です。

一方が軍備増強を行えば相手は脅威を覚え、必ず軍拡競争が始まります(初期の米ソの冷戦)。

これは歴史上至る所で見られ、多くは大戦へとエスカレートしました。

 

もう一つは、兵器が無数に拡散した場合です。

分かり易いのは、米国の銃社会です。

国民一人に1丁以上の銃があることによって、銃による殺人事件や自殺が非常に多くなっています。

ここでは安易な兵器使用が抑止力の効果を上回っているのです(大国の中東などへの安易な軍事介入なども)。

 

この二つの例からだけでも、使いやすい小型核の普及は抑止力よりも危険の増大が予想できるはずです。

 

これに加えて、核兵器ならではの危険を増大させる要因があります。

一つは被害が非常に悲惨なことです。

このことは見落とされがちですが、多くの戦争は燃え上がる復讐心が高ければ高いほどエスカレートし、停戦は不可能になります。

だからこそ人類は悲惨な被害を与える対人地雷やナパーム弾などの兵器の使用を禁止してきたのです。

残念ながら世界は原爆の被害をまだ知らない(日本が先頭切って知らすべきなのですが)。

 

もう一つは、兵器のコストパフォーマンスが高いことです。

もし手に入れることが出来れば数億から数十億円で相手一国を恐怖に陥れることが出来るのです(抑止力と呼ぶ国もある)。

これまでは膨大な軍事費を賄える経済力こそが大きな抑止力を可能にしたが、核兵器なら小国でも可能になります。

 

結論は、小型核のような兵器は抑止力を期待出来るどころか、取返しのつかない状況に追い込んでしまうのです。

銃が蔓延し殺人が多いにも関わらず、銃規制が出来なくなってしまった米国がその好例です。

 

米国では治安と平和は高額で買うしかなく、金が無ければ治安が悪い所に住み、命を危険にさらさなければならないのです。

核兵器の下では、これすら不可能です。

 

 

*規制緩和の罠

 

規制緩和は経済活性化に有効かと問われれば、「YES」ですが条件付です。

 

皆さんの多くは規制緩和が経済を活性化させると信じているはずです。

一方で規制緩和が経済や社会に弊害をもたらす事例も数多くあるのですが、なぜか見えなくなっています。

これは今の日本で、有効だとする情報が大量に流されているからです。

 

幾つかの事例をみてみましょう。

 

 

 

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*米国の規制緩和がもたらしたこと

 

先ずは米国で40年近く行われて来た規制緩和が如何にバブル崩壊と経済格差を生んだかを簡単に説明します。

専門用語が出て来ますが、全体の流れを知って頂ければありがたいです。

 

  •  先ずストックオプションが1980年代から急増した。

これにより経営者は短期に高騰させた自社株を安く手に入れ、彼らの所得は鰻登りなっていた。

このことが企業経営を投機的で短期的なものにし、従業員との所得格差も開いた。

 

  • グラス・スティーガル法が1999年に廃止された。

この法律は1929年の大恐慌の再来を防止するために銀行業務と証券業務を分離し、投機行動を監視し抑制するのが目的でした(1932年制定)。

しかし、これが廃止されたことにより、監視が行き届かないシャドウバンキング(証券会社やヘッジファンド)が好き放題に投機をおこなった。

 

  • 投機時のレバレッジ率が上昇した。

これは証券、商品、為替などへの投機時に自己資金の数十倍まで投資が可能になることです。

これによって投資家は価格が高騰した時は桁違いの儲けが出るのですが、暴落すると巨額の負債が発生し、バブルと崩壊が繰り返されることになった。

このことが2項の監視されない状況で起こった。

 

  • クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が2000年頃から急拡大した。

これは金融派生商品の一種ですが、リーマンショックの巨大なバブル崩壊を招いた大きな原因の一つでした。

これは金融取引時の損失を補償する新手の保険で、当時、危険な投資案件でも金融機関はこの保険があれば救済されると信じていた(赤信号皆で渡れば怖くない)。

 

バブル崩壊前年の2007年末にはその取引額は6800兆円になっていたが、6年間で100倍にも膨れ上がっていた。

この年の米国の名目GDPは1500兆円で、如何に膨大かがわかる。

当然、崩壊時の補償など出来るはずもなく、米国政府は税金と国債発行で300兆円を金融危機終息の為に注入せざるを得なかった。

出来もしない補償であろうがCDSを販売すれば儲かったのです(6800兆円の数%の手数料でも莫大)。

 

大雑把ですがポイントは以上です。

この悲惨な状況を生み出した最大の馬鹿げた理由は、貪欲な投機家や資産家、経営者達を野放したこと、つまり規制をしなかったことによるのです。

もうひとつ見落としがちなのは、資金力や情報力、政治力などの差により完全な自由市場などは存在しないことです。

 

この話は、少し分かり難いかもしれません。

しかし規制や取り決めがなく好き勝手にした為に社会が壊滅した事例は歴史上多いのです。

 

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* 歴史上、破滅した例

 

典型的な例はイースター島とアイスランドです。

 

人々が最初にこれらの島に入植した時は、木々が茂る緑豊かな所でした。

しかし、燃料などの為に伐採が進む内に自然は再生不能となり、イースター島では部族同士が激しく争い、人口は激減し、逃げ出すにもカヌーを作る木材さえなくなっていた。

アイスランドは木々の無い島となり、それこそ火と氷の島となったのです。

 

 

* 日本の事例

 

最後に日本の規制緩和の惨めな例を一つ挙げましょう。

労働者派遣法の適用拡大により、非正規雇用が拡大し続けています。

 

これも賛否両論があります。

ある人々は産業の競争力を高める為に、また産業や企業の盛衰に合わせ人材は流動的でなければならないと言う。

一方で、安易な首切りや低賃金の横行は基本的人権を侵害すると言う。

 

おそらく多くの人は、経済側の言に耳を傾け、泣き寝入りするするしかないと感じていることでしょう(これは日本人の奥ゆかしさかもしれない)。

 

この問題のポイントは是か非かではなく、どちらも正しいのです。

企業の競争力を高め、労働者の価値を高めるためには、人材の流動性が必要です。

当然、簡単に首を切られ、低収入や無収入に甘んじなければならないのは論外です。

 

つまり、労働者は失業中も収入が確保され、転職のための再教育や訓練が充分行われ、就職すれば当然、同一労働同一賃金であるべきなのです。

 

こんな夢のようなことは不可能だと思われるかもしれませんが、北欧(スウェーデン、デンマークなど)ではこれが当然のように行われているのです。

 

日本の悲しさは、産業競争力の責任を一方だけが背負い甘んじているのです。

 

 

 

5

*5

 

 

*まとめ

 

抑止力と規制緩和の問題点を簡単に見て来ましたが、ここで確認して欲しいことがあります。

 

抑止力については歴史的に見て完全なものではなく、むしろその強化を放置すれば災いを招くことがあったことを知ってください。

 

また規制緩和はここ半世紀ほど米国を筆頭に行き過ぎており、多くの問題が生じていることを知ってください。

 

抑止力と規制緩和の推進は軍需産業や金融業界、資産家に取って実に旨味のあることなのです。

東北大震災の福島原発事故のように、大きな産業と関係省庁が癒着してしまうと、体制維持に都合の良い情報だけが国民に流され続け、問題点が見え無くなってしまうのです。

 

 

* 日本が今歩んでいる道

 

6c

< 6.銀行の金融資産と自己資本の比率、OECDより>

 

金融資産/自己資本は金融セクターの財務安定性を見るためのものです。

上のグラフ: 2004~2016年の金融資産/自己資本の推移。

 

多くの国、例えば英国、デンマーク、米国はリーマンショック後、健全化を進めているが、日本だけは悪化している。

 

下のグラフ: 2016年、この日本の比率はOECD35ヵ国の内、下位から

三番目です。

 

もし大暴落が始まればどの国が最も影響を受けるのでしょうか?

 

 

 

参考文献

「米国の規制緩和がもたらしたこと」に詳しい本

 

「世界金融危機」金子勝共著、岩波書店、2008年刊。

「世界経済を破綻させる23の嘘」ハジュン・チャン著、徳間書店、2010年刊。

「世界を破綻させた経済学者たち」ジェフ・マドリック著、早川書房、2015年刊。

「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」ジョセフ・E・スティグリッツ著、徳間書店、2016年刊。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ 70: 日本の問題、世界の問題 6: バブル崩壊の果てに待ち受けるもの


 1

< 1. 1980年代、世界を変えた首脳達 >

 

 

前回、バブル崩壊と救済が繰り返されて深刻な事態になっていることをみました。

今回は、なぜこのようになったかを探ります。

これでバブル崩壊の考察を終えます。

 

 

 

 2

< 2. 世界の緩和マネー >

 

上のグラフ: 茶色の線がOECD+BRICsの合計マネーサプライで、青線が世界のGDP。

 

マネーサプライが上昇している時に3回のバブルが起きている。

そして2008年以降、歴史上はじめて先進国全体がGDPを超えるマネーサプライを供給し続けている。

現在は中央銀行バブルの最中だと警鐘を鳴らすエコノミストが増えている。

 

下左のグラフ: 大国はベースマネー(マネタリーベース)を競うように拡大している。

 

下右のグラフ: 赤線は世界のマネーサプライ。

 

 第一章 はじめに

先進国(日米など)に格差拡大と累積財政赤字の増大が深刻化していることがわかりました。

これが緩和マネーの増大と金融セクターの膨張と関係していることもみました。

さらに、この始まりは高々1980年代に始まったことも知りました。

 

この異常な事態は最近の人為的なこと、つまり国と中央銀行の政策の変化が起因してることも知りました。

事の起こりは米国にあり、さらに経済理論が様変わりしたことにある為、理解することは難しい。

 

ここでは、先進国の政治経済の大きな変化を取り上げ、何が元凶なのか、何が経済と金融政策を変えてしまったのかを探ります。

 

 

 

3

< 3. 世界のヘッジファンド >

 

第二章 なぜこのようなことになったのか?

皆さん、不思議に思いませんか?

世界を巻き込む巨大なバブル崩壊を繰り返し、また国内の所得格差を著しく拡大させている国は何処でしょうか?

それは民主主義と資本主義の先進国である米国です。

その結果、トランプ大統領が誕生したも言えるのです。

 

これは他人事ではなく、放置すればいずれ我が身に起きることなのです。

この事態は米国がリードでして来た二つの金融政策に端的に現れています。

 

バブルが起きる原因はどこにあったのか?

 

大きな要因の一つは、緩和マネーの巨大化でした。

中央銀行はバブル崩壊後の景気刺激策として大量の緩和マネーを市場に供給して来た(マネーサプライ)。

 

バブルが過熱する時は、必ず投機家が巨額資金(自己資金の20~30倍の借金)を金融商品に投じて高騰を煽っていました。

単純に考えて、彼らが自己資金内で運用する分には、高騰はそれほど起こらず、例え暴落が起きても破産の可能性は著しく低くなります。

つまり、バブルの過熱も崩壊もなくなります。

 

それではなぜ投機家はそのような莫大な借金が可能になったのでしょうか?

 

大きな要因の一つは、政府が高レバレッジ率を許して来たからです。

政府は金融セクターの要望に従ってあらゆる規制緩和をこれまで行って来た。

 

それではなぜ政府と中央銀行はこのような危険を冒すようになったのでしょうか。

 

 

 

 

4

< 4. 2007年度、米国の資産格差 >

 

上位1%の金融資産は、米国の42%になった。

 

 

第三章 危険を冒す政府、肥え太る人々

なぜ政府と中央銀行は危険を冒してまで、巨大な緩和マネーを投じ、金融の規制緩和を行うようになったかを見てみましょう。

 

この様変わりした政策については経済学派のケイジアンとマネタリスト、米国の民主党と共和党、ドイツと米国、日銀総裁の白川(元)と黒田(現)で意見が対立し、賛否が別れています。

これら論争を理解することは困難でも、現実に悪化する状況を直視すれば、また背景を理解出来れば、自ずと答えは見えて来るはずです。

出来れば良質な経済書をお読みください。

私が読んだ参考図書を末尾に紹介します。

 

 

政策が変わっていった背景を簡単にみます。

 

第一段階 1970年代より、先進国が金本位制を止めたことにより、緩和マネーの巨大化が可能になった。

 

最初に1971年のニクソン・ショックで米国が金本位制を止め、1978年から先進国が続いた。

これにより各国の中央銀行が金の備蓄量を気にせず貨幣を発行出来るようになった。

中央銀行は貨幣供給量の調整で物価対策と通貨対策、景気刺激策を自由に出来るようになった(マネタリズム)。

 

これ以前、各国は金本位制を幾度も止めては、また復帰を繰り返して来た。

 

 

 

第二段階 1979年から米国のFRBが貨幣供給量を制御するマネタリズム(フリードマンが唱えた経済政策)により、スタグフレーション(失業率上昇と物価上昇が併進)を収め、景気を回復させた。

 

これ以前の経済政策は、米国のニューディール政策に代表される、政府が市場に介入し公共投資や賃金アップ(労働組合奨励)などで需要を喚起するケイジアンが主流であった。

第二次世界大戦まではこれが功を奏したと言えるのですが、戦後の世界経済は好調後に、インフレからスタグフレーションへと突入した。

 

先進国の産業・経済界と保守派は、これをケイジアンからマネタリズムへの転換の絶好の機会と捉えた。

 

 

第三段階 1980年代より、先進国は「自由放任主義」を掲げる保守的な政策に転換した。

 

 

スタグフレーションの原因の一つに、強い労働組合による旺盛な賃金上昇があったとされ、先進国の産業・経済界はこぞってこの抑制を政府に訴えた。

彼らにとって、経済疲弊の病根は強い労働組合と公営企業の赤字であった。

また第二次世界大戦後の英国や米国は、日増しに高まる日独の輸出攻勢で経済は勢いを失っていた。

 

これを挽回するために、英国のサッチャー(1979~)、米国のレーガン(1981~)がマネタリズムと自由放任主義を推し進め、やがて他の先進国も追従した。

自由放任主義とは、市場は規制を受けない自由競争状態であればあるほど経済の効率が高まり、発展するとの考えです。

すべてを自由競争に委ねれば、企業家は意欲を増し、商品価格は低下し、経済効率は上昇し、経済は発展すると信じた人々は、また政府の裁量と財政規模を縮小すべしとした。

 

彼ら指導者は国営企業の廃止や労働組合の制限、産業・金融の規制緩和を推し進め、景気刺激策として公共投資から貨幣供給へと軸足を移した。

日本だけは後者のマネタリズムへの転換を日銀が拒んでいたので、公共投資を継続した。

 

確かに、経済を安定的に発展させるには成長に見合ったマネーサプライは不可欠ですが、行き過ぎた緩和マネーが問題であり、その限度、効能と弊害について意見が分かれています。

 

 

 

第四段階 米国では金融家達が徐々に政治を支配するようになっていた。

 

米国の金融家(銀行家)と大資産家らは、ロービー活動と選挙応援を通じて20世紀初頭より政治力を高めており、レーガン以降、その力は強力になっていた。

 

彼らは米国の経済復活には世界的な競争に勝つ必要があり、この為に世界大恐慌後(1929年~)の数々の経済・産業・金融の規制を撤廃すべしと政府に規制緩和を求め続けた。

保守的である共和党の方がより規制緩和を行い自由放任主義的な政策を採ったが、多くの民主党政権でも後退には至らなかった。

 

この規制緩和は多岐にわたりますが、そのポイントは国民の犠牲を防止する規制の廃止、一方で金融家の自由な投機を阻害する規制や監督を廃止したことです。

一例としてはシャドーバンキング(ヘッジファンド)の暗躍、高レバレッジが最近の金融危機の大きな要因になっている。

他に自由放任主義の施策としては企業経営者の報酬アップ(ストックオプション)、労働運動の制約、富裕層減税による累進課税のなし崩しがある。

 

 

現段階 こうしてバブル崩壊がほぼ10年毎に起こり、中央銀行は膨大な緩和マネー、政府は財政出動で金融救済と景気刺激策を繰り返すようになった。

 

こうして金融セクターが潤い巨大化し、富める者は益々富むようになり、さらなる政治支配が可能になった。

例えば、バブル崩壊後の2009年から2012年までの収入増加のじつに91%が、米国の最富裕層上位1%の懐に収まった。

このような状況では、米国の多くの政治家も経済学者も現状の自由放任主義とマネタリズムに追従することで主流に成り得る。

これになびく日本も同様です。

 

これが米国と、米国に追従する日本や他の先進国の状況です。

 

 

 

5

< 5. 2013年度、子供の貧困率 >

 

米国は世界で2番目に高く、日本は9番目に高い。

 

第四章 まとめ

結局、ここ40年ほどの金融家らによる政治と経済の転換は、著しい所得格差と莫大な累積赤字を生んでしまった。

そして多くの先進国では高い失業率と低経済成長がほぼ定着した。

さらに政治には国民の意向が反映されなくなり、失望の果てに日本、米国、ヨーロッパで右翼や国粋主義が台頭するようになった。

 

我々が今行わなければならないことは、先進国の金融セクターの横暴を止める政策を政府に採らせることです。

その対策の為には世界が一致団結して新たな金融政策、秩序ある競争を生み出す適切な世界的な規制と累進課税を採ることです。

 

経済学者スティグリッツは「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」で、抜本的な改革案を提示しています。

 

 

次回に続きます。

 

 

6

*6

 

 

参考図書

 

*「国家は破綻する 金融危機の800年」カーメン・M・ラインハート著、2011年刊。

内容: 世界中の国家の破綻、デフォルト、金融危機、通貨暴落、高インフレの全体像をデーターで俯瞰させている。

感想: 破綻が頻発している事実に驚かされたが、破綻のメカニズムの定性的な解説がなく、経済の素人には面白くないかもしれない。

 

*「ささっと不況を終わらせろ」ポール・クル-グマン著、2015年刊。

内容: バブル崩壊後の不況対策について、幾多の事例を参考にしながら主に米国について批判的に解説している。

感想: 様々な破綻が読みやすく語られ理解し易い。またクル-グマンの立ち位置が見えてくる。

 

*「2020年 世界経済の勝者と敗者」ポール・クル-グマンと浜田宏一著、2016年刊。

内容: 二人が米国、EU、中国の経済、アベノミクスについて対談している。

感想: 対談集なので底が浅く、二人の議論が噛み合っていないように思う。

クル-グマンは概ねアベノミクスが最善の方策であり期待もしている。

気になるのは彼が日本の達成を困難と見ていることと、次のバブル到来を危険視していないことです。

 

*「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」スティグリッツ著、2016年刊。

内容: 米国の経済政策(自由放任主義とマネタリズム)を批判し、米国と世界経済の復活を目指す改革案を提示している。

感想: 現状の経済の問題点を多角的に分析し、それぞれに対策を提言している。

しかし要点を絞って書いている関係で、専門の経済用語の知識がなければ理解が困難です。

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 61: よくあるタカ派礼賛


1

*1

 

 

今回は、経済学者の惜しい勘違いを御紹介します。

共著「世界経済の勝者と敗者」での浜田先生のお言葉です。

なんとゲーム理論を使ってタカ派こそが中国を制すると説いています。

 

 

浜田先生のお言葉

この本の最後に、『コラム 中国編: 「ゲーム理論」から考える中国との向き合い方』があります。(216~219頁)

 

僭越ながら抜粋要約します。

 

危なっかしい中国と付き合うには、囚人のジレンマ(ゲーム理論の一つ、注釈1)によるコンピューターシュミレーションの結果(注釈2)を援用することです。

つまり「しっぺ返し戦略」が最良なのです。

これは最初は相手を信頼して協力しあうのだが、相手が裏切って敵対してきたら、確実にやり返す戦略です。

この点、タカ派の安部首相が最適です。

 

またニクソン大統領は電撃的に中国と和解した。

さらにレーガン大統領も冷戦を終結させた。

この二人もタカ派(共和党)でした。

 

私はこれを読んで、やはり安部首相の側近になる人は凄いなと感心した。

しかし、著名な先生の発言だけに悪影響が大きいので、少し誤解を解きたいと思います。

 

 

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*2

 

 

「しっぺ返し戦略」引用のおもしろさ

これは動物行動がどうして進化したかを知るには面白いテーマで、かつ有名です。

しかし知ったかぶりの都合の良い御説はいただけません。

 

この手の実験は、コンピューター上の行動が実際の個人や社会と異なり、相手の行動を予測したり学習出来るのか、また協力した時の利益と裏切られた時の不利益の配分が問題になります。

例えば、不利益は単に利益が減るだけなのか、極論すれば1回でも裏切られれば死を意味するかなどです。

とりあえず、一国の外交戦略に即使えるものではありません。

 

しかし、この手の多くの実験や理論から動物や人間行動(利他行動、同胞愛)の進化などがある程度説明出来ることも事実です。

 

ここでは長谷川寿一著「進化と人間行動」(2000年刊)から、この「しっぺ返し戦略」の解説を一部引用します。

 

「しっぺ返し戦略」は、「上品さ」(何はともあれ初回は協力する)、「短気さ」(やられたらすかさずやりかえす)、「寛容さ」(古い過去にとらわれず、相手が協力に出たら、すぐに協力する)、「わかりやすさ」(単純である)という特徴を備えています。

人間社会でも、これらのキャラクターを兼ね備えていれば、つきあう相手として皆に好かれるでしょう。

「しっぺ返し戦略」に限らず、上位を占めたコンピュータープログラムの特徴は、基本的に「協力」的な(少なくとも初回は「協力」から入る)ものでした。

 

・・・

これらの研究から得られたメッセージは、互いに何度もつき合いを続けていくような関係においては、協力行動は遺伝的に進化し得るということです。

つまり、社会生活を送るのが常であるような動物には、「他個体によくする」という行動が進化し、それを引き起こすような心理メカニズムが存在するだろうということです。

 

素人の浜田先生と専門の長谷川先生の違いはどうでしょうか?

まったく正反対の解釈に思えます。

おそらく、浜田先生は右翼の心性をお持ちか、その手の解釈を教条的に受け入れているだけなのでしょう。

この手の人は、どうしても強い者や力で抑えること、未知の者を敵視する傾向が強い。

この人に悪意は無く、軽い気持ちで都合の良い引用しただけなのだろう。

 

 

多くの研究(注釈3)では、動物の進化と共にタカ派的な行動(裏切りや攻撃が主な行動)を緩和するハト派的な行動(思いやりや協力が主な行動)が発展して来たことが知られています。

単純に言えば、タカ派的な行動が社会を覆ってしまえば、その成員は生命の危機を招き、社会は利益を減らし、発展出来なくなります。

 

私が驚いたのは、本の最後に安部さんを讃えるために、このテーマを取り上げていることでした。

経済学は財の数量を扱うものであり、財を扱う人々の心理を扱うのは苦手だと思うが、これはお粗末な人間理解です。

実は、経済を動かし、バブルを生み出しているのは合理的でないアニマルスピリットなのです。

これを扱えてこそ、浜田先生は本当の経済の指南役になれるでしょう。

是非とも精進して欲しいものです。

 

 

3

*3

 

 

事実は奇なり

浜田先生の御説は危なっかしいが、本来、この手の研究(注釈3)は私達に社会や人間への正しい理解を与えてくれています。

 

数多くの中から二つ重要な知見を紹介します。

 

動物は弱肉強食の世界だと一般に強く信じられていますが、儀式的な闘争(儀闘)が進化し、無駄な争いを防いでいます。

よく知られているように、鮎やライオンなどは同種の相手が縄張りに侵入した時、徹底的に殺し合うことをしません。

基本的に威嚇で始まり、優劣が決まればそこで止めます。

それ以上に進むこともありますが。

詳しくは「心の起源 連載8」に説明があります。

残念ながら、チンパンジーや人類の方が弱肉強食(残酷)になる場合があります。

 

社会心理学にトラッキング・ゲームがあります。

これは競争(脅迫)と協力(譲歩)のどちらが社会全体に利益をもたらすかを教えてくれています。

 

 

4

< 4. トラッキング・ゲームの図 >

 

この社会実験は二人がA社とB社に別れ、自社のトラックで自社の出発点から目的地へ、多くの荷物を運ぶのが目的です。

曲線の道は時間がかかり過ぎるので、真ん中の直線道路を使うと早く運べるのですが、相手のトラックの通行をコントロールゲートで止めることが出来ます。

但し、相談は出来ません。

 

多くの実験をした結果、二つのゲートが無い場合は、直線道路の前で譲り合う人がいると、共に多くの荷物を運べました。

しかし、ゲートを設けた途端に二人の運べる荷物の総量は極端に減りました。

 

つまり、互いに相手の足を引っ張り合いを始め、激化し自滅したのです。

これは、如何に「競争関係」より「信頼関係」を築くことの方が得策かを示し、人は「脅迫(軍備)」の力を持つと簡単に自滅してしまうことを教えてくれています。

 

 

5

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浜田先生の歴史観のおもしろさ

彼はニクソン大統領とレーガン大統領の功績を讃えていました。

確かに、否定は出来ないが、単純で一方的過ぎます。

つまり、相手の存在と歴史の流れをあまりにも無視し、ここでも我田引水なのです。

 

冷戦終結は、レーガン大統領の功績だと喧伝されているのは事実です。

しかし、少し考えれば疑問が湧くはずです。

 

レーガンが大統領になったのは1981年でした。

一方、ゴルバチョフの書記長は就任こそ1985年でしたが、1978年頃から中央で改革を主導し頭角を現していた。

また彼は書記長就任の年、外相にシェワルナゼを抜擢していた。

 

そして1987年、大統領と書記長が「中距離核戦力全廃条約」に調印し、冷戦が終息に向かった。

大統領の圧力(スターウォーズ)と言うより、既にソ連内部に変革の兆しがあり、書記長と外相の融和的な方針が功を奏したように思える。注釈4.

また冷戦の軍拡競争によるソ連の経済疲弊や米ソの軍縮は以前から進んでいた。

 

 

1972年2月のニクソン大統領の電撃的な中国訪問は驚きでした。

 

これにはキッシンジャーの活躍もあるが、やはりここでも中国の周恩来の存在が重要です。

この年の9月には、彼は早くも田中角栄と日中共同声明を調印しているのです。

周恩来の融和的な姿勢が無ければ不可能だった。

また1971年、対米強硬派(タカ派)の林彪が死亡したことも幸いしている。

 

こうしてみると、ソ連と中国のハト派の貢献が浮かび上がり、浜田先生のタカ派絶賛は怪しくなりました。

要は、身びいきが過ぎると言うことでしょうか。

 

成功のポイントは、タカ派二人の大統領の交渉意思と、相手国のハト派二人のトップの存在があってこそなのです。

もしも、両国がタカ派同士、ハト派同士であればどうなっていたでしょうか?

一方だけを強調するのは、よくある右派と左派の言説で、注意が必要です。

 

 

最後に

せっかく愉しみに買ったクルーグマン共著の「世界経済の勝者と敗者」でしたが、先に結論辺りから読んだのが悪かった。

興覚めです。

諦めないで、また初めから読むつもりですが。

 

 

 

 

注釈1.

二人の間で、共に協力する方が多くの利益を得ることが分かっていても、相手の行動が予測できない時、協力しない方が確実に少しの利益を得る状況では互いに協力しなくなる、というジレンマを指す。

 

注釈2.

1980年、米国の政治学者ロバート・アクセルロッドが、様々な研究者からゲーム戦略を募集し、コンピュータープログラムで総当たり対戦を行った。

そして様々な戦略の中から「しっぺ返し戦略」が最高得点を取って優勝した。

 

注釈3.

動物行動学、ゲーム理論、進化心理学、進化生物学、社会心理学など。

このジャンルの本を推奨します。

「生物の社会進化」ロバート・トリヴァース著、産業図書:難しいが驚くべき慧眼です。

「共感の時代へ」フランスア・ドゥ・ヴァール著、紀伊国屋書店: 動物の愛に涙します。目からうろこです。

「進化の人間行動」長谷川寿一著、東京大学出版会: 大学のテキスト。全体像がわかる。

「社会心理学キーワード」山岸俊男著、有斐閣: 要領よくまとまっている。

 

注釈4.

創元社刊「世界の歴史10」J.M.ロバーツ著。

p186~188に、似たような記載があります。

 

 

 

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何か変ですよ! 52: トランプの評価を巡って


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不思議なことがある。

大衆はなぜ突如として極端な行動に出るのだろうか?

トランプ大統領の選択がその好例です。

 

不思議なこと

私はトランプに関する本を6冊読んだが、トランプ大統領の評価は混乱している。

 

彼の就任は悪化している米国の現れか、彼の希代の才能ゆえか、それとも何かの間違いか?

我々は彼に期待すべきか、はたまた最悪の事態に備えるべきか?

これは世界にとって吉兆なのか、それとも凶兆なのか?

 

これら相矛盾する評価から、米国社会と世界の混沌が見えて来ます。

 

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相矛盾する評価

 

*トランプ氏に対する評価

意見は大きく二つに分かれる。

 

トランプを高評価する人は、彼は群を抜いた交渉力を持ち、幾多の困難を乗り越えたビジネスマンで、機を見るに敏だと言う。

また彼は自己資金で戦ったので既成勢力と無縁で、正直者だからと期待されている。

 

彼を否定する人は、彼は感情的、ナルシスト、守銭奴だから信用出来ないと言う。

また彼は政治経験がなく、極右で、煽動家だから危険だとされている。

 

 

*トランプ氏が選ばれた背景

概ね以下のように要約できる。

 

幾多の有力候補やヒラリーが嫌われ、投票率が低い背景に、ホワイトハウスへの根深い不信感があり、大衆は既成政治との断絶を求めた。

さらに白人層の危機感と女性蔑視が大きく作用した。

 

彼は大衆の不満(移民、ムスリム、派兵、失業など)を積極的に取り上げ、既成概念に囚われない解決法を示した。

それをデマゴーグと非難するマスコミと他候補に対して、彼は悪態とメール発信でやり込めることが出来た。

 

彼はテレビ番組の人気者であったが、当初、泡沫候補と見られていて、マスコミは興味本位に彼を扱ったことより、露出度が非常に高まった。

マスコミは彼の人気が出てから批判を始めたが、既成勢力と非難され、逆効果となった。

 

他に、米国における闇の支配者などの陰謀説もある。

 

 

*著者たちのトランプ大統領の評価

 

彼をレーガンやエリツインになぞらえ、彼こそが米国で創造的破壊を起こしてくれるとの期待がある。

確かに、他の候補では超富裕層による支配、戦争継続、移民増大、格差拡大が続く可能性がある。

 

当然、危険視する意見もある。

彼のほとんどの解決策はデタラメで、特に経済政策、結局は米国と世界を混乱に陥れる可能性が高いと見られている。

 

結局、ジリ貧になっていく白人層は、溺れる者は藁をも掴む心境のようだ。

日本もこうならないように願いたいのだが。

 

 

様々な疑問

 

A: 経済に創造的破壊は必要だが、大統領が旗を振ってうまく行くのだろうか?

 

歴史的には、イギリスの産業革命などのように、良い創造的破壊が起きる時は、それぞれの利益を代表する集団が交渉し妥協しながら自由裁量権を得て、イノベーションへの意欲が持続する時です。

残念ながら、現状は金権政治(超富裕層による支配)で社会の調整機能が失われているのですが。

 

彼が進める公害防止や金融規制などの緩和・撤廃、また相続税廃止などの富裕層減税は、明らかに弱者を増やすだけで、創造的破壊とは別物です。

 

世界を牽引している米国の情報通信などのイノベーションは政府の関与とは言えない、また移民も大きく関わっている。

 

 

 

B: 大統領に破壊を期待すると、何が起きるか?

 

レーガンの経済政策により、後に米国は双子の赤字と格差拡大で苦しむことになり、日本は円高を飲まされることになった。

 

エリツィンの経済政策により、ロシアはハイパーインフレを起こし経済破綻し、プーチンの独裁を招くことになった。

 

ヒトラーの例は既に述べました。

 

レーガンはインフレを抑制し冷戦終了を導いた、またエリツィンはソ連崩壊と共産経済の低迷からの脱出を導いたと言える。

 

結局、国民は混乱に備え、相当の覚悟が必要です。

 

 

 

C: 大統領に人格や見識は必要ないのだろうか?

 

例えば、彼は数度の倒産にもめげず大富豪に成り得たのだから素晴らしい胆力と能力を持っていると評価される。

見方を替えれば、幾度も借金を踏み倒し、従業員を路頭に迷わせたのだから、無計画で無責任な人間とも言える。

 

実際、彼のビジネス手法には違法まがいが目立ち、また脱税(節税)しているらしい。

はたしてこのような人物に国を任して良いのだろうか。

 

 

D: トランプを期待する心理の不思議。

 

概ねトランプを評価する著者らは共和党寄りのように思える。

彼らは民主党政権には辛辣だが、共和党への悪口がまったくない共通点がある。

逆も真なりですが。

 

例えば、ヒラリーは多額の献金を受け、戦争を拡大させ、裏で汚い事をしていると罵る。

また民主党政権は中東で手を打たなかったから戦火が拡大したと言い、一方でトランプは外国に干渉しないから、世界は平和になるとも言う。

中東を大きく混乱させたのはブッシュ親子だと思うのだが。

 

私は、どっちもどっちで、まだ民主党の方が少しましなように思えるが。

 

また、盛んに陰謀論を唱える福島隆彦は2016年7月出版の本で、ロックフェラーがトランプに決めたと自慢げに書いている。注釈1。

キッシンジャーとトランプの娘婿の父親は共にユダヤ系の大物であり、彼らが仲介したと説得的でした。

 

しかしその年の4月の彼の本を見ると、ロックフェラーがヒラリーに決めたと書いていた。注釈2.

 

陰謀論は読んでいてワクワクするが、少し考えれば腑に落ちないことが見えてくる。

 

 

まとめ

やはり、米国は病んでいる。

米国主導のグローバリズムによって世界も病んでいる。

グローバリズムが悪いわけでは無いが、自由放任が悪い。

 

いつしか、既得権益層が社会を牛耳り、格差拡大が蔓延し、大衆の団結を防ぐ為に疑心暗鬼が煽られ、分断が深まった。

そして社会を変えられない大衆が焦り、そしてポピュリズムによる大きな左右への揺れが起きた。

 

この状況は、帝国主義やファシズムを生み出した社会と酷似しているように思えるのだが。

この時も、ナショナリズムと保護主義が世界に蔓延して行き、2度の大戦へと繋がった、

 

皆さん、どうか自分の身を守る術を考えておいてください。

 

 

 

3

*3

 

 

参考文献の紹介

*「トランプがはじめた21世紀の南北戦争: アメリカ大統領選2016 」

渡辺由佳里著、2017年1月刊。

 

彼女は米国で長年暮らしているジャーナリスト。

この度の大統領選の集会などを直に取材し、市民の眼からレポートしている。

トランプを支持する人々(主に白人)の実態が良く伝わってくる。

彼女はヒラリー寄りで、リベラル派の惨敗に気落ちしている。

 

 

*「トランプ政権でこうなる! 日本経済 」

岩崎博充著、2016年12月刊。

 

彼は日本在住の経済ジャーナリスト。

この大統領選挙を取材ではなく資料や本から分析しているようです。

トランプが選ばれた背景を妥当な情報で分かりやすく解説している。

私の感じでは、中立的な立場で、トランプ政権の今後を占っている。

彼はトランプによって災いが起きることを恐れている。

 

 

*「なぜヒラリー・クリントンを大統領にしないのか? 」

佐藤 則男著、2015年11月刊。

 

彼はニューヨーク在住40年を超えるジャーナリスト。

書かれたのが序盤戦(予備選)の時期なので切実感はないが、米国大統領選の裏表を見せてくれる。

また序盤でのトランプへの悪評とヒラリーへの嫌悪感がよく伝わってくる。

彼は共和党寄りです。

 

 

*「トランプ大統領とアメリカの真実」

副島隆彦著、2016年7月刊。

 

彼はアメリカ政治思想研究の第一人者と自称している。

大統領選が混沌としている中で、早々とトランプで決まりと発言している。

本は読んでいて面白い。

米国の政治思想史や支配層の人脈を縦横に駆使しながら大統領選を鮮やかに分析している。

陰謀説で、踏み込んで断定する割には、2017年2月20現在において、多くが外れている。

極端で眉唾ものと思って読む分にはよい。

なぜか、この手の本はアマゾンでは評価が高い・・・。

 

 

*「『闇の支配者』最後の日々」

ベンジャミン・フルフォード著、2016年4月刊。

 

彼はカナダ出身のジャーナリストで日本に帰化。

この本ではトランプは扱われていませんが、米国の裏側を知りたいと思って読みました。

日本、米国、世界を股にかける闇の支配者が出て来ます。

私には、真贋を検証する力がありませんので、途中で放棄しました。

これもアマゾンでは評価が高い・・・。

 

 

*「トランプ・シフト これからの世界経済に備える14のこと」

塚口直史著、2016年12月刊。

 

彼は大成功しているヘッジファンドマネージャーで、世界の政治史にも見識がある。

この本は、トランプ後の世界の経済・金融を理解するには必見です。

経済用語が出て来て読みづらいところはあるが、読めば世界の現状と混乱の広がる様子を知ることが出来ます。

日本のアベノミクス、日銀政策についても明快な判定を下しています。

 

彼は、現実に大きな資金を運用する立場にある為、この危機にあって、今は様子待ち(手元流動性を高め)を行い、しっかりと備えるべきと警鐘を鳴らしています。

 

私がトランプの次に恐れているのは、中国経済の崩壊ですが、これがトランプによって更に悪化するかもしれない。

世界の悲運は、政府の些細な判断ミスや外交ミスの積み重ねで訪れるものです。

 

これで終わります。

 

 

注釈1

既述の「トランプ大統領とアメリカの真実」

 

 

注釈2

「マイナス金利「税」で凍りつく日本経済」副島 隆彦 著。

 

 

 

 

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ドラマ「東京裁判」を見て


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*1

 

 

今日は、素晴らしい再現ドラマ「東京裁判」を紹介します。

これはNHKのテレビ番組で、この12月12~15日に放送されたものです。

YouTubeで「東京裁判 NHKドラマ」が見れます。

 

 

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< 2. 実在の主役達 >

 

上の写真: 東京裁判の被告席。

中央の写真: 東条内閣。

下の写真: 東京裁判の11人の判事達。

 

 

 

はじめに

東京裁判は、勝者の意趣返し、または戦争否定に繋がったと評価が分かれている。

また私にとって東京裁判はいつか全貌を知らなければならない課題でした。

 

それは、「日本を戦争へと突き進ませた状況をどう見るか?」でした。

言い換えれば、「戦争の責任は国の指導者、国際状況、国民のいずれがより重いのか?」になる。

 

今一つは、「国際法(国家間で作った条約など)に期待を託せるのか?」でした。

言い換えれば、「国際法で国家や戦争を裁くことが可能か?」になる。

 

その答えは先送りになったが、私はドラマに救われた思いがした。

ドラマでは各国から派遣された11人の判事が「日本の戦争」に真剣に取り組み、篤く議論する姿が描かれていた。

彼らは「悲惨な戦争の再発防止」「残虐行為への懲罰」「厳密な法適用」「戦争への根源的な問い」など、それぞれの信条に従い議論し、ぶつかりまた協力して行く。

そして半年で終わるはずの裁判は2年半に及んだ。

 

超難題を抱える裁判の裏側を、各国の名優が演じ切った。

素晴らしい人間ドラマです。

 

 

東京裁判について、マイペディアよりコピー

 

「極東国際軍事裁判が正称。

1946年1月19日連合国最高司令官マッカーサーの命令で設立された極東国際軍事裁判所が日本の戦争指導者に対して行った裁判。

原告は米・英・中・ソのほか7ヵ国。

同年5月3日より東京市谷で開廷。

裁判長はオーストラリアのウェッブ。

首席検察官は米国のキーナン。

戦争犯罪を〈平和に対する罪〉〈殺人の罪〉〈通常の戦争犯罪と人道に対する罪〉に分けて満州事変以来の日本軍閥の侵略を追及。

1948年11月12日判決。

東条英機ら7名が絞首刑,荒木貞夫ら16名が終身禁錮。

ニュルンベルク裁判とともに二大国際裁判といわれる。」

 

 

日本の戦争

満州事変に始まり日中戦争へ、さらに真珠湾攻撃から太平洋戦争へと突き進んだ。

そして、最後は日本全土の空襲と原爆投下で終戦となった。

この第二次世界大戦で世界の人口の2.5%(民間人5500万人、軍人2500万人)が死んだ。

 

 

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< 3.日本の戦争 >

 

 

 

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< 4. ドラマのシーン 1>

 

上の映像: 判事達が裁判に臨むシーン。

先頭にいるのはオーストラリアのウエッブ裁判長。

 

下の映像: 判事全員が被告人の罪の有無、量刑について議論するシーン。

 

初めは、まとまっているように見えたが、やがて亀裂が走り始める。

その一つの論点は「平和に対する罪」で被告を裁けるかどうかでした。

 

実は、世界はながらく戦争を国家の権利(自衛権)と見なしていたのです。

どう法律家があがいても、戦争する国を止めることが出来なかったからです。

一方、戦闘手段の制限は12世紀頃から国際法として徐々に発展し、戦争犯罪が確定していった。

しかし、世界は第一次世界大戦後の壮絶な殺し合いを経験し、戦争を違法とするパリ不戦条約を発行した。

しかし、これは不完全であり、また戦争を再発させてしまった。

その反省から、第二次世界大戦中の1995年に連合国が中心となり「平和に対する罪」を規定した国際軍事裁判所憲章を急遽作った。

 

それに加え、様々な論点が波乱を呼んだ。

 

 

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< 5.ドラマのシーン2 >

 

一番上の写真: オランダのレ-リンク判事と竹山道雄(「ビルマの竪琴」の著者)との交友。

レ-リンク判事はパール判事に感化され、後に判決に対する反対意見書を提出した。

彼は事後法の問題は逃れえるが、日本の指導者への極刑は過ぎると反対した。

ドラマでは、彼が中心になっているように思える。

 

二番目の写真: 英国のパトリック判事(中央)が中心となって日本の戦争指導者に断固、極刑を課する多数派を結成する。

アメリカ、中国、フィリピン、ロシア、カナダ、ニュージーランドがこれに同調し、弱腰の裁判長の追い出しや判決文作成を担った。

彼らは国際軍事裁判所憲章の順守とニュルンベルク裁判の成果を損ねないことを盾にした。

そこには各国の事情や個人の偏見や復讐心が垣間見えた。

 

三番目の写真: インドのパール判事。

彼は当初から、法の恣意的な適用に断固反対し、1235ページに及ぶ別個の判決文を提出した。

日本の行った戦争犯罪を裁くことは可能だが、法のプロが事後法の「平和に対する罪」を適用することがあってはならないとした。

また焦土と化した日本を見て、欧米先進国の身勝手さと思い上がりを痛烈に批判した。

それは原爆投下、また世界に害悪をもたらした帝国主義、日本を軍事大国に追い込んだかもしれない行為を顧みない姿勢です。

 

四番目の写真: フランスのベルナール判事。

彼も法律家として、東京裁判が正当化出来ないとして、反対の立場から意見書を提出した。

 

 

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<6.資料 >

 

上の地図: 第二次世界大戦での日本の最大占領地。

中央の写真: マッカーサーと天皇。

二人は東京裁判での日米の主役でした。

 

下の写真: 実写フイルム。

東京裁判で日本側弁護人となった米国のブレイクニーの口からから発せらた驚くべき言葉。

「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪になるならば、我々は、広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。」

 

 

あとがき

私はこの手のNHKの活躍を誇り思い感謝します。

これまでもNHKは、ベトナム戦争や日本の戦争について徹底した調査を行い、分かりやすい形で放送して来た。

このドラマはオランダ、カナダとの共同制作で、8年もの歳月をかけたらしい。

 

ドラマで描かれた赤裸々な葛藤や苦悶、断固意思を貫く人々が絡み合う血の通った論争シーン、どれもが私を魅了した。

 

一方で残念なこともある。

無理だとは思うが、国際法の今後、「世界が国家の不正義を裁くこと」の意味を語って欲しかった。

 

残念ながら、現在の状況を見るとパール判事の言った、「世界はまだ未成熟である」が70年後も変わらないようです。

相変わらず、大国は恣意的な戦闘や軍事援助を行い続け、止める算段がないどころか、深みにはまるばかりです。

 

お読みいただき感謝します。

 

 

 

 

 

 

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Bring peace to the Middle East! 35: chain of retaliation 5 : Israel and Palestinian 2


中東に平和を! 35: 報復の連鎖 5 : イスラエルとパレスチナ 2

 

1

< 1. A caricature of the intifada (revolt) >

< 1. インティファーダ(蜂起)の風刺画 >

 
Today, I confirm the present conditions of Palestine and Israel.

 

今回は、イスラエルとパレスチナの現状を確認します。

 

2
< 2. The book I extracted this passages from >
< 2. 引用した本 >
The book
“ voices of local people living in Palestine and Israel”

A Middle Eastern specialized journalist interviewed people of every hierarchy of both areas between 1993 and 2003.

 

I took up interviews of two families in Gaza Strip, and extracted and summarized it.

 
引用した本
「現地ルポ パレスチナの声、イスラエルの声」
土井敏郎著、岩波書店刊。
中東専門のジャーナリストが1993年から2003年にかけて、両地域のあらゆる階層の人々にインタビューを行った。

私は、ガザ地区の家族の発言を取り上げ、抜粋要約しました。

 
Gaza Strip
At the time of the interview, Israel promoted people’s settling in Gaza, but withdrew from Gaza in 2005.
Gaza became a base of Palestinian radicals, and Israeli military forces was stationed in Gaza in those days.

 

Presently, the Israel surrounds Gaza with separation barrier, bombs Gaza in retaliation for terrorism, and thoroughly performs to blockade at two checkpoints.

 

Gaza is one of two autonomous areas of the Palestinians, the land space is small in 6% of the whole, but it occupies 38% of population of the whole.

 
ガザ地区
インタビュ-当時、イスラエルはガザへの入植を推進していたが、2005年、ガザから撤退した。
ガザはパレスチナ過激派の拠点になっていて、当時はイスラエル軍がガザに駐屯していた。

 

現在、イスラエルはガザを分離壁で囲み、テロの報復として空爆を行い、2か所の検問所で徹底した封鎖を行っている。
ガザは二つあるパレスチナ自治区の一つで、面積は全体の6%と小さいが人口の38%を占めている。

 

3
< 3. Gaza Strip in 2003 >
< 3. 2003年のガザ地区 >

 

Blue arias are the Israeli settlements of those days.
Rafah is on a border with Egypt, at lower left-side in Gaza.

 

青色が当時のイスラエル入植地。
ラファはガザ内の左下エジプトとの国境にある。

 
Israeli settler
This is a interview in 2002.
This husband of a Israeli family settled in here by the government assistance several years ago.

 

“This situation has changed really since the autumn of 2000 when the intifada began in.

 

Rocket bombs come flying at here almost every night.”

 

“In 1948 when Israel was born, an Arab picked war with us.
Then our Israel did not have a option other than fighting.
And we won the war.

 

This Israel is land that a Jew was promised for by God, as it is written in the Bible.
The United Nations admitted that this land was our land. “

 

“I wish that we can coexist sometime.
However, I do not think that we can give a Palestinian an independent nation, their land, and armed forces.
Because they cannot trust them. ”

 
イスラエル入植者
2002年のインタビュー、数年前に政府援助で入植したイスラエル家族の夫。

 

「インティファーダが始まった2000年秋からまったく状況が変わってしまいました。
ロケット弾や爆弾がほとんど毎晩飛んできます。
それでも私達がここに留まるのは、ここは私達の土地だという信念のためです。」

 

「イスラエルが誕生した1948年、アラブ人が私達に戦争を仕掛けてきました。
イスラエルは戦う以外に選択肢がなかったのです。
私達はその戦争に勝ちました。
・・・・
イスラエルの土地は聖書に書かれている通り、ユダヤ人が神から約束された土地です。
聖書を信じる全世界が知っています。
国連はここの土地が我々の土地だと認めました。」

 

「いつの日か、共存出来ればと願っています。
しかしパレスチナ人に独立国家や土地、軍隊を与えることが出来るとは思いません。
彼らは信用できませんから。」

 
Explanation
The family didn’t receive a damage by terrorism directly, but he explains the position of Israel well.
The points that he points out.
A: Arab began the war, and Israel won it.
B: the Israeli settling has been written in the Bible, the United Nations recognizes it.
C: the intifada that was begun by Palestinian worsened the situation.

 

Most of them wish Palestinian leave this land.

 
説明
この家族はテロによる被害を直接受けていないが、イスラエル側の立場をよく代弁している。
彼が指摘するポイント。
A: アラブ人が戦争を始め、イスラエルは勝った。
B: イスラエルの定住は、聖書が定めており、国連が認めている。
C: パレスチナ人が始めたインティファーダが状況を悪くした。

 

彼らの多くは、パレスチナ人がこの地から去るのを望んでいる。

 

4a

< 4. Gaza Strip >
< 4. ガザ >

 
Palestinian
This is a interview in 2003.
This husband of a Palestinian family who earned money by working away from home, and built a house in Rafah in seven years.

 

“In September, 2001, we had slept in the house.
We heard an explosion suddenly and woke up.
Israeli military forces soon came over near, and began to blow up neighboring houses.

 

We evacuated to the neighborhood hastily.
I went to see our house the next morning, it had been approximately completely destroyed.”

 

“Till the intifada, I had worked in Israel.
Our former livelihood level was around 70% of average livelihood, but the present livelihood is zero.

 

In here, we were in constant fear of bulldozer, tank, gundown, and massacre.”

 

“We always heard, “a colloquy,and a colloquy”,and already felt disgust for it.

 

Since when the Intifada began, our circumstances continue to worsen everyday during two and a half years.
When two or three Palestinians were murdered, the news was spread to all over the world.
However, 15 or 20 people are murdered every day now.”

 

パレスチナ人
2003年のインタビュー、出稼ぎの金で国境の街ラファに7年かけて家を建てた家族の夫。

 

「2001年9月、私達は家で寝ていました。
突然、爆発音がして目が覚めました。
まもなくイスラエル軍がやって来て、近所の家々を爆破し始めた。

 

私達は急いで近所に避難しました。
朝、自分の家を見に行くと、ほぼ完全に破壊されていた。」

 

「インティファーダ以前は、イスラエルで働いていました。
以前の生活レベルは平均的な生活の70%ぐらいでしたが、今の状況はゼロです。
ここでの生活はブルドーザーや戦車、銃撃、殺戮の恐怖の下にあります。」

 

「我々がいつも聞くのは『会談、会談』。もううんざりです。

 

インティファーダが始まってこの二年半、・・・日々悪くなる一方です。
以前はパレスチナ人が2,3人殺されたニュースを聞くと、世界中にその話題が広がりました。
しかし今では毎日15人、20人が殺されている。

 

また毎日、全体で60軒、100軒の家が破壊されている。」

 
Explanation
Anyone of his family members didn’t die, but he explains the situation of Gaza well.
A fear of death, hopeless life, and indifference rule them.

 

The reason why Israel destroys all houses of Rafah is to cut off supporting terrorism from the Egypt.

 
説明
この家族から死者は出ていないが、ガザの状況をよく説明している。
死の恐怖、絶望的な生活、無気力が支配している。

 

イスラエルがラファ一帯の住居を破壊し更地にするのは、エジプト国境からのテロ支援を断ち切る為です。

 
One reality
一つの現実

 

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< 5. Death toll of both areas by the battle, by visualizingpalestine >
< 5. 両地域の戦闘による死者数 >
Dead persons of Palestinian are much more than Israel, and the killing continues after the Gaza withdrawal in 2005.

 

This continues the next time.

 
圧倒的にパレスチナ側の死者が多く、2005年(ガザ撤退)以降も殺戮は続いている。

 
次回に続きます。

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Bring peace to the Middle East! 28: about terrorism 8 : terrorists and a conscientious objector


中東、戦争と平和 28: テロについて 8: テロ犯と兵役拒否者

 

1

< 1. a suicide bombing in Israel >
< 1.イスラエルでの自爆テロ >

 

We get to the heart of 3 youths feeling desperate in Palestine and Israel.

今日は、パレスチナとイスラエルの3人の若者の必死の思いに迫ります。

 
Farewell note of a suicide bomber
A youth performed a suicide bombing in a route bus of Jerusalem and had written this note three days ago.


…….
I feel blessed in becoming a member of Hamas being a tolerant organization. (annotation 1)
……
First I am murdered in a bomb, and I feel blessed to be able to murder our enemy at the same time.
This is not because I want to murder but because I wish Palestinian live a life in common with other race.
…….
My father and mother, and all the relatives, I was not forced to go ahead this way.
…….
I pray to God for leading my family to heaven through me on the day of judgment.
…….
Please don’t feel sorrow at my departure, and don’t cry.
If God chooses it, we may meet soon in heaven. ”
(annotation 2)

He learned Islam in a graduate school and additionally aimed at lawyer.
However, he expected the Liberation of Palestine, and murdered 20 private citizens by this incident.

Why did he perform this cruel suicide bombing?

 
ある自爆犯の遺書
この遺書はエルサレムの路線バスで自爆テロを行った若者がその3日前に書いたものです。

「・・・・
ハマス(注釈1)という寛大な組織の一員にして下さり、・・・幸せに思います。
・・・・
まず私が爆弾に殺され、同時に敵を殺せることを幸せに思います。
私は殺人がしたいからではなく、パレスチナ人が他の民族と同じように生きることを望んでいるからです。
・・・
お母さま、お父さま、親戚のみなさん、私はこの道を進むことを強制されたわけではありません。
・・・
最後の審判の日、神が私を通じて家族を天国に導くことを、神に祈ります。
・・・
私の旅立ちを、悲しみ、泣かないで下さい。
神が望まれるならば、私達は近いうちに天国で会えるでしょう。」
(注釈2)

彼は大学院でイスラムを学び、さらに法律家を目指していた。
しかし、彼はパレスチナ解放を望み、この事件で民間人20人を殺した。

なぜ彼は残酷な自爆テロを行ったのだろうか?

 

 

2

< 2. Lebanese refugee camp in where battle continues. in July 2007 >
< 2. 戦闘が続くレバノンの難民キャンプ、2007年7月 >

 

Family of a terrorist
A Japanese photojournalist was making a book of photographs of a Palestinian girl.
He visited her family after four years.
Her house in a camp was destroyed by bombardment, and this family lived at a relative’s house in Beirut.


Her mother protested against right wing militiamen who had ruled the camp, so she was hit with a gun, and underwent major surgery.
Her father received a cannonball of Israeli military and was operated on.
Her eldest brother had worked in a factory in the camp but he was arrested by Israeli military.
He was tortured and ousted, then he went to Africa, and has suffered heavy disease.
Her second brother died during a battle in the camp.
The husband of her eldest sister was hit by bomb fragments of Israeli military, and he has suffered total paralysis.
Her uncle received a bullet of radicals to eyes, but narrowly escaped death.
Her younger brother was killed in bombardment. “
(annotation 3)

There was not her older sister (18 years old) here.
A small group of guerrillas that she led entered Israel, and she was caught by Israel after a battle.
She received torture in a prison, but seems to still live.

Many people may think so.
“I can understand her sorrow and hatred, but why does she fight?
Because, there is surely the retaliation of Israel that is much more severe and indiscriminate.”
Maybe these youths merely be hell-bent on revenge?

These two terrorists of Palestine would maybe think as mentioned below.
” At a crisis of destroying our country, we don’t care our own life.”

 

あるテロ犯の家族
日本のフォトジャーナリストがパレスチナの少女の写真集を作っていた。
彼は4年ぶりに彼女の家族を訪れた。
この家族は、キャンプの住まいを砲撃で破壊され、ベイルートの親戚の家に居候していた。
「母親はキャンプを支配した右派民兵に抗議して、銃で殴られ大手術をした。
父親はイスラエル軍の砲弾を受け手術した。
長男はキャンプの工場で働いていたが、イスラエル軍に逮捕され、拷問され、追放されてアフリカに渡り重い病気になった。
次男はキャンプでの交戦中に死亡した。
長女の夫は、イスラエル軍の爆弾の破片が当たり全身不随になった。
叔父は過激派の銃弾を目に受けたが、命を取り留めた。
弟は爆撃で死んだ。」
(注釈3)

そこに彼女の姉(18歳)の姿はなかった。
この姉が率いるゲリラの小グループがイスラエルに進軍し、交戦の末、彼女は捕まった。
彼女は収容所で拷問を受けたが、まだ生存しているらしい。
この収容所は、国際赤十字もアムネスティも立ち入ることが出来ない。

多くの人は思うだろう。
「彼女の悲しみと憎しみは理解出来るが、なぜ戦うのか?
イスラエルのはるかに過酷で無差別な報復が返って来るのに。」
この若者達は単に復讐の鬼と化したのだろうか?

このパレスチナの二人のテロ犯の胸中にあるのは「亡国の危機にあっては、自分の命を厭わない」ではないだろうか?

 

 

3
< 3. Israeli high school students refused to do military service in 2014 >
< 3.イスラエルの高校生が兵役拒否で投獄、2014年 >

 

a statement of a conscientious objector

“……
Our Israeli nation has extended a pure Jewish residential area by force since the founding of the country.
But I cannot understand how a security of the area becomes supported strongly.
I cannot understand how it is useful for our society to do attack being more cruel and large-scale than Palestinian terrorism, for suppressing the resistance of Palestine.
…..
The majority of Israeli people want to change such a situation.
…….
The Israeli military men and capitalists perform every thing to maintain their authority.
………
Our true enemies are these people.
Jew and Arab should confront them together.”
(annotation 4)

This is a statement that third-year high school students in Israel sent to the prime minister when they refused to do military service.
This youth seems to have understood a sentiment of the above-mentioned terrorist.

 
ある兵役拒否者の声明文

「・・・・
イスラエル国家が建国以来、力づくで造ることに固執している純粋なユダヤ人居住地域が、どのように我々の安全を強化するのか私は理解出来ません。
パレスチナのテロによる抵抗を抑圧するために、テロよりもさらに残酷で大規模な攻撃がどのようにして私の社会のためになるのか、私は理解出来ない。
・・・・
大多数のイスラエル国民が、このような事態を変えたいと望んでいます。
・・・
イスラエル軍人と資本家は権力を維持するためにあらゆることを行います。
・・・・
これらの人々が真の敵であり、・・・。彼らにこそ、アラブ人とユダヤ人は共に立ち向かうべきです。
・・・」
(注釈4)

これはイスラエルの高校3年生達が兵役拒否運動を行い、首相宛に出した声明文です。
この若者には前述のテロ犯の思いが通じているようです。

 

4
< 4. A boy throws a stone at an Israeli tank >
< 4.イスラエルの戦車に投石する少年 >

 

Afterword
From the times of the Ottoman Empire to the beginning of the 20th century, Christian, Jew, and Muslim had coexisted peacefully in same town Jerusalem of Palestine.
But this area was transformed into a horrific battlefield due to a large influx of Jewish settlers.

During the initial stage, the Palestinian side did not almost act terrorism to aim at unrelated private citizens and foreigners.
In addition, it was said that the suicide bombing acts counter to Islam, but it gradually came to be allowable for jihad driving out the invader.

After all, as war escalates, growing inequality of military power differentiated how to fight between both groups.
This continues the next time.

 
あとがき
オスマン帝国の時代から20世紀の始めまで、パレスチナではキリスト教徒、ユダヤ教徒、ムスリマは同じ町エルサレムで平和に共存していた。
それが修羅場と化したのは、ユダヤ人の大量入植後のことです。

初期には、パレスチナ側は無関係な民間人や外国人を狙うテロをほぼ行わなかった。
また自爆テロはイスラム教に反するとされていたが、徐々に侵略者を追い出す聖戦の為なら可とされるようになった。

結局、戦争がエスカレートするにつれ、軍事力の差が両集団の戦いの違いになった。

次回に続きます。

 

注釈1
「ハマス」(HAMAS)は,1987年12月,パレスチナ・ガザ地区で発生したインティファーダを契機に反イスラエル運動がパレスチナ全域に拡大した際,同地区の「ムスリム同胞団」の最高指導者シャイク・アフマド・ヤシン(2004年にイスラエルによる掃討で死亡)が,武装闘争によるイスラム国家樹立を目的として設立したスンニ派武装組織。

注釈2
引用要約、「正直な気持ちを話そう」p141より。

注釈3
引用要約、「パレスチナ」p96より。

注釈4
引用要約、「正直な気持ちを話そう」p95より。

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何か変ですよ! 44: 本当に恐ろしいことは・・・


 1

 

安全や平和を守るには我々は何を優先すべきか?

身近な所にその答えはあります。

 

 

2

< 2. 日本の交通事故と銃による死者数 >

 

車社会と銃社会

日本では、交通事故の死者は毎年約4千人、銃による死者は毎年10人ほどで共に減少しています。

米国では、交通事故の死者は毎年約3万人、銃による死者は毎年約3万人で近年増加傾向にあります。

尚、米国の人口は日本よりも2.5倍多い。

 

両国共に、非常にたくさんの人が死んでいますが、日本の方が遥かに安全で平和です。

この違いにヒントがあり、最も本質的な視点が隠れています。

 

交通事故と銃犯罪には共通点があり、それは国民が被害者にも加害者にもなることです。

そこで、日本では加害者の発生を減らすべく、警察が交通違反と暴力団の取り締まりを強化することで、共にピークの1/4に減らすことが出来ました。

一方、米国では有効な施策がとれず、特に、銃による死者は増加傾向にあります。注釈1.

米国の一人一丁以上の銃保有率は、明らかに銃犯罪と自殺者の増大を招いている。注釈2.

 

そこには基本的な社会通念の違いがあります。注釈3.

日本では、銃は武器と考えられ禁止されているが、米国では逆に防具または抑止力とみなされ奨励されている。

 

3

< 3. 米国の交通事故と銃による死者数 >

上の図: 米国の銃社会の一面。

下の図:赤線が銃殺人、青線が交通事故死。

 

 

このことから言えること

人々は毎年多くの人が周囲で死亡していても、その事件や事故に自分が遭遇するとは考えず、ましてや加害者になるとは思わない。

しかし、加害者の発生を極力減らすことで、社会の安全性は格段に高まる。

米国社会は、銃によって死者だけでなく、あらゆる犯罪も増大させてしまった。

 

米国はなぜ日本のように銃規制が出来ないのだろうか?

色々理由はあるが、一つ重要なことがあります。

それは一度、銃が蔓延してしまうと、そこから徐々に銃を無くすことが困難だと言うことです。

その理由は、個人にとって銃使用(攻撃)のメリットは明確だが、保有する損失がほとんどないことで保有競争に陥り易いことによります。

しかし社会全体、長期的にみればその損失は非常に大きいのです。

この理解は重要で、最新科学でかなり解明されています。注釈4.

 

 

まだ解決手段は一つ残っており、かつて各国で、日本でも行われたことはあります。

 

 

4

< 4. タカハトゲーム >

重要な用件として、ハトは全員に餌が行き渡るメリット、タカは怪我をするデメリットがある。

 

皆さんに知って頂きたいこと

安全や平和を確保することは容易ではありません。

目先の危険や恐怖に目を奪われ、一歩道を踏み誤ると取り返しのつかないことが起こりうるのです。

そして逆戻りは困難で、行き着くところまで行ってしまうのです。

 

それは日本の明治維新から太平洋戦争への道、米国のトールマンドクトリンからベトナム戦争への道、英国の委任統治領パレスチナから中東戦争への道が語ってくれています。

このことから教訓を得ることは難しいが、一度進み始めると止めることが不可能だったことだけは理解出来るはずです。

 

一つの問題点が判明しても、まだまだ現実の恐怖や他の危険がこの社会にはあります。

 

次回に続きます。

 

 

注釈1

かつて米国の銃保有率は、銃規制世論の高まりを受けて低下傾向にあったのですが、現在はまた高まっている。

米国の二大政党は銃規制と銃擁護と正反対の政策を採っており、州や年代によって銃保有率と犯罪発生に差があります。

 

注釈2

テロ事件が起きると銃が買われ、その必要性が訴えられるが逆効果です。

米国の2003年から10年間の銃による死者は35万人で、テロによる死者は312人で、その差には1千倍の開きがある。(US版『WIRED』より)

むしろ銃が増えるほど、犯罪と自殺者が増える。

米国の自殺は銃によるものが多く、銃の保有率と自殺率はほぼ比例している。

この状況は、私の連載「私達の戦争17~22: 銃がもたらすもの1~6」で詳しく説明しています。

 

注釈3

米国では、憲法で自衛権として銃の保有と自警団が認められています。

これは建国時、英国から銃で独立を勝ち取った事、さらには北米原野を銃で開拓していった経緯が今に尾を引いていると言えます。

この自警団と各州の独立性を堅持する姿勢により、第二次世界大戦後の国連で米国が戦争拡大の主要因であった集団自衛権を強く唱えることになり、米国の離反を恐れた各国が条約に盛り込まざるを得なかったのです。

もし盛り込むことが出来なければ、米国議会が批准せず、国連による団結は瓦解したのです。

 

注釈4

この手の問題は、タカ―ハトゲームと呼ばれるゲーム理論で扱われています。

これは闘争を好む固体と闘争を好まない固体が、一つの集団内で淘汰を繰り返しながら安定する状態をシュミレーションしています。

その結果は多くの人にとって常識とは異なりますが、実際の動物社会と比較しながら研究が続いています。

この理解は、社会や進化への理解を助けてくれます。

本「進化ゲームとその展開」佐伯・亀田編著、共立出版刊をお奨めします。

認知科学、進化論、動物行動学、心理学で研究されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Bring peace to the Middle East! 19: Israeli-Palestinian conflict 1: voices of the young 1


中東の平和を! 19: イスラエルとパレスチナの紛争 1: 若者の声 1

 

 1あ

< 1. the book >

< 1. 本 >

 

I introduce voices of people living in Israel and Palestine where the conflict continues, several times.

My reference comes from the books reported on the actual place.

“Seeing the Middle East and Arab world in films” finished.

 

これから数回に分けて、紛争が続くパレスチナとイスラエルに住む人々の声を紹介します。

現地をルポした本を参照にします。

都合で、「映画に見る中東とアラブ世界」を終了しました。

 

The book

This book was published in 2003.

The book’s title means “would talk about own honest feeling”.

The author is Yagi Kenji, photographer, is addressing the Palestinian issue, and interviewed 100 people locally.

In the book, he introduces voices of Muslim and Judaist, the will of an Israeli refusenik or a Palestinian suicide bomber.

He does 15 common questions to 45 youths and the readers can understand their thought about the conflict.

The targets of the questions are 25 men, 20 women, 22 Judaist of Israeli, 21 Muslim of Palestinian, 2 persons from other religion, and their age is 15-25 years old.

 

I choose five cases from the questions, summarize the result and introduce my impression and the background in twice.

A note, total number of people isn’t equal to total number of the answers because the answers to the questions have the plural number.

 

 

参照する本

著者は八木健二、「正直な気持ちを話そう」(株)たちばな出版、2003年刊。

彼はカメラマンだが、パレスチナ問題に取り組み、現地で百人にインタビューした。

この本ではイスラム教徒とユダヤ教徒、両者の声と、イスラエルの兵役拒否者やパレスチナの自爆テロ犯の遺書も紹介している。

対象者45人に共通の質問15件を行い、若者の紛争への思いや考えがわかるようにしている。

質問の対象者は男25人、女性20人で、イスラル人(ユダヤ教徒)22人、パレスチナ人(イスラム教徒)21人、他宗教2人、年齢は15~25歳です。

 

私は2回に分けて、その質問の中から5件を選び、その結果を要約し、私の感想と背景について紹介します。

尚、質問に対する回答は複数がありますので、件数の合計と人数は一致しません。

 

 

2あ

< 2. Israel and autonomous Palestinian areas >

< 2. イスラエルとパレスチナ自治区 >

Black dashed line indicates the cease-fire line in 1949, green part does the autonomous Palestinian areas, cream part does Israeli territory, and many triangle marks are Israel forces garrisons.

 

黒破線が1949年の休戦ライン、緑色部がパレスチナ自治区、クリーム部がイスラエル支配地域、三角印がイスラエル軍駐屯地です。

 

 

Question, ” What do you think religion? Do you think that God exists?”

Something seeing from the answers

 

Their religious devotion is fervent, and all the Palestinians believe in God.

 

This may be caused by Palestinian is earnest Muslim, and in addition, their religious devotion is deep when the society becomes hopeless.

 

Four Israelis occasionally doubt God and think that God may bring an evil.

As Israel becomes dominant and rich, the young feels war-weariness from the protracted conflict.

 

質問 「宗教とは何だと思いますか? 神は存在すると思いますか?」

回答から見えるもの

 

両者共に信仰心は篤く、パレスチナ人全員が神を信じている。

 

 

これはパレスチナ人が熱心なイスラム教徒であることもあるが、社会が絶望的な時ほど信仰心が高まることに起因しているのかもしれない。

 

4人のイスラエル人は神に時折、疑いを持ち、災いをもたらす場合もあると考えている。

これはイスラエルが支配的で豊かになるに連れ、若者は長引く紛争に厭戦感を抱くようになったことが起因しているのだろう。

 

3

< 3. the conflict and change of the territory >

< 3. 紛争と領土の変化  >

4 pictures are arranged in order of the following titles from the top, the First Middle East War in 1948, Israeli territory (white) keeps spreading, and the Fourth Middle East War in 1973.

The bottom map shows the autonomous Palestinian areas of the current West Bank.

The red lines show the separation barrier described in mentioned “the other son”, and many blue points are the Jewish settlement that keeps increasing.

 

上から順番に、1948年の第一次中東戦争、拡大を続けるイスラエル領土(白色)、1973年の第四次中東戦争を示す。

一番下の地図は現在のヨルダン川西岸のパレスチナ自治区を示す。

赤線が映画「もうひとりの息子」で写されていた分離壁、青い点が増え続けるユダヤ人入植地です。

 

 

Question, “What is the war?”

Something seeing from the answers

 

質問 「戦争とは何ですか?」

回答から見えるもの

 

The most of them consider in common that the war is an evil and due to a stupid act objectively.

 

I feel that they have a feeling of war-weariness from a lot of the answers.

I think that they together come to regard themselves as the victims by the war and terrorism, during half a century from beginning of the war.

 

However, some Palestinians think they should continue the war for justice.

 

両者共に多くは、戦争は災いであり、愚かな行為であると客観的に見ている。

 

若者の多くは、剥き出しの貪欲さや弱肉強食が戦争をもたらしていると考えている。

また、多く回答から厭戦感が漂っている。

戦争を冷静に見ていると言うより、戦争開始から半世紀を経て、共に戦争やテロの被害者との気持ちが強いようです。

 

しかし、幾人かのパレスチナ人は正義の為に戦争を続行すべきだと考えている。

 

4

  • * 4

 

 

Question, ” Who is in fault concerning the war during this 50 – 100 years? “

Something seeing from the answers

 

質問 「この50年から100年の間、誰が悪いと思いますか?」

回答から見えるもの

 

I was surprised they one-sidedly don’t consider each antagonist in fault.

The answers indicating this are 11 cases of Palestinians, and 17 cases of Israelis, and this tendency is strong in Israeli.

 

I include “both side’s fault, no comment, obscurity, all the members, a fate, and nobody’s fault” in the answers.

The second most answers of Palestinian are 8 cases of neighboring countries (Arab, radicals, Jordan, Iran, Iraq), next 6 cases of the U.S.A, 5 cases of the U.K., and 3 cases of Israel.

There was not Palestinian answering own country is in fault.

 

私が驚いたのは、互いに敵対者を一方的に悪いと見なしていないことです。

 

これを示す回答は、パレスチナ人で11件、イスラエル人で17件あり、イスラエル人にその傾向が強い。

この回答には「両方が悪い、ノーコメント、不明、全員、運命、誰のせいでもない」を含めています。

 

パレスチナ人の回答で次いで多いものを挙げると、近隣諸国(アラブ、急進派、ヨルダン、イラン、イラク)の合計8件、米国の6件、英国の5件、イスラエルの3件が続く。

自国が悪いと答える人はいなかった。

 

 

The reasons that I suppose

  • l The Arab countries began the Middle East war, but they suffered a crushing defeat and recognized Israel with forsaking Palestine.
  • l The neighboring countries only arrange everything to suit their own convenience, and don’t rescue Palestine. Jordan of the east side seems to have been regarded that way in particular. And the oil-producing countries such as Saudi Arabia close to the United States, after all, it brings benefits to Israel.
  • l Various radicals repeat terrorism and let the conflict spread, but the neighboring countries (including Saudi Arabia, Syria, Iran) support each radical separately.
  • l The United States performed various interventions in the Middle East and the Islam zone (Arab and Afghan) more than half a century and planted the war and confusion.
  • l The U.K. established a border in the Middle East after the World War I without permission, and finally escaped when it became problems.

 

 

 

私が推測する彼らが悪いと見なす理由

  • * アラブ諸国は中東戦争を始めたが惨めな敗北を喫し、パレスチナを置き去りにしたままイスラエルを認めた。
  • * 近隣諸国は自国の都合しか念頭になく団結して救援してくれない。東隣のヨルダンは特にそう思われており、またサウジなど産油国は米国に擦り寄り、イスラエルを利することになる。
  • * 過激派がテロを繰り返し、紛争を拡大させているが、近隣諸国(サウジ、シリア、イランなど)はバラバラにそれぞれの過激派を支援している。
  • * 米国は、ここ半世紀以上、中東やイスラム圏(アラブとアフガン)に様々な介入を行い、戦火と混乱を植え付けた。
  • * 英国は、第一次世界大戦後、勝手に中東の国境を定め、もめると最後には逃げた。

 

 

The second most answers of Israeli are 2 cases of Arab, 2 cases of anti-Judea, 2 cases of Europe and America (include the U.K.), and next 1 case of the own country.

There wasn’t person answering Palestine is in fault.

 

 

イスラエル人で次いで多いものを挙げると。アラブ2件、反ユダヤ2件、欧米(英国含む)2件、自国の1件が続く。

パレスチナが悪いと答えた人はいなかった。

 

I was surprised there is the anti-Judea in the answers.

When the world criticizes the severe act of Israel, they seem to consider it as age-old discrimination against Jew (anti-Judea).

Israel became more and more high-handed (the right wing) since Prime Minister Rabin (winning Nobel Peace prize) of the moderates was assassinated in 1995 by the Jewish young man objecting to the peace.

As one of the outcome, the separation barrier began to be made in the West Bank since 2002, and the total extension becomes 700km now.

In contrast, the United Nations did censure resolution, and there is certain American Jew group that stood up to have to correct such Israeli excessive act.

 

The young of the both sides don’t blame the responsibility of the war on each other, and consider that the causes are due to both sides, Arabic neighbor countries, and European and American.

 

This continues next time.

 

ここで注目するのは、反ユダヤが挙がっていることです。

世界がイスラエルの苛酷な行為を非難すると、彼らは昔から続くユダヤ人差別(反ユダヤ)と受け取るようです。

1995年に穏健派のラビン首相(ノーベル平和賞受賞)が和平反対派のユダヤ人青年に暗殺されてから、イスラエルは益々、強権的(右翼的)になっている。

その現れとして、ヨルダン側西岸に分離壁が2002年から造られ始め、現在総延長は700kmにもなっている。

これに対して国連は非難決議をし、こうしたイスラエルの行き過ぎを是正すべきとして立ち上がった米国のユダヤ人団体もある。

 

両者の若者は概ね、戦争の責任を相手国だけに押し付けるのではなく、双方またはアラブ周辺国と欧米にあるとみている。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Bring peace to the Middle East! 18: Seeing the Middle East and Arab world in films 11: Israeli-Palestinian conflict 1


中東に平和を! 18: 映画に見る中東とアラブ世界 11: イスラエルとパレスチナの紛争 1

 1

< 1. Jerusalem >

< 1. エルサレム >

 

I introduce the main point of Israeli-Palestinian conflict some times from today.

This is a religious war and ethnic cleansing that have continued for more than half a century.

And, the hatred and the fight penetrated into the Middle East, and their peace fades away more and more.

 

今日からイスラエルとパレスチナの紛争の要点を紹介します。

この争いは半世紀あまり続く宗教戦争であり民族浄化です。

そして、憎しみと戦いは中東に蔓延し、平和は益々遠のいている。

 

 

 2

< 2. Israeli-Palestinian conflict >

< 2.イスラエルとパレスチナの紛争 >

Upper photo: a suicide bombing in Israel.

Lower photo: Israeli attacked on the Gaza Strip.

 

上の写真: イスラエルでの自爆テロ。

下の写真: イスラエル軍によるガザ攻撃。

 

The beginning of this conflict

The conflict began between Jew who came over and Palestinian who was living in there from before.

In the early 20th century, a Judaist, Muslim and Christian had coexisted in the area of present Israel.

However, Jew of Europe started movement for rebuilding their nation on Palestine from the end of the 19th century. (Zionism)

 

After the First World War, the U.K. that had governed Palestine supported the movement first, and the League of Nations accepted the establishment of their nation, too. (Balfour Declaration in 1919, and British Mandate of Palestine during 1920-1948)

While the Holocaust attracted sympathy after the Second World War, the U.K. continued to limit immigration to Palestine to control the collision incidents that happened frequently by a Jewish rapid increase.

However, this intensified anti-British struggle by Jewish radicals, the U.K. gave up the mandatory administration by a large-scale blast incident, and entrusted the United Nations with the issue. (King David hotel bombing in 1946)

Then, the United Nations acknowledged that an Arab and a Jew divide this ground and are independent. (United Nations Partition Plan for Palestine in 1947)

The Jew received this and performed the establishment of Israel in 1948, but the Arab refused it.

 

During this time, the conflict became more intense, the Middle East war between Israel and the Arabic countries broke out at last in 1948, and occurred four times in total by 1973.

After that, the terrorism by Palestinian side, and the military offensive and rule expansion by Israel continue. (Lebanese Civil War, Gaza War, construction of separation barrier, and territory expansion)

Many Palestinians became refugees in the shadow of the conflict, and a Jew in the Middle Eastern was persecuted adversely.

 

The films that I already introduced, “ Lawrence of Arabia” “Schindler’s List” “ the other son” vividly talks about these process.

 

 

紛争の発端

争いの発端は、以前から住んでいたパレスチナ人と、後からやって来たユダヤ人にあります。

20世紀始めには、イスラム教徒、キリスト教徒とユダヤ教徒が今のイスラエルの地で共存していました。

 

しかし、19世紀末からヨーロッパで、ユダヤ人が自分の国をパレスチナに再建しょうとする運動を起こします。(シオニズム)

それを第一次世界大戦後、パレスチナを統治していた英国が最初に支持し、国際連盟も建国を認めます。(1919年のバルフォア宣言、1920-1948年のイギリス委任統治領パレスチナ)

第二次世界大戦後、ホロコーストが同情を集める一方、英国はユダヤ人急増で頻発する衝突事件を抑制する為に、パレスチナへの移民制限を継続していた。

しかしこれがユダヤ人過激派による反英闘争を激化させ、大規模爆破事件を切っ掛けに英国は委任統治を諦め、英国は国連にその後を委ねることにした。(1946年のキング・デイヴィッド・ホテル爆破事件)

そして国連はこの地をアラブ人とユダヤ人が分割して独立することを認めた(1947年のパレスチナ分割決議案)

これをユダヤ人は受け入れ、1948年にイスラエルを建国するが、アラブ人は拒否した。

 

この間、紛争は激しくなる一方で、ついに1948年、イスラエルとアラブ諸国との中東戦争が勃発し、1973年までに計4回の中東戦争が起こった。

その後も、パレスチナ側のテロとイスラエルによる軍事攻勢と支配拡大が続く。(レバノン内戦、ガザ侵攻、分離壁建設、領土拡大)

その影で多くのパレスチナ人が難民となり、逆に中東のユダヤ人は迫害された。

 

既に紹介した映画「アラビアのロレンス」「シンドラーのリスト」「もうひとりの息子」はこれらの経緯を如実に語っています。

 

 

What are Jew and Palestinian at odds with each other?

What is Jew?

 

Most people of Israel are Jew who came from all over Europe, Africa, the Middle East, and the world.

Now, by the law of Israel, Jew is defined by being born from Jewish mother or becoming a believer in Judaism.

There is a freedom of religion in Israel, so 5,200,000 Judaists, 1,100,000 Muslim, and 140,000 Christian coexist.

 

それでは、対立するパレスチナ人とユダヤ人とは何か?

 

ユダヤ人とは何者か?

映画「もうひとりの息子」を見て、両者の違いに疑問を持たれた方もおられるかもしれません。

 

イスラエル国民の多くはヨーロッパやアフリカ、中東、世界中から来たユダヤ人です。

現在、イスラエルの法律ではユダヤ人はユダヤ人の母親から生まれたか、ユダヤ教に入信

しているかです。

イスラエルには信仰の自由があり、ユダヤ教徒520万人、ムスリム110万人、キリスト教徒14万人が共存しています。

 

 

 

3

< 3. well-known Jewish American >

< 3.皆さんが良く知っているユダヤ系の米国人 >

 

From the top, scientist Einstein, diplomat Kissinger, economist Bernanke, investors George Soros, and actress Natalie Portman.

 

They emigrated to the United States or are descendant of the emigrant, and the most of them came from Europe.

Jew is a group attaching great importance to Judaism beyond language, and race.

And they have influence in the world as well as the United States and have a strong sense of unity.

 

上から科学者アインシュタイン、外交官キッシンジャー、経済学者バーナンキ、投資家ジョージ・ソロス、女優ナタリー・ポートマン。

 

彼らは米国に移住したか移民の子孫で、多くはヨーロッパから来た人です。

つまり、ユダヤ人は民族や人種、言語を越えたユダヤ教を重視する集団なのです。

そして、彼らは米国のみならず世界に影響力を有し、強固な一体感を持っているのです。

 

Who is Palestinian?

Until the beginning of the 20th century, they are Arab that has always lived in Palestine.

The origin is old, and is considered from that Jews were converted to Islam and became an Arab.

In other words, Jew should be nearer racially than the Israeli that came later.

 

一方、パレスチナ人とは何者か?

20世紀初めまで、パレスチナに以前から住んでいたアラブ人のことです。

古くはユダヤ人などがイスラムに改宗しアラブ化したのが起源です。

つまり、人種的には後から来たイスラエル人よりはユダヤ人に近いはずです。

そうは言っても、この地は三大陸の結節点なので、多くの民族や人種が入り混じっているのですが。

 

 

 4

< 4. well-known Middle Eastern Arabic person >

< 4.著名な中東アラブ系の人 >

 

From the top, current President of Syria Al-Assad, Nissan’s CEO Carlos Ghosn, late President of Egypt Nasser, scholar Edward Saeed, and actor Omar Sharif.

 

上から現シリア大統領アサド、日産CEOカルロス・ゴーン、故エジプト大統領ナセル、学者エドワード・サイード、俳優オマル・シャリーフ。

 

What was the cause of the fight of both?

Jew had survived the history of the persecution for 2000 years, and therefore they strongly united together, and demanded a ground of living in peace.

During the Great War, Europe ruled Palestine and permitted the Jewish settlement as an atonement of the persecution.

However, people to immigrate en masse were only strangers to people that have lived from old times in there and been suddenly ruled.

Thus, the collision incidents advanced to war at last.

 

This continued next time.

 

両者の争いの原因は何だったのか。

結局、2千年の迫害の歴史を生き抜いたユダヤ人が、それゆえに強く団結し、安住の地を求めた。

そして、大戦の間隙を縫って、ヨーロッパがパレスチナを支配し、迫害の罪滅ぼしとユダヤ人の入植を許した。

しかし、従来から住む支配された人々にとって、大挙して入植する人々はよそ者に過ぎなかった。

かくして、小競り合いは遂に戦争へと進んだ。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

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