Series : 私達の戦争

私達の戦争 50: 未来に向かって4、最終稿


1未来

* 1

 

「隣国との融和」を取り上げ、この連載の最後とします。

長らくお読み頂きありがとうございました。

 

戦争と融和

攻守共、戦争には軍事力と、戦争に同意する国民の存在が不可欠でした。

この国民の同意は、相手国への恐怖や歴史的な遺恨が根になり、無知や無理解、先入感が相互に災いし、やがて雪だるま式に膨らんでいきます。

この悪循環を断ち切ることはなかなか困難なようです。

 

人類はここ数千年の間、身近な紛争を調停し予防する為に素晴らしい法体系(正義と罰則)を発展させて来ました。

さらには憲法を創始し、国家権力を制御することにも手をつけるようになりました。

しかし国家間の紛争の解決や予防には、二度の国際連合創設をもってしても不備な面が目立ちます。

世界は国家を越える紛争の解決と予防のシナリオや法体系を今だ模索中なのです。

 

さらに日本は他国から侵略された経験がなく、侵略後も反省を実感することなしに経済発展を成し遂げることが出来た。

後者は、一つには朝鮮戦争が起こったことにより、米国(GHQ)はそれまでの日本復活阻止と非武装路線から、反転して日本を赤軍への防波堤に育成することにしたからでした。

これは不幸中の幸いとも言えるが、大戦後のドイツとフランスとの融和、さらにEUへの統合を考えればチャンスを逃してしまった。

 

結局、融和が苦手な隣国と日本も、自ら融和を図らなければ戦争の危機は深まるばかりです。

 

 

融和を阻むもの: 無知・誤解・先入観・扇情

 

2日中の印象

< 2.日中で、互いの印象の推移。言論NPO。 >

*紫線: 中国での、日本への好意的でない世論の割合

*赤線: 日本での、中国への好意的でない世論の割合

 

日本では、2006年まで嫌中感情は40%を切っていたが、2007年に急に悪化した。

中国では、2005年に高かった反日感情が2007年には低下し、2009年にはまた急増し、2013年には日中共に90%まで上昇した。

この期間、尖閣諸島を巡り台湾、中国、日本がつばぜりあいを行っていた。

2005年、日本は尖閣諸島の灯台を国有化した。

2007年、中国は尖閣諸島付近で海洋調査を始め、領有権を主張した。

2009年、日本は周辺海域に巡視船を派遣した。

2010年から12年にかけて、東京都知事の発言が切っ掛けとなり、日本は国有化を決定した。

ここで重要なことは、小さな島を巡る対立だが、互いに報復措置を繰り返している間に、両国民の嫌悪感が相乗して高まっていったことです。

この手の事例は、日露戦争後、日中間で幾度も繰り替えされて来た。

 

3軍事脅威

< 3.日中で、互いに軍事脅威を感じている割合。言論NPO、2013年。 >

 

日本にとっての脅威は北朝鮮が一番であり、次いで中国となる。

中国にとっての脅威は米国が一番であり、次いで日本、私達が恐れる北朝鮮と韓国にはほとんどない。

これは、日米軍事同盟の強化が中国を非常に刺激する事を意味する。

さらに深読みすれば、北朝鮮は中国の懐にあるので中国次第で脅威が薄らぐこと示唆している。

 

4日中の紛争

< 4.日中で、「将来、日中間で戦争があるか?」との質問に対する回答。言論NPO、2013年。 >

*左円が日本、右円が中国の世論。

*濃い青が数年以内、薄い青が将来に戦争勃発を予想している。

*赤と黄色は戦争が無いと予想している。

 

中国では、日本の軍事脅威53.9%相応に戦争勃発の可能性52.7%を感じているが、日本では脅威61.8%に比べ戦争の恐れを感じていない(23.7%)。

日本人は戦争勃発を甘く見ているが、中国人は切実なものと感じている。

この温度差を日本側が理解しておかないと、不用意に虎の尾を踏むことになる。

太平洋戦争開始時、日本の首脳が米国を甘く見ていたように・・。

 

5GDPシエア

< 5.世界のGDPシェアの推移。楽天証券。 >

今後、アジアの東部から南部一帯が世界経済の中心になることでしょう。

 

6世界への影響度

< 6.16年後、46年後の世界のGDPシェア。OECD。 >

 

日本国内で、長年、中国は経済破綻すると言われながらも、ついに日本を抜き米国に迫っています。

そして16年後、中国の経済力は米国の1.6倍になりそうです。

2013年の中国の軍事費は米国の1/5に過ぎませんでしたが、米国と同率の軍事費を使うとして逆に1.6倍の軍事費を持つことになります。

確実に中国の影響力は増しており、世界を牽引するアジアにあって中国とインドが中心になっていくことでしょう。

 

7世界への影響度

< 7.「世界に与える影響が良いか悪いか」を聞いた結果。BBC,2013年。 >

*世界22ヵ国で16ヵ国についての世論調査。

 

良い影響を与える国と世界が評価している順位は日本4位、中国9位、韓国10位でした。

嫌中・嫌韓でおとしめる風潮が強いが、世界は日本と同様に隣国も評価している。

ちなみに前年は日本が1位、中国が5位だった。

 

皆さんに質問があります―日本の常識と世界の常識の差

1. 中国に進出している外国資本で最大の国は何処でしょうか?

2. 日本の貿易相手国で最大の国は何処でしょうか?

 

答え: 1.日本。 2.中国。

日本と中国は経済的に最重要のパートナになっている。

 

3. 地球幸福度指数ランキングで中国??位、韓国68位、日本75位、米国114位。

* 2009年度、英国の環境保護団体発表。持続可能性を考慮し、環境負荷と国民の満足度を評価。2006年度でも似たようなランキングでした。

4. 幸福度ランキングで米国6位、日本21位、韓国??位。

* 2013年度、OECD発表。中国は非加盟で無し。2011年度、米国2位、日本22位、韓国24位。

5. 人間開発指数ランキングで米国5位、韓国15位、日本??位。

* 2014年度、国連発表。中国記載なし。2009年度、日本9位、米国13位、韓国26位。

 

答え: 3.20位。 4.27位。 5.20位。

評価方法と年度によりバラツキはあるが、大半の人が抱いている隣国のイメージとは異なるはずです。

それにしても韓国と日本は似た水準にあります。

 

6. 民主主義指数ランキングで米国17位、韓国??位、日本22位、中国136位。

* 2010年度、英国の研究所発表。

7. 世界報道自由ランキングで、米国46位、韓国57位、日本??位、中国175位。

* 2014年度、国境なき記者団発表。

 

答え: 6.20位。 7.59位。

この二つは戦争へと暴走させない為に、国民にとって重要な指標です。

中国は独裁国家に近いのですが、それでも遅ればせながら民主化への改革は進んでいます。

韓国も以前は軍事独裁の後遺症で民主度は低かったが、急改善し日本を追い抜きつつあります。

 

世界報道自由ランキングが2010年から2014年にかけて大きく後退しました。

この悪化は福島原発事故での民主党政権の対応のせいだと噂されています。

ここに日本が再び暴走しかねない深刻な理由が隠れているのです。

それは、日本の政治(官僚と政権)に都合の悪い情報を隠すことが良しとする体質があり、この悪弊は染みついたものです。

この報道ランキングの日本の順位は2002年から2010年まで26,44,42,37,51,37,29,17,11位、2012年から22,53,59位でした。

元々、日本の報道は先進国の中でレベルと自由度が低い上に、震災後、益々悪化しています。

これは機密保護法、NHK経営委員などの問題に呼応しています。

これは内部告発が出来ない日本の組織文化に由来し、原発の安全神話やかつての戦争推進に加担することになりました。

 

最後に

私達は、隣国の情報を残念ながら直接入手することが出来ません。

多くは隣国と言葉が通じず、友人もいないでしょう。

どうしてもマスコミなどのフィルターを通して知ることになります。

しかし政府や優勢な報道機関は、どうしても現状を支えている米国寄りになってしまいます。

 

私達は、疑いを持って、自ら広い範囲に情報と友人を求めて、隣国を正しく評価しなければ、将来の道を誤ることになるでしょう。

 

三ヶ月にわたる長期連載にお付き合い頂き、誠にありがとうございました。

少しブログを休ませて頂きますが、また始めますのでよろしくお願いします。

 

 

 

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私達の戦争 49: 未来に向かって 3


1イースター島

  • * 1

 

前回、起きるかもしれない戦争を想定しました。

今回は、その予防策を検討します。

 

 2スコトランド

  • * 2

 

対処法

前回、戦争毎に日本が取るべき対処案A,B,Cを記しました。

Aは自国の軍備増強で、Bは日米同盟強化で、共に既定路線の強化策です。

Cは、それぞれに応じた理想的な策ですが既定路線から外れています。

 

従来の対処法の是非

Aの軍備増強案 : 即、防衛と抑止効果を実感出来るのだが万全ではない。むしろ遅れて軍拡競争と敵意(警戒感)を生み、紛争の起爆剤になりやすい。

 

説明

如何なる敵と核兵器をも撃退する軍事力を所有することは無理です。

世界1位の米国の軍事費70兆円に対して6位の日本は5兆円で到底追い越すことは出来ないし、また軍拡競争に陥ります。

既に見てきたように、軍事力強化と仮想敵国想定自体が互いに疑心暗鬼に走らせ、多くの敵意を生みだしました。

また不用意な境界線などの作戦配備は、中ソ国境のダマンスキー島事件のように紛争勃発の引き金になりやすい。

 

軍事力は必要ですが、歴史が示すように軍事依存体質は紛争の火種を大きくしていきます。

 

3パレスチナ

  • * 3

 

Bの日米同盟強化: 軍事同盟は一国の軍事力不足を補え、抑止力を高めるのだが、これも問題を含み、個別の日米同盟には別の問題がある。

 

説明

集団的自衛権で見たように、通常、仮想敵国を含む同盟と対立することなり、これもまた軍拡競争と敵意(警戒感)を生むことになる。

大規模な同盟対決は、冷戦下のように頻発する代理戦争と、開戦の頻度こそ低いが、一度起きれば途方もない大きな戦争に発展することになる。

 

同盟を何処と結ぶかは、戦史が示すように国の命運を分けます。

中立の選択肢もあるが、これは戦争を避ける妙手ではあるが、孤立に繋がるのでグローバル化時代には合わない。

米国と結ぶのは、いざ戦争になっても軍事援助が期待出来、これが抑止力になると言う立場です。

この可能性を否定しませんが、所詮、米国が主で日本は脇役であり、米国にとって日本は防波堤に過ぎず、始まればベトナム戦争やイラク戦争の二の舞になるでしょう。

既に見てきましたが、抑止力は不確実なだけでなく、災いの種にもなりました。

 

同盟が目指すべきは、第一に紛争や戦争を予防することにあります。

その為には、最も紛争が起きやすい、国境を接し過去の怨念がくすぶっている隣国と融和を目指すべきです。

少なくとも、隣国と対立する国(米国など)との同盟強化は火に油を注ぐようなものです。

但し、現時点での隣国との軍事同盟は時期尚早でしょう。

第一次世界大戦前、英国は戦争を回避するために急膨張するドイツと同盟を結ぼうとしたがうまくいかず、結果的にドイツ包囲網(英仏露)で対立する結果になった。

 

また覇権国家=軍事大国はやがて気ままで横暴な政策を取り始めるようになり、これがまた紛争の原因にもなります。

中近東やアフリカ、中南米の内戦の原因は、かつての植民地政策の後遺症が大きいのですが、後に米国が強引な介入(裏でも)したことも大きく関わっています。

米国は両大戦までは孤立主義で、外国に干渉しない立前だったのですが、今や、軍事派遣では世界をリードしています、すべてが悪いわけではないが。

さらに米国はそのこともあり、武器生産では世界トップであり、紛争を熾烈にする武器輸出が重要な産業になっています。

 

4アフリカ連合

  • * 4

 

予防策の基本とは

それでは戦争を根本的に予防するには、何が重要なのでしょうか。

 

暴挙に出ないように各国の軍縮

銃社会で考察したように、軍事増強は抑止力よりも戦争の可能性を高めます。

かつて世界は軍縮会議を幾度も行った実績があり、核兵器では二ヵ国間で合意が進んでいます。

一国だけよりも、各国の合意のもとで全体に漸次軍縮を図ることです。

そして通常兵器と核兵器の生産と流通量を減らし、全体で兵器を管理することです。

 

紛争調停と違法軍事行動の制圧

当事者間での紛争調停や一国だけの防衛・撃退では限界があり、放置すれば軍拡競争、泥沼に入り込みます。

これを防ぐには、周辺国や中立的な国(紛争当事国から信頼されている国)が参加して、紛争調停や違法軍事行動への制圧を行うことです。

現在、これは米英主体か希に国連が主導して行うこともあるが、恣意的か不完全です。

恣意的な軍事行動は反発を蓄積させます。

現在、NATOやアフリカ連合、ASEANなどが機能しています。

出来るだけ近隣から広域で、多宗教と多民族が参加して合意形成を行うべきです。

 

5asean

  • * 5

 

周辺国との融和を図る

いつの時代も紛争と犯罪の種は尽きません。

ましてこれからはその要因は深刻で大きな広がりを持つようになっています。

一番重要なのは、紛争の要因を積極的に取り払うことです。

 

軍事力は警察と同じで不可欠ですが、軍事力使用には歴史上繰り替えされている大きな問題があります。

紛争解決の戦争の結果、多くの血の代償としてオール・オア・ナッシングになり易く、これが次の紛争の種を宿すことになります。

 

紛争を予防するには、先ず隣国から、過去の軋轢を無くしていく努力と工夫、歩み寄りが最も大事です。

 

これらは常識的な範疇の予防策で言い古された感がありますが、これしかないように思います。

 

ここでまた、おそらく次の厳しい一言が返ってくるでしょう。

「最低で、たかり罵るしか能のない隣国をどうして信頼出来るのか、現実離れも甚だしい・・」

 

次回は、この問題を検討します。

 

 

 

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私達の戦争 48: 未来に向かって 2


 1フォークランド紛争

  • * 1

 

今日は、日本が将来巻き込まれるかもしれない戦争を想定します。

ほとんど予想は外れるでしょうが、一つでも当たれば悲惨です。

しかし、そこから見えてくるものがあります。

 

 2日露戦争

*2

 

起きるかもしれない戦争とは

  • 1.北朝鮮による核攻撃

被害 : 核ミサイル着弾1発で死者数十万人。

可能性: 常識的には無いが、ヒトラーがベルリンを廃墟にして自死した例もある。

対処 : A=完璧な迎撃体制。B=日米同盟による核の傘。C=日中韓の包囲網。

  • 2.韓国と国境紛争で開戦

被害 : 核攻撃無しで死者数万人以下になればよいが、他国参入により拡大か。

可能性: 紛争開始でも米国の仲介を期待出来るが、日韓の感情的亀裂が障害。

対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=韓国と融和、さらに中国とも。

 

  • 3.中国と国境紛争で開戦

被害 : 中国の核と軍事力により死者数百万人を越えることも。

可能性: 対立する米国仲介の効果低い。核攻撃無しで米軍援護を想定しても、日本は防波堤に過ぎず、決着のつかない戦場になるかも。

対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=中国と融和、さらに韓国とも。

 

3イスラム国

*3

 

  • 4.テロ攻撃

被害 : 日本の原発一基が狙われても最大死者数十万人。

可能性: 現在、テロの可能性は低いが、恣意的な海外派兵が続くと報復される可能性が高く、海岸の原発は危険。またテロ集団には核抑止力が効かず、防御が困難。

対処 : A=核施設の防備強化。B=日米同盟強化。C=世界中のテロ集団を抑制する為に世界的な武器管理と軍事強制力・警察力が必要。

 

  • 5.世界大戦

被害 : 核攻撃なしで、死者は世界で1億人以上、日本で数百万人以上。

可能性: 以下の要因が絡み合い、地域紛争から世界大戦になるかも。

  • イ.地球規模で地下資源枯渇と農水産資源の限界。人類が初めて経験し、秒読み段階。
  • ロ.世界中で経済格差増大(南北問題)、発展はしているが不満鬱積か。
  • ハ.繰り返すたびに巨大化している経済恐慌、米国発の10年毎の金融危機など。
  • ニ.既存大国と新興大国のパワーバランスの変化、世界の戦史が示している。
  • ホ.武器の蔓延とテロ集団の国際化で国境を越え広域化する紛争。
  • ヘ.今次大戦後、融和が進んでいない地域(特に東アジア)は、第一次から第二次世界大戦に至る同じ轍を踏むかも。

 

対処 : A=軍備増強。B=日米同盟強化。C=世界的な仲介・調整機能の拡充と世界的な軍事強制力・警察力が必要。

 

4ベルリン陥落

*4

 

  • 6.核戦争

被害 : 1発のミサイル攻撃から連鎖して作戦配備中の数千発が発射され、一瞬にして世界の数億~数十億人が死亡。

可能性: 核拡散を防止出来ないため、安上がりの軍備である核兵器が蔓延し、偶発や想定外の事件で今後勃発の可能性は高まる一方。

対処 : A=完璧な迎撃体制。B=日米同盟強化。C=世界的な核制限の合意と強制力が必要。

 

5国連

*5

 

これらのケースが起こらない為に、私達はどうすれば良いのでしょうか?

おそらく次の一言が返ってくるでしょう。

「それは専門の軍人や政府に任せれば良い。素人の浅智恵など・・・」

今まで戦争を分析して来ましたが、開戦は指導者達の言動こそが要であり、国民は賛否を示すだけに終わりがちです。

国の指導者達は、よく言えば全体を見ながら、悪く言えば過去と現在のしがらみ(選挙、経済、政党、軍、外交)が足枷となり、平和や安全について国民の目線とは異なるようです。

 

任せていれば、おそらく徐々に深みにはまり、同じ過ちを繰り返すことでしょう。

国民が自ら善し悪しを判断出来なければ駄目です。

国民が世界を見据えて長期ビジョンを持たない限り、戦争を防げません。

 

次回、どのような選択があるかを考えます。

 

 

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私達の戦争 47: 未来に向かって


1橋

  • * 1

 

今まで、私達の身の回りで起きた戦争や軍備について考察しました。

連載を終わるにあたって少し未来に目を向けます。

 

振り返って

この連載では、日本が経験した今次の大戦を振り返り、また戦争や軍備の基本的な概念(自衛、抑止、銃、核攻撃など)を見て来ました。

私が皆さんにお知らせしたかったことは、戦争が如何に起き易く、想像を絶し広範囲に及ぶ悲劇が待っていることです。

 

一度、不用意に足を突っ込むと、当初、国民に戦意が無くとも、また指導者がたとえ避けようとしても、やがて開戦から泥沼へと突き進む可能性が高いのです。

このメカニズムは複雑ですが、太平洋戦争に至る過程を極論すれば、引くに引けない指導者達、熱に浮かされる人々、信じて付き従う人々がそこにはいたのです。

それは半世紀を超える軍事大国邁進の帰結であり、それは数千年の間、人類が繰り返して来た「戦争の甘い罠」でした。

 

今、私がひしひしと感じるのは、戦後半世紀が経ち、悲惨な体験が忘れ去られ、またもや一昔前の熱に浮かされ初めていることです。

その切っ掛けは、超大国の陰りと猛追する大国とのパワーバランスの変化、資源問題に端を発する国境問題などにあります。

しかし、このような転換点は姿かたちこそ変われいつの世にもありました。

人々が、そのことで簡単に踊らされてしまえば、また同じ轍を踏み、何年か後に深い悲しみ包まれることになるかもしれません。

 

2嫌韓

  • * 2

 

戦争はなぜ起きるのか

私はこの連載で詳しく説明しませんでしたが、本連載の「戦争勃発」や「連載、戦争の誤謬」で扱っています。

色々な要因が重なって起きるのですが、一つだけ断言出来る事があります。

戦いは人間が主体であり、悪感情が災いしていることです。

 

たとえ狂信的な指導者が戦争を煽っても、国民が冷静であれば容易に戦争に突き進むことはないでしょう。

しかし恐怖心や嫌悪・蔑視感情を煽られると、人々は容易に賛同し始めます。

当然ながら、指導者がこの手を使うからこそ起きるのであって、多くの民主国家が起こす戦争のパターンと言えます。

 

例えば、あなたに隣国で言葉が通じる友人が沢山いて、隣国のことを良く知っていれば、あなたの反応はどうでしょうか。

隣国と戦うことに国益があるとか、恐怖の根を断つためとか、名誉のためとか、言われても・・・・。

隣国への無知、無関心、無理解が大きな障壁になっているわけです。

理解が進むようになれば、多くの戦争原因である国益の奪い合いでオール・オア・ナッシングではなく、フィフティ・フィフティの妥協が可能になります。

 

3嫌中

  • * 3

 

異論を唱える人もいるはずです。

何も好きこのんで戦争をしたいわけではない。

隣国が先に仕掛けてくるから、隣国が挑発するから、弱みを見せてはならないから、逃げずに行動するのだと・・・。

この問題については既に説明して来ましたが、これも隣国への無知、無理解が拍車をかけている可能性があります。

 

概ね、戦争防止に何が必要かわかっていただけたかと思います。

 

4嫌日

  • * 4

 

ここで注意して頂きたいこと

それでは誰が敵意を煽るのでしょうか?

もし善意ある指導者や国民ばかりであれば、戦争は起こらないのでしょうか?

実は、このような場合にも戦争が起きる可能性はあります。

あまり説明していなかったことを一つだけ取り上げます。

 

それはマスコミの影響です。

現在、過去の戦争を否定的に報道するマスコミが一方にあり、同じ愚を犯してはならないと警鐘を鳴らし続けています。

一方で、過去の戦争を肯定的に報道するマスコミがあり、隣国を非難し続けています。

これは自由な言論の範疇に収まっているのでしょうか。

 

問題点だけ指摘しておきます。

過去に、後者のマスコミ報道が世論を席巻し、戦争に突き進んだのが半世紀から1世紀前のことでした。

それこそほとんどの報道や言論界が、徐々に好戦的になって行きました。

この手の報道は、政府と同調する時、いっそう勢いを得て危険度が高まります。

この問題を避ける一手として、欧米はヘイトスピーチの禁止や、虐殺事件などの否定報道の禁止を定めているのです。

最近、日本の元駐中国大使の弁によると、日本のマスコミ全体が中国の悪い事だけを報道する傾向にあるそうです。

 

5newsweek

*5

 

しかしもう一つ問題があります

それは明確に表面化していないのですが、日米関係です。

日本が今あるのは米国のおかげであり、その影響力は経済・金融・外交・防衛に深く根付いています。

米国にとって、日本は東アジアに対する防波堤であり橋頭堡であり続けています。

日本が米国から離脱し、東アジアと一体になることは、米国にとって最大級の危険要因です。

当然、これを阻止する為にはあらゆることが裏で行われるでしょう。

そのような例はGHQ以来、日米の密約、世界でのCIA暗躍などに見られます。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

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私達の戦争 46: 集団的自衛権とは


1NATO

< 1. NATO軍 >

 

今まで自衛と抑止、核抑止論を見て来ました。

最後に、集団的自衛権の基本的なところを見ます。

 

集団的自衛権とは

「国連憲章第51条で加盟国に認められた、ある国が武力攻撃を受けた場合、これと密接な関係にある他国がその武力攻撃に協同して反撃する権利」広辞苑より。

 

国連が認めるこの権利に問題があるように思えない。

おそらく、多くの人はそう思われるのではないでしょうか。

そこで、歴史上有名な軍事同盟から、集団的自衛権の功罪を見ます。

両者は、厳密には異なるでしょうが、基本的な働きでは同じです。

それは勝利や交戦防止に役立っこともあったが、最後には破滅をもたらすこともあった。

 

2ペロポネソス

  • * 2

 

様々な軍事同盟がもたらしたもの

*ペロポネソス戦争

紀元前5世紀、アテネとスパルタがギリシャ諸国を二分する同盟に分かれ戦い、これにより全土が疲弊することになった。

ことの発端は、ペルシャ帝国の侵攻を防ぐ為に軍事同盟が創られ、アテネが盟主となった。

やがてアテネは絶大な権益を得て、益々軍事大国を目指し強権的になっていきました。

これに反発し警戒する勢力がスパルタを盟主とする同盟を結び、アテネ同盟(デロス同盟)と戦うようになった。

 

3兵馬俑

  • * 3

 

*秦の統一

紀元前3世紀、春秋戦国時代の末期、秦国は残り6ヵ国を滅ぼす為に遠交近攻策を取り、ついには天下統一を成し遂げた。

これは先ず遠方の国と同盟を結び、近隣の国から征服し、漸次征服を拡大させる戦略でした。

日本の戦国時代、隣国を牽制する為に、その背後の国と同盟を結ぶことがよく行われました。

 

4第一次世界大戦

  • * 4

 

*第一次世界大戦

1914~18年、主にヨーロッパで、次々と主要各国が参戦し史上最初の総力戦が行われた。

その半世紀ほど前から、ヨーロッパの列強5カ国とロシアが勢力拡大と交戦防止のために、二手に分かれて同盟を結んでいた。

民族問題で火種を抱えていたバルカン半島も、この余波を受けて二つの同盟に分かれて組みしていた。

バルカン半島で起きた、一つの暗殺事件を切っ掛けに、同盟国を巻き込んで連載的に戦火が拡大し、遠方の日米すら参戦することになった。

 

5第二次世界大戦

  • * 5

 

*太平洋戦争

既に、独伊がヨーロッパで、日本は中国との戦争を始めていた。

そこで日本は強力な軍事同盟を日独伊と結ぶことにより、英米ソとの交戦を避け、戦況の打開を図った。

しかし、それがすべて裏目に出ました。

 

軍事同盟の功罪

歴史的や私たちの身の周りにおいて、弱い者同士が手を握り、防御するのは自然の成り行きです。

しかし、既に「銃がもたらすもの」「自衛とは」「抑止力とは」「核攻撃」で見たように、各国が軍事同盟に頼り、外交手段(意思疎通)を閉ざしてしまうことは、双方が疑心暗鬼になり、より敵意を増大させ、軍拡競争に突入してしまうのです。

そして、ちょっとした誤解や事件から戦端が開き、同盟締結前と比べものにならない戦火の拡大となるのです。

日本においても、豊臣政権から江戸幕府にかけて天下統一がなされると、配下の大名の勝手な婚姻が禁じられました。

同盟に至る行為は大きな武力蜂起に繋がると危険視されたのです。

 

軍事同盟―集団的自衛権は、戦争と平和に対して、両刃の剣なのです。

 

国連憲章第51条の意味

それではなぜ国連は戦争を招き易くなる集団的自衛権を認めたのでしょうか?

そこには国連のディレンマから抜け出す苦渋の選択があったのです。

国連参加の中小国は、大国の拒否権や米国が主張する集団的自衛権を問題にした。

米国にとって集団的自衛権は連邦制の軍隊やモンロー主義もあり国是だった。

また拒否権などにより安全保障理事会による武力攻撃への強制行動が間に合わない場合、自衛権と集団的自衛権が認められていれば、各国は対処出来ることになる。

しかし一方で、それらを認めないことで米やソ連が国連から離脱することになれば分裂が生じ、これまた戦争の起因になることが懸念された。

こうして条文は成立した。

 

その後、度重なる拒否権の行使は、多くの強制行動を不可能にし、またNATOやワルシャワ条約機構などの集団的自衛権に基づく同盟が生まれた。

結局、矛盾を孕んだままの妥協であった。

 

日本国憲法9条との整合性

自衛隊を持つことは、規模にもよるが違憲とまでは言えないだろう。

しかし集団的自衛権については、今まで政府は違憲と解釈して来た。

一方、政府が解釈変更を絶対に行ってはならないわけではない。

残念なことに、日本の違憲審査制度が確立していないので、勝手な解釈変更を正す手段がないのが致命傷です。

 

米国の場合は、成文憲法の制定が最古であり未完とも言えたので、後に憲法修正が行われた。

またかつて議会で解釈変更が行われようとした時、合衆国最高裁がそれを違憲とし、米国では三権分立が機能していることが示された。

 

日本にとって問題は、三権分立が機能しておらず、政府の恣意的な転換を正すことが出来ないことにある。

この状況の中で、集団的自衛権の合憲決定は、蟻の一穴が大きな崩壊をもたらすのと似ていると言える。

 

 

集団的自衛権とどう向き合えば良いのか

既に見たように、国や国民が安易に集団的自衛権に頼ると、敵を作り、戦端を開き易くしてしまい、戦火も増大するのです。

 

最も良いのは、敵意を醸成しない自衛だけを目指し、世界が一つの同盟になることです。

それは取りも直さず国連の正常化であり、安全保障理事会の上述の欠点を正すことが重要です。

日本にとっての次点の策は、EUやNATOのように、かつての交戦国が手を携えることでしょう。

国家間の戦争の多くは国境で起きるので、隣国と手を結ぶことが戦争防止の基本です。

戦争は簡単に起きますが、平和を構築するには誤解を解き融和を築くことが不可欠です。

 

戦争を回避するには長期ビジョンと長期の努力が必要になるでしょう。

 

次回からは、この連載の最後のテーマを扱います。

 

 

 

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私達の戦争 45: 核攻撃 2


    広島原爆ドーム 

< 1. 広島の原爆ドーム >

 

今日は、米ソの核兵器競争を振り返ります。

この競争には立派な抑止論が唱えられていましたが、常識から外れていました。

 

 キューバ危機

< 2. キューバ危機 >

 

冷戦時代の核兵器競争とは

大戦前、欧米にとってソ連は脅威で、その抑えを期待してドイツの軍事化を容認していました。

しかし日独伊が牙を剥くと、米国はソ連と手を握りました。

これも大戦が終わるまでで、米国はソ連の通常戦力の優位を恐れ、核兵器武装で対抗し始めた。

遅れて、ソ連も核開発を成功させ、互いに配備競争に突入します。

この競争が一息つくのは、ソ連の崩壊まで待たなければなりませんでした。

 

米ソ核弾頭備蓄量推移

< 3. 米ソの核弾頭備蓄量 >

 

米国の動き―グラフ3の青線

物理学者アイシュタインがヒトラーの核開発に先んじるように米国に進言した。

こうして米国が核兵器を生みだしヒトラーが去り、世界は救われたように思えた。

 

米は大戦後、ソ連の工業力を過大評価し、ソ連の通常兵器による欧州侵略が可能とし、核兵器による壊滅的な報復(抑止)が必要と判断した。

1953から61年在任のアイゼンハワー米大統領は、報復手段として核兵器が安上がりで、「全面核戦争に拡大してしまう大量報復の恐怖」は、ソ連や自国も含めた世界の紛争の抑止になると考えた。

これがグラフの急上昇を示す。

やがて60年代に始まる二つの軍事技術により核備蓄は低下する。

偵察衛星によりソ連の実情を正確に把握出来るようになった。

潜水艦発射弾道ミサイルは奇襲攻撃を受けることなく反撃出来るので、破壊されることを前提にした核備蓄が不要になった。

 

ソ連の動き――グラフ3の赤線

米国は60年代にベトナム戦争に介入し、75年まで泥沼へと深入りしていった。

ソ連は、この時期に米国より優位に立とうとし、核兵器を増産した。

しかしこれはGDPに占める軍事費を20%まで高め、経済を大きく圧迫していた。

この状況の打破を期待されてゴルバチョフ大統領が誕生した。

彼は平和外交を目指し、1990年、米ソの合意により冷戦が終結した。

 

潜水艦発射弾道ミサイル

< 4. 潜水艦発射弾道ミサイル >

 

 

核戦略の変遷―しどろもどろの抑止論

54年、米国はソ連大都市への核兵器による大量報復能力を持つことで、ソ連の核攻撃と通常兵器による侵攻を抑止する「大量報復戦略」を唱えた。

57年、ソ連は、米国の爆撃機の核攻撃に対抗して大陸間弾道ミサイルで先制核攻撃上優位に立った。

こうして米ソはミサイル競争に突入した。

60年代始め、米国は、敵から発見され難い潜水艦発射弾道ミサイルを配備した。

62年、キューバ危機が発生し、米国で「核の大量報復は狂気であり、威嚇として通用しない」と批判が起きた。

そこで米国は、いきなり全面核戦争に陥らないように、攻撃を軍事目標に限定する「柔軟反応戦略」を唱えた。

これ以降、米国は対軍事力に絞った小型の「戦術核兵器」を生みだしていく。

65年、急に米国はソ連の人口1/3と産業施設2/3を確実に破壊出来る「確証破壊戦略」を発表した。

この戦略転換は、増大する軍事費への苦肉の策であった。

 

しかし双方の迎撃体制が進む中、新たな問題が起きた。

互いがあるゆる核攻撃に対して迎撃可能になり、何処か防御に弱点が露わになると、そこを先制攻撃する誘惑に駆られ、むしろ抑止が不安定になるとの考えが出て来た。

そこで米国は、互いの迎撃ミサイルを自制し、先制核攻撃にも生き残れる潜水艦発射弾道ミサイルを保有し合うことで抑止力を残す「相互確証破壊戦略」を唱え、ソ連もこれに同調した。

 

一方、ソ連が巨大な核爆弾を開発し戦略核戦力を急速に増大させ、70年代半ばに米国を凌ぐようになった。

これで疑心暗鬼に陥った米国は、ソ連へのあらゆる核攻撃で、ソ連が想定するだろう米本土攻撃の損害と相殺させるとした「相殺戦略」を唱えた。

その後、弾道数で勝っていたソ連ではあったが経済が低迷し、軍事技術で劣勢になった。

 

83年、レーガンが強気のスターウォーズ計画(ミサイル衛星)を発表したことにより、ソ連は核兵器競争を諦めることになった。

こうして85年、米ソは「抑止のための核兵器」の考えで始めて正式に一致し、核兵器削減を始めた。

 

 

米国核弾頭保有数

< 5. 米国の核兵器総保有数と作戦配備数 >

 

現代の状況

今だ、米ソ合わせて16000発の核弾道を保有し、ミサイルや爆撃機により作戦配備されているものはその内、計4000発ある。

核爆弾の威力は人口密度により異なるが300ktの大都市投下で、40~220万人の被害、死者は半数と予想される。

広島に投下された原爆は15ktだった。

したがって米ソ核兵器の2009年の総出力19200Mtが総べて使用されたら、26~140億人が被害を受け、13~70億人が死亡するだろう。

 

米ソの核兵器競争のジレンマ―不思議な抑止論

大戦後、米ソは互いに抑止力と称して核兵器の製造に血眼になった。

そしてピーク時には、双方合わせて地球人口を7度死滅させるだけの威力を保有するようになった。

「総べてが死滅する恐怖こそが抑止力である」

これこそが冷戦時代、核戦争を逃れた理由だと主張する人々がいる。

この手の軍事研究者は米国で官民学合わせて1万人を超えるのではないか、私にはこれを間違いだと言い切る力は無い。

 

しかし、単純に考えていただきたい。

抑止と言いながら、自国も自滅する兵器を造り続ける判断は正常だろうか?

増大する軍事費は自国経済の足枷となった、ソ連は特に深刻であった。

その権威ある核抑止理論だが、辻褄が合わなくなり幾度も様変わりした。

 

抑止で始めた核兵器であったが、やがて先制攻撃が主眼になり、互いに破壊し合い、残った核ミサイルによる反撃を想定するようになった。

その時、既に国民は死滅し、放射能で生命は永久に誕生出来ないにも関わらず。

ある時は、互いに配備の弱点を曝し確認し合うことにより、先制攻撃の誘惑を排除しようと信頼の手を差し伸べた(相互確証破壊戦略)。

ここまで行くなら、後一歩で和平交渉になるのではないだろうか?

 

もっとも、核開発にばく進した米国もキューバ危機とベトナム戦争の苦さを噛みしめ、それに猛追したソ連も経済悪化に耐えきれず、やっと競争の無駄に気がつき始めた。

それに40年から70年を要し、未だに真の反省に至っていないように見受ける。

 

何かがおかしい、頭が良すぎて、現実が見えないのか、軍事的職務に忠実なだけなのか。

軍産共同体で生きる人ならいざ知らず、一般人には不合理この上なく、抑止論は言い訳にしか聞こえないだろう。

 

より深刻な問題

オバマ大統領のがんばりで米ソの核兵器は減るだろうが、まだまだ多い。

それよりも核兵器が拡散し9ヵ国まで広がり、後続を止めるのが困難な状況にある。

銃社会で検討したように、今後、偶発事故やテロ、狂信的な指導者による核戦争の恐怖は増していくだろう。

 

抑止を単純に信じることの愚かさから抜け出して、新たな平和戦略を生みださないと、それこそ手遅れになる。

 

もう一つは、原発事故で経験したように、核兵器の廃棄も問題です。

ニュースにはならないが、米国のハンフォード・サイトでは放射能汚染が起きている。

 

次回は、別のテーマを扱います。

 

 

 

 

 

 

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私達の戦争 44: 核攻撃 1


   1北朝鮮  

< 1. 北朝鮮のミサイル発射 >

 

今日は、身近な軍事的脅威、核攻撃について見ます。

これは人類が高々ここ半世紀ほどで生みだしたパンドラの箱のようなものです。

ここにも落とし穴があります。

 

2ミサイル防衛

< 2. 日本のミサイル防衛システム >

 

核ミサイル攻撃を防御する

多くの日本人は北朝鮮からの核ミサイル攻撃を現実の脅威と感じておられるはずです。

自衛隊はこれに対応した迎撃システムを持っています。

簡単に、迎撃するとはどのようなものかを見ます。

 

この迎撃は日本海のイージス艦(SM3)と陸上配備(PAC3)の2種類のミサイルで行います。

核ミサイルは北朝鮮から5~10分で日本に到達します。

飛来する核ミサイルを同時に数発~十発(?)打ち落とせるイージス艦が数隻、日本海で常時待機しています。

陸上のPAC3の迎撃半径は25kmなので、全土(四大島のみ)をカバーするには220発以上が均等配備されることが必要です。

同じ場所に5発飛来すると仮定したら、5倍の1100発以上が必要になります。

おそらく現在、全域をカバーせず、重要拠点で同時2~6発までの迎撃を目指している。

攻撃が朝鮮半島北部からPAC3配備地点に2発程度に限定されていれば迎撃可能でしょう。

 

3ミサイル発射

< 3. イージス艦より迎撃ミサイル発射 >

 

都合の悪い攻撃だったら

いつもそうですが、攻撃側は相手の裏をかくもので、最悪の事態を想定することも必要です。

例えば、四発が同時か連続的に発射されたらどうでしょうか。

もし近距離であれば5分で飛来しますので、首脳部の判断が間に合わずイージス艦の発射が間に合わない可能性があります。

残りは陸上の迎撃率75%のミサイルで撃ち落とすとして、確率的に1発は着弾してしまいます。

そうすれば数十万人から百万人は被害を受けることになるかもしれません。

しかし、これも迎撃ミサイルが配備されている所に飛来した場合に限ります。

軍事専門家が指摘する北朝鮮の攻撃ミサイルは命中率が低いので問題ない、軍事拠点についてはそうですが、国民にとって核爆弾とはそのようなものではありません。

 

いくらでも、防御をくぐり抜ける攻撃方法が工夫されるでしょう。

核ミサイルを朝鮮半島北部からでは無く、偽装艦艇や潜水艦、日本海以外からの発射もあり得ます。

さらにおとり弾や高弾道を使うかもしれません。

もっと言えば、爆撃機による核爆弾投下、原発を狙ったテロ攻撃でも、同規模の被害は起こるでしょう。

ミサイルの迎撃率(現在70~80%)が将来向上すると軍事専門家は言明するが、相手のあることを無視してはいけません、いたちごっこになるでしょう。

 

大雑把にみても、けっして迎撃システムが日本本土を核爆発から救ってくれることはないのです。

もっとも無いよりはましですが。

 

4pac3

< 4. 陸上で迎撃ミサイルPAC3発射 >

 

一つの問題は費用対効果・・現実的な想像力で

既に、レーダー網や艦艇などの基本配備や研究開発費(数兆円から将来10兆円)は概ね済んでいますが、今後増やすにはPAC3一発5億円、SM3一発20億円、イージス艦一隻1千数百億円の費用が必要になります。

当然、軍事技術は日進月歩し、さらに軍拡競争が始まれば、今後、更新費用は膨大になるでしょう。

 

実は、核ミサイルの方が高精度な迎撃ミサイルより安いので、北朝鮮が核ミサイルを10から200発所有していると言われているが、200発の可能性も充分あります。

ちなみに北朝鮮のGDPは4兆円に過ぎませんが、軍事費は1兆円ですので。

これは驚くに値しないのです。

現在、地球上で2万発の核ミサイルが陸上のサイロと潜水艦で、核爆弾が爆撃機で臨戦態勢にあるのです。

当然、これらすべてを迎撃することなど不可能です。

 

ここで感じて頂きたいことは、核ミサイルの迎撃は非常に分が悪いことです。

実は、「攻撃は最大の防御なり」孫子か信玄の言葉だと思うのですが。

攻撃、戦争を推奨しているわけではありません。

実はこのジレンマにはまり込んだのが、冷戦時代の米ソの無謀な核開発競争だったのです。

 

5核爆発

*5

 

次回、冷戦時代の米ソの核開発競争を見ます。

そこには恐ろしいほどの人間の創造力と途方もない愚かさが共存しているのです。

 

 

 

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私達の戦争 39: 抑止力とは


1抑止力

*1

 

防衛を語る際、よく抑止力が使われます。

理解しているはずの抑止力ですが、これがまた危うい。

落とし穴を見ていきます。

 

抑止とは

身近な例を挙げると。

適度な運動をし、効能のある食品を摂取し続ければ、病気を抑止することになる。

犯罪の罰則を強化し、警察が逮捕を確実にすれば犯罪が減り、犯罪を抑止することになる。

よく使われる抑止だが、意味合いは単なる予防から、他者の意志を操作して損害を防止する段階まである。

 

2日独

*2

 

攻撃に対する抑止とは

危害や攻撃を加えるおそれのある相手(国)に対して、報復の形で、より大きな損害を与えうることを相手にわからせて,その行為を思いとどまらせることを期待する戦略をいう。

これを聞いただけでは、疑いの無い実効ある戦略だと納得してしまいます。

 

少し例を見てましょう。

日本は米国との戦争を避ける為に、日独伊三国同盟を締結しましたが、1年後、太平洋戦争を開始せざるを得なくなりました。

この同盟の目的は、快進撃しているドイツが世界の覇者になることを確実視した日本が、その軍事力を背景に米英の戦意を挫くことでした(他の理由もあり)。

しかし逆に、中国からの撤退を日本に要求していた米英は、それにより日本が更なる中国侵攻の意志を強めたと考え、大打撃を与える経済制裁に出た。

 

この抑止が逆効果になった理由は、日本が予想していた通りには米国が認識しなかったことにある。

日本は、日独の軍事力が米国に大きな脅威を与えると予想したが、米国は意に介さず、日本が引き下がらないなら早く開戦し叩くべきであると判断した。

この例からわかるように、互いの認識が予想と異なると逆効果になりうるのです。

 

3ルーズベルト

*3

 

抑止の成立条件

抑止が効果を発揮するには、三つの条件があるようです。

  1. 攻撃側(日本)よりも、防御側(米国)の軍備が優勢で、戦意が高い。
  2. 攻撃側(日本)が、この防御側(米国)の軍備と戦意を正確に把握か、過大に評価している。
  3. 攻撃側(日本)が、防御側(米国)を攻撃する時は、互いの軍事力や得失を合理的に判断している。

 

この三つの条件がすべて満足されていれば、通常、攻撃側は戦争を始めないはずで、抑止が効いて戦争が起きないことになります。

 

しかし太平洋戦争の開戦はどうだったでしょうか?

日本は上記成立条件のBで、自国と同盟側を過大評価し相手を過小評価した。

Cでは、自ら退路を断ち追い込まれたあげく、いたしかたなく短期決戦への奇襲攻撃となった。

 

このような例は、あらゆる開戦時や、戦火が拡大していく過程でいつも大なり小なり起こっているのです。

 

4孔明

*4

 

理由は簡単

自国の軍事力を大きめに誇示したり、部分的に不明瞭したりすることはあっても、全体として小さめに見せることはありません。

要は、相手の戦力や戦意を適確に把握することは困難なのです。

さらに、戦争気運が盛り上がっている時や戦争継続中において、自国と相手国の軍備や戦意を合理的に判断することは至難の業です。

この問題は遙か昔からあったことで、歴史的に有名な軍師や戦略家は、自国の軍事力をカムフラージュすることで、敵将の判断を誤らせ勝敗を制した。

 

5キッシンジャー

*5

 

抑止の問題はこれだけではない

現代では、異なる問題が重要です。

それは上記成立条件Aの「戦う意志を示す」にあります。

これをわかりやすく言えば「なめられてたまるか」「見くびられてたまるか」でしょうか。

 

かつてベトナム戦争の戦略についてエルズバーグ博士が国務長官のキッシンジャーに悲観的な見解を述べたことがありました。

この時、キッシンジャーは「見くびられると相手をつけあがらせるから」と、より強硬な戦略立案を要求した。

一世を風靡したキッシンジャーですが、戦争を有利に終わらせる為には、こちらがより強硬に戦う意志を示すことが重要だと信じていたのです。

ベトナム側も巨悪を撃退するには、同様だと信じていたのです。

これでは戦争の終結は遠のくばかりです、後に気づいて異なる戦略を採りますが。

 

実は、仮想敵国と想定した時から抑止を考慮し始めるので、両国は戦意や敵意を相互に高めていくのです。

例を見ます。

三国同盟を締結した松岡外相は、帰国後、一気に外務省から親米派を根こそぎ排除しました。

通常なら、米国を最大の仮想敵国としたのですから、米国の情報通を温存すべきなのですが。

彼にとっては、それよりも親独派で一本化することの方が政局を乗り切れると考えたのです。

この例は少しわかりにくいですが、他国を敵とし抑止を想定することは、互いに警戒、情報隠蔽、干渉を始め、ついには疑心暗鬼に陥るのです。

 

 

まだ問題があります

それは自衛の項で説明したように、この抑止力程度からやがて無限連鎖のように軍備拡大競争に陥るのです。

米ソの核開発競争が最近の例でした。

 

もう一つは、米国の銃社会で見た問題です。

各人の銃所持が犯罪を抑止する程度よりも、衝動的で容易に銃犯罪を増加させることにより、結果的に銃死亡者が増えました。

同様に自由な軍事力保持は、抑止力よりも国家間の戦争や内戦も増加させるはずです。

 

つまり抑止は戦争を減らすよりも、潜在的に戦意を高まらせ、軍拡競争を行わせ、最後はちょっとした切っ掛けで戦争を始めさえもするのです。

抑止とは単純に信じられるものではないのです。

 

 

 

 

 

 

 

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私達の戦争 42: 質問に答えて「日本の失敗とは・・」4


1 226

  • * 1

 

今日が、「日本の失敗」について最後の考察になります。

前日の記事から続いています。

 

2日ソ中立

  • * 2

 

軍部の動き

陸海軍が定める方針(国策遂行要領)が、これまた不思議なものだった。

真珠湾攻撃の年、幾度も出される大方針は平和交渉と日米開戦準備の両論併記。

軍の派兵は中国侵攻の続行、満州への大幅増派(対ソ威圧)、日米開戦に備えて南方攻略(資源確保)の3論併記だった。

米国との和平交渉と言えば聞こえは良いが、米国が譲らない中国撤退を無視して妥協の余地なしとし、期限まで決めて進展するはずがない。

絶体絶命の経済封鎖をまったく予想せず、南方攻略で米英を怒らせ、それを自ら招いた。

2年前のノモンハンの惨敗に懲りず、自ら望み日ソ中立条約を結んだ2ヶ月後、裏切られたはずの独ソ戦好調に気分は変わり、満州に演習と称して大量派兵し再度ソ連を威圧した。

ドイツとの同盟が米国を押さえ、米国は交渉で譲歩し経済封鎖などの強気の手段を取らないはずだと確信し、当然手を打つこともなかった。

 

3仏印

*3

 

世界情勢、特に敵である英米情勢を無視し、運を天に任せ情勢変化があっても、誰も決断せずズルズルと成り行きに任せた。

奇襲攻撃で初戦を叩けば、南方の石油を手に入れ勝算ありとしたが、直ぐに制海権と制空権を握られ、タンカーが沈められ最後の頼みの南方からの石油は絶たれた。

これも戦史上繰り返されたことだが、一斉風靡した古き良き戦闘教義―日本の場合は海上で大艦巨砲、陸戦の突撃で島を占拠―に拘り、連敗を重ね、気づいても時既に遅しであった。

それにもまして奇襲攻撃は米国民の敵愾心を煽り、米英首脳は晴れて軍事協同を行えるようになった。

こうして米国は膨大な物量を持って独伊、ソ連と中国も見方につけて日本を追い込むことになった。

 

4蟻地獄

*4

 

蟻地獄で

日本の首脳は、あがけばあがくほど深みにはまり抜け出せない蟻地獄に落ちたようなものでした。

軍上層部の脳裏にあるのは、「勝てると進言し裁可を頂き続けた天皇や、犠牲にした幾多の英霊(太平洋戦争前で数十万人)、扇情で盛り上がった国民に、いまさらどの面下げて、領土と神国の名誉を捨てろと言えるものか」でした。

とことんやって、国土が焦土と化しても生まれ代わることが大事だ、そんなことを口にする軍人もいた。

政府首脳にしてみれば、自ら無謀な戦端を開くことは避けたいが、精一杯駆け引きをしていると、なぜか戦争になってしまった。

まさにそんな感じだった。

 

当時、国民は真の情報、必要な情報からは完全に閉ざされ、戦意高揚と国民一丸への教育宣伝が官民一体となって行われていた。

国民は、この政府や軍部首脳の実態を知ることはなかった。

こうして日本は無責任な軍部主導の政府によって戦争へと突き進んだ。

 

5明治憲法

*5

 

それでも真因は別にある

なぜ、このような政治状況になったかと言う問題が残る。

統帥権干犯、御前会議、軍閥支配の矛盾は目に余るが、なぜこうなったのか?

これら開戦時の政治状況は、明治維新に起因にしたものもあるが、日本が軍拡路線を推し進める過程で、主に軍人達が手に入れて来たものでした。

初期は、大国ロシアを仮想敵国とし、その橋頭堡として朝鮮半島を手に入れるべく日清、日露を戦い、圧勝した。

しかし満州を手に入れ、第一次世界大戦で漁夫の利でドイツから青島を手に入れた頃から、本土防衛より領土欲が増していくことになる。

かつて英国は日露戦争時、助けてくれた同盟国で、ドイツは第一次世界大戦では敵国だった。

やがて軍部は中国政策でうるさく干渉し始めた英米をソ連よりも仮想敵国とするようになった。

この間、幾度もあった冷害や恐慌に喘いだ国民は連戦連勝する内に、領土拡大に希望をつなげ、身内が敵国で殺されるに及んで戦争への抵抗感は消えていった。

当時、子供の出世の最上位は軍人となっていた。

 

政治制度(旧憲法)や政治文化など日本固有の問題もあるが、国家も国民も上記の歴史上繰り返されて来た「戦争の罠」にはまっていったのでした。

 

このことを皆さんに少しでも実感していただければ幸いです。

話はわかりやすさを優先し、厳密さを欠いていますのであしからず。

 

次回から、別のテーマになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私達の戦争 41: 質問に答えて「日本の失敗とは・・」3


1真珠湾攻撃

  • * 1

 

今日は、日本の失敗について考察します。

狭義には、太平洋戦争による大敗を指します。

だが重要なのは無謀な戦争をなぜ行ったかにあります。

 

 

日本の失敗とは何か?

多くの方は、太平洋戦争を失敗と見なすことで異論はないでしょう。

 

この戦争によって日本は多くの生命と生活、資産を失った。

遡る1世紀の間、国民の血と汗を注いで得た海外権益を一瞬のうちに消失した。

さらに隣国の怨念は消えるどころか、再燃しつつある。

おそらくこれが最も厄介な失敗になるだろう。

 

しかし、失敗と言われることに憤然とされる方もおられます。

少し、この点を検討しましょう。

 

2ヒトラー

  • * 2

 

「もし勝っていれば」

おそらく結果は同じでしょう。

世界に、かつての併合や植民地の後遺症はあるが、現在、植民地を持つ国は無い。

世界は、両大戦を契機に植民地を解放し、無法を粛正する趨勢になったのです。

日独伊は遅れて帝国主義の夢を追ったが、時代は変わり、大量破壊兵器と総力戦による大量殺戮と甚大な被害が世界を襲った。

一方、国民国家と海運の発達は、世界が協力して無法を正すようにもなった。

 

「大東亜共栄圏、植民地の解放と言う大義名分があった」

これが侵略のカモフラージュだったことは、被支配国の教科書で既に見ました。

もっとも被支配国には先客の侵略者がおり、日本が肩代わりしたとも言えなくもない。

どちらの被害が少なかったかは様々だろうが、残念なことに日本が最後だったのは痛い事実です。

3大統領

  • * 3

 

「米国にはめられて戦争をしてしまった」

これは一理あるが、並み居る皇軍の将や参謀が、ころっと騙されたとは・・。

日英米の軍縮会議で日本の軍艦は米の6割しか持てず、全量輸入に頼る石油(米から7割輸入)を突如禁輸される中で、勝利への一縷の望みは奇襲攻撃しか無かったと日本は考えた。

同情出来そうですね、しかし、少し待って下さい。

日本の軍艦所有量は国力差を示しており(実際は一桁違う)、日本の戦争意欲を挫く為に英米が石油禁輸に出ることは当然予想出来たはずです(以前から経済封鎖は段階的に進められていた)。

日本は、米国が要求を呑めば勝ち目の無い戦争を止めても良いと戦争準備をしたが、経済封鎖が始まると、後になればなるほど勝ち目は無くなると慌てふためいた。

単純に言えば、読みが甘すぎる、その場しのぎのつけが最後に回って来た。

 

ざっと見ても、失敗を取り繕うことは難しい。

重要なことは、なぜ無謀な戦争に突き進んだかにあります。

 

 4東條内閣

  • * 4

 

 

太平洋戦争は如何に始まったのか

既に、この連載「当事者が振り返る戦争とは」で見たように、軍中堅層は戦争で沸き立っていた。

満州や中国、仏印などで、現地の参謀などが独断で多くの戦端を開き、軍中央が渋々追認して来た。

しかも、彼らは罰せられることがなかった。

1930年代の相次ぐクーデターにより、軍の政権支配が始まり、血気と銃剣が国を動かすようになったのか。

天皇や政府、軍の首脳が彼らに振り回される、そんなことが考えられるだろうか。

 

外交では日英同盟破棄(1921年)、国連脱退、日独伊三国同盟締結、日ソ中立条約締結(1941年)が真珠湾攻撃の年まで進められていた。

これら政策は、当時破竹の勢いであったドイツと結び、中国侵攻に反対する米英を押さえ、隣国のソ連を鎮める算段であった。

しかし日本の読みはことごとく逆に作用し最悪の事態へと進んだ。

太平洋では役に立たないドイツとの同盟は、米国をむしろ態度硬化させただけで、さらにヒトラーの裏切りによるソ連侵攻は、米ソによる日本の挟み撃ちを招く結果となった。

しかも真珠湾攻撃の2日前、ドイツは半年前に始めたソ連への快進撃で20万人の死者を出してモスクワを目前に撤退を始め、早くも陰りが生じていた。

 

真珠湾攻撃を決する御前会議の前日(攻撃の9日前)、天皇は海軍のトップ二人を呼んで質問された。

「ドイツが欧州で戦争をやめたときはどうかね」

嶋田海相は答えた。

「ドイツは真から頼りになる国とは思っていません。ドイツが手を引きましても、差し支えありません」

 

5御前会議

  • * 5

 

この質疑には、この戦争主導体制の特徴がよく出ている。

海軍は、創設時の経緯で英米寄りであり、英米の情報量が多く、勝ち目のない戦争に反対であった。

陸軍は、これも創設時の経緯によりドイツ信奉で、米英を軽んじていた。

ここ20年ほど、政府と軍部内で、上記の対立を繰り返しながらも、ドイツの威光を借りて英米を黙らせる方向で進んでいた。

その前提が無くなることは国策の根幹が崩れるのであるが、大臣には当然のように対案もなく諦め口調であり、責任感も無い。

天皇も心配になり言葉を交わすが、軍指導部の提案を御前会議で予定通り裁可するのが常であった。

このような事例は枚挙に事欠かない。

国策の最高決定機関となっていた御前会議(天皇と政府首脳)の実態はこのようなものだった。

 

 

次回も続きます。

 

 

 

 

 

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私達の戦争 40: 質問に答えて「日本の失敗とは・・」2


 1スパルタ

  • * 1

 

今日は、戦争の失敗について考察します。

奥深い問題なので、要点だけを見ます。

 

 2ノルマンディ

  • * 2

 

戦争の成功と失敗(取り敢えず)

 

多くの人が成功と認める戦争

A.古代ギリシャが連合してペルシャの侵入を阻止した。

B.高句麗が隋の侵入を阻止した。

C.日本が元(元寇)の侵入を阻止した。

D.米国が連合してナチス・ドイツの侵攻を阻止した。

 

敵の侵略意図が明確で外交も含めて他に方策が無ければ、侵攻に対する自衛の戦争は当然です。

すべての戦争を否定し、失敗と言うわけではありません。

 

3第一次

  • * 3

 

成功とは言えない戦争

E.ペロポネソス戦争:全ギリシャがアテネとスパルタに分かれて70年間戦った。

F.第一次世界大戦:欧州全土で、欧州各国とロシアが二手に分かれて戦った。

G.ベトナム戦争:分断されたベトナムの一方に米国が加担し15年間戦った。

H.イラク戦争:米国と同盟国が武装解除を掲げイラクに侵攻し8年間戦った。

 

これらの戦争に共通しているのは、大義名分も無く、被害が甚大であったことです。

EとFでは、互いが領土や利権の拡大を狙い対立が深まった末の戦争でした。

互いに相手を悪の枢軸と見なしたが後で勘違いと判ることが多い。

勘違いとは、米国が、Gでベトナム側の戦う意図を民族独立では無く、恐怖視していた共産化と見なし、Hで大量破壊兵器が存在すると見なしたことです。

大抵、戦端は戦争被害の甚大さに思いが至らず開かれることになった。

あれよあれよと始まった戦争が全土を焦土にし、社会が疲弊し、人心が乱れ、悪くすれば次の戦争を招いた。

戦争を牽引した人々は、予想もしなかった被害の甚大さに、おそらく呆然としたことでしょう(私の考え過ぎかも)。

 

4イラク

  • * 4

 

これらの戦争を失敗と呼んでよいのではないでしょうか?

それでは何が失敗なのでしょうか。

それは戦った国々、勝者も敗者も互いに損耗し、特に国民のほとんどが辛酸を舐めただけだからです。

唯一ベトナム戦争では、数百万の人命と引き換えに独立と統一を得ることが出来た。

しかし、これも両国の反省の弁によれば、初期の段階で誤解を解く姿勢があれば、無傷に目標を達成出来たはずなのです。

 

戦争の何が問題なのか

上記の戦争は、真の勝者が無い戦争と言えます。

それでは勝利した戦争は、成功した戦争と言えるのでしょうか?

実は、最初のA・B・C・Dの戦争には後日談があるのです。

おおまかに言うと、これら大勝利した戦争が軍拡路線へと向かわせたのです。

 

A. 古代ギリシャは、アテネを盟主に軍事同盟化が進み、ギリシャ全土で利権を軍事力で奪い合う戦争と侵略が160年間続き、分裂と衰退を深め、最後はマケドニアに占領された。

 

B. 朝鮮半島は絶え間なく北方民族と中国から侵入を受け続け、その度に独力で跳ね返して来た。

軍事力は増したのだが、国土と民衆は疲弊していくばかりだった。

しかし2千年間で統一新羅と李朝鮮王朝は上手く侵略を逃れた。

国土の疲弊を救ったのは名誉と戦争を捨てた苦渋の外交にあると言えるだろう。

 

C. 真剣に受け取ってもらうとまずいのだが、日本はこの時をもって「神風」を大国と戦う時の精神的支柱とした。

不思議なことに、あの巨大な米国と戦ったベトナムにも「神風」信仰はあった。

日本と同じ頃、元寇がベトナムの海岸にも押し寄せ、同様に神風(台風)が吹き、撤退したことがあった。

地政学的に似ているベトナムと朝鮮半島は頑強なまでに侵略者に抵抗した。

 

D. 長らく孤立主義を任じていた米国は第一次世界大戦の軍需景気と末期の参戦から第二次世界大戦にかけて、一気に軍事超大国に変貌した。

その直後の朝鮮戦争において米国の力無しでは、今の韓国はなかった。

しかしその後、幾たびか世界の警察として貢献したこともあったが、やがてCIAの謀略や身勝手な軍事介入が増えつつある。

 

おぼろげながら、戦争を体験する事が、更なる恐ろしい悲劇を呼び込む様子を見てとれたと思います。

 

5秦

  • * 5

 

戦争による最大の問題とは何か

必要な派兵もあるし、受けて立たなければならない戦争もあるだろう。

その中にあって、繰り替えされる戦争の罠に国民はいつも注視すべきです。

それは、戦争の勝敗ではなく、戦時体制や軍事国家となって、歯止めが効かなくなる政治状況に陥ることです。

 

世界史を振り返ると、アッシリア、秦、古代アテネ、ローマ帝国、スペイン、イギリス、ドイツは軍事力により覇者となり、逆にその軍事依存体質により瓦解する宿命にあったと言えるだろう。

個々に見れば、多少事情は異なるだろうが。

要は、一度軍事国家となり戦争を経験すると政府も国民も、やがて戦争の甘い熱情の罠にはまり、抜けだせなくなるのです。

この経緯は、経済・心理・社会・政治・情報文化等のすべてが関わり進行します。

詳しくは連載「戦争の誤謬」「社会と情報」で扱っています。

 

失敗から学んだつもりでも、民主度が発展しても、時代や武器が変わっても、安心した頃にまた戦争の罠に取り憑かれるのです。

 

次回は日本を例に見ていきます。

 

 

 

 

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私達の戦争 39: 質問に答えて「日本の失敗とは・・」


1戦争

  • * 1

 

前回、「自虐史観は・・」を書いた折、「日本は何を失敗したのですか?」との質問がありました。

今日は、この質問を取り上げます。

 

コメントに感謝します

この連載を7月中旬から始めて、多くのコメントをいただきました。

賛否両論ありましたが、いずれも熱のこもった御意見をいただき感謝しています。

賛成のコメントは、当然ですが、私の理解と一致しており、安堵を得ます。

一方、反対の立場からの批判は厳しいですが、逆に、発憤することになります。

指摘された有用なポイントは、この連載で取り上げて解説してきました。

その意味でも、批判的な意見をありがたく思っています。

批判のコメントは私を悩ませますが、この連載をより深いものへと導いてくれるような気がします。

どうかこれからもどしどし賛否両論のコメントをお待ちしています。

 

2終戦

  • * 2

 

今回の質問

今回の質問はYAHOO!ブログ、アクアコンパス5に記入されたコメントです。

この質問を見た時、私は正直びっくりしました。

この連載で取り上げている戦争―主にアジア・太平洋戦争、を失敗でないと捉えられている人がいたことに驚きました。

しかし、よくよく自問自答してみると、当たり前の指摘でした。

私がこの連載を始めなければならないと思った理由は、まさにそこにあったからでした。

世の風潮が、軍事に頼り戦争を肯定する傾向が強まったからでした。

そこには、過去の戦争を失敗とする気持ちが無いのは当たり前です。

この問題をいつか書かなければならないと思っていましたが、私は避けていました。

それで決心しました、感謝!感謝!

 

3入隊

  • * 3

 

失敗について

ここでは質問者への解答も含めて、皆さんに「戦争から学ぶ」について語ります。

一般的な認識から始まり、最後は「日本の失敗」について説明します。

あることを失敗と見なすかは重要ですが、これまた自由です。

 

失敗の意味

「失敗」とは「人間の行為がもたらした仕損じ、やり損ない、上手く行かなかったこと」と定義しておきます。

 

例えば、地震が襲ったとしましょう。

皆は、倒壊した家の前で、呆然と立ち尽くしていたが、やがて復興に向けて動き始めました。

ある人は、これは天災であり、天罰だと諦めました。

彼は、悲しんでいても始まらないと考えたに違いありません。

別の人は、これは人災であり、家の強度不足や立地に問題があったと考えました。

彼は、現状復帰ではなく改良の上、再建することにしました。

 

本来、地震は天災ですが、人はそこからすらも、自らの行為に反省点を見出し、次ぎの行動に生かすものです。

この反省点を失敗と呼んでいいのではないでしょうか(責任はないでしょうが)。

 

4挺身隊

  • * 4

 

歴史から得るもの

この連載への批判の中に、「歴史から学ぶべき事はない」「過去は過去でしかない」「歴史にIfは無い」と言う意見もありました。

これらをすべて否定出来ないことも事実です。

 

確かに、歴史学者が過去について軽々しく是非を断じるのは問題でしょう。

しかし、一方で実践を旨とする人々、スポーツの監督に始まり軍事戦略家(孫子、トゥキディデス、クラウゼヴィッツ)まで過去から多くを学びます。

この学ぶ対象は、勝因もありますが、重要なのは相手の弱点や敗因(失敗)でしょう。

 

おそらく「歴史や過去から学ぶ価値」が無いと考える意識の中に、歴史認識と言う体系的な論理と、過去と現在との繋がり(共通する文化・精神の存在)に疑問を抱いていることがあるのでしょう。

これは当然の疑問であり、そうであるからこそ歴史を鵜呑みするのは危険で、歴史外も幅広く読み、確認しながら自問自答する姿勢は不可欠です。

 

もっともそんな暇はほとんどの人には無いはずです。

結局は、広く受け入れられている良書だけは目を通すことが肝要でしょう。

もう一つ言えることは、批判のコメントを書かれた人も、実は日本の過去に好感を持ち、通じるものを感じておられるはずです。

 

5ベトナム戦争

*5

 

戦争から学ぶ

今次の戦争を経験された人々はまだ周囲にたくさんおられます。

敗戦を迎え、多くの人は何を思ったのでしょうか。

当時、終戦を受け入れられない軍人はいたはずですが、一部に過ぎない。

「勝てると思っていた」「二度と悲惨な戦争はしたくない」が大勢でしょう。

 

しかし、戦争を知らない人々にとってそうではありません。

これは米国でも同様で、ベトナム戦争から40年も経つと、若者の多くは肯定するようになりました。

当時、大統領選の最重要な論点は戦争の終結だったにもかかわらず。

 

どうやら戦争には不思議な魔力が潜んでおり、戦争を生きた人々には筆舌に尽くせない悲惨と不条理があるのですが、戦争を指揮する人々や戦争を始める前の国民にはそうでも無いのです。

これは世界共通のようです。

ここに戦争を学ぶ必要があるのです。

どちらかと言うと、戦争の勝敗やいきさつに関わりなく、大いなる闘志と悲惨のギャップにこそ学ぶ価値はあるようです。

 

次回も続きます。

 

 

 

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私達の戦争 38: 自衛とは


1戦国自衛隊

*1

 

これから、戦争にまつわる基本的な概念について見ていきます。

例えば、自衛、集団的自衛権、抑止力、核迎撃システムなどです。

私達は、何気なく聞いていますが、これらはかなり不正確で矛盾を含んだ概念です。

 

 2自衛隊

  • * 2

 

自衛とは何か

自衛は自分で防衛することで、特に不明瞭さがあるとは思えない。

相手が攻撃してくれば、それを防御し、必要ならば相手を打ち負かすこともあります。

前者は自衛であり、後者は正当防衛と呼ばれるものです。

しかし、正当防衛のつもりが過剰防衛になることもあります。

 

日本は自衛隊を持っていますが、日本国憲法第9条では陸海空軍の戦力保持が否認されています。

自衛隊が戦力ならば憲法違反になるでしょう。

一方、日本が加盟している国連憲章第7条では、安全保障理事会が必要な措置をとるまでの間、自衛権の行使は出来るとされる。

国際的には自衛の戦力なら問題は無いことになります。

日本は憲法と国連憲章とどちらに制約されるのだろうか。

取り敢えず、日本の現状を容認する為に国連憲章の立場で話を進めます。

つまり自衛隊の戦力は自衛用であれば良いわけです。

 

3航空機

  • * 3

 

自衛の戦力とは

それでは自衛用の戦力とは何を指すのでしょうか?

戦闘機、艦船、ミサイル、核兵器は自衛用でしょうか、それとも攻撃用でしょうか。

それぞれの兵器の能力、例えば航続距離1000km以下なら自衛用でしょうか。

それとも兵器の数量、例えば1万トン以下の艦船で5隻まででしょうか。

 

仮想敵国の戦力が巨大であれば、それに対抗すべき自衛の範囲は変わるのでしょうか。

そうとするなら、仮想敵国が加盟する軍事同盟の戦力はさらに巨大となるでしょう

当然、逆も真なりで、最小の自衛戦力しか持たない国が、強大な戦力を有する国と軍事同盟を結ぶと、仮想的国から見れば自衛戦力を逸脱したことになるでしょう。

例えば、核兵器を持たない国が核兵器保有国と同盟すれば、仮想敵国からどのように見なされるでしょうか。

 

何か変ですよね

問題点を整理します。

各国の自衛(防衛)と攻撃の境界は、個別の自衛力に限定しても、あらゆる想定をするなら不定となります。

さらに同盟国全体の自衛力で見るなら、その境界の判定はほとんど絶望的です。

結論は簡単で、各国の戦力を自衛の範囲内と規定することに無理があるのです。

 

当時、国連憲章第7条に個別的・集団的自衛権を盛り込むかで、大いに紛糾したのです。

国連において、中小国はこの条項にかなり反対したのですが、米ソ大国を署名させるために妥協せざるを得なかったのです。

これを単に言葉の綾ではないかといぶかるかもしれませんが、取り敢えず、憲法や国際条約で自衛権を規定することに矛盾があることに気が付いていただければ幸いです。

 

4国連

  • * 4

 

真の問題とは

当時の各国代表は、法文の矛盾に反対したのではなく、二度の大戦の失敗を繰り返さない為に反対したのです。

歴史が示すように、各国は仮想敵国の戦力と競うように軍拡競争する宿命にあったのです。

その始まりは漠然とした自衛の戦力からでした。

つまり不確定な自衛力を認めてしまうと、暴走し軍拡競争に陥りやすいのです。

このことが最大の反省点だったのです。

 

防ぐ手はあるのか

一つの例を見ましょう。

日本国内では、銃刀法により自衛出来る武器が大幅に制限されています。

多くの国では、拳銃の所持が認められており、自衛権が擁護されているように見えます。

米国ではさらに、州兵だけでなく民兵組織(小規模な集団的自衛権)まで認められています。

日本は、当然、破防法等により、これは認められていません。

この連載「銃がもたらすもの」でも考察したように、どちらが国民の安全保障に有利だったかは、一目瞭然です。

 

ポイントは、自衛権の制約と統一した武器の制約にあります。

これが最も成功しているのは、世界広しといえども日本だけです。

 

5cia

*5

 

しかし自衛の問題はこれだけではない

過去と現実に起きている問題を箇条書きします。

 

  • 1.軍事衝突時の原因: 満州事変、ベトナム戦争のトンキン湾事件、ドイツ軍のポーランド侵攻のように正当防衛、挑発、虚構かの判定が困難です。紛争当事国が互いに正当防衛(自衛)と称することになる。

 

  • 2.核ミサイル迎撃: この抑止理論(防衛理論)も千変万化であり、結論としては自衛ではなく攻撃が主になる。後に扱います。

 

  • 3.諜報活動: 代表的なのが米国の国家安全保障局NSAと中央情報局CIAの暗躍です。これらの行うクーデター幇助、暗殺、情報操作、武器援助などによる他国の政敵排除は何処まで自衛なのでしょうか。CIAのある幹部は自衛の範囲と自著に記しているし、秘密裏に行われるので手の打ちようもない。

 

これらはどれも放置出来ない問題です。

 

最後に

少しややこしい話になりましたが、現実の適用や戦史を見る限り、その複雑さは想像を越えます。

大事なことは、当たり前と思っている大前提でも、これほど脆いのです。

それだけに社会の平和を維持することは困難なのです。

 

 

 

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私達の戦争37: 摩訶不思議な解釈9 「自虐史観は・・」


    1表紙 

  • * 1

 

「自虐史観は日本を貶(おとし)めるものだ」

この手の文言には、大いなる勘違いがひそんでいます。

そこにはアジア、特に島国である日本の精神風土が深く関わっています。

 

自虐史観とは

「自虐史観」は、戦後の歴史学会の主流だった歴史観を否定するために用いられた蔑称でした。

分かりやすく言うと、否定側の要望は、日本の失敗や悪口を告げ口するな、良い所を探せでした。

否定側から発行された「国民の歴史」は当時、一斉を風靡しました。

私も読みましたが、あまりにも見え透いた我田引水が多く、大学教授の書いた本とは信じ難かった。

要は、日本文化は中国や朝鮮半島から学んだものではなく、固有の洗練されたものであると言うことに尽きます。

美術工芸や建築については、現地を旅行すれば多くの継承が存在することは一目瞭然であり、世界の美術史とはそのようなものです。

継承を否定することには無理があります。

 

要は、日本は素晴らしい、隣国など比較に値しないと言いたかったようです。

当然、この手の論調は愛国の心情を揺さぶり感動すら与えるでしょうが。

 

2表紙4

  • * 2

 

不思議なこと

私は機械技術者として、企業の技術革新を担って来ました。

幾つかの日本初や世界初の加工品を立ち上げて来ました。

その経験から言うと、成功には「失敗を生かす」と「手堅く挑戦する」姿勢こそが不可欠でした。

私は困難な挑戦に立ち向かうべき時ほど、成功例よりも多くの失敗例から問題点を学び、事にあたりました。

技術的に成長しない人を見ていると、そこには共通して「失敗を徹底的に考察し、問題点を抽出する」姿勢が欠如していました。

 

ここで勘違いをしてはならないことは、「失敗が萎縮を生む」のではなく「失敗を生かさないから萎縮を招く」のです。

確かに、失敗を知らない人ほど大胆な行動に出ることはありますが、その結果は明らかです。

 

そうは言っても、やはり失敗ばかりでは萎縮してしまいます。

挑戦する気力は成功体験の積み重ねから生まれて来ます。

だからと言って、やる気を削がない為、「自信」や「誇り」を育てるために「失敗」から遠ざけることは本末転倒です。

 

3表紙2 

  • * 3

 

世界では

「ヨーロッパの歴史 欧州共通教科書 1994年版」から、第二次世界大戦について書かれている「犯罪」p345より抜粋します。

 

「ドイツ軍によって占領された国々の国民は、虐げられ、搾取された。数百万の人々が、ドイツの戦争経済のために働かなければならなかった。抵抗はことごとく暴力的に押さえ込まれ、ほんの少しでも疑いを持たれることは、そのまま死を意味していた。人質の処刑は組織的に行われた。中でもドイツ軍の占領が苛酷を極めたのは、東ヨーロッパにおいてであった。・・・『劣等民族としてのスラブ人』は、ドイツ人の奴隷にならなければならなかったのである。」

 

以前のドイツ国内向け教科書も、この共通教科書と同様に、生徒らに戦争の真実を知らせ、真摯に向き合わせる姿勢があった。

 

欧州各国、フランス、ベルギー、スイス、ドイツ、オーストリア、他に6ヵ国には、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の否認を禁止する法律がある。

これは表現の自由を侵害すると指摘されることもあるが、この手の歴史的事実を虚偽とする行為は民族主義(反ユダヤ主義)やファシズム(ナチズム)を再発させるとし、毅然とした態度を取っている。

つまりドイツを含め欧州は戦争の真実を知るだけではなく、否定しないことも重要だと考えている。

 

4表紙5

  • * 4

 

素晴らしい日本の精神風土

自虐史観と罵り同調する人々は、日本の精神風土に誇りを持っている方が多いはずです。

もしこの精神風土が自虐史観とピッタリと一致していたらどうでしょうか?

 

心理学に文化心理学と言う分野があり、国や地域毎に異なる心理(国民性)を研究しています。

これによると米国は楽観主義で、東アジア(日本、中国、韓国)は悲観主義の傾向が強いのです。

 

「あるテニスプレーヤーがトーナメントで決勝戦に進出した場合を考えて下さい」

実験者が、各国の被験者に上記のシナリオを想定してもらい。

A:「この試合に勝つとタイトルを獲得し、トロフィーが授与されます」

B:「この試合に負けるとタイトルは取れず、トロフィーはもらえません」

次いで、どちらが被験者にとって重要であるかを評定してもらった。

米国人はAを、東アジアの人はBを選ぶ傾向がある。

これは東アジアの人々は、成功よりも失敗回避を重視していることを示している。

 

失敗を念頭に置き、社会へ気配りしながら行動することが悪い習性とは言えません。

それぞれの国の国民性に優劣はなく、その国の歴史や風土によって育てられたものです。

過去において、それが社会に適応した行動や意識だったのです。

 

5表紙3

*5

 

つまり、本来、日本人は失敗を生かす国民性なのです。

日本の「改善活動」は正にそれです。

抜きんでた個人の成果ではなく、皆が関わる不具合部分を皆で改善し成果を得るのです。

 

いつの間にか、一括りに自虐史観と蔑称する人が現れると、周囲を気にして「失敗を反省する」ことから萎縮してしまうのです。

それこそ日本の良さを自覚できずに「恥ずかしい」ことをしているように思えるのですが。

 

 

 

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私達の戦争36: 摩訶不思議な解釈8 「冷戦のおかげで・・」


1Untitled4
* 1

「冷戦が世界の紛争を防いだ」、この手の真相を確認します。

2map

< 2.2012年度、世界の武力紛争、茶=戦争、赤=小規模武力紛争、by UCDP >

私が最初に抱いた疑問
「冷戦後、世界で武力紛争が多発するようになった」
「冷戦の米ソ均衡が武力紛争を回避していた」
この手の言説を見聞きし、私は長らく答えを出せずにいました。
日頃、世界の紛争報道から察するに、この指摘は正しいようにも思えました。
しかし一方で、冷戦当時、米ソによる軍事援助と代理戦争が頻発していたのも事実でした。
アフガン、ベトナム、ソマリア、イラン、イラクなどの戦争・紛争がその例です。

私の推測では、冷戦は地域紛争を多発させたはずであり。
冷戦後は大量の武器が出回り、大国のたがが外れたことにより紛争が増えたのだろうと私は理解していました。
しかし、確信はなかった。

そこでデーターを探しました
今回紹介するグラフは、スウェーデンのウプサラ大学の平和紛争研究部(Uppsala Conflict Data Program)が収集・作成したものです。
このUCDPの資料は紛争解決学の分野で信頼出来るものだそうです。

3紛争件数2

< 3. 武力紛争の頻度、by UCDP >
用語: Extrastate =国家外、Interstate=国家間、Internationalised=国際化した内戦、Intrastate=内戦。

このグラフを見ると、第二次世界大戦後の冷戦期(1945~1989年)において内戦は増加し続け、1991年をピークに減少傾向にあることが明白です。
「冷戦が武力紛争を多発させていた」のは事実のようです。

一方で、大戦後、国家外(灰)と国家間(黄)の武力紛争は長期減少傾向にある。
1975年に国家外(灰)は無くなり、国家間紛争(黄)と国際化した内戦(黒)も一度大きく低下した。
この年はベトナム戦争が終結した年であり、この終結は72年にニクソン大統領による米中関係正常化が図られた結果です。

複数国同士による大規模な武力紛争(灰)の減少は、冷戦期、米ソ2強が均衡したからだと主張する軍事専門家がいる。
しかし、冷戦後、均衡が破れ米一強と中露の時代になっても国家外や国家間の武力紛争は増えなかった。
それに対して、彼らは核抑止力が現在も効いているからだと補足する。
しかし現在、核兵器の均衡は米露だけで、核保有は9ヵ国まで拡散し、不安定状態は深まっている。
既に銃社会で見たように、あてにならない抑止力よりも暴発の危険が増している。
むしろ米中、米ソの相互理解(関係正常化)が大規模な紛争を無くしたと言うのが事実ではないだろうか。

残念ながら、内戦(赤)は起こり続け、国際化した内戦(黒)は若干増加傾向にある。

 

4非国家的紛争

< 4.地域毎の非国家的紛争の頻度、by UCDP >

このグラフから、非国家的紛争がアフリカで大きく増加し、ここ数年は中近東でも急増していることがわかる。
冷戦後、新しい形態の紛争が増加している(以前の資料がないので不正確)。
この非国家的紛争とはテロや武装集団による紛争を指しているらしい。

冷戦をどう見たらよいのか
冷戦(二大覇権国の均衡)は、第三次世界大戦を防いだかもしれないが、数多くの地域紛争を招いた。
大戦が起きれば1億の人命を失うだろうが、ベトナム戦争だけで800万人が死んだ。
また冷戦期と冷戦後も含めて、難民の数は膨大である。
現在の非国家的紛争(テロなど)の火種は冷戦期に大きくなったように思える。
それは、2大強国が傘下の小国で、傀儡政権や転覆派に継続的で大規模な軍事援助を行い、対立を煽ったからで、アルカイダ、イラク、ソマリア、ベトナムなどはその例です。
さらにその火種は、両大戦に遡る植民地政策や領土・国境確定にあった。

つまり、単純に言えば、過去の戦争や侵略の後遺症、軍事力均衡頼みだけの対立が、災いを生み続けたと言える。
それを和らげたのは相互理解(関係正常化)であった。
第三次世界大戦の防止や核抑止力については、大国に近い軍事専門家の希望的観察であって、確実なことではない。

残念なこと
「冷戦が世界の紛争を防いだ」と声高に主張する人の著作を読んで思うことがある。
著作の中で、すべてをなで切りにし、「平和呆け」をなじるが、行き着くところは軍事力信奉と日本優位に尽きる。
この手の人は、雑多な知識を売り物にしているが、論理は稚拙で、データー提示も少なく、説得力に欠ける。
それこそ古代中国の孫子に始まり、18世紀のプロイセン軍人のクラウゼヴィッツが顔を覗かせる。
非常時に備え軍事力と戦略の必要性は理解出来るが、結論はことごとく過去の延長線上にある。
そこには紛争を解決するために人類が生みだした外交術や法概念の発展、近年の紛争解決学への関心が微塵も無い。
当然、視野の狭い戦争論に終始することになる。

このような論調に安易に乗らないこと願ってやまない。

 

 

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私達の戦争 35: 摩訶不思議な解釈 7


1嫌韓

  • * 1

 

今回で国益は最後になります。

 

 

幾つかの注意点

国益に関して幾つかの注意点を記します。

 

2本1

  • * 2

 

政府やマスコミが訴える国益には、真意が隠されていることがある。

既に見た英国首相の発言や鳩山外交バッシングには「米国との同盟堅持」がありました。しかしなぜか日本ではその真意を隠すようです。

昔、左派が共産圏(コミンテル)との密着を隠そうとしたのと同じかもしれません。

 

3冷戦

  • * 3

 

国益をみる時、時間的な尺度(確実性)を考慮すべきです。

前回、ベトナム戦争介入の米国の動機をトルーマン・ドクトリン(共産主義封じ込め政策)にあると記しました。

これが観念的な国益である理由は、この遙か離れた地点での戦争介入が遠い将来の防衛を意図しており、現実に起こるかは不確実だからです。

つまり不確実な数十年先の恐れに対して現実の損害と比較勘案すべきです。

 

4いじめ

  • * 4

 

国益を論じる時、多くは自国の国益だけを問題にします。

前述の名誉を重視する人々にとって、他国の名誉は自国の名誉よりもかなり低いものでした。

しかしそれでは外交が成り立たず、まして対立や紛争を予防することは不可能でしょう。

情けない例えですが、いじめを行っている子供の多くは自分の感情や立場だけに囚われ、いじめられる側の子供の心を理解しません。

些細ないじめと思っていても、自殺者が出ているのです。

他国の国益も自国同様に理解する度量が不可欠です。

 

 

まとめ

単純化すれば、国益には政府寄りと国民寄りがあります。

 

例えば、軍事(安全保障)や領土問題で言えば、命や国土があってこその国民の権利だとよく言われます。

これは大局を見ているように思えますが、確かに全部失えばその通りです。

しかし多くの戦争が示すように、ほんの小さな島や地域の奪い合いから、数百から数百万人の命を失う結果に至ります。

かつて、日本の移民60万人が暮らす満州国を国際連盟に移管することに我慢できず、260万人の日本兵の命を失いました。

国益は現実的な損得を勘案しなければ危険です。

そうは言っても、大概、国は戦争が簡単に勝利し終了すると思って始めるのが常なので、こちらの方が問題かもしれませんが。

 

最重要なこと

結論は、国民の権利保全が先で、その為に国体や政府をどうすればよいかを問うべきです。

そうは言っても、国民の希望や思いは多様なので、国の政策は場合によっては集約された国益を扱わざるを得ません。

この間にあって何が重要かと言うと、国民の権利が守られ、国民の意思で正しく政府を制御出来ることにあります。

これは個々の国益の前提となるものです。

この権利と方法は憲法に規定されおり、最低これが保全されることです。

何らかの国益の為と称して憲法を変え、知ら間に徐々に民主主義が破壊されるようなことが、最も国益を損なう第一歩なのです。

 

残念ながら、このような不幸な事態は、世界各国で過去も現在も起こっています。

けっして、今の日本に無縁では無いのです。

 

5マスゴミ

  • * 5

 

ここで一つ注意が必要です

それでは、なぜ政府よりの国益を唱えるマスコミが力を持つようになるのでしょうか。

大きく二つの理由があり、要点だけを述べます。

 

領土問題が絡むと、国民も政府もナショナリズムに傾倒し始めます。

この傾向は、日本の国民性、島国、政治風土が変わっていないので、今でも強いでしょう。

いつも政府よりのマスコミは存在しますが、ナショナリズムが勃興すると、それに呼応すれば売上げが伸び、さらに政府はそのマスコミに協力を惜しみません。

こうして国内が次第に熱気を帯びてくると、相手国も刺激され共振を始め、やがて政府は引き下がれなくなります。

当然、反政府側のマスコミは逆に窮地に追い込まれます。

このことは日本のアジア・太平洋戦争への過程、米国の9.11事件後の状況がよく示しています。

現実に、ここ8年間の日中世論調査によると、互いを嫌う度合いが両国呼応するように上昇を続けています。

このまま放置すれば危険な状態になるでしょう。

その時、加担したマスコミも政府も責任は取らないでしょう。

それが現実でした。

詳しくは、後で取り上げるか、連載「社会と情報」で扱う予定です。

 

次回は、別の事案を扱います。

 

 

 

 

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私達の戦争 34: 摩訶不思議な解釈 6


1日中韓

  • * 1

 

前回に続いて、国益を考えます。

 

Newsweek(日本版)

1.2010年8月、菅の謝罪は日本の国益だ

内容:記者は「菅首相は日本の植民地支配が韓国に与えた苦しみを認めて謝罪した」ことは国益に叶うと記す。

 

2.2012年5月、鳩山外交バッシングを考える

内容:「日本のマスコミは「訪イランは国益に反する」で大バッシングを行った。この国益とは「米国に怒られない」である」と学者は論じた。

 

3.2009年10月、超大国中国の貫禄に英高級誌が逆ギレ

内容:「英紙が軍備の近代化を進める中国の無節操を批判するが、何処の大国も同じで、同様に「経済的な国益」を最優先することも同じだ」と学者が皮肉って指摘する。

 

ポイント

上の二つの記事は外交が相反する国益の板挟みになり、こじれている国際関係を自主的に修復する事と、名誉と日米同盟を守る事が対立していることを意味する。

日本の大半のマスコミは、紛争の火種拡大より、自国の名誉と日米同盟を重視している。

 

どこの国も大国の行動には敏感で苛立ち、安全保障や経済的な国益で振り回されることになる。

 

 

不明瞭な国益

こうも国益は多様で、立場により相反するものなのだろうか。

外交を論じる時、政府やマスコミは国益を多用するが、その真意を汲み取ることは困難です。

 

国益が唱えられる時、その損出が説明されることは少なく矮小化されるのが常です。

イラク戦争開始時、ホワイトハウスが宣言した戦費は実際の1/100でした。

日本政府も同様で、わざわざ正直に言わないでしょう。

それを解明するのがマスコミの役割でもあるのですが、残念です。

 

3赤穂浪士

  • * 2

 

一つ例を見てみましょう

「自国や先人の名誉を傷付けることは国益に反する」について

 

米国は第二次世界大戦終了からベトナム戦争まで、ある国益に囚われていました。

それは、巨大な共産帝国の侵攻を瀬戸際で粉砕することを仮想したドクトリンでした。

さらに、アジアの小国に侮られない為に力で押さえ込もうとする心理が働いていました(ホワイトハウス首脳達)。

これは黄色人種への偏見と表裏をなす白人の名誉意識と言えるかもしれません。

その結果、米国は多くの人命と税金を失った。

それは感情的・観念的な国益のために現実的・具体的な国益を無視したからと言えます。

 

9.11事件もそうですが、これ以降、米国はイラクやアフガンへの大規模な侵攻、一方で国内のマスコミ締め付けや国民の盗聴を秘密裏に進めるようになった。

名誉や復讐などの観念的・感情的な国益は国民に損出を無視させる強い効果があり、政治家は人気を手に入れ、強行策を打ちやすくなります。

 

2決闘

  • * 3

 

今ひとつ、単純な矛盾があります

「日本はいつまで中国や韓国に謝らなければならないのか?」とよく聞きます。

 

これは、現在の人々には先人の犯罪の責任が無いとする考えです。

通例の法概念に照らせば当然のように思えます。

しかし前述の「自国や先人の名誉を傷付けることは国益に反する」では、一転して先人への名誉毀損は、現在の国民に関わることだと主張しています。

実は、この二つの発言は同じ人々のものなのです。

何処か矛盾していますよね。

しかし、この人々にとって矛盾では無いのです、なぜなら他国の名誉より自国の名誉が遙かに重いからです。

 

これらの発言の根本的な欠陥は、多国間の国民が法も含めて共通意識が無いことを無視していることです。

遺恨がある国家間で、そのような杓子定規な言動が紛争を触発することは自然の成り行きです。

 

4本

  • * 4

 

名誉について

私は名誉を無視しろと言っているのではありません。

名誉は文化であり、歴史的にみて種々の役割を担って来ました。

しかし、時代の変化と共にその意味や価値は変わっているのです。

ここで名誉について簡単に説明します。

 

一つの機能に、侮られないと言う名誉は、かつて他者からの暴力を抑止する効果がありました。

これは日本にもありますが欧米の方で強く働いています。

しかし現代では暴力を抑制する機能が以前に比べ格段に働いています。

その名誉は価値を減じていますが、むしろ多くの喧嘩や紛争の火種になっています。

 

もう一つに、信頼されると言う名誉があり、個人が社会で安定的な立場を確保するには重要です。

これは欧米にもありますが、アジア、特に日本では重要で、現在も続いています。

国内の名誉毀損ならいざしらず、多国間の場合は判定も難しく、一方的に罵るだけでは本末転倒でしょう。

 

5本2

  • * 5

 

どちらにしても不明瞭な感情論や観念論で訴える国益には、冷静に対応する必要があります。

 

次回も続きます。

 

 

 

 

 

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私達の戦争 33: 摩訶不思議な解釈5


     1国益

*1

 

今日は「国益」について考察します。

不思議なことに、「国益」は発言する人により意味がかなり異なります。

実例を挙げて見ていきます。

 

国益を巡る報道

2014年8月31日、各紙で「国益」を検索し、上位から目立った記事を取り上げます。

 

 2表紙1

  • * 2

 

産経新聞

1.2014年8月、防衛庁長官時代から自衛隊を“軽侮”していた加藤紘一氏

内容:「加藤氏は『国益を損なう政治家』の最たるもので、防衛長官時代に自衛隊を軽視し、共産党と朝日が好きだ」と書いた本の紹介。

 

2.2014年8月、『中国の大問題』丹羽宇一郎著 習政権のもろさから今後を分析

内容:「民間出身で中国をよく知る元駐日大使が、『中国の弱みに石を打て』と書き、経済的な国益を最優先に考えるべき」と書いた本の紹介。

 

3.2014年8月、慰安婦報道「事実ねじ曲げた朝日新聞」「日本の国益や先人の名誉傷付けた」

内容:「朝日が慰安婦報道で、嘘の慰安婦証言や吉田証言を取り上げ、事実を歪曲し日本の国益や先人の名誉が傷つけられた」とする講演を紹介。

 

ポイント

三つの記事から言えることは、国防を軽視することや日本国と先人の名誉を損ねることが国益に反し、中国を非難し、経済的国益を優先することが重要だとする立場が強調されている。

補足すれば、丹羽氏の「中国の大問題」は良書であり、記事「2.」の指摘は著者の主張全体とは逆になっています。

 

3表紙2

  • * 3

 

読売新聞

1.2014年4月、日米TPP、来週閣僚会議

内容:「菅官房長官は2日の記者会見で『国益をかけた最後の交渉をしている』と述べた」と報道。

 

2.2014年3月、『日ロ現場史』本田良一朝、書評

内容:「北海道根室漁民の拿捕との攻防を描き、北方領土問題を棚上げしておくことの愚策、また何を「国益」とみなすかも時代によって変化する、などの指摘」に評者は共感している。

 

ポイント

政府要人がここで言う「国益」はおそらく経済が主でしょうが、他の意味も含まれているでしょう。

後者では、領土問題が最たる国益であり、それを自ら勝ち取る姿勢こそが重要だとする立場が強調されている。

 

4表紙3

  • * 4

 

朝日新聞

1.2014年8月、戦争体験踏まえ反戦訴え

内容:「イラクから帰還した米兵が毎日18人前後も自殺する。『安倍首相には戦争の傷痕の大きさを考えたうえで、国益を考えてほしい』」とする講演を紹介。

 

2.2014年8月、米、シリア上空へ偵察機 「イスラム国」空爆拡大を検討

内容:国務省のサキ報道官は会見で、「米国の国益を守るときに、空爆にあたってアサド政権の承認は求めない」と述べた。

 

ポイント

戦争によって大いに国益が損なわれるが、その被害を被るのは主に国民であるとする立場が強調されている。

これまでの中東政策から察すると、ここでの米国の国益は、自国の将来に関わる安全保障が主であり、かつ経済的事由も含まれるでしょう。

もし世界平和を強調するなら、米国は「国益」の表現を使わなかったでしょう。

 

5表紙4

  • * 5

 

THE HUFFINGTON POST(日本版)

1.2014年5月4日、イギリスにおける国家機密と報道の自由について(3)

内容:記者はスノーデンによる米国の国家安全保障局NSAの機密暴露事件で「キャメロン首相は国益を損なうと非難した」を取り上げ、国民のプライバシー保護との関係を論じている。

 

2.2013年11月、小池百合子氏の「首相動静」発言をどう読むか?

内容:論者は「小池元防衛相のマスコミによる首相動静報道が、知る権利を超え、国益を失っている」の発言を批判し、問題無しと論じている。

 

ポイント

英国首相がここで言う国益は、米国との同盟堅持と英国の安全保障に関わっている。

この国益は、国民の権利―世界中の人々が不法に盗聴されプライバシー侵害を受けていること―よりも重要だとしている。

後者の発言は、公人の動静報道が安全保障上の障害か重要人物のプライバシー侵害を招くと指摘しており、国益とは安全保障か政府要人に関わっている。

 

要点

これで概ね傾向が掴めました。

国益とは、国体、政府、国民、国民の権利などがあり、具体的には領土、経済がありました。

しかし、中には過去の名誉から未来の安全保障(防衛)までも含んでいました。

 

次回、もう少し海外紙を紹介し、国益の意味をまとめます。

 

 

 

 

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私達の戦争 32: 摩訶不思議な解釈4


1尖閣

  • * 1

 

「この島が日本の領土であることは明白であり、我々に正義あり」

この手の発言の落とし穴を探ります。

 

正義について

声高に「正義」だからと迫られると、多くの人は尻込みされるのではないでしょうか。

かつて暴力(クーデター)を正当化する時、「正義」がよく使われました。

しかし、本来、「正義」は人類が長い年月をかけ育て来た重要な理念です。

その理念とは、社会秩序維持のために人々が守るべき行為の規範であり、それを法に規定することでした。

そこには何ら疑わしいものはありません。

 

正義は、個人の判断に託されるものではなく、社会が熟慮を重ね共有してきたものです。

多くは、司法にその判断を委ねることになります。

最近、したり顔で訴える「正義」が巷に溢れています。

この手は、煽るものほど論理が浅いので、先ず疑ってみましょう。

 

領土問題の正義

現在、日本は三つの島で領土問題を抱えています。

多くの戦争は領土問題から始まっているので、急速に危機が迫っていると言えます。

大概、その始まりは「この島は我々の領土であることが明白である」にあります。

この発言に基づく一方的な行為に正義はあるのでしょうか。

 

 2倭寇

  • * 2

 

両国が納得出来る明白な領有の証拠はあるのだろうか?

単純な想定を見るだけで答えはわかります。

 

例えば、5千年前に倭人がその島に流れついて住んだとします。

その後、海賊がその島を襲い、倭人は逃げ出しました。

次いで、隣国の漁師がその島を拠点にするようになりました。

このようなことが幾度も繰り返され、やがて両国の文書や地図にその島が記載されるようになりました。

初期は、互いの国が隣国と争ってまで、数ある遠い離れ小島をすべて領土にしようと思わないでしょう。

やがて漁民や海賊、海上交易民、国の船が島々と関わる頻度が増え、中には彼らから訴えられて始めて国がその島の重要性を認識することになるでしょう。

注意が必要なのは、国が統一途上にある段階では、各国間の海は境界人と呼ばれる海賊・海上交易民(倭寇)や漁民の生活の場でした。

広く活躍する境界人ほど、その集団は混血や複数民族を含み、複数の国を行き来する国籍不明の民でした。

このような状況で、いつの時点をもって領有の証拠とするのでしょうか。

 

 

一方的な占拠は可能なのだろうか?

上記のような曖昧な論拠―曖昧な条約や古地図を証拠に一方的な占拠は正しいのでしょうか?

例えば、長崎県の対馬は九州より韓国に近いが、なぜ日本の領土なのでしょうか?

対馬には複雑な交流史と流血―日本の大名・幕府と倭寇、朝鮮王朝との歴史があり、その果てに日本の領土になったのです。

日本国内で県境の変更なら武力紛争にはならないでしょう。

しかし両国は民族が異なり、さらに過去の遺恨が存在する中で、いがみ合うことなしに一方的な行為が可能と考える方が非常識でしょう。

歴史上、境界線の多くは力ずくか、トップ間の妥協の産物でした。

双方が納得出来ない、こじつけで境界を定めたところで、紛争の火種は大きくなるばかりです。

パレスチナ問題がその典型です。

 

正義はあるのか?

残念ながら「正義」を問うのは不毛だと考えます。

正義を問うには、二国間で「正義」の理念が共有出来る状態にならなければなりません。これは領土問題などの対立点が消えた和解後のことでしょう。

矛盾していますが。

 

国際司法裁判所で争うのも一つの手ですが、今の世界は、日本のような領土問題に判決を下すことが出来ないでしょう。

一方が、裁判を受託しない以上強制も出来ません。

日本はかつて満州国を否認された時、それを不服として国際連盟を脱退しています。

 

3コロンブス

4南極

5地図

*3,4,5

 

解決の道は・・、それは歴史にヒントがある

つい5世紀前までは、新しく発見した土地はその国のものだった。

コロンブスやマゼランらの探検によりポルトガルとスペインはアメリカ大陸を手に入れた。

南極大陸は、当初幾つかの国によって領有が主張されたが、現在、世界が共有し保護すべき地域となっている。

 

ドイツのザール地方は第二次世界大戦の導火線となった当時有数の炭田であった。

フランスは第一次世界大戦の恨みと賠償をここで果たそうとした。

ドイツはそれに対抗し、サボタージュさせた炭坑労働者に中央銀行で刷った給与を与え続け、その結果、巨大インフレを招いてしまい、ヒトラーに付け入る隙を与えてしまった。

両国の恨みは増すばかりであった。

 

第二次世界大戦後、フランスの提案により、その地域と隣接する国々が中心となり欧州石炭鉄鋼共同体を結成した。

これは石炭・鉄鋼の生産と市場を共同管理しようとするものでした。

提案はフランスだが、主要な炭田はドイツの領有であり、相互の信頼と譲歩がなければ事は成就しなかった。

これは仏独の1千年にわたる争いへの深い反省から生まれたものでした。

後に、これがEUに発展していくことになった。

 

まとめ

国境確定で意地を張り、憎しみを倍加させ、多大な犠牲を払ってから気づくより、初めから共同管理にすれば良い。

これからの地球では、少ない資源は世界の共同管理になっていくだろう。

幾つかの地下資源(希少金属など)は採掘可能年数が10年を切った。

 

素晴らしい前例を創った人類の智恵を、我々は生かすべきでしょう。

 

 

 

 

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私達の戦争 31: 摩訶不思議な解釈3


1右翼

  • * 1

 

今回は、対立する左派と右派の不思議を見ていきます。

ここにも紛争の種が見え隠れします。

 

2全人代3能

  • * 2、3

 

幾つかの不思議

例えば、今の中国で革命を目指す人々は左派でしょうか右派でしょうか?

恐らく中国政府はそれを右派、資本主義に毒された不穏分子と見なすことでしょう。

しかし、それは左派、少数民族弾圧や不平等を正す改革派かもしれません。

何か、おかしいですね。

 

例えば、15世紀に能を大成した世阿弥は左派か右派、どちらでしょうか?

本来、左派・右派は政治的な立場を指すのですが、ここでは所属集団での革新派・保守派を意味しています。

彼は、伝統的な猿楽を脱して、新たな演出(幽玄世界)を盛り込んだ革新派と言えるでしょう。

このような事例は現在の歌舞伎や伝統工芸に始まり、相続した大企業経営者にも見られます。

しかし、その多くの人は、立場上、保守的にならざるをえないでしょう。

 

 

 

ポイント

A.社会には、保守的な立場が、または革新的な立場が得策である集団・階層が存在し、大半の人々はどちらにも属さない。

B.一方、そのどちらかの集団に属していても、革新的な性向を持つ人と保守的な性向を持つ人が存在する。

 

社会や集団には、体制側と一体となり体制を堅持することが得策な保守的な立場が存在します。

現状に不満を持つ人々は、体制の変革を望むことになりますが、変革には労苦と危険が伴うので、すべてが革新的な立場とはなりません。

ここで重要なことは、通常、断固として体制堅持を望む立場は一部であり、多くは労苦と危険を共はない限り、より良い社会への変革を望む立場になる(貧富の差拡大期や、経済停滞時は特に)。

 

保守的か革新的な性向(脳機能)を持った人々は正規分布の両端の一部でしょう。

多くは中庸な性向を持っているでしょう。

一般的に保守的な性向は、社会変化を嫌い、容易に新しい主義や制度を信じないようです。

革新的な性向はこれと逆になります。

 

この結果

個人の保守・革新への態度の強弱は、それぞれの所属集団による立場と個人の性向の組合せで、それこそ十人十色となる。

例えば、保守的な性向を有する人が大企業と莫大な遺産を所有した場合は、最も保守的態度をとりやすくなるでしょう。

逆の場合も然りです。

 

 

何が問題なのでしょうか

上記の現象は自然な成り行きで、問題は恣意的な操作による偏りと対立です。

 

体制堅持を図る人々は、その目的の為に教宣活動を行うことになります。

その教宣は中庸な人々も含め、保守的な心情を奮い立たせることになります。

特に、保守的な性向を有する人はそれに乗りやすくなります。

当然、体制の変革を図る側も同様の試みを行う。

しかし通常、資金力・影響力に優れる体制堅持側が有利になります。

 

4原発反対5田母神

  • * 4、5

 

これは何を意味するのでしょうか?

右派・左派(保守・革新)の教宣活動は、目的達成こそが重要であって、その言説の論理や事実は重要でははないのです。

こんなことを言えば、立派な先生方にお叱りを受けるかもしれませんが。

 

例えば、他国の脅威は無視出来ないが原発事故の脅威は無視出来る日本の右派がいます。

世論調査の分析によれば、原発を嫌う人は科学に不信感を抱く傾向が強い(他の要因もある)。

普通に考えれば、科学に不振感を持ちやすい人は保守的な性向に多いはずです(推測)。

なぜこのようなことになるのでしょうか。

それは原発政策が米国の国益と一致したからで、その起源は敗戦時、政府が再建を全面的にGHQに委ねたことにあります(善悪を問わず)。

もし米国が石炭政策を取っていたら、現状は変わっていたでしょう(円高も同様)。

昔はいざ知らず、現状の共産大国が原発を否定し、日本の左派に反対の圧力をかけているとは思えません。

すると原発労組を抱える左派が原発反対になる理由は、科学的根拠か右派(長期与党政権)への反発からでしょう。

このような例、理論、心情すらも食い違う例はいくらでもあります。

例えば、米国の共和党はリンカーンの時代、革新派でしたが現在は保守派です。

 

 

まとめ

本来、革新的な性向(脳機能)と保守的な性向は釣り合っており、社会は適切な進歩と安定を手に入れることが出来るのです。

 

右派と左派の論争が噛み合わないのは、一方の論理が未熟からではないのです。

元々、保守派と革新派が作り上げた言説は一貫性や論理など疑わしいのです。

所詮、辻褄合わせの産物なのです。

そのあやふやな言説に、中庸な人々までが踊らされ、左右に大きく振れ対立することが問題なのです。

 

現在は、別の不安定な状況が世界の先進国で進行しています。

それは各国で政治への不信感亢進により政党離れが進んでいることと、貧富の差が拡大していることです。

この状況は、歴史的にみて、何かの不足の事態を切っ掛けにして、世論が大きく振れる危険性を孕んでいることです。

 

大事なことは、皆さん一人一人が、確かな視点を持たないと、振り回され悲劇を見ることになるかもしれないと言うことです。

 

 

 

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