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デマ、偏見、盲点 22: 何がバブル崩壊と戦争勃発を引き起こすのか? 1


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これから、二つの悲惨な結果に至るメカニズムを考えます。

バブル崩壊と戦争勃発はまったく異なるように見える。

しかし実は同じようなメカニズムが働いているのです。

三回に分けて説明します。

 

 

* バブル崩壊と戦争勃発について

 

なぜバブル崩壊が起きるのでしょうか?

誰かが裏でバブル崩壊を煽っているのでしょうか?

残念ながら経済学は崩壊をうまく説明できない。

 

概ね投資家達(市場参加者)はバブルを好調とみなし歓迎します。

しかし一方で彼らは破産に至るバブル崩壊を恐れます。

一部、間違いなく救済される巨大銀行や崩壊の先頭を切って売り逃げた投資家は別です。(毎回、自分だけは別だと夢想している)

 

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なぜ戦争は起きるのでしょうか?

誰かが裏で戦争を煽っているのでしょうか?

この手の話はいつも巷に溢れています。

しかし多くの真実は戦争が終わってからでしかわからない。

(これを第2次世界大戦とベトナム戦争を例に注釈1で説明します)

 

平和時であっても、概ね国家は戦争を避けようとして軍備を整えます。

まして緊張が高まると増強へと舵を切ります。

概ね指導者は膨大な人命と破壊が起きてしまう戦争を望まないはずです。

少なくとも国民は戦争が二度と起こらないことを強く望むはずです。

一部、戦争をしても被害の少ない大国や支持率が上がる指導者、莫大な利益を得る軍産共同体は別です。

 

バブルを煽る投資家達も軍備増強を推し進める国家も共にその悲惨な結果を恐れることでは共通しています。

それでは、なぜ望まない悲惨な結果が生じるのでしょうか?

 

 

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* バブル崩壊のメカニズム

 

バブルは経済好調と紙一重ですが、ほぼ確実にバブルは崩壊します。

 

これは投機家らが株価(金融商品)の高騰が続かないと不安を抱くことが引き金になります。

このタイミングは微妙です。

バブル崩壊の直前まで、多くの経済指標(生産高や失業率)は良好だったのですから。

 

一つ明確なことは、暴落する時、最初に売り逃げた者は利益を得るが、後になればなるほど投機家達は莫大な負債を背負う運命にあることです。

暴落が始まると、手のひらを返すように貸し手(銀行)が投資資金の回収を急ぎ、逃げ遅れた投機家は莫大な含み資産の所有者から一転して莫大な借金を背負うことになります。

(これを土地投機を例に注釈2で説明します)

 

この被害は投機資金のレバレッジが効いているほど、中央銀行によるマネーサプライが多いほど起き易くなります(巨額の借金を安易に入手出来る為)。

 

この時、投資家や金融業が破産するだけでなく、必ず国民も大不況の被害(不景気、失業、福祉カットなど)を長期に被ることになります。

これは銀行の倒産などに端を発する金融危機、つまり巨大な信用収縮が起きるからです。

この深い傷を放置すれば、過去のバブル崩壊(恐慌)後の景気後退のように、設備投資や消費が回復するのに何十年かかるかわかりません。

深刻だったのはヨーロッパの1857年から、米国の1929年から、日本の1991年からの二十年を越える景気後退でした。

 

このため崩壊後、政府と中央銀行は数十兆円から数百兆円を主に金融市場に投じるのです。

この金額で暴落時の全金融商品(株価など)の評価損を幾分なりとも補うのですが、悲しいことに国民が負担する税金と赤字国債で賄われます。

 

実はリーマンショック時の全金融商品の評価損はよく分からない。(不明な理由はシャドウバンキングの取引額が分からないためです)

しかし当時のクレジット・デフォルト・スワップ(金融商品の保険)の取引額が6800兆円に上っていたので評価損は見当がつきます(想像を越えますが)。

 

つまりバブルで儲け、崩壊を引き起こすのは投資家(市場参加者)なのですが、その結果、その痛いツケを強制されるのは傍で浮かれていた国民なのです。

 

 

次回は戦争勃発のメカニズムについて説明します。

 

 

注釈1

ベトナム戦争は誤解から始まり、深みに嵌った戦争の代表例です。

 

戦争の発端は第二次世界大戦後に始まる冷戦の敵対感情の高まりにあった。

さらに離れた大陸にあり、異質の文化を持った米国とベトナムは互いに相手国をまったく知らなかった。

 

初期の接触、ベトナムでの小さな戦闘でこじれたことにより、その後は疑心暗鬼から大戦を凌ぐ爆撃量になるまでエスカレートしていった。

そして米国では大統領が替わるたびに停戦を志向するが、選挙を意識し敗戦の将の不名誉を避けようとして益々深みに嵌っていった。

終わってみると、この戦争で800万人の死者と行方不明者が出ていた。

 

後に、両国の当時の最高指揮官達が会談して初めて互いの誤解に気づくことになった。

この会談は1997年、ケネディ大統領の下でベトナム侵攻の采配を振るったマクナマラ元国防長官が、ベトナム側に要請して実現したものです。

詳しくは私のブログ「戦争の誤謬 7、8: ベトナム戦争1、2」を参考にしてください。

 

第2次世界大戦を引き起こしたヒトラーは外部に凶悪な敵がいると扇情し国民を魅了した。

その敵とは主に共産主義者、ユダヤ人、フランスやロシアの周辺国でした。

しかし、やがてドイツ国民は真の破壊者が誰であるかを知ることになるのですが、それは戦争の末期になってからでした。

多くの国民は戦後10年間ほど、ヒトラーに騙された被害者であると感じていたようです。

その後、加害者の自覚が生じ反省と償いが本格化した。

 

一方、共に戦端を開いた日本では国民が軍部に騙されたと気づいたのは敗戦後でした。

しかもドイツと違って、未だに誰が真の破壊者であったかを認めない人が多い。

極め付きは、国の指導者でさえ相変わらず過去の美化に懸命です。

 

これでは誰が戦争を始めたかを理解出来ないので、当然、戦争を食い止めることなど出来ない。

おそらくは同じ過ちを繰り返しても気づかないでしょう。

 

 

 

注釈2

身近な企業経営者が1880年代のバブル時にハワイの別荘を買い、バブル崩壊と共に夜逃げしたことがありました。

この過程を説明します。

 

バブルが始まると最初に工場を担保にし、1億の手持ち資金で国内不動産を購入し、これが数年で2億の評価額になりました。

次いで、これを担保に借金し、別に買った物件がまた4億円に高騰しました。

これを繰り返して行くうちに、遂にはハワイの不動産を買うことが出来た。

 

絶頂期に彼は総資産20億、借金10億で純資産10億となったことでしょう。

(ここで売れば良かった!!)

しかしバブルが崩壊し、すべての不動産価格が購入時の半値になりました。

彼の総資産は1/4以下に減価し、不動産をすべて売却し返済に充てても借金5億が残りました。

こうして彼は破産しました。

 

金融商品投資でレバレッジを30倍効かせれば、暴落時の借金はこんな少額では済まない。

ここ半世紀、規制緩和でレバレッジが上がり、金融緩和でマネーサプライが巨大になって投機資金が膨大になり、その尻ぬぐいで累積赤字が天井知らずになっている(減税と公共投資も追い打ち)。

 

毎回のバブル崩壊で、このように土地、株、商品取引などの高騰と暴落が繰り返されている。

資本主義国だけでなく中国も不動産(マンション)と株で同様の高騰な続いています。

 

 

 

 

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デマ、偏見、盲点 21: 抑止力と規制緩和に共通する危さ


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今、二つの危機、核戦争と経済破綻が迫っています。

しかし、この対処方法に真逆の説があり折り合いがつかない。

このままだと遂には破滅に至る可能性がある。

人々は漫然とかつて歩んだ道を進むのだろうか?

 

 

*抑止力と規制緩和に共通するもの

 

この2月2日には米国は核軍縮から小型核使用に方向を転じた。

また2月3日にはNYダウが1日で2.5%下落した。

これがリーマンショックを上回るバブル崩壊の始まりかどうかはまだ定かではないが、可能性は高い。

 

ある人々は、この二つは世界を破滅に導くと警鐘を鳴らす。

この破滅とは、核戦争と大恐慌(著しい経済格差と国家債務不履行も含む)です。

 

しかし一方で、これこそが破滅を防ぐ最善の策だと唱える人々がいる。

戦争を防止するには小型核、恐慌を回避するには景気拡大の為の規制緩和こそが絶対必要だと言うのです。

 

この二つの危機とその対処方法は一見次元が異なるように見える。

しかし、この二つの対処方法には不思議な共通点があります。

小型核は抑止力、規制緩和は自由競争を前提にしているのですが、実は共に相手(敵国や競合者)の善意を信じない一方で理性に期待しているのです。

 

抑止力は、敵意剥き出しの国がこちらの軍備力を的確に把握したうえで抑制出来る理性を有する場合のみ成立するのです(太平洋戦争時の日本軍が反証の好例)。

規制緩和は、個々の市場参加者が利己的に行動しても、市場全体としては最適な方向に落ち着くと信じているのです。

何か不思議な信念に基づいた論理なのです。

 

実際の社会は、悪意も善意も、感情的にも論理的にも動いているのですが。

 

さらにもう一つ、共通していることがあります。

 

例えば「抑止力は無効だ!」「自由競争は不完全で弊害が多い!」と否定したらどうでしょうか?

実は困って激怒する人々がいるのです。

前者では軍需産業、後者では金融業界や富裕層で、大きな実害を被るからです。

逆に否定して利を得る人々は特に見当たりません。

 

具体的に抑止力と規制緩和の危さについてみていきます。

 

 

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*抑止力の罠

 

兵器による抑止力は有効かと問われれば、「YES」ですが条件付です。

 

先ず、抑止力が有効な場面は身近な事から類推できるでしょう。

しかし抑止力が効かなくなる場合を理解することは少し難いでしょう。

 

単純に二つのケースがあります。

競合国(敵対国)が共に軍拡競争に突入した場合です。

一方が軍備増強を行えば相手は脅威を覚え、必ず軍拡競争が始まります(初期の米ソの冷戦)。

これは歴史上至る所で見られ、多くは大戦へとエスカレートしました。

 

もう一つは、兵器が無数に拡散した場合です。

分かり易いのは、米国の銃社会です。

国民一人に1丁以上の銃があることによって、銃による殺人事件や自殺が非常に多くなっています。

ここでは安易な兵器使用が抑止力の効果を上回っているのです(大国の中東などへの安易な軍事介入なども)。

 

この二つの例からだけでも、使いやすい小型核の普及は抑止力よりも危険の増大が予想できるはずです。

 

これに加えて、核兵器ならではの危険を増大させる要因があります。

一つは被害が非常に悲惨なことです。

このことは見落とされがちですが、多くの戦争は燃え上がる復讐心が高ければ高いほどエスカレートし、停戦は不可能になります。

だからこそ人類は悲惨な被害を与える対人地雷やナパーム弾などの兵器の使用を禁止してきたのです。

残念ながら世界は原爆の被害をまだ知らない(日本が先頭切って知らすべきなのですが)。

 

もう一つは、兵器のコストパフォーマンスが高いことです。

もし手に入れることが出来れば数億から数十億円で相手一国を恐怖に陥れることが出来るのです(抑止力と呼ぶ国もある)。

これまでは膨大な軍事費を賄える経済力こそが大きな抑止力を可能にしたが、核兵器なら小国でも可能になります。

 

結論は、小型核のような兵器は抑止力を期待出来るどころか、取返しのつかない状況に追い込んでしまうのです。

銃が蔓延し殺人が多いにも関わらず、銃規制が出来なくなってしまった米国がその好例です。

 

米国では治安と平和は高額で買うしかなく、金が無ければ治安が悪い所に住み、命を危険にさらさなければならないのです。

核兵器の下では、これすら不可能です。

 

 

*規制緩和の罠

 

規制緩和は経済活性化に有効かと問われれば、「YES」ですが条件付です。

 

皆さんの多くは規制緩和が経済を活性化させると信じているはずです。

一方で規制緩和が経済や社会に弊害をもたらす事例も数多くあるのですが、なぜか見えなくなっています。

これは今の日本で、有効だとする情報が大量に流されているからです。

 

幾つかの事例をみてみましょう。

 

 

 

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*米国の規制緩和がもたらしたこと

 

先ずは米国で40年近く行われて来た規制緩和が如何にバブル崩壊と経済格差を生んだかを簡単に説明します。

専門用語が出て来ますが、全体の流れを知って頂ければありがたいです。

 

  •  先ずストックオプションが1980年代から急増した。

これにより経営者は短期に高騰させた自社株を安く手に入れ、彼らの所得は鰻登りなっていた。

このことが企業経営を投機的で短期的なものにし、従業員との所得格差も開いた。

 

  • グラス・スティーガル法が1999年に廃止された。

この法律は1929年の大恐慌の再来を防止するために銀行業務と証券業務を分離し、投機行動を監視し抑制するのが目的でした(1932年制定)。

しかし、これが廃止されたことにより、監視が行き届かないシャドウバンキング(証券会社やヘッジファンド)が好き放題に投機をおこなった。

 

  • 投機時のレバレッジ率が上昇した。

これは証券、商品、為替などへの投機時に自己資金の数十倍まで投資が可能になることです。

これによって投資家は価格が高騰した時は桁違いの儲けが出るのですが、暴落すると巨額の負債が発生し、バブルと崩壊が繰り返されることになった。

このことが2項の監視されない状況で起こった。

 

  • クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が2000年頃から急拡大した。

これは金融派生商品の一種ですが、リーマンショックの巨大なバブル崩壊を招いた大きな原因の一つでした。

これは金融取引時の損失を補償する新手の保険で、当時、危険な投資案件でも金融機関はこの保険があれば救済されると信じていた(赤信号皆で渡れば怖くない)。

 

バブル崩壊前年の2007年末にはその取引額は6800兆円になっていたが、6年間で100倍にも膨れ上がっていた。

この年の米国の名目GDPは1500兆円で、如何に膨大かがわかる。

当然、崩壊時の補償など出来るはずもなく、米国政府は税金と国債発行で300兆円を金融危機終息の為に注入せざるを得なかった。

出来もしない補償であろうがCDSを販売すれば儲かったのです(6800兆円の数%の手数料でも莫大)。

 

大雑把ですがポイントは以上です。

この悲惨な状況を生み出した最大の馬鹿げた理由は、貪欲な投機家や資産家、経営者達を野放したこと、つまり規制をしなかったことによるのです。

もうひとつ見落としがちなのは、資金力や情報力、政治力などの差により完全な自由市場などは存在しないことです。

 

この話は、少し分かり難いかもしれません。

しかし規制や取り決めがなく好き勝手にした為に社会が壊滅した事例は歴史上多いのです。

 

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* 歴史上、破滅した例

 

典型的な例はイースター島とアイスランドです。

 

人々が最初にこれらの島に入植した時は、木々が茂る緑豊かな所でした。

しかし、燃料などの為に伐採が進む内に自然は再生不能となり、イースター島では部族同士が激しく争い、人口は激減し、逃げ出すにもカヌーを作る木材さえなくなっていた。

アイスランドは木々の無い島となり、それこそ火と氷の島となったのです。

 

 

* 日本の事例

 

最後に日本の規制緩和の惨めな例を一つ挙げましょう。

労働者派遣法の適用拡大により、非正規雇用が拡大し続けています。

 

これも賛否両論があります。

ある人々は産業の競争力を高める為に、また産業や企業の盛衰に合わせ人材は流動的でなければならないと言う。

一方で、安易な首切りや低賃金の横行は基本的人権を侵害すると言う。

 

おそらく多くの人は、経済側の言に耳を傾け、泣き寝入りするするしかないと感じていることでしょう(これは日本人の奥ゆかしさかもしれない)。

 

この問題のポイントは是か非かではなく、どちらも正しいのです。

企業の競争力を高め、労働者の価値を高めるためには、人材の流動性が必要です。

当然、簡単に首を切られ、低収入や無収入に甘んじなければならないのは論外です。

 

つまり、労働者は失業中も収入が確保され、転職のための再教育や訓練が充分行われ、就職すれば当然、同一労働同一賃金であるべきなのです。

 

こんな夢のようなことは不可能だと思われるかもしれませんが、北欧(スウェーデン、デンマークなど)ではこれが当然のように行われているのです。

 

日本の悲しさは、産業競争力の責任を一方だけが背負い甘んじているのです。

 

 

 

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*まとめ

 

抑止力と規制緩和の問題点を簡単に見て来ましたが、ここで確認して欲しいことがあります。

 

抑止力については歴史的に見て完全なものではなく、むしろその強化を放置すれば災いを招くことがあったことを知ってください。

 

また規制緩和はここ半世紀ほど米国を筆頭に行き過ぎており、多くの問題が生じていることを知ってください。

 

抑止力と規制緩和の推進は軍需産業や金融業界、資産家に取って実に旨味のあることなのです。

東北大震災の福島原発事故のように、大きな産業と関係省庁が癒着してしまうと、体制維持に都合の良い情報だけが国民に流され続け、問題点が見え無くなってしまうのです。

 

 

* 日本が今歩んでいる道

 

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< 6.銀行の金融資産と自己資本の比率、OECDより>

 

金融資産/自己資本は金融セクターの財務安定性を見るためのものです。

上のグラフ: 2004~2016年の金融資産/自己資本の推移。

 

多くの国、例えば英国、デンマーク、米国はリーマンショック後、健全化を進めているが、日本だけは悪化している。

 

下のグラフ: 2016年、この日本の比率はOECD35ヵ国の内、下位から

三番目です。

 

もし大暴落が始まればどの国が最も影響を受けるのでしょうか?

 

 

 

参考文献

「米国の規制緩和がもたらしたこと」に詳しい本

 

「世界金融危機」金子勝共著、岩波書店、2008年刊。

「世界経済を破綻させる23の嘘」ハジュン・チャン著、徳間書店、2010年刊。

「世界を破綻させた経済学者たち」ジェフ・マドリック著、早川書房、2015年刊。

「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」ジョセフ・E・スティグリッツ著、徳間書店、2016年刊。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 92: 何が問題か? 15: なぜ改革から逃げるのか?


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日本の社会経済の指標、評価ランキングは益々低下の一途です。

にもかかわらず日本は一時しのぎを繰り返すだけで、痛みの伴う成すべき改革から逃げています。

この不思議を探ります。

 

 

*今の日本の状況を概観します

 

以下のグラフから、日本の所得水準、幸福度、経済力の低下が見て取れます。

 

 

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< 2.悪化する日本 >

 

上のグラフ: 日本のワーキングプアは年々増加し、OECD内でも順位を落としています。

ワーキングプアはまともに働いても貧困線以下の所得しか得られないことを指します。

 

中央のグラフ: これは主観的な幸福度の世界ランキングで、日本は60位です。

 

下のグラフ: 主要国の中でも日本だけは特許出願件数は低下の一途です。

 

上二つのグラフで必ず上位にある国は北欧(デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー)です。

 

 

 

*改革から逃げる様々な言い訳

 

*A: 改革は漸進的であるべきだ!

 

これは保守論客の西部邁が指摘した保守思想の一つです。

 

このことは理解できます。

人間は不完全なものであり、未経験で画期的な社会改革は危険と言えます。

漸進的であることは、確かに大きな失敗を犯す可能性を低下させます(共産主義国家の失敗)。

 

しかし、これとて完全でないことは明白です。

例えば、次の事を考えれば分かり易いでしょう。

 

衰退する企業が、いくらコストダウンを続けても、漸進的な改善では存続することは難しい。

つまり技術や商品にブレイクスルー(飛躍的な革新)が必要なのです。

 

それでは社会や政治についてはどうでしょうか?

前回、英国の19世紀末の衰退で見たように、権力を握った勢力(金融資産家)は利益拡大(海外投資)に励みこそすれ、たとえ国が衰退(産業停滞)しようが既得権益(金融の自由)を制限するようなことはありませんでした。

 

このような場合、たとえ漸進的であっても効果ある改革が出来ないから国や文明は衰退し、または暴動や革命が起きるのです。

 

結論から言えば、保守も革新も程度問題であり、状況に応じた改革手法を選択すべきです。

 

 

*B: 万年野党が頼りないから、与党に任せるしかない!

 

野党が頼りないのは事実です。

野党はひたすら反対か批難するだけで、理想は語るが具体的な対案を持たない。

これも一面正しいと言えるでしょう。

 

しかし、これで済む問題でもないはずです。

大きく二つの理由があります。

 

一つは、今の凋落は日本の万年与党の政策のつけだと言うことです。

もう一つは、これを牽制出来る健全野党が育っていないことです。

 

 

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< 3. 1990年代に起きた事 >

 

上のグラフ: 日本の公共投資は1990年代に猛然と増加しています。

青棒、左軸が金額を示す。

 

下のグラフ: これまた非正規雇用率(赤折れ線)が1990年代から急伸しています。

 

この時期に起こった二つのことは密接に関係していた。

 

 

 

*政策のつけとは何か?

それは凡そ1985年から始まったと言えます。

プラザ合意による円高誘導で日本は経済が低迷し、政府はこの挽回の為に突出した公共投資と金融緩和を来ない、やがてバブル経済に突入します。

そして1991年のバブル経済崩壊が、経済を長期低迷させることになった。

この一連の出来事は、貿易摩擦と円高に喘ぐ米国が日本に圧力をかけ、これに従った与党政権のあがきの結果だと言えます。

この間、政権は米国が要求する構造改革、金融ビッグバンを行い、米国の望む自由主義経済圏に完全に突入していきます。

ここまでは野党政権であっても同じことをしたかもしれませんが。

 

しかし、このバブル崩壊後の不景気のさなかの1995年頃から、万年与党らしい政策の影響が今の日本社会を作りだすことになりました。

それは先進国中のあらゆる順位(幸福、経済、貧困、報道、男女平等、労働等の評価)が低下し続けていることに如実に現れています。

 

目立つものとしては非正規雇用の増加と賃金低下、一方でやや遅れて起きた企業の内部留保の増加でした。

これは今も更新中です。

これらは労働の規制緩和などに代表される企業優先の姿勢がもたらしたものです。

まさに1994年の「舞浜会議」で財界が望んだ方向に事が進んでいます。

 

この与党の一連の政策は、米国追従と財界優先の姿勢から生じたもので、さらには自由主義経済への固執にあります(言い替えれば惰性と既得権益擁護でしょうか)。

 

この結果、日本は長期のデフレ、低経済成長、ワーキングプア増加に陥りました。

さらに世界に類を見ない累積赤字の増大、米英に続く格差拡大が急速に進行しています。

また少子化対策の遅れによる労働人口減と高齢化社会の到来が重なります。

この結果、現在進行中の年金などの福祉政策の大幅な縮小がある。

 

万年与党が政権に居座り続けたことにより、つい30年前まで誇ることの出来た日本の快進撃は、単に思い出に過ぎなくなった。

1980年代、多くの人が別荘地、リーゾトやゴルフ場の会員権を買い漁り、いつまでも景気上昇が続くと信じたはずです。

しかし、それは束の間の夢であり、長い喪失感と借金返済が現実に続くことになったのです。

 

つまり、与党には政権を担った実績はあるのですが、このまま舵取りを任せることは没落を深めることになるのです。

しかし野党のだらしなさは頂けません。

 

 

 

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< 4. その後に起きた事 1 >

 

上のグラフ: 賃金が1997年から低下し続けています。

下のグラフ: 企業の内部留保が1999年頃から急激に伸びていることがわかります。

 

つまりこれらは与党が長年積み上げて来た成果なのです。

 

 

 

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< 5. その後に起きた事 2 >

 

これも成果と言えるでしょうが、残念ながら日本の衰退を物語っています。

 

日本の累積債務(赤い棒グラフ)はGDP比率で世界最大級でかつ増加中です。

一方、日本は世界一の対外純資産国(=資産―借金、青い棒グラフ)です。

 

楽観論者はこの資産によって債務を減らすことが出来るはずだと訴える。

しかし、それは不可能です。

誰が、海外の高利回りの証券から利率の低い内国債に買い替えるでしょうか。

(もし国債の金利が上がれば、余計に悲惨な状態になります。)

そんな善意に期待出来ないことは、世界一の対外純資産国であった英国が19世紀末に衰退した事実を挙げるまでもなく、常識で分かるはずです。

結局、体制擁護派は無責任に煽っているだけなのです。

 

 

*万年野党の悲運

先進国は概ね二大政党を目指し、少数政党乱立や一党独裁を避ける選挙制度を取り入れています。

これは長年の民主主義獲得の経緯から生まれたもので、政策論議を深め、多数決による弊害を避ける為のものでした。

残念ながら、日本では戦後まもなくしてこれが機能しなくなりました(戦前が良かったわけでもないが)。

 

日本の万年与党は自由主義経済を国是とする保守政権(米国共和党など)にあって、珍しく財政支出の大きな政府になっているが、これは万年野党が反対し対案を出し続けることでなったとする見方もある。

しかし、私は別の理由によるものだと思う。

 

ところで、やはり万年野党の存在はどう見ても民度の高い国、先進国の中では異常であり、適切な役割を果たしていない。

つまり長期に及ぶ与党政策の歪を是正するためにも、民主主義の危機を防ぐ為にも、強い野党の存在が不可欠です。

 

現実は非常にお粗末ですが、志ある人も、芽も僅かばかりではあるが残っている。

 

 

*なぜこのようなことが起きているかについて考えます。

 

結論から言えば、日本には未だにパトロネージが強く根付いているからだと考えます。

 

「パトロネージ・システムとは権力を持つ個人(パトロン)が、その特権を利用して、資源を恣意的な決定によって、自己を支援する集団(クライアント達)に分配するシステムです」

 

少し馴染みが薄い言葉かもしれませんが、世界中の後進国や南欧ではよく見られる政治状況です。

洋画で言えば「ゴッドファーザー」、日本で言えば議員の「世襲」や「看板、地盤、鞄」に代表される状況です。

 

もっと分かり易く言えば、「日頃お世話になっている顔役に投票する村人」のイメージです。

 

私は都会の郊外で生まれたが、現在、のどかな自然に恵まれた所に住んでいます。

ここで都市部と田舎の政治意識の違いをいやと言うほど知らされました。

皆、良い人なのですが、政治感覚や選挙行動に驚かされます。

 

先ず、人々は政治談義をほとんどしないのですが、あってもその範囲は村や町ぐらいまでで、中央政治を語る人は稀で、まして世界情勢とは無縁です。

しかし選挙では彼らは熱心になります。

そして、思わぬ人から投票を依頼されることもあり、断わりでもしようものなら、「村の恩人に恥じないのか!」と恫喝されることもあります。

つい最近まで買収もよく起きていました。

 

二大政党制を目指した小選挙区制度改革ではあったが、派閥を崩す効果だけで留まってしまい、逆にパトロン(総裁や首相)の権力を巨大化させてしまった。

そのあげく、先進国の議会制民主主義では起こるはずのないことが権力者周辺で頻発している。

つまり取り巻きや取り入ろうとする輩が犯罪やたかりを平然と行い始めた。

 

 

*なぜパトロネージ・システムが蔓延るのか?

 

二つの要因があると思います。

 

一つは、政治意識、歴史観、社会意識が未発達なことです。

これらが低い一因は、以前も指摘しましたが1970年代の学生運動後、学校教育の場で、政治が禁句になったことにあります。

政府は学生運動の再燃を抑える為に行ったのだが、これが今大きな災いとなっているのです。

例えば、北欧では小学生から環境問題、さらに上級では政治活動も教育の一環としておこなわれており、これが民主主義を支え好循環を生んでいるのです。

 

今一つは、帰属意識が高いことで、これは田舎ほど高いようです。

これは古い農耕民の心性の名残であり、良さもあるので、一概に否定することは出来ません。

しかし、その欠点は良識を失う会社人間や自殺の多さ、また内部告発が出来なく自浄作用が働ない組織を生み続けることになる。

 

分かり易い事例としては、村人に行事に対する意見を求めた時、極端な場合は個人の意見は控えたい、隣近所との協議の上でと逃げられることがある。

 

またワンマン企業では、従業員は陰で社長のパワハラを嘆きながら、一方で、依存しており、従順ぶりを装うことになる。

 

これらの社会や組織は一致団結して行動する分には効果を発揮するが、社会変化への不適応を起こしやすく、また暴走を食い止めることが困難です(1920年代のドイツ、イタリア、日本が好例)。

 

残念なことに、私にはこの政治文化を改善する方法が見つからない。

ただ地方の選挙制度と国会議員の育成方法に何らかのステップアップの術があると思う。

 

 

 

*C: 資本主義以外に進むべき道はない!

 

私がブログで日本の現状を憂い、体制の転換を図るべきだと指摘すると、資本主義は完璧であり、他は無いと反論されることがあります。

 

結論から言えば、資本主義は空気のようなもので否定する必要はありません。

大体、資本主義が唯一無二の完璧な政体と考えることもおかしい。

帝国主義は資本主義から生まれ、さらには互いにおぎなっていたのです。

つまり、国民が資本主義をコントロールすることが必要なのです。

 

ここ1世紀だけを見ても、資本主義社会の欧米の状況、格差や福祉は国よっても、時期によっても大きく差異がありました。

1950~1970年代の日本や米国、西欧は概ね格差が少なく経済成長を遂げた時期でした。

その前後は逆の時代でした。

それは反動の時代と呼べるかもしれません(当然、一部の層には良い時期でしたが)。

 

今の反動の時代は、自由主義経済の復活と更なる金融業重視によってもたらされたものです。

これによる弊害は、これまでに説明して来ました。

 

問題は、これらを改めることに不安を抱く多くの人と、それを不可能で危険な行為と反対するエスタブリッシュメントとこれに連なるエコノミストの存在です。

既得権益を脅かされるエスタブリッシュメントが反対するのは当然です。

 

しかし国民は、かつて国民を守る為の規制と権利擁護により、社会が今より順調な時代、1950~1970年代があったことを知って頂きたい。

 

重要な事は、多数の日本国民が英米をお手本とする狭窄な視野から脱することです。

北欧やドイツ、フランスは同じ資本主義国でも異なった道を歩み、豊かさと繁栄を手に入れています。

特に北欧は1930年代頃から、高福祉政策を採り始め、高負担ながら高い所得と権利の尊重と幸福を共に得ています。

このために北欧は世界から孤立するのではなく、旺盛な貿易をやり、有名な多国籍企業が活躍し、PKO派遣でも貢献しています。

 

 

 

6

< 6. 北欧の経済 >

 

上のグラフ: 2004~2008年平均の輸出などのGDP比率。

如何にスウェーデンが国際的(開放経済)であるかがわかります。

 

下のグラフ: 如何に北欧各国が日本より高い経済力を維持しているかがわかります。

 

これだの開放経済であっても国内の労働者の権利を守り、経済発展を遂げることが出来ているのです。

 

 

つまり、「国民の権利を重視する政策は、自由主義経済が蔓延するグローバルな世界では取り残され、やがて破局を迎える」と恫喝する多くの体制擁護派のエコノミストの指摘は嘘なのです。

 

 

 

*まとめ

 

これまで見てきたように、日本が改革出来ないとされる理由は実に他愛ないものでした。

多くは体制擁護派、既得権益層、自由主義経済信奉者らの必死のアジテーション(煽動)で、想定外を無視した無責任な発言に過ぎない。

しかし、残念なことにこちらの方が訴える力はある。

 

最後に、私が皆さんに望むことは、今後日本が衰退していくことを諦めたとしても、万年野党を生む政治文化だけは何としてでも突き崩して頂きたい。

しかし、これとて国民の意識が高まらない限り不可能で、これでは堂々巡りです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

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何か変ですよ! 91: 何が問題か? 14: 英国はなぜ衰退したのか?


 

1バンコク博覧会

< 1. ロンドンの万国博覧会、1851年 >

 

 

今回は、繁栄を享受していた大国がなぜ没落したかを見ます。

そこでは今の日本とまっく同じことが起きていた。

誰しも自分の不幸の予兆を知りたくはないが、知れば心構えが変わるかも!

 

 

 

 

2a

< 2.栄枯盛衰 >

 

上は1876年のロンドン、下は20世紀初頭の米国の写真です。

 

 

*はじめに

かつて大英帝国は軍事的・経済的に世界を席巻し西欧文明、いや人類文明の模範でした。

しかし、その絶頂期にあった19世紀の後半からわずか数十年、急激に生気を失い、覇者の座を失った。

覇権国の栄枯盛衰は世の習いではあるが、資本主義社会で起こったその衰退過程が日本の低迷と恐ろしく似ているとしたら、どうでしょうか?

 

皆さんにこの英国の歴史から感じて頂きたいことが三つあります。

 

A: 衰退の原因はその社会が作り出していた。

B: 衰退の渦中にいながら人々はその欠陥を正すことが出来なかった。

C: 間違った手段で起死回生を企て一層社会は衰退し、さらに世界大戦へと突き進んだ。

 

歴史は過ぎ去ったものであり、まして外国のことなど関りがないと思われるかもしれないが、恐ろしいほど似たことが起きていたのです。

 

 

 

3a

< 3.英国の繁栄と衰退 >

 

赤枠は繁栄を極めた英国が19世紀後半から転落していく様子を示す。

 

 

*繁栄を極めた英国

17世紀、英国はピューリタン革命と名誉革命を経験し、いち早く議会が王権を牽制するまでになった。

16世紀以来、海外の領土を拡張していたことと、上記の社会体制の変化が相俟って、世界で最初の産業革命が英国で1760年代に興った。

19世紀半ばには「世界の工場」と称され、1851年にロンドンで始めて開かれた万国博覧会はその自信の現れだった。

 

 

 

4a

< 4. 帝国主義に拍車がかかる >

 

上は1886年の英国の植民地、下は1921年のものを示す。

この間に英国は中東とアフリカに侵略を開始した。

英国では何が起きていたのか?

 

 

*一方で破滅への道が準備されていた

1825年、過剰生産による恐慌が英国で始めて起こり、その後ほぼ10年ごとに恐慌は起こったが、19世紀前半の恐慌は主として英国内にとどまっていた。

しかし1857年に初の世界恐慌が勃発し、1873年の恐慌ではヨーロッパ(英国も)は22年間にわたる経済不況へと突入した。

 

一方、ヨーロッパ大陸ではフランス革命(1789年)が起こっていたが、その後のナポレオン戦争への勝利が列強による軍事同盟(ウィーン体制)を生み、逆に国内の自由主義を19世紀半ばまで抑圧することになった。

 

恐慌の翌年の1874年、英国では総選挙で帝国主義的外交を唱える保守党(貴族、大資本家が支援)が圧勝し、スエズ運河買収(1875年)、インドを直轄領からなる帝国化(1877年)へと推し進めることになった。

 

こうして英国を含めたヨーロッパ諸国は競い合って世界を植民地化し、ついには二度の世界大戦へと突き進んだ。

 

 

 

5

< 5. 英国の衰退要因 >

 

上左のグラフは1914年の英国の資本輸出、上右のグラフは英国の資本輸出の推移(1816-1914年)を示し、下のグラフはその結果として工業生産高が伸びなくなっている状況を示す。

英国が衰退した最大の理由は膨大な資本輸出(他国の建設や設備への投資)にあり、これが国内投資を激減させ、国内産業の競争力の低下を招き衰退に至った。

 

 

 

*英国は自ら衰退の道を歩んでいた

二度の大戦で多くの国は戦火を被ったが、衰退する英国を尻目に米独日などは経済大国へと躍進することになる。

英国の衰退は1880年代には始まっており、20世紀の初頭には米独に追い抜かれていた。

衰退は英国で進行していた社会・経済の変化にうまく対応できなかったことによる。

 

英国は産業革命をやり遂げてはいたが、鉄と石炭の産業が中心であり、次代を担う電気やガスを中心とする重化学工業には対応出来ていなかった。

これは新規技術導入に消極的だったことによるものだが、かつての企業家精神は半世紀余りの間に完全に廃れていたからでした(保護政策)。

 

何が英国で起きていたのか?

産業革命により貿易は拡大し、人口は都市に集中し、都市労働者の生活スタイルが変わり、食料品や日用雑貨の大量輸入が不可欠になり、自由貿易が進められた。

すると国内生産の農作物価格が暴落し、大規模農場経営は行き詰まり、貴族(ジェントルマン)は資産を不動産から金融資産へと変えていった。

一方、勃興した産業資本家も金融資産を増やしていた。

 

産業革命当初、英国の輸出は旺盛で貿易黒字は優勢であったが、やがて輸入が上回り万年赤字になった。

しかし、世界トップシェアを占める海外貿易に伴う船賃収入や、それまでに蓄えた外貨(貿易黒字)による海外投資の利益が貿易赤字を上回るようになった。

こうして英国は世界の新興国や発展途上国に投資し、ますます資本家は貪るように海外投資で利益を得るようになっていった。

こうしてロンドンシテイは世界の金融をリードするようになったが、英国内への産業投資は尻すぼみとなり、競争力は衰えるばかりだった。

金融資本家は急成長し資金が不足する米国やドイツの産業や産業基盤(鉄道)に競って投資し、競合国の経済成長を助け、自国産業の衰退に加勢すらした。

 

さらに植民地への投資資金と植民者の安全確保の為と称して、植民地への軍事行動が国民の合意の下に行われることになり、帝国主義は国を挙げて行われていった。

 

 

*英国社会では何が起きていたのか

大英帝国の貿易と経済、植民地のシェアは世界で群を抜いてトップだった。

また大英帝国には莫大な資本蓄積があり、多数の大金融資本家(ロスチャイルド家)がおり、人々は繁栄を謳歌していた。

 

19世紀末から20世紀初頭の英国の人々の暮らしや意識を追ってみます(注釈1)。

 

・大都市の暮らしに憧れ、都市生活を享受した。

・その一方で地方暮らしや海外赴任を嫌い、遂には外貨を稼ぐ船員も激減した。

・添乗員兼通訳付きの海外向けパック旅行が大ブームとなった。

・国内旅行では温泉がブームになった。

・都市では展覧会、博覧会、スポーツ競技などのイベントが花盛りになった。

・古典は疎まれ、イラストの無い読み物は敬遠されるようになった。

・健康ブームとグルメブームが興った。

・理想主義、犠牲や粘り強く行うべき改革は嫌われ、「勝手気まま」が合言葉のポピュリズムが持てはやされた。

 

この時代は英国が築き上げた繁栄から半世紀以上が経過し、所得の増加や福祉向上が進み、都市生活が定着し、大量の中産階級が生まれていた。

しかし19世紀後半には経済が陰り始めたが、人々(中産階級)は更なる繁栄を求め、保身と海外展開に望みを託し保守化していった(注釈2)。

 

残念なことに、1世紀前の苦労やかつての克己心は忘れ去られ、快楽追及や利己的なものが重視されるようになっていた。

 

 

 

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< 6. 今繰り返されようとしている英国の世紀末 >

 

上のグラフは19世紀末の資本(投資利益)が労働(賃金収入)よりも如何に稼いだかを示し、凡そ7倍あった。

中央のグラフは、その結果として20世紀初頭、如何に所得格差が開いていたかを示し、両グラフから21世紀初頭も同じことが起こりつつあることを示している。

下のグラフは、最近の日本の民間資本の肥大化を示している。

 

この三つのグラフは、日本を筆頭に差はあるものの先進国では莫大な資本が百年前の世紀末を再現しつつあることを物語っている。

 

 

*日本と比べて

おそらくここまで読まれた方は、あまりにも現在の日本に似ていることに驚かれるはずです。

政治家、企業家や資本家、中産階級の嗜好と目指すものは両国で酷似しています。

 

内憂(恐慌や衰退)を国内で解決するのではなく、海外の植民地拡大に矛先を転じていました。

実は植民地政策は搾取する割には軍隊派遣や植民地への投資で赤字になるだけでなく、多くの自国民の血も流した。

現在の日本も似ていますが、1910年代の好景気を経て30年代に大陸進出する大正から昭和の初めとも似ています。

 

企業家や資本家はやがて保守的になり、蓄積した膨大な金融資産は国内に向かわず、海外に利を求め、国内投資は漸減し、自国の競争力は失われた。

これは国としては自分で自分の首を絞めるに等しいのですが、個々には最適な利殖行動の結果なのです。

 

中産階級の浮かれ具合は両国でまったく同じです。

しかも当時、この英国の浮かれ具合を古代ロ―マの衰退期と同じだと指摘した出版物が出たと言うから、歴史は繰り返すようです。

 

実は、もう一つ共通していることがあります。

それは社会が本当に衰退している時ほど、楽観論(衰退を無視)がまかり通るようです。

 

 

*まとめ

冒頭で述べた以下の三点について皆さんはどのように感じられたでしょうか?

 

A: 衰退の原因はその社会で生まれていた。

 

経済発展が経済(産業や金融)と社会(主力の階層)を変え、今度はこの社会が経済の不具合(業界保護と国内投資減)を制御出来なくなってしまった。

 

 

B: 衰退の渦中にいながら人々はその欠陥を正すことが出来なかった。

 

国の発展を牽引するはずの企業家や資本家は利益を求めるだけで、社会や国の衰退を顧みることはなかった。

 

C: 間違った手段で挽回を企て一層社会は衰退し、さらに世界大戦へと突き進んだ。

 

政治家や資本家は、国内経済の低迷打破に安易で国民の反発が少ない海外進出に舵を切った。

そして植民地の関係は泥沼化し、また列強との競争が激化し、やがて戦端を開くことになった。

 

 

*あとがき

英国の衰退を説明し、かつ日本の現状との類似を指摘することは難しい。

したがって、分かり易さと大きな流れを掴んで頂くために、かなりの歴史的事実や経済データーなどを割愛して、極端に論理を圧縮しています。

関心のある方は、以下の参考文献を参照してください。

 

 

次回に続きます。

 

 

注釈1: 文献「なぜ国家は衰退するのか」中西輝政著、1999年刊。

記事は主に第三章から抜粋。

 

注釈2: 文献「概説 西洋社会史」野崎直治編、1994年刊。

この分析は、Ⅳ-17の「帝国主義時代のイギリス社会」に詳しい。

 

ドイツ国民がナチスに傾倒して行った過程でも、保守化した中産階級(定義は異なるかも)が主役を成した(別の文献)。

 

 

参考文献

*「21世紀の資本」トマ・ピケティ著、2015年刊。

*「新版 概説イギリス史」青山吉信共編、1995年刊。

*「図説 イギリスの歴史」昭博著、2002年刊。

*「概説イギリス経済史」米川伸一編、昭和61年刊。

今回の英国経済衰退について最も詳しく書かれている。

*「概説世界経済史Ⅱ」ロンド・キャメロン共著、2013年刊。

今回の英国経済衰退についての要約と世界経済の関係が分かる。

*「現代のイギリス経済」中村靖志著、1999年刊。

今回の英国経済衰退について第一章に少し書かれている。

*「世界の歴史25 アジアと欧米世界」中央公論社刊、1998年刊。

今回の英国衰退期の歴史(社会、貿易、帝国主義)について詳しい。

*「世界経済の成長史1820~1992年」アンガス・マディソン著、2001年刊。

今回の英国経済衰退について世界経済の関係が分かる。

*「イギリス病・イタリア病・日本病」中村忠一著、昭和52年刊。

 

 

 

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何か変ですよ! 90: 何が問題か? 13: 過去・現在・未来に生きる


1グラフィックス2

*1

 

 

日本は平和で、人々は豊かさを享受しているようです。

しかしこのまま突き進むと、いずれ経済も平和も失う事態が来るとすれば・・

今、懸念すべきことはないのだろうか?

 

 

*はじめに

現在、進められているアベノミクス(円安誘導、株価下支え、金融緩和、リフレ策、規制緩和)に不安はないのだろうか?

 

確かに、円安になり株価は上昇し失業率は低下した。

一方で、インフレは起こらず、経済成長は芳しくなく、賃金は低下し続けている。

ゼロ金利政策と日銀の莫大な国債買い上げが続き、そして累積赤字は減少するどころか増大している。

 

多くの人々は、いずれ経済が上向くとの希望を抱いてるのだろうか?

そうなれば賃金が上昇し、累積赤字が減り、年金や医療介護体制も維持できると考えているのだろうか?

 

この楽観はどこから来るのだろうか?

 

 

*楽観論の陰にあるもの

政府や取り巻きが唱える楽観論の根拠は正しいのだろうか?

 

この楽観論の前提は非常に単純明快で、日本経済は刺激さえすれば昔のように高い成長を維持できると言うものです。

そして概ねアベノミクスはヘリコプターマネー(通貨増発)によるインフレ誘導で投資や消費を拡大させ、長期の経済停滞から脱却すると言うものです。

 

当初の円安は輸出企業を刺激し、また株高によって一部には好転の兆しがありましたが、それ以外では実体経済への好影響はあまりなく、効果は持続していないと言えます(つまりトリクルダウンがない)。

なお失業率の低下は、主に団塊世代の退職による代替え雇用によるものです。

 

ここで、楽観論で見えなくなっている懸念や問題点について考えてみます。

(難しい理屈は不要です)

 

日本経済は刺激さえすればほんとうに成長を始めるのでしょうか?

または一時成長しても後に大きな歪や災いが生じないのでしょうか?

 

A インフレになりさえすれば消費が増え、ほんとうに経済は上昇し続けるのか?

 

B 日本の経済は本当に成長出来るのか?

 

C かつてない金融緩和が破滅的な金融危機を招くのではないか?

 

D 日銀や政府の政策が将来、国民の負担や財政破綻に繋がらないのか?

 

E 高い経済成長が起きても、米国のようにならないのか?

 

楽観論を唱える識者はすべて上記の問題点を無視するか否定している。

 

 

 

*上記問題点に共通すること

それぞれの問題について様々な経済学者が激論を戦わせており、素人にはその正否を判断することは困難です。

右派左派、保守革新、米国寄りかで見方は大きく対立している。

しかも多くの人はこれらを予想出来ない不安な事として無視しているようです。

 

しかし、上記5つの問題が現実に進行しているか、過去に起きていた事を知れば、皆さんは問題の大きさを識ることになるはずです。

つまり、これは現実の問題なのです。

 

 

*グラフから読み解きます

 

 

2グラフィックス1

< 2. 日本と主要国の失業率、社会実情データ図録より >

 

失業率はリフレ策などの金融緩和によって繰り返されるバブル崩壊で増大している。

 

赤の縦線は米国のバブル崩壊の始まりを示し、米国の失業率(赤の折れ線)はバブル中に低下していても、崩壊後に急上昇を繰り返している。

黒の縦線は日本のバブル経済の崩壊の始まりを示す、その後の「失われた20年」の長期にわたる失業率の上昇が深刻です。

つまり、リフレ策を含む金融緩和は概ね経済の疲弊を繰り返すだけなのです。

 

 

 

A インフレになりさえすれば消費が増え、ほんとうに経済は上昇し続けるのか?

結論から言えば、アベノミクスのリフレ策は2013年から2017年の5年間の結果から見れば効果がなかった。

 

ただ円安と株高は当初効果があったが、これは2012年の欧州金融危機解消と海外投機筋の安倍政権誕生への期待によって起こったもので、いつまでも続くものではない(ファンダメンタルの改善ではなく海外の投機動向によるもの)。

物価上昇が起きない理由として原油安が足を引っ張っているとの指摘があるが、本来、原油安は進行している賃金低下を補うべきもので、むしろ円安による物価高が災いして消費全体が伸びなくなっている。

 

リフレ策の先輩である欧米の経済状況から、リフレ策は成功しているとは言えず、クルーグマンは財政出動が重要だと言っている(グラフ2はその一例)。

 

 

 

*グラフから読み解きます

 

 

3グラフィックス3

< 3.日本の潜在成長率、 日本銀行より >

 

このグラフは低下し続ける日本の潜在成長率(黒線)を示し、設備投資(資本ストック)の減少と生産性(TFP=全要素生産性)の低下が顕著です。

この潜在成長率の低下は1990年代の急減によって始まっているが、これはバブル経済(1986年12月から1991年2月までの51ヵ月間)の反動がもたらしたものです。

 

これ以来、経営者は資金(内部留保など)を長期に固定し予測困難な設備投資に使うより、手早く高利を稼げる海外証券などに投資するようになった。

つまり、経済を牽引すべき人々は実体経済への意欲を完全になくし、あり余る資金は金融経済、それも海外に儲けを求めるようになってしまった。

この資金が逆流しない限り、幾ら通貨が増発されても設備投資に向かず、金融商品に向かいバブルを煽るだけなのです。

 

この国内の実体経済を軽視する風潮が日本の衰退の元凶であり、かつて英国が没落へと突き進んだ道でもありました。

いま日本は戦後3位のアベノミクス景気と浮かれているが、またバブルが弾けると、かつて言われた「失われた20年」よりさらに長い衰退が待ち受けることになる。

人々は、幾度繰り返せば悟るのでしょうか?

 

 

 

B 日本の経済は本当に成長出来るのか?

結論は、日本経済は衰退の道を進んでおり、抜本的な対策を講じないと手遅れになる。

 

大規模な経済刺激策が一時、功を奏しても、その後に大きな反動が来るか、手遅れを招く。

アベノミクス(特に金融緩和)は一時的な興奮剤か、むしろ常習性の麻薬であり、真の経済・社会問題から目を逸らしてしまうことになる。

 

日本経済の成長力については潜在成長率や需給ギャップなど専門的な理解が必要になる。

しかし、今の日本とまったく同じ状況が19世紀の英国であったことを知れば、衰退の恐ろしさを実感できるはずです。

豊かで世界をリードしていた経済大国が半世紀の間に没落したのです。

つまり、衰退の真因に手を付けず、一方で成長力以上に通貨増発することはバブル崩壊とデフォルトを招くことになる。

 

 

*グラフから読み解きます

 

 

4グラフィックス4

< 4. 株価の推移 >

 

上のグラフ: 日経平均の推移。ウイキペディアより。

バブル経済で株価は高騰し繁栄したが、その後20年に及ぶ景気後退と手痛い後遺症を負ってしまった。

 

下のグラフ: 日経平均とNYダウの推移。YAHOO!ファイナンスより。

リーマンショック後、米国は直ぐに破綻の連鎖を食い止める為に大規模な救済(約200兆円)と金融緩和を行い、株価は上昇を始めた。

当時、日本は日銀のおかげで被害を抑えることが出来たが、現在アベノミクスにより株価は高騰している。

 

つまり、我々はいつか来た道を(バブル)をまた懲りずに進んでいる。

 

 

 

C かつてない金融緩和が破滅的な金融危機を招くのではないか?

金融危機はほぼ10年毎に繰り返されて来ており、ここ数年以内に確実に起きるでしょう。

 

バブルの発信源である米国を振り返ると、前回は2008年初頭のリーマンショック、前々回は2000年末のITバブル、さらに1987年のブラックマンデーと、その間隔は8~13年でした。

 

米英日中が行っている歴史上始まって以来のGDP成長率を上回る通貨増発は、莫大な資金が実体経済ではなくあらゆる高配当の投機(証券や為替)に注がれ、やがてバブル崩壊に至る。

このバブルを生む金融業界の体質は金融危機後、一時規制されることはあっても、後に景気刺激策として規制緩和され、元の木阿弥か一層酷いものとなる。

 

不思議な事に、日本政府寄りのエコノミストは当然としても、アベノミクスに異論を唱える民間シンクタンクのエコノミストでさえ、バブル崩壊をまともに取り上げていない。

政財界から距離を置いている少数の学者や識者は、これについて警鐘を鳴らしている。

米国も同様です。

 

このことは既に日本のエスタブリッシュメントが完全に一色に染め上げられ、国が衰退の道から抜け出せなくなっている証左でしょう。

 

 

*グラフから読み解きます

 

 

 

5グラフィックス5

< 5. 日銀の保有国債残高、By Bloomberg >

 

単純に考えて、政府が赤字国債を毎年30兆円発行して、それを直ぐ日銀が買い取る、これを永遠に続けて弊害が無ければ、こんな楽な財政運営はありません。

2017年末、日銀の保有国債残高は既に400兆円になり、アベノミクスの2013年初頭以来5年間で300兆円が買い足されています。

 

これこそ打ち出の小槌の大発明ですが、世界で日本の中央銀行ほど大量に購入している国もなければ、これを続けている国もありません。

米のFRBは金融緩和を止めて出口戦略を取り、国債を市中に戻しています。

 

つまり、日銀は早晩出口戦略を取らざるを得ず、かつスムーズな実施が必要なのですが、なぜかまったく沈黙を守っているのが不気味です。

 

 

 

D 日銀や政府の政策が将来、国民の負担や財政破綻に繋がらないのか?

私は国民の負担増と財政破綻の可能性はより高まっていると考える。

 

残念ながら自信を持って、現在の日銀と政府の金融政策が上記問題を招くと断言できません。

しかし、この恐れはアベノミクスによってより高まると感じています。

 

この理由は大きく二つあります。

一つは政府が現状のように赤字国債を発行し財政を拡大し続けるなら、早晩、国債を国民の資金だけで消化できなくなるでしょう。

 

日銀が大量の国債を買い取ってくれる現状では財政規律が緩み、国債増発は続くでしょう。

さらに家計資産の伸びの減少に加え、団塊世代の老後資金の預金引き出しが今後現実のものになります。

法人資産は増加していますが、これは低金利の内国債ではなく益々海外の高利の証券投資に向かうことになります。

 

当然、真の衰退の問題にメスを入れない限り、持続的な景気上昇が起こらないと考えます。

もしインフレが起きた場合、リフレ派が仮定するように金利上昇が経済成長率よりも低ければ良いのですが、恐らくは逆に金利の方が高騰する可能性もあります。

このようなことになれば、金利1%の上昇で累積赤字1000兆円の利払いだけで年間10兆円増え、利払費は現在の2倍を越え、累積赤字を減らすどころではない。

(逆の場合、GDP成長率が金利より高ければ数十年かけて累積赤字は減って行きます。)

こうして破綻(デフォルト)は近づくでしょう。

 

もう一つは日銀の出口戦略に関するもので、莫大な保有国債を市中に吐き出す時に問題となります。

私はこの問題の金融メカニズムを完全に理解出来ないのですが、複数の元日銀理事が警鐘をならしています。

 

結論は、将来、日銀の負債(おそらくは十数兆円から数十兆円)を国民が負担しなければならないと言うものです。

 

 

 

E 高い経済成長が起きたとしても、米国のようにならないのか?

結論は、確実に米国の二の舞になります。

 

つまり経済成長が起きても所得格差が拡大し、30年以上国民の90%が所得を減らしている米国社会が将来の日本の姿になるでしょう。

(「何か変ですよ! 87: 何が問題か? 10: そこにある未来」に詳しい)

 

今までと同様の政策、アベノミクスだけでなく自由主義経済と金融重視の米国追従の政策を取り続ける限り、この道を突き進むことになる。

 

 

*グラフから読み解きます

 

 

 

6グラフィックス6

< 6.主要国の経済推移、 日本経済復活の会より >

 

19世紀前半まで世界経済をリードしていた英国は半世紀(赤枠)ほどで衰退してしまった。

この衰退は今の日本の姿でもあるのです。

 

 

*次回は、かつての英国衰退から日本の現状を理解したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 89: 何が問題か? 12: 退職後の生活?


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前回、若い皆さんの将来の生涯賃金を予測しました。

それは残念なものでしたが、さらに悲惨な状況が拍車をかけることになります。

それは退職金や年金の減額、医療介護費の高騰などのあらゆる付けが回って来ることです。

 

 

はじめに

前回、男性大卒の生涯賃金は40年後には30%低下し、現状の3億2千万円から2億3千万円になっていることを見ました。

この差額9600万円は2軒の新築が可能な金額ですが、この生涯賃金は非常に恵まれた正規雇用(年収800万の40年勤務)の人々のものです。

 

男性の正規と非正規の生涯賃金の現状の差43%を加味すれば、40年後の大卒男性の非正規の生涯賃金はついに60%も低下し、差額で1億9千万円低下、総額1億3千万円になる。

しかも、今後増え続ける非正規雇用は労働者の60~70%を占めるようになるでしょう。

 

労働者の大幅な収入低下は国の所得税と消費税収入の低下、社会保障(年金、医療・介護)の掛け金の減少を招きます。

これは将来、あなた方が受けるべき年金や医療介護費の不足に輪を掛けます。

 

しかし、最も大きな問題は労働者の可処分所得の減少が消費需要を長期に減少させ、貯蓄を不可能にさせることです。

これが景気や投資を後退させる悪循環を生むことになり、さらに累積財政赤字の償却を不可能にさせるでしょう。

 

つまり賃金低下だけが問題ではなく、経済や福祉に大きな災いをもたらすのです。

 

 

2

*2

 

 

声高な反論

こんな悲観的な未来は起こるはずがない、馬鹿げていると唱える人はいます。

 

例えば、現在60才定年を75才まで延ばせば、単純に39%(55年/40年)の生涯賃金の増加が見込めます。

おそらく高齢者の労働収入はかなり低下するので、この見込み通りにはいかない。

確かに増収するでしょうが、これが先進国のあるべきライフスタイルでしょうか?

北欧では異なる道を選んでいます。

 

 

3

< 図3.2014年度版家計金融資産、TV東京より >

 

 

現在、家計の貯蓄総額900兆円の70%は60才以上の世帯が保有しています。

しかし団塊世代(今の70才前後)が今後、この貯蓄を老後資金として使い果たしていくことになるので、20年後にはかなり貯蓄額は減ることになる。

 

ここでまた、たとえ家計の貯蓄率が今後マイナスになっても、伸び続けている法人貯蓄(現在800兆円)によって国債(累積赤字1050兆円)は国内で消化出来き、国債の金利高騰は起こらないとの楽観論もある。

これも一見可能だと思わせる。

 

しかし懸念は既に進行している。

それは以前紹介した国内から海外への資金逃避(現在990兆円)です。

主にこれは証券投資(高利回り)に向かっている。

これは加速しているので、いずれ多くは日本国債に見向きもしなくなり、金利を大幅に上げない限り、資金は国内に戻ってこないでしょう。

かつてヒトラーがやったように海外投資の禁止をやれば別ですが。

 

もし金利が2%上昇するだけで国債償却費は年間21兆円増え、現在(H28年度)の償却費24兆円の倍、45兆円になります。

こうなればさらに赤字国債を増発しなければならない。

 

 

4

< 図4. 平成28年度一般会計予算、財務省より >

http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/002.htm

 

 

しかし、まだ何とかネタを見つけ楽観論を煽る人々がいます。

 

それは、国には膨大な資産(H21年度で647兆円)があり、純債務はかなり小さいと言うものです。

つまり、いざとなればこれら資産を売却して、負債は1/3の372兆円に過ぎないと言うのです。

 

 

 

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< 図5.平成21年度国の財務(貸借対照表の資産部分)の概要、財務省より>

この年度の負債合計は1019兆円でした。

http://www.mof.go.jp/faq/seimu/03a.htm

 

 

例えば国道や堤防を誰が買ってくれるのでしょうか、これで先ず有形固定資産184.5兆円は諦めざるを得ません。

また私達の年金の蓄えを誰かに売っていいのでしょうか、これで運用寄託金121.4兆円もだめです。

91.7兆円の内、米国債購入の82兆円を売ってしまっていいのでしょうか?

実は、売ることは可能なのですが円高になってしまうことと、この購入資金は別の借金に頼っているので、資産とは言えないのです。

結局、こうして647兆円はすべて資産と呼べるものではないのです。

 

これは当然で、資産があるのなら初めから法律が禁止している赤字国債を発行しないはずです。

 

少し脱線したようです。

要は、定年延長策に期待できず、また賃金低下が招く景気後退と累積赤字の問題が未来に重くのしかかってくるのです。

 

ここで不思議なことに気づきます。

 

 

なぜ楽観論や諦めが蔓延るのでしょうか?

 

今後、悪化する少子高齢化、膨大な累積債務、賃金低下、福祉の低下、格差拡大に対して多くの国民はなぜ無関心なのでしょうか?

少なくとも危険だとか、許せないとの声はほとんど聞こえてこない。

 

一つは楽観論を煽るエコノミストやマスコミの存在が大きい。

なぜ彼らは上記の問題を真剣に捉え報道しないのでしょうか?

 

そのような立場を取る理由は三つほど考えられます。

  •  アベノミクスの信奉者。
  •  米国主導の自由主義経済の信奉者。
  •  政権や経済界の主流に属することで益を得る者。

 

この三つは重なって作用しています。

1.と2.の論説には共通する前提があります。

善意に解釈すれば、固く主義を貫いているとも受け取れますが・・・

 

そこには必ず景気が上向くと言う大前提があり、一方でバブル崩壊などを想定しないかまったく触れていないことです。

この論は、まるで一昔前の原発の安全神話と同じと言えますが、これよりも格段にたちが悪い。

なぜなら原発事故よりも遥かに高い確率でバブル崩壊とその甚大な経済的被害(金融危機)は繰り返されているのですから。

 

現状の景気拡大は、少しはアベノミクスのおかげもあるが、一番はリーマンショック後から続く大国3ヶ国とユーロ圏主導の歴史的な金融緩和によるものです。

逆にこれが危険のですが。

 

3.の立場は、狭い意味で森友学園、加計学園、元TBSの山口記者などに見られるものと根は同じです。

これらにはまったく善意が感じられない。

 

おそらくは、1,2,3.の立場で楽観論を煽る人々は、原発問題と同様に国民に対して無責任で自らの栄達にきゅうきゅうとしているだけなのでしょう。

特に、本来信頼されてしかるべきエコノミストや金融界のリーダーが幾度もバブル崩壊を見過ごし、挙句は煽ることもしてきました(リーマンショックの半年前ですら)。

 

 

もう一つは、この手の問題は素人の国民に理解することが困難・・・

 

残念ながら、どの問題の一つを取り上げても、学者やコメンテーターの意見は分かれている。

これを素人が両者の論説を読み比べて虚実を判断することは難しい。

マスコミは両論に分かれて対立しており、自ら納得できる論を導き出すのは更に難しい。

 

このような場合、私がお勧めする手立てがあります。

 

  •  海外の書物を参考にする。

出来れば米英の学者でないか、米国の主流ではない学者の著書が良い。

米国は完全に自由主義経済で覆い尽くされており、これが現在の弊害の元凶  なので、この外部に居る学者の説を拝聴することが必要です。

 

 

 

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< 図6. 2017年版、包括的成長指数(IGI)のランキング、エキサイト ニュースより >

https://www.excite.co.jp/News/economy_g/20170220/zuuonline_140151.html

IGIは世界109カ国・地域における不平等・貧困の解消への取り組み、総体的な生活水準の向上に対する努力を評価した指針です。

 

  •  優等生の国を参考にする。

米英の格差社会や低福祉の元凶とその対策を知る為には、戦後、異なる道(政策)を選んだ国々を知ることが必要です。

北欧やフランス、ドイツなどの政策とその成果を知ることで、現在の間違った政策に気付くことでしょう。

残念ながら、日本ではこの類の情報が故意に捻じ曲げられているか、避けられているように思う。

 

  •  歴史から学ぶ。

今の日本の現状は、19世紀後半の英国経済の衰退や20世紀前半の日本の大陸進出と似ているところがある。

 

英国の場合は、衰退が差し迫っているにもかかわらず、誰も動かずズルズルと深みにはまっていただけでした。

日本の場合は、様々なあがきを繰り返しながらも最悪の経済状況に至ると、あっさりと打開策は挙国一致で大陸への武力侵攻でまとまった。

そこには悲しいほどの甘い希望と他人任せの風潮があった。

 

  •  経済学は自然科学ではない。

私達が接するマスコミや経済学者の景気や経済指標の予測は当てにならないと思ってください。

一番重要な事は、経済学は自然科学のような計算によって正確に結果を予測できる学問ではないことです。

残念なことに、逆に信頼を得ようとして「私の説明や予測は確実です」と言う人ほど使用出来ず、科学者とは言えない。

 

著名なエコノミストの予測が如何に外れるかは、過去に予測している著書を見れば呆れるほどです。

外れる理由は、経済の諸条件の関わり合いが複雑なことと、予測する時は条件を限定せざるを得ないからです。

さらには、経済は論理的な動機よりもアニマルスプリット(動物的衝動)で大きく変動することがあるからです(バブル崩壊の切っ掛け)。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 88: 何が問題か? 11: 生涯賃金の末路


1a

*1

 

 

前回、日本の先輩格である英米で進行している衰退を見ました。

今日は、日本の悲惨な賃金の未来を考えます。

簡単な試算により、若い人の未来が明確になるはずです。

 

 

 

はじめに

一国の経済指標の変動や産業の盛衰を予測することは、たとえ数年から10年先であってもほとんど外れています。

1972年のローマクラブ発表の資源枯渇の予測も外れたと言えるでしょう。

 

これら予測が外れる理由は、極論すれば人々の欲望(嗜好)や危機意識(節制)が働き、状況が変わってしまったからと言えます。

 

日本政府がこれまでの政策を踏襲するとして、つまり抜本的な改革を行わないとして、40年後の未来を予測します。

 

ここで少し確認しておく必要があります。

実は、アベノミクスは日本経済を覚醒させる画期的な政策ではないのです。

日本はこの半世紀、画期的な復興をやり遂げる中で、初期には米国に助けてもらいながらも徐々に米国の言いなりになり、それが現在の社会経済の形を作りあげて来ました。

そしてアベノミクス以降、日本は英米主導のリフレ策(貨幣供給中心)に益々傾斜しています。

この結果は既に見たように、90%の米国民に惨めな結果を招いています。

 

結局、日本政府は「自由放任主義経済と金融重視」と「福祉政策縮小」によって、経済大国の夢を追い続ける従来の路線を強化しているだけなのです。

 

 

あなた方の生涯賃金

現在、日本の株価と企業業績は順調で好景気と言われています。

しかし私達労働者の賃金はここ20年ほど下がり続けています。

これは一時の好景気で修正出来ないことを前回確認しました。

 

なぜ労働者の賃金は下がり続けるのでしょうか?

現在、日本では不思議なことが起こり、特に日本が先頭を切って悪化しています。

この全体像は私達には見え難いものです。

 

 

 

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< 図2.生涯賃金の推移、 独立行政法人労働政策研究・研修機構より >

「ユースフル労働統計2016 ―労働統計加工指標集―」を借用。

 

このグラフは、同じ企業に勤めている社員で、後から入社する者は先に入社した者より、年々生涯賃金が低下していることを示しています。

この低下傾向は1990年代中頃から始まっています。

これは「何が問題か? 10: そこにある未来」の図9の高額所得者の所得シェアが上昇する時期とも合致します。

また「何が問題か? 3」の図3の企業所得の上昇時期、逆に賃金の下降時期とも一致します。

 

 

国民の賃金の低下を間接的に示すグラフを二つ示します。

 

 

 

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< 図3. 平均可処分所得の推移、ガベージニュースより >

 

可処分所得とは家計の収入から、税金や社会保険料を引いた値で、自由に使えるお金のことです。

ここでも1998年をピークに下がり、横這いを続けています。

既に、15年間で15%ほど、私達の自由に使える金が減っているのです。

つまり40年後は可処分所得が今より単純に40%(=40年/15年X15%)減ることになります。

その時は更に、極限の累積赤字額と少子高齢化の為に増税と社会保障負担金増が追い打ちをかけることになる。

 

 

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< 図4.主要先進国の家計貯蓄率、「投資を楽しむ」より >

 

日本とイギリスは共に家計貯蓄率が急激に低下しています。

日本の家庭は1991年をピークをつけ、その後、貯蓄に廻すお金が減り続け、遂に2014年には貯蓄を引き出す羽目にまで落ち込んだのです。

かつての日本は貯蓄の高さを誇り、これが高度経済成長(投資資金に廻ることにより)を支えたと言われていましたが、まるで夢のようです。

 

これらのグラフを見れば、日本の賃金が下がり続けていることが理解できると思います。

しかし、これでもまだアベノミクスに期待し、景気の好転がこの悪化を食い止めるはずだと信じる人もいるでしょう。

 

そこで、この賃金低下は景気とは別の根本的な要因によって起きていることを見ます。

 

 

 

何が国民の賃金を低下させているのか?

難しい話ではありません。

あなた方の身の周りで起きていることを少し疑うだけで、真実が見えるはずです。

 

 

 

5

< 図5. 正・非正規雇用者数の推移、厚生労働省より >

「平成24年版 労働経済の分析」から借用。

 

正規雇用者数が長期にわたり増えない一方、非正規雇用者比率は益々増加傾向にあり、現在は40%に近いでしょう。

 

皆さんの多くは非正規雇用は仕方のないことと思っているはずです。

なぜなら政府や著名な経済学者、経済界は「産業構造の変化に対応して人材の流動性が必要」と説明しているからです。

実はこれは間違っていないのですが、問題はこの後にあるのです。

 

なぜ皆さんは、国が「同一労働同一賃金」「離職後の生活補助と再雇用向けの教育」を放置していても怒りの声を上げないのでしょうか?

 

ここが日本の致命傷とも言えるのですが、人権意識や民主主義が希薄なのです。

このことを放置している国は、やがて米英のようになってしまうでしょう。

これを守りながら経済成長を続けている北欧などが存在する事実は重要です。

 

 

 

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< 図6.正規・非正規の賃金カーブ、年収ガイドより >

 

このグラフは致命的です。

これを一人の生涯賃金のグラフと見立ててれば、正規と非正規の生涯年金の差は歴然としています。

しかもこの賃金グラフは年々低下する傾向にあります(後にわかります)。

さらに悪いことに、この半分しかない生涯賃金の非正規雇用が年々増加しているのですから、日本の労働者の所得は低下するのが当然です。

 

 

 

7

< 図7. 正規・非正規の生涯賃金の差、年収ガイドより >

 

2015年度で男性の非正規の生涯賃金は正規の56%しかなく、女性で60%でした。

おそらく今後、正規の賃金も引きずられて低下するでしょう。

 

 

さらなる理由があります

賃金低下を招いている大きな理由の一つは非正規雇用とその雇用者数の増大、そして首切りの容易さと再就職の困難さです。

更に重要なことは、通貨供給一辺倒でバブルを繰り返す経済成長よりも、この是正措置の方が遥かに容易に賃金上昇(格差是正)と消費需要の喚起による経済成長が得られることです。

 

1980年代以降益々衰退を深めている背景に、大多数の労働者の劣悪化を放置し歓迎さえしている政府や経済界の姿勢があります。

 

 

 

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< 図8.先進国の労働分配率、独立行政法人産業研究所より >

 

労働分配率とは、企業の生産額から費用を差引いた額に占める労働者の賃金の比率です。

つまりグラフのように労働分配率が長期低下傾向にあり、日本の労働者の賃金は低下せざるを得ないのです。

米国も低下しているが、日本は真っ逆さまと言えます。

 

経済学者は、この労働分配率の低下をITが普及した為とか、様々な理由を挙げているが、私は合点がいかない。

 

現在行われている容易な派遣切り、長期失業者の増加、著しい賃金低下を放置していることが企業収益に安直に貢献している限り、賃金低下は今後も続くのは当然です。

これを何ら規制せず、また保護政策を採らないことが最大の問題なのです。

 

 

 

まとめ

皆さんの40年後の生涯賃金の低下を試算します。

 

 

9

< 図9. 男性大卒の生涯賃金と日本の労働生産性の推移、独立行政法人労働政策研究・研修機構より >

このグラフは図2の男性大卒の生涯賃金と別の労働生産性のデーターを使用したものです。

 

横軸目盛りは1990年から2014年までの25年間です。

赤線は労働生産を、赤の破線はこの近似曲線を示し、右側縦軸にその%値を示す。

青と緑線は男性大卒の生涯賃金を、緑線はピークであった1994年以降を示す。緑色の破線はこの近似曲線を示し、左側縦軸にその金額(百万円)を示す。

 

40年後の男性大卒の生涯賃金は、近似式の「-2.397」X40年=96百万の低下になり、1994年の321百万の30%低下となります。

 

同様に40年後の労働生産性は、1991年の67より更に17%減少し、50%になっていることでしょう。

おそらく皆さんは、この計算結果を信じられないことでしょう。

これは大雑派な試算ではあるが、前述したように今の日本ではこれを上昇させる力がまったくないのです。

 

前回、英米の経済状況で確認したように景気は変動の末、悪化するだけ、さらに今後、日本は少子高齢化の影響で2060年までGDPの伸びは期待できない。

例え上昇しても今の税制や再分配制度(セフテイネット)では今後、一握りの高額所得者に所得が集中するだけです。

 

残念ながら、このような日本にしてしまった最大の要因は日本の文化や国民性にあります。

嘆いても仕方がありません。

一つ一つ、正しい方向に導いて行くしかないのです。

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 87: 何が問題か? 10: そこにある未来


 1

*1

 

今回は、日本の未来を考えます。

これはバラ色ではないはずです。

なぜなら日本は疲弊していく先進国と同じ道を辿っているからです。

 

 

はじめに

既に、私のブログで憂うべき状況を幾度も取り上げてきましたが、今回は若い人々の未来に焦点を当てます。

 

将来、日本で深刻度が増す問題

A: 年金と退職金の大幅な減額

B: 生涯賃金の大幅な減少

C: 介護費と医療費の負担増

 

多くの若い人は未来に不安を抱いていないように見える。

彼らは、今までもそうであったようにこれからもうまく行くと信じたいはずです。

まして現在、日本は好景気なのだから、きっとこのまま良くなって行くと期待さえしているかもしれません。

 

しかし、私の想定する40年後の未来(今の20~30才代の人が60~70才代になる頃)は生活がかなり苦しくなっているでしょう。

今の60~70才代に比べ、彼らが自由に使えるお金はおそらく2~3割減るでしょう。

当然、彼らのこれから受け取る生涯賃金もかなり減り、貯蓄は益々困難になり、老後資金はかなり不足するはずです。

 

聞きたくも信じたくもないだろうが、悲惨な結果を容易に予測できます。

この予測を行う前に、悪化が現実に起きている事を知ってもらいたい。

その先例が既に日本が手本とする先進国で起こっているのです。

 

 

先進国で今、起きていること

経済が豊かであるはずの先進国で今、何が起きているのでしょうか?

 

 

 

2

< 図2.米国のマルチ世代家族の人口比率と人口、by Pew >

http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/08/11/a-record-60-6-million-americans-live-in-multigenerational-households/

 

上のグラフ: マルチ世代家族で暮らす人口の比率。

下のグラフ: マルチ世代家族で暮らす人口、単位百万人。

米国の総人口は現在3.2億人。

 

このグラフから米国のマルチ世代家族(祖父母と親子の三世代家族)の人口が1980年代から増え始め、この傾向が加速している様子が見て取れます。

特に2008年以降、急増しています。

皆さんの中には、これは移民が増えた結果ではないかと疑う人もいるでしょう。

 

 

3

< 図3. 米国の人種毎のマルチ世代家族の人口比率の変化、by Pew  >http://www.pewresearch.org/fact-tank/2016/08/11/a-record-60-6-million-americans-live-in-multigenerational-households/

 

 

このグラフから、確かにマルチ世代家族は白人以外で多いが、むしろ白人家族の増加率は多人種より若干多いと言える。

この変化は人種に関わらず米国のすべての家族で起きていると言えます。

 

 

 

4

< 図4.英国で増え続けるマルチ世代家族数 >

“Multi-family households, 1996 to 2013, UK” by Office for National Statistics

https://www.ons.gov.uk/peoplepopulationandcommunity/birthsdeathsandmarriages/families/bulletins/familiesandhouseholds/2013-10-31

 

これは英国のマルチ世代家族の最近の傾向を示しています。

ここでもマルチ世代家族の家族数の増加が見られます。

特に2008年と2012年には急増しています。

但し英国の場合、総家族数(2016年1890万家族数)に占めるマルチ世代家族の割合は直近で1.5%に過ぎない。

 

この米英で起きている現象は、ある重要な経済の変化と関りがある。

 

 

この背景にあるもの

 

5

< 図5. 米国の失業率の推移 >

https://www.bls.gov/spotlight/2012/recession/

 

このグラフから長期失業者が増加傾向にあることがわかります。

また1980年代前半と2008年以降(リーマンショック)は高失業率に見舞われています。

この時期と図2のマルチ世代家族の増加の時期はよく符合しています。

 

 

6

< 図6. 英国の失業率とGDPの推移 >

https://www.economicshelp.org/blog/1778/unemployment/uk-unemployment-rate/

 

このグラフからリーマンショック以降、増加した失業率が高止まりしており、このグラフでは分からないがその余波は2012年まで続いた。

ここでも図4のマルチ世代家族の2回の増加時期が符合している。

 

つまり、マルチ世代家族が増えた背景には、失業率の増大があったのです。

失業者が増えると、その家族達が支え合うようになったと考えられます。

これを昔の温かい家族形態への回帰と諸手を挙げて喜ぶべきではないでしょう。

当然、所得の低下も起きています。

 

これには更に根の深い問題があるのです。

 

 

1980年代から英米で何が起きているのか?

 

 

 

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< 図7. 米国の所得階層毎の所得の推移、by TheAtlantic >

https://www.theatlantic.com/business/archive/2012/12/a-giant-statistical-round-up-of-the-income-inequality-crisis-in-16-charts/266074/

 

このグラフはバブル絶頂期(リーマンショック前)までの所得推移を示しているが、所得下位の60%までは1979年から30年間で17~59%も所得を減らしている。

それも上位1%の層が309%増やしているにも関わらず。

 

ここで是非とも知って頂きたい事は、経済が好調になれば所得が一時回復し失業率も低下するのですが、バブル崩壊を繰り返す内に確実に益々多くの人が所得を低下させ、長期失業者が増えると言う現実です。

このことは図5と図7からわかります。

 

もしあなたが、2007年の時点で図7の所得推移を見ているとしたら、きっと未来は洋々とし復活が約束されていると思ったことでしょう。

しかし、現実は非情でした。

 

 

 

8

< 図8.米国の所得階層毎の平均所得の推移、by Business Insider >

http://www.businessinsider.com/chart-average-income-since-1917-2013-2

 

リーマンショック後の2011年には下位90%(赤線)の人までが1970年代よりも所得を10%以上減らすことになった。

実は、このことはITバブル崩壊後の2003年(図7)でも同様のことが起きていました。

 

もし今の日本の好景気が世界のバブル経済に起因しているのであれば、確実にこの先、2008年のリーマンショックを遥かに越える金融危機が世界を襲うでしょう。

 

現在、大国(米国、ユーロ圏、日本、中国)は歴史的な貨幣供給を行って来ており、日本だけはまだ継続さえしている。

従ってバブル崩壊はほぼ間違いないでしょう、いつ起こるかは予測できませんが。

 

なぜこのような不条理が米国中心に起きているのでしょうか?

 

 

9

< 図9.高額所得者(1%)の所得シェアの推移、社会実情データ図録より >

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4655.html

 

このグラフから平等を守ろうするフランスを除いて、特に米英で高額所得者の所得シェアが1980年代から急増しているのがわかります。

残念なことに、日本も少し遅れて1990年代後半から格差が拡大しています。

この時期は日本政府が米国流の金融改革(金融ビッグバンなどの自由化)を1996年から始めたのに対応しています。

 

 

10

< 図10. 各国のGDPに対する社会的支出割合(福祉政策)、by wikipedia >

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E7%A5%89

 

この図から各国の社会的支出割合(再分配)の程度が分かり、右の方がより高い。

米英でのマルチ世代家族数の違いは、所得格差を是正するはずの社会的支出が両国で違うことによるのでしょう。

米国は赤線、英国は茶色線、日本は黒線、カナダは左側欄外にある。

福祉国家と呼ばれる北欧とフランスを青線で示す。

 

 

 

まとめ

つまり英米で起きている家族形態の変化は、繰り替えされるバブル崩壊によって引き起こされた長期失業者の増大と国民の所得低下がもたらしたものでした。

 

そしてこの失業率の増大と国民の所得低下、逆に高額所得者の著しい所得増加は1980年代から起きている。

 

これは既に紹介しているサッチャーとレーガンによる政策「自由放任主義経済と金融重視」と「小さな政府による福祉政策(再分配)の切り捨て」への転換が始まりです。

前者の経済政策については、多くの先進国で大なり小なり実施されており、特に日本は益々その度を強めています。

後者の社会政策についても、多くの先進国が倣っていますが、逆に北欧やフランスのように強めている国もあります。

 

したがって、日本が現状の米国追従の経済政策を続ける限り、やがて米国と同じか、さらに急激な少子高齢化が重なり悪化は深刻化するでしょう。

 

つまり日本の将来は大多数の国民にとって経済的困窮が必然なのです。

 

しかし、一つだけ希望があります。

北欧は同じ資本主義国家でありながら、その経済・社会政策(福祉国家)により高い幸福度と高い経済力を維持していることです。

いずれ紹介します。

 

 

次回は、日本の勤労者の惨めな未来を予測します。

 

 

 

 

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何か変ですよ! 83: 何が問題か? 6


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*1

 

 

今の若者の政治離れと右傾化の一端を探ってみます。

そこには単純で普遍的な理由があったのです。

若者は好んで苦境から目をそらしているわけではない。

 

 

はじめに

先進国では軒並み、熱烈な政党支持者が減り、無党派層が増え、少数政党分立の傾向を深めた。

これは日本も同じです。

 

なぜこのようなことが起きたのでしょうか?

以前、私のブログでもこの問題を取り上げました。

この原因は、長引く経済と社会の低迷、例えば格差拡大や失業者の増大などに有効な手立てを打つことが出来ない政府にあった。

同時に、国民は長らく政治を牛耳る議員や官僚、また彼ら操っているエスタブリッシュメントに怒りを覚える一方で打破する手立てを持てず、諦めていた。

国民は、自分たちの希望や意思が政治に反映されないことに苛立ち、閉塞感を持っていた。

 

その一方、日本に限っては、長期低迷の経済にあっても国民はまだ格差拡大を深刻に捉えておらず、また社会は混乱もなく平和でした。

そして国民は概ね社会に満足している。

 

多くの日本人は閉塞感を抱いていないのだろうか?

私の見る所、政府を信じていると言うよりは日本社会への安心感のようなものがあるようです。

つまり、「何とかなる」と感じているのでしょう。

 

 

 

 

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< 2. 非正規雇用比率の推移、ガベージニュースより >

 

このグラフから若年労働者の非正規が増加傾向にあることがわかります。

 

 

 

3a

< 3. 男性の非正規雇用の状況 >

上のグラフはガベージニュースより、下のグラフは非正規雇用フォーラム・福岡より借用しています。

 

現時点では中高年層の非正規は少ないが、将来、景気の浮き沈みで多少変化するものの、中高年層にも拡大するのは間違いない。

それに応じて大半の労働者の所得は増加することなく横這いとなり、巷には低所得者が蔓延することになる。

こうならないとする根拠も政策もない。

 

実は女性の方が非正規率が高く、賃金も安く、状況は深刻です。

 

 

 

なぜこのような意識のズレが起きるのでしょうか?

今までも指摘して来ましたが、ここ20~30年の経済データーは明らかに低迷を示しています。

 

例えば、現実の社会を見てみましょう。

将来、労働者の数割が生涯非正規雇用になり、定期的に首を切られ、年収が0か200万円前後で一生暮らさざるを得ないとしたら将来の見通しが立つでしょうか?

これは若年労働者ほど厳しいが、今の自由放任主義経済のシステムが続くなら将来さらに深刻さを増すことになる。

そしてこのことが経済を更に低迷させることになる。

 

先ず、生活に不可欠な大きな生涯費用としては住居費5000万円(家賃購入共)、二人の子供の教育費3000万円、一人の医療介護費の自己負担額700万円(総額3100万円)が最低必要になり、合計8700万円でしょうか。

非正規の彼が運よく80年の生涯で、30年間毎年200万円稼げたとして、計6000万円です。

ここから税金(所得税、消費税)と社会保険料(医療・介護・年金)が徴収され、食費・衣料・水道光熱費を出費したら、収入がある時でも可処分所得は年間100万以下で計3000万円以下でしょう。

これで収入の無い時の生活費を賄い、さらに住居費と子供の教育費、医療介護費を支払うことは不可能です。

 

とてもじゃないが、結婚ができず住居や子供を持てず、医療介護も受けられない。

逆に結婚し、収入を合算して助け合う道もあるが、やはり生活はできないでしょう。

さらに彼らが退職の年齢になっても退職金は無く、年金は雀の涙です。

これでは結婚出来ないホームレスが1千万人を越える時代が来るかもしれない。

 

ここで不思議に想うのは、最も被害に合うと分かっている若年労働者が今の政治に無関心でこれを放置し、さらに右傾化に惹かれ肯定までしていることです。

さらに、不思議なのはより恩恵を受けている高齢者の方が政治に不満を持っているのです。

 

 

 

次のグラフから上記の理由が見えて来ます

 

 

 

4a

< 4. 日本の若者の人口比率 >

 

このグラフは日本の人口に占める15~24歳の割合の推移を示しています。

この15~24歳の割合は1965年にピークを示しています。

 

当時の社会はこれに同期するように大きなうねりを経験しました。

1960年代半ばから反戦運動、1968年頃から東大闘争、そして日本の学生運動は1970年まで燃え盛りました。

また1960年代半ばからフォークソングがブームとなりました。

世界的な流れがあってのことですが、日本の若者は呼応したのです。

 

実は戦後の復興期、1947年からの3年間に806万人と言う大量の子供が生まれ、彼らが20歳になったのが1967~1969年だったのです。

彼らを団塊の世代と言い、彼らの中には「学生は世の中をよくするために身を挺して立ち上がるべきだ」との信念に共感する者が少なからずいたのです。

 

 

 

 

 

5a

< 5. 日本の経済成長率 >

 

学生運動が盛り上がった1965~1970年は高度経済成長期(1954~1973年)でした。

けっして、この時代は沈滞した希望の無い時代では無かったのです。

むしろ、彼らは戦後の貧しさから抜け出す為に必死に働き、また苦悩しながら社会を変革しようとした希望多き時代だったのです。

その彼らは現在、退職し70~72歳になっています。

 

つまり、若年層が多い時代、彼らは政府を批判し、社会を改革しようとしたのです。

そして年をとっても、まだ社会を変えるべきだと思っている人がいるのです。

 

 

 

6

*6

 

 

一つだけ指摘するなら

結局、今の若者は平和と安逸に慣れてしまい、社会に対する若者らしい情熱を失ってしまったように見えるが、その大きな要因の一つは、単純に若年層の人口割合が学生運動華やかりし頃の半分にも落ち込んでしまったからと言えそうです。

この相関は人口統計学で指摘されています。

 

今の若い人に知って頂きたいことは、かつて若い世代(団塊の世代)が社会問題に立ち上がった事実です。

そして、あなた方の将来は団塊の世代の将来と比べものにならないほど劣悪なのです。

 

もう一つ指摘するなら、あなた方はかつての学生運動の反動で、政府(文科省)の通達により、学校で政治的なことから目を逸らすように教育されてしまつたのです。

これがさらに日本の政治文化を劣化させることになったのです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 82: 何が問題か? 5


1

< 1. 旧約の預言者イザヤ >

古くから警鐘を鳴らす人はいたのだが、ユダヤ人は聞かなかった。

 

 

前回、大半の労働者にとって悪化している経済の現状を確認した。

それはここ半世紀の日本と先進国の経済政策が生み出したものでした。

しかし、問題の核心は別にあり、さらに根が深い。

 

 

 

 2a

< 2.世界に占める日本のGDP >

 http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/no170-f7b5.htmlより

 

 

はじめに

前回紹介した、三つの政治経済の潮流。

A: 1980年代からの米国主導による自由放任主義経済。

B: ここ半世紀の日本与党の企業優先の政治。

C: 2013年からのアベノミクス。

 

私はこの三つが今の世界と日本をさらに劣化させ行くと見ています。

劣化とは、繰り返す倒産と失業で国民の大半は所得を減らし、中央政府への信頼を無くし、追い打ちをかけて国家債務のデフォルトが起こり、遂には争乱へと進むことを意味します。

私はこのことをこれまでのブログで取り上げて来ました。

 

Aの問題点については、世界的に著名な経済学者クルーグマン、スティグリッツ、ジャック・アタリ、ピケティ、経済評論家ジェフ・マドリックが指摘しています。

BとCについては、国内の一部の経済学者が指摘しています。

 

しかし、残念ながら多勢に無勢で、社会を変革する力にはなっていない。

この少数派の警鐘は、既得権益側による圧倒的な情報量と印象操作で掻き消えてしまうのでしょうか。

または不景気と好景気が繰り返されていれば、じんわりと社会経済が衰退を深めていても、人々は一縷の望みを託し現状にすがりついてしまうのでしょうか。

しかし、一度衰退が始まると、そんなわずかな望みさえも冷酷に踏みにじって来た。

それが歴史でした。

 

 

3a

< 3. かつての栄光、実は一人当たりの実力は? >

 

 

衰退に人々はどのように向き合ったのか?

かつて栄華を誇った国が衰退した例は数知れずあった。

古くは都市国家アテネ、ローマ帝国、スペイン、オスマントルコ、英国、ソ連がそうでした。

これらの国が衰退したのは、いずれも一人の権力者による失策が原因ではなかった。

むしろ起死回生を願い、末期にすら改革に立ち上がった人々がいた。

しかしその思いは既得権益層の抵抗と根付いた社会の流れにかき消されていった。

つまり、かつては繁栄をもたらした社会経済のシステムが社会に根を張り、これが逆に世界や国内の変化に対応できずに自壊していった。

 

衰退する運命にある文明や国は、どうあがいても再起が不可能なのかもしれない。

おそらく今のままでは米国そして追従する日本がこれに続くことになるでしょう。

両国のここ半世紀の経済データーを見ていると悲観せざるを得ない。

しかし、その一方で既に衰退した国もあれば方向転換を成し遂げた国(北欧やドイツなど)がヨーロッパ内にも存在する。

 

やはり、人類の英知を持ってすれば可能なのかもしれない。

もし国民や政府が真摯に警鐘に耳を傾け、痛みを伴っても方向転換を図っていれば良かったと思うターニングポイントが過去に少なからずあった。

いつの時代も、社会経済の異常や危険の芽を鋭敏に察知し、勇気をもって指摘した人は存在した。

日本が第二次世界大戦へと突き進む過程においても、その危険性を議員やジャーナリスト、言論人が命を張って訴えていた。

残念ながら、かき消されてしまったが・・・。

 

 

4a

< 4. 英国の辿った道、それは・・・ >

http://ajer.cocolog-nifty.com/blog/2015/01/no170-f7b5.htmlより

 

 

なぜ人々は警鐘に耳を傾けないのだろうか?

今の日本で想定される幾つかの理由を挙げます。

 

D: 政治に期待せず無関心な人々の増加。

E: パトロンとクライアントの関係が強い政治文化、「ジバン(地盤)、カンバン(看板)、カバン(鞄)」の言葉で代表される。

F: 偏った報道や印象操作による洗脳。

G: 孤立した日本文明の弊害や歴史に根差すもの。

H: 人類に共通した心理。

 

いくら警鐘を鳴らす人が出ても、それを拒絶したり無視する人々が多くては話にならない。

これに怒っても事は解決には向かわない。

 

少しでも多くの人が、未来の危機を認識出来るかにかかっている。

私は、上記の理由が如何に重要な認識を阻害しているかをこの連載で明らかにしたい。

そして、未来の危機を回避し、子供や孫の世が平和で豊かになることを望見ます。

 

 

5a

< 5. 日本のターニングポイント  >

http://www.huffingtonpost.jp/yoshifumi-nakajima/japan-decline_b_7452352.html  より

 

この赤線を上下逆にするとグラフ2の山にほぼ重なるので不思議です。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

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何か変ですよ! 81:  何が問題か? 4


1

*1

 

 

前回、日本の賃金が下がり続けている状況を知りました。

その一方、企業は空前の利益を上げ続けています。

それでは企業の好業績は私達に恵みをもたらすのでしょうか?

 

 

豊かになった企業は日本経済を救うのか?

政府は大企業が儲けなければ、庶民に恩恵が行かないと言う。

今後、企業が賃金を上げ、設備投資をしてくれればそうなるのだが。

この可能性を調べてみましょう。

 

 

 

 

2

< 2. 豊かになった企業がしていること >

 

 

上のグラフ: 東洋経済 山田記者のグラフ。

 

労働分配率が長期低下傾向にあり、さらにリーマンショック後も低下し続けている。

こうして企業は労働分配率(付加価値に占める賃金)を下げ続ける一方で、内部留保を長期にわたり積み上げている。

もっともこの内部留保が設備投資に向かえば日本経済は浮上するのだが・・・・

そこで下のグラフを見てください。

 

下のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。

これは民間企業の設備投資額のGDPに占める割合を示している。

一目瞭然だが、企業は内部留保(資金)が潤沢にあるにも関わらず、設備投資を抑えている。

これでは生産性向上は見込めない(設備投資だけが生産性の要素ではありませんが)。

 

これでは踏んだり蹴ったりだ!

 

 

それでは企業のあり余った資金は何処に向かっているのか?

 

 

 

3

< 3. 企業が目指していること >

 

上のグラフ: 日本政策投資銀行 田中氏のグラフ。

これは企業家が抱く期待成長率と設備投資の関係を示す。

 

このグラフは、設備投資が少ないのは企業家マインドの冷え込みに起因していることを示している。

 

政府は声高に法人減税は景気浮揚策と説くが、どうだろうか。

米財務長官時、ポール・オニールは「まともな経営者は法人税が減税されたからと言って、むやみに設備投資を行わない。」とブッシュに進言していた。

企業や富裕層への大減税は米国のレーガンや子ブッシュの例が示すように、概ね赤字を増やしただけでした。

だがこの手の減税は米国主導により先進国は安売り競争の状態に陥っている。

 

 

下のグラフ: 内閣府の国民経済計算(GDP統計)より。

これは設備投資と財貨の輸出、海外からの所得の推移を示している。

このグラフから日本経済の成熟度、悪く言えば衰退の始まりが見える。

 

設備投資(青線)は横這いなのに、海外に資金(赤線)がドンドン流れ、そして海外に蓄積された資金のもたらす利益(灰色)がドンドン還流し、その傾向が益々強まっている様子が分かる。

(但し、このグラフの資金は家計と企業の分を含んでいる)

 

この状況を肯定するエコノミストもいるが、これが続けば企業は国内ではなく海外に投資し続けることになり、やがて国内産業が衰退することになる。

実は、これは19世紀、英国が衰退した状況と似ている。

 

しかし政府は意欲の萎えた企業に法人減税や公共投資、金融緩和で大量のカンフル剤(通貨供給)を大量投与し続けて来た。

一方で、消費者には消費増税、賃金低下、非正規雇用、低金利、円安(生活用品高)で負荷をかける一方です。

 

この結果、労働者減とも重なり消費が増えず、膨大な資金は実需に繋がらず、巨大な投機資金となって世界を駆け巡り、いずれどこかでバブル崩壊が起こり、金融危機が繰り返される。

こうして、軒並み先進国は膨大な累積赤字を積み上げ、破綻の道を進むことになる。

 

 

最後に日本経済を俯瞰してみましょう

 

 

 

4

< 4.GDPと消費と賃金の推移、内閣府の国民経済計算(GDP統計)より >

 

このグラフは、企業が所得と内部留保を増やす一方で、労働者が賃金低下によって貯蓄分を減らすことで消費を続けている状況を反映している。

この間、家計の貯蓄の伸び率はドンドン低下している。

 

国内総生産の半分を占める家計消費が伸びなければ、国内総生産は伸びず、経済成長はあり得ない。

さらに低調な設備投資が足を引っ張る。

21年間で賃金が10%低下するなかで、国民は家計消費を6%増やしたが、国内総生産は2%低下した。

 

皆さんは、何が問題なのかが見えて来たでしょうか?

 

 

まとめ

上記の説明は大雑把な説明ですが、大まかに日本が何をして来たか、そして何を重視し何を放置して来たかがわかったと思います。

 

今の状況を作りだしている三つの政治経済の潮流とは何か?

A: 1980年代からの米国主導による自由放任主義経済の潮流。

B: ここ半世紀の与党の企業優先の政治の潮流。

C: 2013年からのアベノミクスの潮流。

 

今の日本の経済状況は、上記三つの潮流が合流したものですが、結局、この三つは米国の圧力(構造改革要求、プラザ合意など)と米国主導による自由放任主義経済で繋がっています。

 

日本国民としては、「先ずは企業が豊かになり、やがてトリクルダウンの恩恵を受ける」と言う政府の言葉を信じたいでしょう。

しかし、米国と日本の過去40年間の実績から、今後もバブルが繰り返され、賃金低下と所得格差の悪化は必然です。

 

 

私達は疑いの目を持ち、自ら検証する姿勢を捨てるべきではありません

 

次回に続きます。

 

 

 

 

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何か変ですよ! 80:  何が問題か? 3


1

*1

 

 

前回、日本の失業率低下と賃金上昇の背景を見ました。

しかし、何らかの天井が賃金の上昇を遮っているようでした。

また、今回の景気好転には手放しで喜べない事情があります。

 

 

はじめに

前回、今回の失業率低下と賃金上昇はアベノミクスの効果と断定出来ないことを見ました。

また、この二つの指標は単に景気好転で決まるものでないことも見ました。

 

これから日本の経済状況を規定している三つの政治経済の潮流と、賃金の

上昇を抑えている正体を明らかにします。

 

 

景気好転の切っ掛け

前回のNo4のグラフから、失業率は2009年で、就業者数は2010年で底を打ち、その後上昇を始めました。

所定内給与は2010と2011年に上昇したが、2012と2013年に一度低下し、その後また上昇しています。

この背景を簡単に確認します。

 

 

 

2

< 2. 日本の輸出・輸入額の推移、日本貿易会HPより >

 

グラフ中の番号⑧で示すように、2010年にはリーマンショック後の景気回復が世界的に進んだことにより、貿易が急伸した。

しかし⑨で示すように、2011年から2012年にかけてはEUの金融危機と東北大震災で輸出が減り、金融危機回避による円安と復興需要で輸入額が急増した。

 

つまり、アベノミクスの効果を否定出来ないが、大きな流れとしては株価上昇や円安と同様に世界経済の立ち直り時期と一致したことが一番でしょう。

 

しかし実はこれが大きな不安要因でもあるのです。

今回の景気回復は、リ―マンショック後の米欧中による歴史的な巨額の貨幣供給が呼び水となっており、実体経済の10倍を越える資金が投機の為に世界中を駆け巡っています。

 

おそらく1~3年以内にバブルが破裂し、世界はより深い金融危機に見舞われ、日本は巨大な金融緩和の反動で今までにない倒産規模と大量の失業に見舞われるでしょう。

こうして、次のグラフ「賃金と企業所得の推移」の青の直線の延長が暗示するように労働者の賃金は更に低下することになる。

このことは、過去40年間の米国の所得の推移からも明白です。

この間のメカニズムは連載「日本の問題、世界の問題」で説明しています。

 

この世界的な不安要因は、三つの内で最も大きな政治経済の潮流、自由放任主義経済がもたらしたものです。

 

 

 

なぜ日本の賃金は天井につかえてしまったのか?

世界経済が好調で、欧米の中央銀行が金融緩和からの出口戦略を取り始めたと言うのに、日本の賃金はなぜほんの少ししか上がらないのだろうか?

 

何が災いしているのだろうか?

労働者の働きが悪いのか、それとも経営者の財布の口が閉まったままのか?

 

 

 

3

< 3. 日本の賃金はなぜ下がるのか? >

 

上のグラフ: みずほ総合研究所高田氏のグラフ。

日本と米国、ドイツの賃金の伸び率とその寄与度がわかる。

 

日本の賃金の伸び率は、2005~2010年に下降から上昇に転じたが、微々たるものです。

米独と大きく異なるのはインフレへの期待が低いことで、これはデフレだから当然です。

かつて世界に誇った日本の労働生産性は低下の一途で、これが問題です。

さらに2010~15年に関しては、労働分配率の低下が賃金を抑制している。

 

 

下のグラフ: 内閣府の国民経済計算(GDP統計)より。

左軸は賃金、右軸は民間企業の所得で、単位は共に10億円です。

 

このグラフから、国民の賃金はバブル崩壊の度に下がり続け、長期低下傾向にあることがわかる。

青の直線は賃金の線形近似で、概ね21年間で10%低下(約23兆円低下)している。

それに比べて、民間企業の所得は21年間で218%上昇(33兆円増加)している。

 

つまり答えは簡単で、民間企業は法人減税などの優遇策により所得を増やす一方、労働者は非正規などの解雇容易化で賃金を抑えられて来たのです。

(賃金低下のメカニズムはもっと複雑ですが、これが主要な要因でしょう)

更に悲しいことに、労働者は逆累進課税の極みの消費税でも苦しむのです。

 

この労働者軽視で企業優先の政策、つまり日本の長期政権による政策が二つ目の潮流です。

 

ところが問題はこれだけでは済まないのです。

 

 

次回は、この企業優先の政策がもたらす結果について考察します。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ! 79:  何が問題か? 2


1

*1

 

 

現在、日本や世界がどんな方向に進んでいるのか?

簡単に言えば、大多数の国民にとって国政は劣化し、生活は苦しくなっているのでしょうか?

これが把握出来ていなければ話にならない。

 

 

はじめに

ある人々は、日本は素晴らしい国だと言う。

逆に、このままでは日本は破局を迎えると言う。

 

また、この軍事的緊張にあって日本は再軍備に向かうべきだと言う。

逆に、このままでは日本は戦争に巻き込まれると言う。

 

どちらが正しいのか?

この認識の差は、どこから生じているのか?

 

人々は事実、社会や経済のデーターをどう見ているのか?

人々はそれぞれ保守的な脳や革新的な脳を持っている為なのか?

人々はマスコミや大きな力に洗脳され偏向してしまったのか?

 

いや、こんな高次元の話ではない。

単に、人々は分からない事、悩ましい事、どうせ政治はよそ事と考えているからこそ判断せず行動しないだけなのか?

いや違う、現状に満足しているからこそ変化を嫌い、政治的判断を保留しているのか?

 

ここである経済指標から日本経済の真の姿を追ってみましょう。

 

 

対立する経済への評価

ここに内閣府作成のグラフがあります。

 

2

< 2. 如何にアベノミクスは成功しているか! >

 

このグラフは現政権の成果を高らかに歌い上げています。

A: 失業率はドンドン下がっている。

B: パートの平均時給はドンドン上がっている。

C: 企業収益も少し上がっている。

(実はBとCのグラフは錯覚を利用しています。上昇率はどちらが高いでしょうか?)

 

ここで疑問が湧いて来ます。

こんなに経済指標が良いのなら、なぜ私達の周囲で景気の良い話が無いのか?

ひょっとしたら私だけが取り残された不運な人間なのかと思いたくもなります。

 

待てよ!

失業率が下がれば賃金が上昇するはずだが、現実にそうはなっていない。

何か裏がありそうだ!

 

 

3

< 3. 少し真実が見え始める >

 

上のグラフ: 内閣府作成のグラフ。

このグラフから三つの事がわかる。

 

一つは、人口減少による労働力人口減が効いて、2008年のリーマンショック時の不景気から2012年までの失業率低下を説明できる。

2012年以降は、後に説明する理由により就業者数が増えて失業率の低下を維持している。

もう一つは、団塊の世代の定年延長や働かねばならない女性が増えたことにより、労働力人口が増加し失業率の低下(人手不足)が緩やかになっている。

 

 

中央のグラフ: 第一生命経済研究所経済調査部永濱氏のグラフ。

上記の説明を裏付けているグラフです。

 

下のグラフ: 同上。

青線と緑線の差は非自発的離職者の率を示し、2009年よりその差は縮まっている。

非自発的離職者とは、辞めたくないのに会社を辞めざるを得なくなった失業者を指し、2016年ではまだ55万人以上が存在している。

これが企業が賃金を上げなくても人を採用出来る理由の一つになっている。

 

 

4

< 4. 失業率と賃金の関係 >

 

この二つも第一生命経済研究所経済調査部永濱氏のグラフです。

 

上のグラフ: 働きたくても就業環境が厳しい、適当な仕事がない、または出産や介護などで就職活動をあきらめている人を加算していくと失業率が上がって行く。

やむなく非正規で働き、正規採用への就職活動を諦めている人も加算していくと、広義の失業率は10%近くまで上昇する。

 

下のグラフ: すべてを加えた広義の失業率が低下してこそ賃金が上昇し、やっと経済学理論と一致することを、このグラフは示している。

 

また以下のことがわかる。

 

広義の失業率はここ8年ほどかけて低下し、安倍政権誕生前から始まっていた。

賃金上昇は安倍政権誕生(2012年12月末)の翌年から始まっている。

しかし今回の賃金上昇は前回(2005、2008年)より高い失業率低下にもかかわらず抑制されているように見える。

 

これらの事実は日本の経済政策のある実態を反映している。

次回、この謎に迫ります。

 

 

 

 

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何か変ですよ 73: 日本の問題、世界の問題 9: 今、何を始めるべきか?


 

1

*1

 

 

今、選挙が始まろうとしています。

これは、まさに世界が加速度的に劣化していくことを象徴しています。

なんとか劣化を食い止めたいものです。

 

 

  •  はじめに

日本の首相は野党の体たらくにつけ込み、勢力拡大を狙い解散を行いました。

彼は実に政治の駆け引きが巧で、まさに独走態勢です。

一方、野党は未熟の一言に尽きます。

先進国では珍しいと言うか、世界はこの潮流に呑み込まれつつあります。

 

おそらく、選挙後、首相は憲法改変や軍事力増強を行い、短期的には周辺諸国との紛争突入の可能性が高まり、中期的には世界で火種が増し、長期的には国内で所得格差が拡大し、経済破綻が起こるかもしれません。

 

もしかすると、彼が采配を振るうことにより、逆に世界はより平和となり、やがて起こる経済成長が格差を縮め、経済破綻も防げるかも知れません。

 

ここが思案のしどころとお悩みの方も多いことでしょう。

 

検討すべきポイントは二つです。

一つは現政権の政策を押し進めて良いのか、または避けるべき政策があるのかと言うことです。

そうだとしても頼りない野党を選んで良いのかと言うジレンマもあります。

 

 

 

  •  現在の問題

この連載で、これまで様々な問題を指摘して来ましたが、最大のものは何でしょうか?

 

世界に関しては、際立つものとしては自由放任主義のグローバル化と米国の身勝手な軍事行動でしょう。

これを仕向けて来たのは一部の超富裕な金融資本家達の強欲と言えるでしょう。

このことを指摘するのは良識ある学者に留まらず右派・左派の論客にもいます。

 

日本に関して、放置すれば致命傷となるのは労働人口減と米国追従でしょう。

これらがなぜ放置されて来たかと言えば、戦後レジームの惰性、つまり長期与党の安逸な日々が続いたからと言えるでしょう。

 

あまりにも単純な指摘ですが、現在のように放置し続けると、痛いしっぺ返しを受けるでしょう。

つまり、今の政策以前に現与党の姿勢と、その背景にある世界の潮流に杭を打ち始めることが肝要です。

 

残念ながら、これらは即効性のない提案ばかりです。

とりあえず現政権の経済と軍事の暴走防ぎ、後は世界と共に手を打ち始めることから始めなければならない。

 

要点を以下に述べます。

 

 

2a

*2

 

 

  •  世界を危険に陥れている問題
    1. 自由放任主義のグローバル化

既にこれまで説明して来ましたが、要点を述べます。

 

これが各国の所得格差を拡大させたことにより、多くの低所得層だけでなく中間層までが不満を持つようになった。

また金融セクターのエゴによって起こる金融危機は、各国の財政を悪化させ、緊縮財政による福祉の低下と大量失業が貧困層を増大させた。

 

 

  1. 米国の身勝手な軍事行動

米国だけが身勝手な軍事行動を行っているわけではないが、世界を戦火に巻き込み、内戦や難民を最も多く出しているのは米国です。

また米国は経済や諜報活動でも、世界に悪影響を与え続けている。

例えば、地球温暖化条約破棄やクーデター支援(政府転覆)などがこれにあたる。

 

この二つのことが半世紀以上続いたことにより生じた難民や移民が流れ込む先進国では高失業と重なり不平不満が高まり、エゴ剥き出しの排外主義が横行するようになった。

このことが、米国ではトランプ現象となり、EUや日本では右傾化が進んでいる。

これを象徴するスローガンが「米国一番」「都民ファースト」であり、人々を魅了することになった。

 

不思議な事に、日本では失業や難民問題が深刻でないにも関わらず、米国と中国・北朝鮮との対立に煽られて、キナ臭さから焦げ臭くなりつつある。

 

このまま進めば、先進国を含む世界はどうなるのだろうか?

はい、悪化するだけです。

このまま勝手に世界が正常に戻る理屈はない。

 

そうは言っても、各国の努力は無駄なのか?

米英日以外にうまくやっている先進国(北欧やドイツなど)もあるが、世界は一連托生にならざるを得ない。

景気刺激策が功を奏したら、必ず良くなると信じたいのは皆同じですが、同じ事が繰り返されるだけです。

 

上記、二つのこと放置したままでは、他の施策を行っても焼け石に水か、破綻を先延ばしするだけで、むしろ傷を深めることでしょう。

待ち受けるのは世界を巻き込む巨大な金融危機か資源獲得紛争、ついには核戦争でしょう。

 

 

3a

*3

 

 

  •   日本を窮地に追い込む問題
    1. 労働者人口減

これは単純明解で、経済にマイナスです。

日本も遅れて、いくらか対策を嵩じてはいるが、あまりにも遅い。

また移民に対して嫌悪感があり、このまま行くと、長期減退は免れない。

 

  1. 米国追従

「米国追従の何が悪いのか?」と責められそうです。

また「お前は、反日か!」と罵られそうです。

 

これまでのように日本が米国追従を続けるなら、前述した「世界を危険に陥れている問題」を方向転換するどころか、英国と共に米国の身勝手をさらに加速させることになる。

 

一番の問題はこれらを無視して来た与党の姿勢であり、これを見過ごして来た国民にも責任の一端はある。

米国の意向に沿った原発促進や莫大な公共投資が何を招いたでしょうか?

前者の功罪は世界の判断から明確になった。

後者は日本の経済成長を呼び起こすはずのものだったが、その結果、零成長と世界でも群を抜く累積赤字となった。

これらは「NOとは言えない」与党政府が招いた結果の一部にしか過ぎない。

 

 

 

米国追従を望む人々は、米国の核の傘に入れば安心だと思っているようです。

 

しかし、私は技術的見て日本列島を核攻撃から守れるとは思えない。

むしろ、火種が増し、紛争の最前線となるのは極東の端にある日本列島でしょう(米国にとって防波堤)。

また米国との同盟強化による抑止力を期待する人もいるが、この効果は良くもあり、悪くもありと言うところです。

簡単に言うと、敵国が冷静で正確な情報を持っていれば抑止力は増すが、そうでない場合は、敵国は戦意を煽られ暴挙に出る可能性が高まる。

米国のおかげで防衛費が少なくて良かったと言う意見もあるが、現状の軍事費(GDP比率も)の国はいくらでもある。

 

重要なのは、大戦以降、米国の軍事行動の大半が世界中に戦火を広げ混迷の種を撒いて来たと言う事実です。

ましてトランプの下では危険性は高まるだけでしょう。

 

なぜ日本政府が米国追従なのか様々な憶測が飛び交っているが、戦後、政府の政策を見ていると、経済(構造協議)、金融(市場開放)、産業(民営化)、為替(プラザ合意)、軍事(海外派兵)すべてに米国の言いなりと言える。

おそらく密約やCIA等により日本政府が牛耳られていると言うよりは、単に自発的な交渉で米国(政府や議会)の機嫌を損なうよりは、言いなりが楽と言うことに尽きるのだろう。

この手の押し付け、自由放任主義の拡散は世界中に行われたが、日本は最も従順に受け入れて来た。

 

例えば、沖縄返還では、その結果によりノーベル賞を受賞した首相もいれば、その秘密交渉に尽力した外交官は、その結果に後悔して服毒自殺していた。

それでも対外交渉の矢面に立つ外務官僚は徐々に変わって来ているようだが、旗振り役の政治家はやはり国民受けのアピールを狙い、旧態依然とした手法に頼ることになるだろう。

 

 

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  •  現政権の長短
    1. 首相の長所

首相は政治駆け引きとリーダーシップに優れ、与党内からの反発が少なく、長期政権を担える。

また彼は外交にやりがいを感じており、日本はとりあえず目立つ存在になった。

 

  1. 首相の短所

今回の解散や消費税撤回、憲法改正の進め方、身内問題(加計など)などを見ていると、信頼出来る人物ではない。

つまり、国民の願う方向に向かうとは限らない。

麻生の言うように、いつの間にかナチスに牛耳られたと言うことになるかもしれない。

 

最も不安なのは、彼の認識の偏りとある拘りです。

かつての日本の戦争の評価や戦争回避の手法、また経済や政治運営において、今までの与党にもあった制約がなし崩しになって来た。

単に、右翼と言ってしまえばそれまでだが、それだけではない。

その目立つ強引さに比べ、将来招くことになる様々な弊害についての目配りが不足している。

ふるさと納税や年金の株式運用など、問題を訴えた官僚達は外され、顧みられることはない。

 

もう一つは、岸おじいさんへの極度の愛着で、これが彼を振る舞いの淵源だろう。

 

 

  1. 政策の問題

他の事で目立っても、自由放任主義のグローバル化や米国追従に積極的なのでは何ら解決にならない。

 

本来、円安誘導は米国を怒らすはずだったが、今回それが無かったのが不思議です。

考えられるのは、軍事的な追従で帳消しにされているのか、大量の米国債を買うことで許されているのかもしれない(将来、ドル安になれば大損害となる)。

 

アベノミクスによる経済効果はあっても一時的でしょう。

現内閣は誕生時から、世界の金融危機後の立ち上がりと言う幸運に恵まれていた。

もし効果があったとしても、その後、どこかで金融危機が起これば、膨大な貨幣供給により大きなしっぺ返しを被ることになるでしょう。

結局は、米国や英国の二の舞になるだけです。

 

結論としては、現政権の延長は、戦争と経済に関して危険が増すと言うことになる。

 

 

 

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*5

 

 

  •  国のトップの資質について
    1. トランプに期待する人の意見

期待する理由は彼が財を成し得たのは優れた交渉術のおかげだと言うものです。

これが米国の再生を救うと信じている。

 

しかし、彼の事業手腕のポイントは法(破産、公共体からの融資、脱税など)を犯罪すれすれで悪用し、一方で悪徳で名高い弁護士によって事業を拡大して来たと言える。

つまり、極論すれば自分で法を犯しながら、国法に守らて来たと言える。

このような手法が、法を率先垂範すべき国のトップ、ましてや信頼が欠かせない各国間で通用するとは思えない。

各国間の懸案は脅しと軍事力でしか解決しないと考えれば、トランプは良い選択かもしれない(その結果は恐ろしいが)。

 

 

  1. 保守が期待するトップ像

ある日本の保守論客(元外交官)は、敵を作り紛争を繰り返す米国を悪の権化と言い募る。

さらに彼は欧米は国際金融勢力による傀儡であり、そのマスコミも牛耳られ、逆らうロシアなどを食い物にしようとしていると指摘する。

 

彼の指摘は事実も混じっているので面白いが、最大の難点は論理の飛躍があることです。

不思議なことに、日本政府はその害毒に毒されず、ましてや現首相は毅然とそれに立ち向かえると言うのです。

つまり、世界を救うのは今の首相しかいないと言うのです。

 

百歩譲って、それを認めたとして、現実の動きはどうでしょうか。

首相はトランプを諫め、暴挙を抑えようとしているでしょうか。

 

例え、互いに同意見だから協力しているとしても、最初の前提とは甚だしく異なっているように思えるのだが。

私にとってこの手の論説は、唯の好き嫌いを長々と述べているに過ぎないと思うのだが。

 

 

 

  •  世界と国内の関係について

自由放任主義のグローバル化が悪いと解っても、それを正す方法に問題がある。

 

ある識者は言う、自由を求めて広がるグローバル化を規制や税で制御すること自体に無理がある。

大半の経済学者も、これに賛同するだろう。

一理はあるが、明らかに災厄の原因が判明しているのに放置して良いことにはならない。

 

確かに、現状では多国間の貿易交渉さえまとまり難いのに、まして世界を統一された規制や税制で網羅しようとすることは不可能に近いかもしれない。

そうは言っても、世界は徐々に主要20カ国リーダー会議とか、フロン規制などで成果を積み上げて来ている。

 

ここで見方を変えて、災いの根源となっている超大国の横暴を抑えることが出来れば、世界は一歩前進するのではないでしょうか。

つまり、超大国に追従するばかりでなく、独仏が行っているように、友好国ではあるが、その都度是々非々で対応を判断するぐらいの自主性を持つことが、これからの日本に求められるのではないでしょうか。

 

もっとも大事なことは、少なくとも超大国の身勝手を、他の先進国と一緒になって抑えるようにならなくてはならない。

つまり、グローバル化の災いを招いている金融セクターの独走を米国から正すことです。

 

我々が、現状の世界経済の行く末を正すには、世界規模の改変か、米国(一部EU含む)を諫めて行くことから始めるしかない。

 

 

 

  •  今回の選挙にあたって

とりあえず、何を選んではならないかは見えて来ました。

しかし、それではどの政党を選べば良いのでしょうか?

 

残念ながら、私にも見えて来ない。

既存の野党はバラバラで、新しい政党に実力があるようには思えない。

 

また現実的に考えて、アベノミクス(リフレ策と財政出動)や自由放任主義のグローバル化を、日本から変えて行くことは困難でしょう。

改善策の経済政策が一部の経済学者により提唱されているが、残念ながらそれが広まる雰囲気はまだないように思う。

ましてや、追従か拒否かの両極端にある日本の政治家に、それを実行出来る豪胆さはないだろう。

 

そうなれば、ここは消極策で行くしかない。

つまり、現首相に「暴走するな!」と伝えるぐらいだろう。

それ以上の事を望めるとは思えないし、後は悪化が急速に進まないことを祈るぐらいしかないでしょう。

 

戦後の日本の政治を見ていると、反対する野党の存在が長期与党の独走を防ぎ、欧米流とは異なる大きな政府を生み出して福祉や医療制度で世界に誇れる国になったと私には思える。

 

 

皆さんの健闘と幸運を祈ります。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ 72: 日本の問題、世界の問題 8: おかしな認識の数々


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前回、世界経済は危険な兆候を示しているが、人々が無視し出来る理由があります。

今回は、その根底にあるおかしな認識について見ます。

第一章 はじめに

前回示した危険な兆候には、日本だけでなく先進国で深まる所得格差、経済成長の低下、繰り返し巨大化する金融危機、急伸する累積赤字がありました。

日本に限っては人口減があります。

人々がこの兆候を無視する理由には、自由放任主義とグローバル化への信奉が背景にあることがわかりました。

これが金融セクター(金融資本家)が政府をリードし、一方で自虐労働観が蔓延ってしまった原因にもなった。

前回、この危険な兆候はほんの40年前の人為的な政治・経済の転換から始まったことを示しました。

そして、現在、益々危険度は高まり、改善の兆しはありません。

人々が危険な兆候を前にして傍観出来るのは、これらを危険と認識しない理由があるからです。

 

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第二章 これら兆候を危険と認識出来ない理由とは

私が危険と見なす幾つかの兆候を、人々が危険と認識しない理由を探ります。

そこには繰り返される偏見や、ちょっとした思い違い、煽動があります。

  1. a) 所得格差

「所得格差の何が悪いのか?」と思っている人もいることでしょう。

稼ぐ人が稼げば良い、働かない人は収入が無くて当然ではないか。

「収入が無いからと言って、儲けている人の足を引っ張るな」と言う日本の経済学者もいます。

しかし所得格差が放置されると幾つかの問題が発生します。

多くの低所得層の消費が伸びず経済発展が阻害されます。

貧困家庭では充分な教育が行えず、適切な労働者の再生産が出来ない。

いずれ所得格差が拡大し、社会に不満が充満し治安の悪化が起こる。

しかし一番の問題は、多くの国民が勤労意欲を無くしてしまうことです。

これは歴史的に繰り返された文明崩壊の最たる要因であり、また現在の後進国の発展を阻害する原因でもあります。

つまり放置することは社会の悪化を招くのです。

  1. b) 経済成長の低下

「これだけ経済は豊かになったのだから、これ以上、浪費を招く経済成長は必要ない」と思っている人もいるでしょう。

だが経済成長は必要です。

現在の福祉政策や莫大な財政赤字を考えると、経済が縮小したり停滞すると福祉と経済はいずれ破綻することになる。

たとえ国民が生活や医療の水準を低下させることを受け入れても、わずかなりとも成長は必要でしょう。

問題はむしろ、経済が成長出来ない真の理由を先進国の首脳達が把握していないか、認めたくないことにある。

数こそ少ないが著名な経済学者が原因の指摘と献策を行っているのだが。

それゆえ、並み居る先進国は巨額の財政出動とマネサプライを続けて、景気を強引に刺激し続けています。

この挙句、膨大な累積赤字と金融危機が繰り返しているのです。

つまり、現在の国家運営においては経済成長は必要です。

但し、現在のカンフル剤の大量投与のような景気刺激策は問題を先送りし、破局を極大化させるだけでしょう。

 

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  1. c) 繰り返し巨大化する金融危機

「バブル崩壊は資本主義経済の安全弁のようなものだ」と考える経済学者も居るぐらいなので、バブルを当然と思う人もいるでしょう。

確かに、バブル崩壊は歴史的に繰り替えされ、おそらく無くすことは出来ないでしょう。

しかし、これから起こるバブル崩壊(金融危機)はこれまでより危険度が増す。

二つの理由があります。

繰り返す内に、経済崩壊の規模が増大していることです。

このような状況は19世紀のヨーロッパでもあり、第一次世界大戦の引き金に繋がったと指摘する学者もいます。

2008年以降、先進国は軒並み、史上初と言える莫大な緩和マネーを放出しているので、景気過熱とその崩壊は世界中を巻き込む桁外れのものになるでしょう。

膨張した巨大な風船は少しの衝撃で破裂することになる。

今一つは、金融危機の度に、金融セクターと超資産家は富を増やし、一方で政府は累積赤字を増大させ、国民は失業と福祉削減のあおりを受けている。

たとえ一時バブル崩壊を逃れても、いずれ所得格差と累積債務の増大が社会と経済を破局に突き落とすでしょう。

  1. d) 急伸する累積赤字

「GDPの2倍に迫る累積赤字でも日本は盤石だ!」と言う経済学者がおり、人々は免罪符を貰ったようなもので、深刻さに目を向けないでしょう。

しかし、いずれ累積赤字が限界を越え、破綻する可能性があります。

この限界は明瞭ではなく、国民が不安に思い始める時が限界と言えます。

残念ながら、今の経済学は儲ける手法を研究しても、社会を困窮させる現象の研究には力を入れていません。

可能性が高いのは金利上昇や、累積債務が国民の金融資産より上回った時かもしれない。

国が破綻すると言うことはどのようことなのでしょうか?

世界を見回して、国家が破綻して地図から消えたのは二つぐらいしかなく、多くは存続を続けています。

それでも傷は深かったのです。

大きく分けて二つの問題があります。

一つは、デフォルトを起こし、政府が国民や海外の投資家に借金を返さないことです。

デフォルトになれば日本人一人当たり1000万円が紙屑になるだけで、平均すればまだ預金や現金が800万円残っている。

皆が一斉に失うので、あきらめがつくはずだと軽口をたたく人もいる。

しかし、この時、国民の落胆だけでなく、金融危機と同様に経済は停滞し、厳しい緊縮財政が続くことになる。

誰も、政府に資金を提供してくれませんので。

今一つは、歴史を振り返ると、累積債務を抱え経済悪化の状況にある時、国民の不満が煽られて戦争や侵略に向かった国がありました。

例えば、政府が状況悪化を大増税や通貨増発で逃れようとした結果どうなったでしょうか?

かつて日本やドイツが他国の侵略に向かい始めたのは、そのような状況で身動きが取れなかった時でした。

これは経済学で論じる範疇を越えていますが。

つまり、歴史的事実として多くの国は累積債務の悪循環から逃れられず、ついには破局に至るのです。

たとえ今は良くても。

 

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  1. e) 日本の人口減

「人口が減るのは豊かな社会の現れで仕方ない」と諦める人も多いでしょう。

実は、日本の景気低迷の最大の要因は人口減と言えるでしょう。

現在の人口減は、若年層が減り、労働人口が減り、そして高齢者の人口割合が増えることです。

つまり、単純に、働く人が減り、稼がない人が増えることで、確実にGDPは低下していきます。

一時期、退職者を埋め合わせる為に求人が増えても、じわじわと陰りが広がります。

これは致命傷です。

特に、日本はこれを長年放置し、労働移民も増やさないのであれば、それこそ沈没するしかない。

   

第三章 おかしなドグマ 

人々は自由放任主義や、グローバル化、自虐労働観、超繁栄する金融セクターに疑いを持たないかもしれない。

これらドグマの何が奇妙なのかを見ます。

  1. a) 自由放任主義(果てしない規制崩し)

この論理が正しいと信じる人がよく引き合いに出すのが、「自然界は弱肉強食」だと言うのがあります。

この論理の前提に、「競争が強くする=生存競争を生き抜いた者こそが優れている」との思い込みがあります。

結論から言うと、高度な動物、まして人間に当てはめることは間違いです。

簡単に言うと、生死を分けた自然淘汰は進化の源でしたが、高度な動物ほど生存には競争と同様に協力も不可欠でした。

まして社会的な動物(霊長類、人間)には高度な利他行動が不可欠なのです。

実は、この手の進化論まがいのドグマは帝国主義の時代にも、先住民を差別する為に大いに普及したのです。

この手のドグマは保守派経済学のものと言うより、何やら不気味な時に顔を出す亡霊のようなものです。

現実の社会で考えてみましょう。

通常、国が定める経済や産業の規制の多くは、消費者や労働者の為のものでしょうか、それとも企業の為のものでしょうか?

前者もあるが、当然、政府を動かして規制を作り安いのは企業や産業側です。

企業や産業が望む規制の例としては、競争を避ける為に他者を規制するものです(関税、輸入量制限、業界均一料金など)。

一方、消費者の安全を守る為に、企業側を規制する場合もあります(公害防止、消費者金融の金利制限など)。

実際、問題がある多くの規制緩和は、企業繁栄の為に自由を与え、国民や社会への被害は二の次と言うものです。

すべてがそうではないが、米国の金融セクターが巨大化していった背景にこれがありました。

もう少し単純に考えましょう。

歴史的に見て、権力や武器、資本を野放しにするとどうなるでしょうか?

もしある人が「やがて競争の末に秩序が保たれ、必ず平和で平等な社会が訪れるはずだ」と言えば、人々は信じるでしょうか?

おそらく、嘲笑ものでしょう。

しかし、現在の経済学の主流はこのような事を平気で言い募っているのです。

  1. b) グローバル化

「グローバル化は必然だ!」、「グローバル化は災厄を撒き散らす!」と二つの意見に分かれ、これまた何が問題かが分かり難い。

これを例えるなら「自動車は便利だ!」「自動車は危険だ!」と同じです。

つまり危険だけど便利で捨てることが出来ない。

グローバル化を排除するのではなく、グローバル化を適切にコントロールする  ことが必要なのです。

自動車に例えれば、死亡事故を減らすために道路交通法、取り締まり、罰則などの強化が必要だと言うことです。

現在は、大型トラックの巨大コンボイが至る所を自由に疾走しているようなものです。

世界が統一的な法規制や税制を制定し、管理する必要があるのです。

もっとも、これを不可能だと一笑に付す経済学者や、猛烈に反対する業界や大国が存在するので事は簡単ではない。

大事なことは皆さんが、タックスヘイブンや、金融危機や通貨暴落に繋がる過剰で身勝手な資金移動が、これまでどれだけの実害をもたらしたかを先ず知って頂くことです。

 

  1. c)  自虐労働観

「労働者を甘やかすとだめだ」、「労働者が団体活動するとろくなことがない」 と思っている人がいるはずです。

しかし、そうでしょうか?

企業や経営者を甘やかすことは良いのでしょうか?

企業や産業が金に物を言わせ、社会や政治に影響力を持つことは良いのでしょ   うか?

実は、どちらも限度を越えることが問題なのです。

20世紀の前半は、労働運動の行き過ぎがありましたが、現在は企業側の行き 過ぎなのです。

実は、その前の19世紀は労働者のストが犯罪で、労働者は死を賭してスト権  を社会に認めさせた経緯があったのです。

もう一度立ち止まって、労働者自身が労働権に気づかないといけない。

  1. d) 超繁栄する金融セクター

高々、一産業(金融セクター)の発展を妬むのは良くないと言われそうです。

この事を前回まで扱って来ましたが、やはりこの中心問題は金融セクターが巨 大な力を持ち、災厄をもたらしているにも関わらず国民の立場になって制御出 来なくなってしまったことです。

端的な例は、毎回金融危機を繰り替しておきながら、血税で救済しなけ ればならず、また財政赤字を増やし続けなければならないことです。

繁栄すること自体が問題ではなく、歴史上よくある、武力や権力の集中が恣意 的な振る舞いを増長させてしまうことなのです。

現在の問題は、金融セクターが経済と政治の中枢を握ることで起こっているの です。

第四章 何が国民を惑わしているのか

私は経済学にかなりの非があると考えます。

極論すると経済学は似非自然科学でありながら、経済を制御出来ると吹聴し、かつ国民が疑いを差し挟むことが出来ないことが問題なのです。

  1. a) 経済学者の断言と予測は占いよりましか

巷では、「累積債務を問題にする輩は経済音痴である」「リフレ策は金利高騰を招かない」などと強気の発言をする経済学者を見かけます。

しかし、経済史、特にバブル崩壊史を振り返ると、ある種の経済学者の挙動が珍妙です。

ここ2百年あまりの数々のバブル絶長期において、なぜか新進気鋭か人気絶大な経済学者(実業家も居るが)がバブルを煽り、さらには崩壊の危険が無いと言って喝采を浴びていたのです。

当然、バブルで一儲けしようとする人々は彼に熱烈な声援を送ります。

その結果、彼はバブル崩壊と共に凋落の憂き目にあうのですが、潔く責任を取ったと言うことを聞きません。

単なる目立ちたがり屋が、たいした根拠もなく科学的な物言いによって、国民を惑わせただけなのです。

詳しくは「バブルの物語」ガルブレイス著を見てください。

あの「金融の神様」と呼ばれた元FRB議長グリーンスパンですら、2008年のバブル崩壊をまったく予見で出来なかったのです。

憤りを感じるのは、昔の天気予報、いやほとんど占いと変わらない実態なのに断言や予測を軽々とする経済学者、しかしその実害は比べものにならないほど絶大なことです。

私の経験では、彼らは経済的な予測―円高や株高など、を行って外れても、まったく平気な人々ばかりです。

つまり、高らかに歌う経済政策の将来の成果は、現在の天気予報のように自然科学上のデーターを使いシュミレーションすることが出来ていないのです。

経済政策や経済予測は、想定外の攪乱要因で多く外れることがあると、皆さんは肝に銘じて頂きたいのです。

 

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第五章 想定外の危険と向き合う

既に見たように経済的な現象とその理解、さらには問題の解決方法と将来予測には、不確定要素が多々あります。

一方、経済悪化は私達の最大の関心事で、また政治を大きく悪化させる最大の要因でもあります。

これが半世紀前のドイツと日本のファシズムの引き金になりました。

私が一番強調したいのは、想定外の危険や悪化と向き合うことの重要性です。

東日本大地震の原発事故は、福島県の10万人を越える避難者や数十兆円の損害を生みました

想定外で済まされていますが、そこに原発が無ければ、被害はなかったのです。

科学技術に基づいた設備にでも、これだけの被害が発生するのです。

まして一部の経済学者が太鼓判を押す程度の経済政策では想定外のアクシデントによって、逆の事態が起きるとも限らないのです。

増大する累積赤字による破綻、インフレ後の金利上昇、巨大なバブル崩壊など重大な懸念は幾らでも起こりうるはずです。

むしろ問題の本質は、原子力政策と一緒なのですが、経済学は社会科学と言うより、あまりにも政治化しています。

分かり易く言えば、時の政権と癒着していることです。

政権に都合の良い経済学者が重用され、互いに利便を得ていることが問題です。

 

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第六章 まとめ

経済の問題を、その思想から論じて来ました。

これらは思想と言うよりも、思い込みや好みと言えるものでした。

歴史は繰り返すと言うが、現在は20世紀前半の労働者優先から、企業優先に変わり、その歪が極大化しつつある状況です。

ここで労働者優先に転換出来るかが鍵になるのですが、残念ながら、大きな問題があります。

それは多数ではあるが非力な人々が社会を変革することは歴史的に見て困難を伴っていることです。

フランスの経済学者ジャック・アタリが言っているように、放置された累積債務の果てに来るものは内乱かもしれない。

そうならない為にも、人々が問題と向き合い、社会を変えて行くことを始めなければならない。

次回に続きます。

 

 

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何か変ですよ 71: 日本の問題、世界の問題 7: 人はなぜ気が付かないのか?


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これまで、世界を覆っている混迷と波乱の予兆を経済問題を中心に見て来ました。

今回は、なぜ国民がこの濁流に流され続けても平気なのかを考察します。

 

 

  •  はじめに

身近な人に、「世の中はどうですか?」と聞けば、多くは怪訝な顔をし、せいぜい「景気は良くならないですね」と答えるぐらいでしょう。

また「将来、不安ですよね」と聞くと、「そうですね」と答えるぐらいです。

 

さらに「このままでは行けないですよね」と投げかえると、ほとんどの人は逆に「日本ほど素晴らしい国はない」と答え、暗に政策転換を否定することになる。

 

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< 2. 主要国の失業率の推移 >

 

灰色枠は米国の景気後退期(バブル崩壊)を示し、これでせっかく の金融緩和で稼いだ失業率低下を毎回帳消しにしている。

このグラフでは分からないが、この繰り返される大幅な金融緩和で 累積債務(将来世代への借金)は各国で史上最大になった。

 

 

 

 

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< 3. 日本の相対貧困率 >

 

簡単に言えば、所得格差の拡大が未来を担う子供を窮地に追い込ん でいる。

 

 

 

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< 4. 主要国の貧困率 >

 

ここで重要な事は、日本が米国の政策に追従している内に、貧困率 は先進国でもトップに近づきあることです。

さらに日本に特徴的なことは、片親家庭(おそらく母子家庭)の貧 困率が群を抜いていることです。

これは男女の賃金差と福祉政策の拙さに起因している。

 

 

日本と米国だけでなく他の先進国も押しなべて、失業率の乱高下、高まる貧困化率、繰り返す金融危機、巨大化する累積債務など、経済の悪化が続き、鬱積した不満と苛立ちは移民排斥や人種差別、右翼化などに結び付き、社会はきな臭くなっている。

 

多くの国民は、この悪化状況が今後、改善されると期待しているのだろうか?

この状況は一時的なもので、米国流の政策を真似ていれば解決すると思っているのだろうか?

それとも、先のことは考えたくないだけなのか?

 

今まで述べて来たように、現状の悪化は高々1980代から始まった先進国の政策「自由放任主義によるグローバル化」が引き起こしたものです。

そうであるならば、この政策を反転させない限り、世界はさらに混迷を深めることになる。

 

国民はなぜこのことに違和感を持たないのかを考察します。

 

 

  •  疑念を抱かない不思議

昔では考えられなかった事だが、私達の子供世代(30代)の大半は非正規で働いてる。

このことを同世代の親に問うても、すべての答えは「残念です」ぐらいで、せいぜい言葉が添えられても「息子、娘が不運だった」または「息子、娘が至らなくて」ぐらいです。

 

これには日本人の奥ゆかしさが出ているとも言えるが、自己責任で納得してしまう特有の文化がある。

しかし、これでは問題の解決にはならない。

相変わらず、お上にお任せから抜けきれない。

 

この状況は、かつて規制されていた非正規雇用が規制緩和により、あらゆる職種で自由になったことにあり、さらに規制緩和は拡大中です。

 

 

 

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< 5. 主要国の労働分配率 >

 

日本の労働者賃金の企業の付加価値に占める割合は、格差拡大が著 しい米国(青線)より著しく低下している。

付加価値には企業の利益、税金、人件費などが含まれる。

 

 

なぜ国民はこれを受け入れるのでしょうか?

 

理由は簡単で、多くの経済学者に始まり、政府・官僚や保守系マスコミ(米国寄り)までがあるドグマに囚われ、さらにその絶大な効果(?)が喧伝され続けて国民に完全に浸透してしまったからです。

 

これは米国に追従した原発推進のパターンと同じです。

そのドグマとは1980年代から流布した「自由放任主義こそが経済を活性化する」です。

つまり、あらゆる規制を取り除き、資本や労働、商品などが、世界中の自由市場で競争すれば、経済効率が上がり、コストは下がり、所得は増えると言うものです。

 

40年近く、このドグマに従い、米国を筆頭に多くの先進国がこれを実施して来ました。

しかし、その結果、米国やEU、そして日本の現状が示す通り、沈滞と失望が蔓延するようになったことは、既にこの連載で見て来ました。

 

それではなぜ、誰もこのドグマが悪化の原因だと疑わないのでしょうか?

 

 

 

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< 6. 下位50%の所得割合い >

 

下位50%の所得割合が全体の50%であれば平等な社会です。

米国は経済成長を続けて来たが、その 内実は大半の国民を置き去 りにしているのです。

1980年代より、米国は一気にその傾向を強めている。

フランスは不平等の進行を食い止めている。

 

 

 

  •  不思議がまかり通る原因

その大きな理由の一つは、見かけでは景気が良くなるからです。

 

米国で顕著なのですが、自由放任主義が進んだ結果、金融セクターが巨大化し、これがバブルを煽り、株価高騰に見られるようにGDPの上昇が起こるからです。

 

しかし実体は、長年のGDP上昇にも関わらず、大半の米国民の所得は横這いか低下しただけです。

残ったのは、実体経済(製造業など)の衰退、膨大な累積債務、所得格差の拡大だけと言えるでしょう。

 

もう一つは、多くの経済学者や政府首脳、マスコミが、今や経済の首根っこを押さえている最大の受益者となった金融セクターに追従し安住しているからです。

米国のホワイトハウスとゴールマンサックスの関係を見れば明らかです。

 

さらに付け加えると、自由放任主義が当時広がりを見せていたグローバル化と一体化したことにより、一国が採りうる政策の幅が狭くなったことにあります。

例えば、ある競技で、参加者はどんな有利な道具を用いても良いとするなら、一人だけ何ら道具を用いず競争するなら負けるのは当然です。

今の世界経済は、このように競争に対して無秩序、無制限に近いのです。

 

これらのことにより国民は反論出来なくなり、泣き寝入りするだけなのです。

 

このように言い切ってしまうと、国民の見識を貶めているように思われるかもしれません。

そうではなくて、皆さんは洗脳されていることを疑ってください。

そこで少し、皆さんに見方を変えることをお勧めします。

 

 

 

  •  自分の首を絞める偏見の例

二つの具体例を取り上げます。

 

  1. 最低賃金を上げれば景気は悪くなる

政府や企業は、最低賃金をむやみに上げると、先ず中小企業が倒産し、景気が悪化すると言う。

また賃金上昇は海外との価格競争で不利となり、これも経済を弱めるとする。

 

一方、現代の経済学では、最低賃金の上昇は消費需要を高め、この結果、景気が良くなり、企業も潤うとする。

 

皆さんはどちらの説を採用すべきと思いますか?

 

実は、半世紀前まではこの逆が実際に起こっていたのです。

 

 

  1. 従業員の育児休暇が増えると企業の体力が弱まる

これは、つい昔の日本の政府や企業の考え方でした。

もし育児休暇で1回に1年間も休まれると、その穴を埋めるために余分に人材を要し、人件費増となり、経済にはマイナスでしかないと言う。

皆さんの多くはこれを当然のように思っていたはずです。

 

一方、ヨーロッパでは遥か以前から、国が主導して育児休暇を取らせて来ました。

フランスではなんと3年間もあり、さらに保育所の完備、充分な育児手当の支給で、出産を奨励して来ました。

これにより、フランスは2009年には、人口維持が出来る合計特殊出生率を2.0へと回復させた。

フランスは労働者不足(人口減)を補うためにヨーロッパの中でも早くから移民を取り入れて来た国で、積極的に対策を講じて来たのです。

 

翻って日本はどうでしょうか?

この年の日本の合計特殊出生率は1.37で、これでは人口減は必然です。

もし日本政府が、労働者にもっと目を向けていれば、現在の労働者人口減や高齢化のマイナスを緩和出来ていたはずです。

そうすれば急速な高齢化による年金給付や医療費の不安がかなり軽減され、ゼロ経済成長もここまで長引くことはなかったでしょう。

 

 

これらは単に政策ミスと言うより、政府の思考に問題があるのです。

そこに共通するのは労働者軽視であり、企業優先が蔓延ってしまっていることです。

 

7-1

*7

 

 

  •  愚かな自虐労働観

皆さん、周囲を見渡して、労働者(定年後も)とその家族でない人がどれだけいるでしょうか?

日本の経済―供給と需要(消費)、を支えているのは労働者とその家族なのです。

しかし、いつの間にかその重要な労働者が低く扱われ、所得の低下に見舞われ、さらに真っ先に増税の対象(消費税)となり、将来は益々不安になりつつあるのです。

 

もっとも哀れなのは、労働者自身が労働権(ストや組合活動など)を軽視し、まるで自虐労働観に苛まれてしまっていることです。

 

この自虐労働観の最たる間違いについて考察しましょう。

 

以前、取り上げましたが、企業の内部留保が増える一方で家計の貯蓄が減っている現状がありました。

 

皆さんは、企業がたくさん利益を挙げなければ景気が良くならないと思われているかもしれませんが、これは少し違います。

当然、賃金上昇の原資になりますので企業の利益は必要です。

だが企業の利益や内部留保自体には景気を良くする直接効果はなく、この資金が設備投資に向かって初めて、景気が良くなるのです。

残念ながら、現在、企業の多くは設備投資より金融商品への投資に血眼ですので、株価は上がっても、実体経済への効果は期待できません。

 

むしろ景気(GDP)の上昇にもっとも寄与するのは家計の消費支出(国内総固定資本形成の住宅投資も含まれる)です。

つまり労働者の所得が上昇してこそ景気が持続的に上昇するのです。

このことが日本の高度経済成長時に起こったのです。

 

ではなぜこのような愚かな逆転現象が起きたのでしょうか?

 

 

 

8-5

< 8.日本の労働組合 >

 

日本の労働組合の組織率は1970年代後半から凋落傾向が始まった。

しかし、これは日本に限ったことではなかった。

 

 

9

< 9. 主要国の労働組合組織率 >

 

つまり、1980年代から世界が変わったのです。

 

 

  •  きっかけは反動でした

一番大きい理由は、かつての政策への反動が起こったからです。

 

この連載で既に述べたように、1970年代までの先進国経済は「ケインズの有効重要説」(代表例、世界恐慌後のルーズベルトのニューディール政策)に従っていたことにあります。

米国では、これにより労働者の権利は擁護され、賃金が上昇し続け、これが需要を喚起し、経済発展が続いたのです。

他にも公共投資や大戦による軍需が景気を押し上げた。

 

しかし、1970年代の石油高騰等の要因が加わり、スタグフレーション(不況とインフレの同時進行)が世界を呑み込みました。

この時、主に貨幣供給量の制御でこの問題を解決出来たのですが、同時にこの発案者(フリードマン)の保守的な経済学(自由放任主義)が主流になる切っ掛けとなりました。

 

これを期に、企業側と資本側が逆襲を始めたのです。

自由競争と言う名目で、労働者の権利を弱め、賃金を抑えることで利益を生むことに味を占めてしまったのです。

その後、これも自由競争の名の下に規制緩和と金融緩和(通貨増発)で、金融セクターが莫大な利益を得るようになった。

さらにグロ―バル化は、海外移転が容易な企業や資本に有利に働き、その一方で移住にコストがかかる大半の労働者には不利に働くことになった。

 

こうして世界の労働者は、経済学からも、政府からも、さらに世界からも軽く扱われるようになった。

その国の民主化度の差によって多少悪影響は異なりますが。

 

 

 

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< 10. 米国のCEO(経営責任者)と労働者平均の給与比 >

 

いまでこそ、米国のCEOの給与は高値に跳ね上がったが、1980 年代以前は、それほどではなかったのです。

 

 

 

  •  労働者が軽視されることで起きたこと

以前、ハーバード大学の熱血授業で米国の高額所得が論じられていました。

最後まで聞いたのですが、得るところはありませんでした。

それは高額所得者がなぜこうも増加したかを説明出来ていなかったからです。

 

一般には、米国経営者の高額所得はストックオプション(自社株購入権利)やM&A(企業買収)が可能にしており、米政府がこれらを解禁して来たことによると考えらている。

また巷では、これらが会社経営を活性化させているとし、高額所得は黙認されているようです。

 

しかし、経済学者のピケティやスティグリッツ、経済評論家のマドリックなどは、最近の実証的研究を挙げて否定している。

先ず、経営者の高額所得と企業業績との間には相関が無いと言う。

 

ここが重要なのですが、こんな無駄な事が起きた理由は、これらをチェックし牽制出来る労働組合の弱体にあると言うのです。

私は、この研究結果を知って、やっと高額所得の増加現象を納得することが出来ました。

 

 

 

  • 日本の事情

日本の労働事情が本格的に劣化し始めたのは、世界の流れを受けて中曽根内閣の時代からでしょう。

国鉄民営化、非正規雇用の拡大、確定拠出年金(米国の401Kのコピー)などが代表例です。

 

非正規雇用と確定拠出年金は多くの労働者にとって待遇の悪化を招きましたが、その一方で企業や金融セクター(退職金運用手数料稼ぎ)にとっては非常に好都合でした。

そして、保守系の報道や政府発表は、これらのメリットを謳うばかりで、マイナスには一切触れなかった。

むしろ、徹底的に労働者の怠慢や労働組合の横暴をあげつらっていた。

 

こうして労働組合は弱体化していったが、これは米国も同じでした。

これには日本では非正規雇用が影響し、米国では法制度や裁判などが影響がした。

 

すると日本では、労働組合の縮小と共に野党勢力は凋落し、中小企業の商工会議系に支えられた与党は勢いづくことになりました。

 

 

こうして、この世は魑魅魍魎が跋扈するようになってしまったのです。

 

 

  •  まとめ

日本は素晴らしい国であり、多くの人が変革で危険を冒す必要が無いと考えるのも無理がありません。

しかし、日本の良さは自然、文化伝統、治安の良さなどであり、極論すると地理的に隔絶していることにあります。

これは長所なのですが、一方で危険でもあります。

 

私達日本人は井の中の蛙になり易く、どうしても安逸が続くと、海外の変化に疎くなり、惰性に走りがちです。

戦後の日本は最初、米国に助けられ、その後は脅され(プラザ合意、日米構造協議など)、また長らく追従して来ました。

 

しかし、そろそろ状況の悪化に目を向け、自立した視点を持っても良いいのではないでしょうか?

 

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ 70: 日本の問題、世界の問題 6: バブル崩壊の果てに待ち受けるもの


 1

< 1. 1980年代、世界を変えた首脳達 >

 

 

前回、バブル崩壊と救済が繰り返されて深刻な事態になっていることをみました。

今回は、なぜこのようになったかを探ります。

これでバブル崩壊の考察を終えます。

 

 

 

 2

< 2. 世界の緩和マネー >

 

上のグラフ: 茶色の線がOECD+BRICsの合計マネーサプライで、青線が世界のGDP。

 

マネーサプライが上昇している時に3回のバブルが起きている。

そして2008年以降、歴史上はじめて先進国全体がGDPを超えるマネーサプライを供給し続けている。

現在は中央銀行バブルの最中だと警鐘を鳴らすエコノミストが増えている。

 

下左のグラフ: 大国はベースマネー(マネタリーベース)を競うように拡大している。

 

下右のグラフ: 赤線は世界のマネーサプライ。

 

 第一章 はじめに

先進国(日米など)に格差拡大と累積財政赤字の増大が深刻化していることがわかりました。

これが緩和マネーの増大と金融セクターの膨張と関係していることもみました。

さらに、この始まりは高々1980年代に始まったことも知りました。

 

この異常な事態は最近の人為的なこと、つまり国と中央銀行の政策の変化が起因してることも知りました。

事の起こりは米国にあり、さらに経済理論が様変わりしたことにある為、理解することは難しい。

 

ここでは、先進国の政治経済の大きな変化を取り上げ、何が元凶なのか、何が経済と金融政策を変えてしまったのかを探ります。

 

 

 

3

< 3. 世界のヘッジファンド >

 

第二章 なぜこのようなことになったのか?

皆さん、不思議に思いませんか?

世界を巻き込む巨大なバブル崩壊を繰り返し、また国内の所得格差を著しく拡大させている国は何処でしょうか?

それは民主主義と資本主義の先進国である米国です。

その結果、トランプ大統領が誕生したも言えるのです。

 

これは他人事ではなく、放置すればいずれ我が身に起きることなのです。

この事態は米国がリードでして来た二つの金融政策に端的に現れています。

 

バブルが起きる原因はどこにあったのか?

 

大きな要因の一つは、緩和マネーの巨大化でした。

中央銀行はバブル崩壊後の景気刺激策として大量の緩和マネーを市場に供給して来た(マネーサプライ)。

 

バブルが過熱する時は、必ず投機家が巨額資金(自己資金の20~30倍の借金)を金融商品に投じて高騰を煽っていました。

単純に考えて、彼らが自己資金内で運用する分には、高騰はそれほど起こらず、例え暴落が起きても破産の可能性は著しく低くなります。

つまり、バブルの過熱も崩壊もなくなります。

 

それではなぜ投機家はそのような莫大な借金が可能になったのでしょうか?

 

大きな要因の一つは、政府が高レバレッジ率を許して来たからです。

政府は金融セクターの要望に従ってあらゆる規制緩和をこれまで行って来た。

 

それではなぜ政府と中央銀行はこのような危険を冒すようになったのでしょうか。

 

 

 

 

4

< 4. 2007年度、米国の資産格差 >

 

上位1%の金融資産は、米国の42%になった。

 

 

第三章 危険を冒す政府、肥え太る人々

なぜ政府と中央銀行は危険を冒してまで、巨大な緩和マネーを投じ、金融の規制緩和を行うようになったかを見てみましょう。

 

この様変わりした政策については経済学派のケイジアンとマネタリスト、米国の民主党と共和党、ドイツと米国、日銀総裁の白川(元)と黒田(現)で意見が対立し、賛否が別れています。

これら論争を理解することは困難でも、現実に悪化する状況を直視すれば、また背景を理解出来れば、自ずと答えは見えて来るはずです。

出来れば良質な経済書をお読みください。

私が読んだ参考図書を末尾に紹介します。

 

 

政策が変わっていった背景を簡単にみます。

 

第一段階 1970年代より、先進国が金本位制を止めたことにより、緩和マネーの巨大化が可能になった。

 

最初に1971年のニクソン・ショックで米国が金本位制を止め、1978年から先進国が続いた。

これにより各国の中央銀行が金の備蓄量を気にせず貨幣を発行出来るようになった。

中央銀行は貨幣供給量の調整で物価対策と通貨対策、景気刺激策を自由に出来るようになった(マネタリズム)。

 

これ以前、各国は金本位制を幾度も止めては、また復帰を繰り返して来た。

 

 

 

第二段階 1979年から米国のFRBが貨幣供給量を制御するマネタリズム(フリードマンが唱えた経済政策)により、スタグフレーション(失業率上昇と物価上昇が併進)を収め、景気を回復させた。

 

これ以前の経済政策は、米国のニューディール政策に代表される、政府が市場に介入し公共投資や賃金アップ(労働組合奨励)などで需要を喚起するケイジアンが主流であった。

第二次世界大戦まではこれが功を奏したと言えるのですが、戦後の世界経済は好調後に、インフレからスタグフレーションへと突入した。

 

先進国の産業・経済界と保守派は、これをケイジアンからマネタリズムへの転換の絶好の機会と捉えた。

 

 

第三段階 1980年代より、先進国は「自由放任主義」を掲げる保守的な政策に転換した。

 

 

スタグフレーションの原因の一つに、強い労働組合による旺盛な賃金上昇があったとされ、先進国の産業・経済界はこぞってこの抑制を政府に訴えた。

彼らにとって、経済疲弊の病根は強い労働組合と公営企業の赤字であった。

また第二次世界大戦後の英国や米国は、日増しに高まる日独の輸出攻勢で経済は勢いを失っていた。

 

これを挽回するために、英国のサッチャー(1979~)、米国のレーガン(1981~)がマネタリズムと自由放任主義を推し進め、やがて他の先進国も追従した。

自由放任主義とは、市場は規制を受けない自由競争状態であればあるほど経済の効率が高まり、発展するとの考えです。

すべてを自由競争に委ねれば、企業家は意欲を増し、商品価格は低下し、経済効率は上昇し、経済は発展すると信じた人々は、また政府の裁量と財政規模を縮小すべしとした。

 

彼ら指導者は国営企業の廃止や労働組合の制限、産業・金融の規制緩和を推し進め、景気刺激策として公共投資から貨幣供給へと軸足を移した。

日本だけは後者のマネタリズムへの転換を日銀が拒んでいたので、公共投資を継続した。

 

確かに、経済を安定的に発展させるには成長に見合ったマネーサプライは不可欠ですが、行き過ぎた緩和マネーが問題であり、その限度、効能と弊害について意見が分かれています。

 

 

 

第四段階 米国では金融家達が徐々に政治を支配するようになっていた。

 

米国の金融家(銀行家)と大資産家らは、ロービー活動と選挙応援を通じて20世紀初頭より政治力を高めており、レーガン以降、その力は強力になっていた。

 

彼らは米国の経済復活には世界的な競争に勝つ必要があり、この為に世界大恐慌後(1929年~)の数々の経済・産業・金融の規制を撤廃すべしと政府に規制緩和を求め続けた。

保守的である共和党の方がより規制緩和を行い自由放任主義的な政策を採ったが、多くの民主党政権でも後退には至らなかった。

 

この規制緩和は多岐にわたりますが、そのポイントは国民の犠牲を防止する規制の廃止、一方で金融家の自由な投機を阻害する規制や監督を廃止したことです。

一例としてはシャドーバンキング(ヘッジファンド)の暗躍、高レバレッジが最近の金融危機の大きな要因になっている。

他に自由放任主義の施策としては企業経営者の報酬アップ(ストックオプション)、労働運動の制約、富裕層減税による累進課税のなし崩しがある。

 

 

現段階 こうしてバブル崩壊がほぼ10年毎に起こり、中央銀行は膨大な緩和マネー、政府は財政出動で金融救済と景気刺激策を繰り返すようになった。

 

こうして金融セクターが潤い巨大化し、富める者は益々富むようになり、さらなる政治支配が可能になった。

例えば、バブル崩壊後の2009年から2012年までの収入増加のじつに91%が、米国の最富裕層上位1%の懐に収まった。

このような状況では、米国の多くの政治家も経済学者も現状の自由放任主義とマネタリズムに追従することで主流に成り得る。

これになびく日本も同様です。

 

これが米国と、米国に追従する日本や他の先進国の状況です。

 

 

 

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< 5. 2013年度、子供の貧困率 >

 

米国は世界で2番目に高く、日本は9番目に高い。

 

第四章 まとめ

結局、ここ40年ほどの金融家らによる政治と経済の転換は、著しい所得格差と莫大な累積赤字を生んでしまった。

そして多くの先進国では高い失業率と低経済成長がほぼ定着した。

さらに政治には国民の意向が反映されなくなり、失望の果てに日本、米国、ヨーロッパで右翼や国粋主義が台頭するようになった。

 

我々が今行わなければならないことは、先進国の金融セクターの横暴を止める政策を政府に採らせることです。

その対策の為には世界が一致団結して新たな金融政策、秩序ある競争を生み出す適切な世界的な規制と累進課税を採ることです。

 

経済学者スティグリッツは「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」で、抜本的な改革案を提示しています。

 

 

次回に続きます。

 

 

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*6

 

 

参考図書

 

*「国家は破綻する 金融危機の800年」カーメン・M・ラインハート著、2011年刊。

内容: 世界中の国家の破綻、デフォルト、金融危機、通貨暴落、高インフレの全体像をデーターで俯瞰させている。

感想: 破綻が頻発している事実に驚かされたが、破綻のメカニズムの定性的な解説がなく、経済の素人には面白くないかもしれない。

 

*「ささっと不況を終わらせろ」ポール・クル-グマン著、2015年刊。

内容: バブル崩壊後の不況対策について、幾多の事例を参考にしながら主に米国について批判的に解説している。

感想: 様々な破綻が読みやすく語られ理解し易い。またクル-グマンの立ち位置が見えてくる。

 

*「2020年 世界経済の勝者と敗者」ポール・クル-グマンと浜田宏一著、2016年刊。

内容: 二人が米国、EU、中国の経済、アベノミクスについて対談している。

感想: 対談集なので底が浅く、二人の議論が噛み合っていないように思う。

クル-グマンは概ねアベノミクスが最善の方策であり期待もしている。

気になるのは彼が日本の達成を困難と見ていることと、次のバブル到来を危険視していないことです。

 

*「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」スティグリッツ著、2016年刊。

内容: 米国の経済政策(自由放任主義とマネタリズム)を批判し、米国と世界経済の復活を目指す改革案を提示している。

感想: 現状の経済の問題点を多角的に分析し、それぞれに対策を提言している。

しかし要点を絞って書いている関係で、専門の経済用語の知識がなければ理解が困難です。

 

 

 

 

 

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何か変ですよ 69: 日本の問題、世界の問題 5: バブル崩壊 3


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前回、バブル崩壊のメカニズムと被害についてみました。

これが繰り返されることにより先進国社会の深部が蝕まれています。

今回、この状況を確認します。

 

 

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第一章 はじめに

これまで3回にわたり、世界各国が如何に経済的な破綻に見舞われて来たかをみました。

お読みになった皆さんは、おそらく世界が金融的な破綻に益々晒されつつあると感じたはずです。

先進国、資本主義国に何か変調が起きているとも感じられたことでしょう。

 

一方で、一気に世界を巻き込むバブル崩壊は必然だとも思ったに違いない。

 

そうであればこそ、バブルが過熱しないようにするしかない。

この為にはバブルを過熱させる要因を世界から取り除くしかない。

この要因は各国政府が、ここ40年ほどで作り出して来たものです。

所詮、作り出したものですから取り止めることが出来るはずです。

 

傍観している内に、我々の世界は大きな濁流に飲み込まれるはずです。

 

 

 

 

3

< 3. 米国のマネーサプライと負債 >

 

上のグラフ: 青線はマネーサプライM2の推移、左目盛り、10億ドル。

マネーサプライが急伸しているのがわかる。

(マネーサプライは中央銀行(FRB、日銀など)や金融部門全体から経済に対して供給される通貨の量で、一般の事業会社や個人、地方公共団体などが保有するお金の量を示し、国や金融機関が持っている現金は除きます。)

黒の破線は下のグラフの合計負債額/GDPの推移、右目盛り、%。

 

 

下のグラフ: 家計(青色)、非金融(赤色)、金融(緑色)の部門毎の債務残高/GDPの推移、%。

金融の負債がサブプライムローン危機の折に威勢よく上昇している。

しかも三部門の合計額は優にGDPの2.5倍になっていた。

この合計額がGDP(100%)を超えたのは、規制緩和とマネタリズムが隆盛になった1980年後半以降で、その後急伸している。

 

 

第二章 現在、バブル崩壊時に繰り返されている事

ここ40年ほど、先進国はバブル崩壊時に、金融危機の拡大を防ぐために莫大な救済金を金融機関に拠出して来ました。

 

この救済を行わない選択肢もあるのですが、しなければ1929年のウォール街大暴落に始まる世界大恐慌のようになります。

この時、米国の一人当たりの国民所得は最大35%低下し、元に戻るのに10年を必要としました。

失業率は一時約25%まで上昇した。

これがドイツや日本を経済的な窮地に追い込み、第二次世界大戦の引き金にもなりました。

 

 

 

4

< 4. 世界大恐慌時の米国 >

 

上の写真: 当時の取り付け騒ぎ。

下のグラフ: 米国民一人当たりのGDP推移。

 

 

それまでの恐慌では多くの場合、政府は銀行の倒産を放置し、不良な銀行を淘汰することが良策と考えていた。

しかし、この放置策では恐慌による傷が深まるので、現在は政府と中央銀行が、大規模な金融機関を集中的に救済するようになった。

 

このことは、当初、国民から反発があったものの、現在では受け入れられるようになった。

しかし、これが二つの深刻な問題を引き起こし、社会を歪める大きな要因になってしまった。

 

このポイントは二つある。

 

一つには、この救済資金が政府の累積財政赤字の急伸を招いている。

これを前回、見ました。

 

いずれこの負債を国民が広く負担せざるを得なくなります。

言い換えれば、バブルで救済される一部の大規模金融機関と大資産家を、犠牲になった国民が等しく救済することになる。

 

 

注意すべき事!!

リフレ策(アベノミクスなど)によって、累積財政赤字が霧散すると断言するエコノミストもいるが、私にはむしろ大きな破綻を呼び込む可能性があると考える。

世界のどこかでバブル崩壊(金融危機)が起きてしまうと、金余り(緩和マネー、溢れるマネーサプライ)が多ければ多いほど崩壊の被害は甚大になる。

つまり、ヘリコプターマネーによる膨大な金余り状態が最も危険だと言える。

現在、日本では、行き場を失った緩和マネーが株式投資、不動産投資、サラリーマン金融に向かっている。

 

 

 

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< 5. 日本の不動産の値上がり >

 

上のグラフ: 値上がりは東京だけでなく全国に広がりつつある。

下右のグラフ: 銀行の不動産向け貸し出しの増加が値上がりに繋がっている。

 

 

二つには、救済されるのが大規模な金融機関に限られていることです。

 

救済される金融機関ほど、バブルの中核であったとも言える。

一方、救済対象から外されるのは圧倒的に大多数の被害者です。

かつて日本では自己責任が声高に叫ばれたことがあるが、これは真逆です。

 

崩壊と救済が繰り返される内に、以下のことが慢性化し深刻さを増しています。

特に米国において。

 

金融機関や資産家、特に大規模であればあるほど「モラル・ハザード」(倫理感の欠如)が浸透しています。

救済されることが分かっている彼らは悪辣な手で暴利を貪り食うことを厭わなくなりました。

金融機関は更なる大規模化を目指し合併を繰り返し、大資産家もこれに群がります。

 

大規模金融機関と大資産家は、バブル崩壊で失業し賃金低下に苦しむ大多数の人々をしり目に、救済策で破産を逃れます。

しかしそれだけではない。

 

景気刺激と金融安定化の為の大規模な金融緩和策で、崩壊後いち早く所得を増大させることになります。

これが繰り返されることにより顕著な所得格差が生み出されました。

これは米国の所得格差拡大の要因の一つに過ぎないが、根は一緒で、次回説明します。

 

 

さらに富を蓄え政治力を持つようなった大規模金融機関と大資産家は、国際競争と経済活性化と称する金融の規制緩和を政府に実行させて来ました。

1929年の世界大恐慌への反省から制定された規制が、なし崩しに廃止されて来ました。

 

こうしてここ40年ほどの間に、金融セクターが世界の繁栄を掌中に収めるようになったのです。

例えば、1950~1980年の間、米国の金融セクターは総企業収益の10~20%であったが、2001年には46%に成長している。注釈1.

その後、サブプライムローン危機で平均32%に低下している。

 

 

これが所得格差の元凶であり、結果であり、今後もバブル崩壊が繰り返さずを得ない理由なのです。

 

 

 

第三章 データーで確認します

 

 

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< 6. 米国の所得の推移 >

 

上のグラフ: トップ1%の所得(赤)と平均賃金(青)の推移。

平均賃金は生産性(緑線)よりも伸びが低い、つまり正当な分配とは言えない。

一方、トップ1%の所得は鰻登りで、バブル崩壊の度にその差は開いていく。

 

下のグラフ: 年収5分位の年収推移。

上位になればなるほど上昇し、下位になればなるほど伸びなくなり、両者の差は開くばかり。

この格差は規制緩和とバブル崩壊のみで起こっているのではなく、逆累進課税や労働組合の衰退、法人優遇なども影響している。

 

 

 

 

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< 7. 日本のマネーサプライと所得階層別の所得推移 >

 

上のグラフ: 緑線がマネーサプライ(マネーストック)、青線がマネタリーベース、赤線が名目GDP、紺色線が東証時価総額です。

 

通常、マネーサプライを増やせば、インフレや景気刺激を可能にし、抑えれば逆効果となります。

しかし不思議なことに、マネーサプライが続伸しているにも関わらず、GDPは増えず、停滞を続けている。

このGDPとマネーサプライのギャップ(緩和マネーの増大)が気になります、米国で起きたサブプライムローンの前兆を感じさせる(図3のグラフ)。

 

日銀が金融緩和などでコントロールするのはマネタリーベース(民間の金融機関が預金準備率に従って中央銀行に預けた貨幣総額)で、その何倍かが市中に出回るマネーサプライになる。

中央銀行がマネタリーベースをコントロールしたからと言って、マネーサプライを確実に調整することは出来ない。

 

ただここ数年の日銀のマネタリーベースは各段に多いので、株価を押し上げている。

株価上昇は日銀や政府機関が株購入していることも影響している。

 

 

下のグラフ: 赤線が下位90%の所得の推移で、橙色線は最上位0.01%の所得です。

下位90%の所得は3回のバブル崩壊で低下していったが、最上位0.01%の所得はバブルの度に上昇している。

米国ほどではないが、同じ傾向が見て取れる。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

注釈1.

スティグリッツ著、「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」2016年刊、p75より。

 

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何か変ですよ 68: 日本の問題、世界の問題 4: バブル崩壊 2


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前回、バブル崩壊のばかばかしい一面をみました。

今回は、バブル崩壊が起きる理由と被害が甚大になる理由をみます。

また被害の現実をグラフで確認します。

 

 

  •  バブル崩壊の簡単なメカニズム

これまで繰り返されて来たバブルには、ITバブル、サブプライムローンバブル等、様々な名前が付いていますが、必ずすべてにつきまとうものがあります。

それはバブルの崩壊、急激な信用収縮による金融危機です。

さらに金融危機はデフォルトと通貨暴落などを伴うことがあります。

 

崩壊はなぜ避けられないのでしょうか?

 

簡単に、株式投資(不動産投資、商品投機も同じ)で例えます。

 

ある投資家が自己資金500万円で購入した株が800万円に値上がりして、気を良くし、今度は500万円を借金して追加投資した。

しかし、まもなく値崩れを起こしたので、彼は借金返済の為に即座に売却した。

売れた株価は平均400万円だったので、彼は自己資金をすべて無くした上に借金返済にも100万円不足となった。

この100万円を都合出来なければ、彼は破産することになる。

 

ここで注目して欲しいことは、誰も株を売らなければ損失が出ないと言うことです。

 

一度、信用不安が発生したり値下がりの憶測が流れるとバブル状態の金融商品(不動産や株、国債など)に売りが集中し、この価格が下がり始め、すると更に売りが増えて暴落することになります。

部外者から見れば、これは自業自得で、まったく馬鹿げた話ですが、経済全体で見ると事は重大です。

 

日本では暴落の度に概ね日経平均株価はピーク時の半値以下になり、株価総額で200~300兆円が一瞬にして失われます。

この金額はGDPの半分に相当するので重大です。

 

バブル崩壊の切っ掛けは様々あり、自国の景気後退や金利上昇などが大きいが、海外の景気後退や金利上昇、またバブル崩壊が伝染しても起こる。

何が切っ掛けであろうと、一度値下がりが始まると市場はパニック状態になり、制御不能になってしまうのです。

 

 

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  •  バブル崩壊の甚大な被害

バブルは経済を潤していたのに、崩壊してしまうとなぜ悲惨なことになるのか?

 

それまで、株価・不動産高騰で懐が潤っていた人々は消費を増やし、好況に貢献し、また国により多くの税金を払ってくれていた。

崩壊では、この逆が起こっただけで、結局、プラスマイナスでゼロになっただけと思わないでください。

 

このバブル期間中、投資機関、特に大口の個人資産を運用するヘッジファンドなどはレバレッジを利かした借金(元本の数十倍)で投資を行います。

すると莫大な資金が流入したことでその金融商品の値上がりが続き、やがて素晴らしい収穫の時がやって来ます。

 

例えば、元本1億で29億を借金し、合計30億で運用し、購入価格の2倍で売却すれば、この投資家は59億円の利益を得ます(笑いが止まりません)。

ところがこの投資家は、値上がりを期待し、まだ金融商品を持っていた。

ついに下落が始まると、彼は29億の借金を返却しなければならず、先を急いで売却を始めます。

すると、これが大暴落の切っ掛けになります。

 

不動産投資では、値上がりした購入物件を担保に借金し、さらに別の物件に投資することが多い。

この場合、一度少しでも不動産の値下がりが始まると担保評価額の低下により、資金回収の為の不動産物件の売りが必要になり、これを切っ掛けに暴落と破産が続出することになる。

 

こうなると個人やヘッジファンドなどの機関投資家や投機に手を出していた企業の破産が続き、ついには銀行までもが倒産を始めます。

現代は、先進国の膨大な金融資産が世界中を飛び交っています。

こうして、一国のバブル崩壊、信用収縮による金融危機が起き、瞬く間に世界に伝染していきます。

 

こうなるとほとんどの市場参加者、特に情報が少ない一般投資家は後手に回り、失うのは自己資本だけでなく借金も返せなくなります。

こうして、一転、浪費に浮かれた社会から破産企業と破産者が続出する停滞した社会に突き落とされることになる。

 

なぜバブル崩壊が悲惨な状況を生むのかを簡単にイメージしてみましょう。

 

百社の企業と従業員からなる経済を想定します。

各企業がバブルに便乗し、銀行から平均10億円の融資を受けて金融商品に投資していました。

3年間、各社例年に比べ大幅増の毎年1億円の利益を上げていました。

経営者や従業員にボーナスが出て、求人も増え順風満帆でした。

 

しかし、やがてバブル崩壊が始まった。

企業は金融商品をすべて売却したが、融資額の半分の平均5億円の借金が各社に残った。

内部留保(利益の蓄積)を取り崩し、資産を売却しも借金を返却出来ない企業10社は倒産し、失業者は5%増加し、消費は冷え込んだ。

残った90社も借金を抱え、全体で20%の売り上げ減になり、景気は冷え込んだ。

 

これがバブルの崩壊による暗転のイメージです。

 

 

一度、大きな信用収縮が起きると、個人破産だけでなく産業・経済を支える企業・金融機関の多数の倒産が起こります。

景気後退と失業者の増大が起こります。

 

生き残った企業や銀行(金融機関)も莫大な借金を背負うことになります。

銀行はバブル防止への規制強化のせいもあるが、負債の減額に必死で、融資に慎重になります。

また製造企業も同様に、傷を受け、設備投資や賃上げを控えることになります。

さらに国は急激な税収減に見舞われ、赤字国債を急増させ累積赤字は一気に増加します。

当然、福祉やセフティネットの予算が減額され、低所得層はさらに苦しむことになります。

こうして深刻な景気後退が長く続くことになります。

 

しかし、ここ数十年、先進国はバブル崩壊時に莫大な公的資金をつぎ込むことにより新たな問題が起きるようになりました。

 

 

  •  グラフから事実を掴む

バブル崩壊が社会に与えた影響をグラフから見ます。

 

 

 

 

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< 3. 日米英の株価推移とバブル崩壊 >

 

橙色枠は三つのバブル崩壊を示します。

 

A: 日本のバブル崩壊(平成不況)。

1991年3月~1993年10月。

 

このバブルは1985年のプラザ合意で円高が進行した為、政府が内需拡大を目指し、日銀が低金利政策による大幅な金融緩和を行ったことに始まる。

これにより不動産投資と証券投資が活況を呈し、1989年12月に日経平均は最高値を付け、暴落が始まった。

翌年、政府と日銀が強引な金融引き締めに転じた為、急激な信用収縮が起こり、これにより失われた20年と呼ばれる低成長期に突入した。

 

この時に発生した不良債権は約200兆円、全銀行の純損失の総額は100兆円であった。

1991年の実質GDPは420兆円であった。

 

 

B: ITバブル。

日本では2000年12月~2002年1月に影響を受けた。

 

このバブルは1990年代末期から2000年代初期にかけて、アメリカ合衆国市場を中心に起った。

インターネット関連企業の実需投資や株式投資が異常な人気となり、2000年3月にナスダックが最高値を付けた。

その後、連邦準備制度理事会の利上げを契機に株価は急速に崩壊した。

 

日本は前述のバブル崩壊による不況が続き、またIT関連投資が部分的であった為、影響は限定的であった。

 

 

C: サブプライム住宅ローン危機から世界金融危機。

米国で2007年に始まり2010年以降も世界に影響を与えた。

 

このバブル崩壊は米国での長年の住宅ブームに便乗し乱発されていたサブプライムローン(返済能力が低い人への住宅ローン)が2006年の住宅価格の下落で、返済不能者が続出したことによる。

サブプライムローンは途中から金利が高くなる設定であったので、債務者は住宅価格が上昇している時なら借り換えで返済額を減らすことが出来ていた。

しかし、下落を始めると借り換えが出来なくなり、金利上昇分を返済出来ない人は破産した。

こうして信用収縮が始まった。

 

これが世界金融危機へと拡大したのは、ここ数十年で定着し始めた金融システム、高レバレッジをかけた取引や住宅ローンと他のローンを細分化し組み合わせた証券化、リスク回避の為のCDS(信用デリバティブの一種、前回説明)、不誠実な信用格付けが重なり、リスクが見えなくなっていたことによる。

そして世界のあらゆる投資家は活況を呈するこの市場にこぞって参加した。

 

これに輪を掛けたのが規制緩和によるシャドウバンキングの暗躍でした。

米国と世界はシャドウバンキングの放埓な取引を規制もせず、実態も掴まなかった。

シャドーバンキングとは「影の銀行」という意味で、銀行ではなく、証券会社やヘッジファンド、その他の金融会社が行う金融仲介業務を指します。

 

 

これによる損失はどれぐらいだったのか?

2008年10月、アメリカ政府は70兆円の公的資金を投入したが、さらに大規模な財政出動を繰り返し、11月にはそれは総額700兆円に達した。(これ以降、為替100円/ドルで計算)

これらの出動は直接的な支出というよりも投資、融資、融資保証などの形を取っていた。

2009年2月、アメリカ政府は80兆円の景気刺激策を決め、この内7兆円は900万に上る住宅所有者を差し押さえから救うための費用でした。

アメリカの退職金基金は22%減の170兆円減、年金基金130兆円減、貯蓄と投資資産は120兆減であった(日本も年金基金と日銀の株式運用に気をつけよう!!)。

 

2009年の国際通貨基金 (IMF) の推計によれば、米国と欧州の大手銀行が2007年~2010年の間に不良資産と不良融資から受けた損失額は最悪280兆円に達すると予想した。

 

最後に最新の数値を示します。

ステイグリッツはダラス連邦準備銀行の推計として「2008年の金融危機のコストは、年間GDPの40~90パーセントに達し、今日の水準では16兆ドル(1760兆円)に相当する」と述べている(驚愕の数値!!)。

この記述はステイグリッツ著、2016年刊「これから始まる『新しい世界経済』の教科書」P.73にある。

 

 

 

 

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< 4. 日米の実質GDP成長率 >

 

上のグラフ: 日本の実質GDP成長率。

バブル崩壊時のGDP低下はわずか数%で、かつ2~3年で終わっているように見える。

しかしバブル崩壊の度に、経済成長率は1段づつ低下し、遂には0%に近づいたように見える。

 

下のグラフ: 米国の実質GDP成長率。

バブル崩壊時のGDP低下はわずか数%で、かつ2~3年で終わっているように見える。

しかし日本と違って平均2%の成長を遂げている。

実はこれには裏があり、次回種明かしをする予定です。

 

 

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< 5. 日米の失業率 >

 

上のグラフ: 日本の完全失業率。

Aのバルブ崩壊から10年かけて失業率は2.5倍に上昇した。

如何に、このバブル崩壊が日本経済を傷つけたかがわかります。

円高は1985年の260円から1987年の120円になり、後は概ね横這いになったていたので、この景気低迷は円高だけでは説明できない。

 

下のグラフ: 米国の完全失業率。

Cのサブプライム住宅ローン危機では、それまでの20年近くの低い失業率が一気に悪化した。

 

 

 

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< 6.日本の政府債務残高 >

 

上のグラフ: 日本政府の債務残高の推移。

純債務は、総債務に対し、一般政府が保有する金融資産(年金積立や外貨準備など)を差し引いたもの。

 

1980年代には、財政再建が強く意識され、概算要求におけるゼロシーリングやマイナスシーリングの導入、民営化、消費税の導入等が行われた結果、財政収支は改善基調となり、1988年から1991年にかけて黒字となった。

1992年以降はバブル崩壊に伴う歳入減と景気対策としての減税・公共事業の拡大による歳出増に伴い、恒常的な財政赤字のはじまりとなった。

如何にバブル崩壊が財政赤字の増大を招くかをよく示している。

 

「国家は破綻する」の図14.5(p.338)によると、過去数十年間の世界の金融危機の実質公的債務は危機後の3年間で平均86%(40~180%)も増加している。

いずこも同じことが起きているのです。

 

下のグラフ: 日本の部門別の貸出(+)/ 純借入(-)の推移(対名目GDP比)。

三回のバルブ崩壊に応じて、政府の財政赤字が増加し、家計の貯蓄が減少している。

 

一方、非金融法人企業は1990年に最大の赤字であったが、不思議なことにバルブ崩壊の度に赤字を減らし、遂には黒字となり家計の資産を越えた。

この理由は不明だが、違和感がある。

 

 

 

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< 7. 米国の政府債務残高 >

 

上のグラフ: 政府債務/GDP。

 

サブプライム住宅ローン危機後の2007年から2013年の6年間で政府総債務残高は1.9倍になり8兆ドル(900兆円)の増加になった。

 

現在は、過酷なバブル崩壊に見舞われると、政府は金融安定化と景気刺激策と称して莫大な公的資金を投じる。

 

このお陰で、経済成長率や失業率は早く回復するようになった。

しかし、その一方、政府は莫大な累積赤字を抱え込むことになった。

 

さらに、この莫大な公的資金投入は別の深刻な事態を生み続けている。

次回、説明する予定です。

 

 

下のグラフ: 金融を除く企業、家計、政府の債務額/GDPの推移。

2008年から緑線の政府の債務額が急激に増加し、遅れて2010年より赤線の家計と青線の企業の負債が減少し始めた。

 

 

詳しい経緯はわからないが、バブル崩壊に伴う家計と企業の負債は政府の累積債務に付け替えられ、結局、また国民の借金に先送りされただけに見える。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

 

 

 

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何か変ですよ 67: 日本の問題、世界の問題 3: バブル崩壊 1


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前回、金融的な破綻、デフォルトが世界で無数に繰り返されていることを知りました。

これから、バブル崩壊の問題点を見て行きます。

今回は、天才が引き起こす間抜けなバブル崩壊を見ます。

 

 

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第一章 はじめに

多くの人はほぼ10年ごとに起きるバブル崩壊が資本主義の宿命だと諦めているようです。

ひょっとすると竹森教授のようにバブルを成長の肥やしと考えているかもしれません。

 

バブル崩壊(恐慌)は、必ず起きる金融危機によって経済が深く傷つけられ、その後、不景気が数年から10年も続くことになる。

 

このことが繰り返されているにも関わらず、バブル途上では多くの人が浮かれ、また我先に利益を貪ろうと必死です。

かく言う私もかつては熱心な小口投資家の一人でした。

 

バブルの利益に預かる金融家や投資家だけでなく、もてはやされるエコノミストや企業家、政治家までが、この好況は未来永劫続くと称賛しているのが常です。

 

この不思議で滑稽な様はガルブレイス著「バブルの物語」(17から20世紀まで)に詳しい。

ガルブレイス曰く、「暴落の前に天才がいる」。

この天才達は画期的なシステム(経済、金融から事業モデルまで)を創造するが、一方で希代の詐欺師、妄想家、情熱家、独りよがりの無責任男とも言える。

 

 

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< 3. LTCMの総資産の推移 >

 

第二章 あるヘッジファンドの凋落

最近の事例として、1998年に破綻した米国のヘッジファンドLTCM(1994年創業)が特徴的です。

 

ノーベル経済学賞受賞者らが開発した画期的なプログラムで、様々な金融取引を自動で行わせ、数年間は驚異的な成績を叩き出した。

これにはFRB元副議長やソロモン・ブラザーズの元トレーダーも参画しており、人気はうなぎ上りで、各国から14兆円(レート110円/ドルで計算)の資金を集めていた。

しかしアジア通貨危機(1997年)、次いでロシアのデフォルト(1998年)で約5000億円の損失を出して破綻した。

 

ここから現代の病巣、米国が先導し世界に蔓延している金融の闇が見えて来る。

 

先ず、FRB(議長グリーンスパン)はLTCMの取引銀行に4000億円を融資させ、かつ市中銀行間での資金融通のフェデラル・ファンド金利を素早く大胆に下げて、金融不安の鎮静化を図った。

なぜ、こここまでして一企業を救済しなければならないのか?

 

放置すれば、被害が甚大だからです。

LTCMが実際に集めた資金は5200億でしたが、25倍のレバレッジをかけて、14兆円の資金(借金)を運用し、さらには世界の金融機関と138兆円の取引契約をしたからです。

(レバレッジとは、最大限の利益を得ようとして、手持ち資金の何十倍もの借金をすることです。国が規制緩和でこの率を許可している。)

 

 

4

< 4. 米国の金融機関のレバレッジ率 >

 

 

ここで皆さんに、肝に銘じて欲しいことがあります。

それは世界の金融セクターでは、当方もなく貪欲な人々が、金の為なら無責任・無節操になり、あらゆる危険な手段に手を染めることです。

そして先進国はあらゆるかつての禁じ手(高率のレバレッジなど)を解禁し、私達の知らない闇の中でそれらが日々行われているのです。

これら禁じ手の多くは、1980年代以降に解禁されて来たのです。

 

 

またノーベル賞クラスの天才が、なぜ失敗したかを知っておくことも有意義です。

LTCMは「ロシアが債務不履行を起こす確率は100万年に3回だと計算していた」。

つまり想定外なのです。

これは前回の竹中平蔵会長やかつての福島原発事故での東電社長の言辞にもみられました。

この手のとんでも確率論は、原発事故の発生確率のように原発推進の米国著名学者が堂々と発し、また信じられて来たのと同じです。

どうやら想定外とは「当事者にとって将来起きてほしくない巨大な災厄」を意味するようです。

 

 

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< 5. 危機の後、証券化市場は壊滅した >

 

 

第三章 バブル崩壊を防ぐと信じられた夢の保証制度

当然、政府や中央銀行の当局者までもが、バブル絶頂期になっても崩壊が近いと気づかないことが多い。

 

サブプライム住宅ローン危機当時(2008年のリーマン・ショックから世界金融危機に発展)、「金融の神様」と呼ばれたグリーンスパンFRB議長はまったく安心していた。

彼は、当時構築されたばかりの世界に張り巡らされた画期的で高度な金融システム、見方を変えれば、複雑で誰が最終の責任を取るのかがまったく見えない様々なシステムに信頼を置いていたのです。

 

その一つが、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)と呼ばれる損害保険の金融商品で、これが急拡大し、2007年末に6800兆円に急拡大した。

 

簡単に言えばCDSは、A銀行がB企業に融資し、その貸し倒れリスクを避ける為に、A銀行が別のC銀行に保証料(例えば、融資額の0.3%)を払うことです。

もしB企業が倒産すれば、C銀行はA銀行にその融資額を支払うことになる。

もし倒産しなければ、C銀行は保証料が儲かる。

当時、CDSで保障すべきネットの金額は500兆円であった。

面白いのは、不安な融資元は平均して14倍も重複して保証させていた。

実はこれだけでも毎年の保証料は20兆円(保証額の0.3%として)にもなります。

 

グリーンスパン前議長は自叙伝で当時のシステムへの信頼をこう述べている。

「高率のレバレッジを効かせている貸し手からリスクを移転する金融商品は、グロバールな環境では、経済の安定に決定的に重要になる。・・・。

インターネット・バブル(2001年崩壊)がはじけて、・・・企業がかなりの割合で債務不履行に陥ったが、その結果、経営危機に陥った大手金融機関は一つもなかった。

最終的に損失を被ったのは、・・・CDSの主な売り手であった。

これらの機関は十分に損失を吸収することができた。・・・。」

 

結局、信頼はあっけなく崩壊した。

サブプライム住宅ローン危機では、三つの大規模金融機関(リーマンブラザースなど)が破綻し、金融危機は世界に広がった。

 

こんなカラクリは充分に破綻の危険があると、素人の私には思えるのだが。

  • 保証料を決めるデフォルト(破綻)の確率を読めるはずがない。

もっとも、当時、破綻の危険が読めないように信頼の低いサブプライムローンと他の金融商品を巧みに組み合わせ債務担保証券(CDO)を仕組んだのだろうが。

 

最大の問題は、緩和マネーが巨大であればあるほど市場はパニックになってバブル崩壊を急激で甚大なものにする。

つまり、CDSは小さな保証(自動車ローンの個人破産など)は出来ても、世界を巻き込む巨大なバブル崩壊、世界中の銀行の連鎖倒産などを止めることは出来ないはずです。

(緩和マネーとは、中央銀行が金融緩和により実体経済を凌ぐ莫大な資金を市場に投入した資金のことで、この行く先の無い資金が株などの投機に注がれることになる。)

 

 

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< 6. 世界の債務は急拡大中 >

 

繰り返すバブル崩壊とその救済策の強固なメカニズムによって世界は衰亡に向かうのだろうか?

 

 

 

第四章 バブルと向き合う

バブル崩壊は人間の性「貪欲」が招いたとも言えるし、これが繰り返されるのは「今度は前回とは違う」という期待と逃避の心理によるとも言える。

 

しかし、バブル崩壊を人類の悪癖だからと簡単に納得してしまってはならない。

 

一つには、バブル崩壊が確実に繰り返され、被害がより深刻化しているからです。

 

今一つは、バブル崩壊を生み出すシステムが益々強固になっているからです。

これによって莫大な富が一部の人々に集中し、さらに彼らがこのシステムを強化しているからです。

 

上記二つのことを理解できれば、我々がこれから何をしてはいけないのか、また何をすべきが見えてくるはずです。

 

 

次回に続きます。

 

 

 

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